金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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プロローグ ~『俺、国王になる』~

プロローグ ~『俺、国王になる』~

 

 妹を救い出したイーリスと共に、俺はサイゼ王国の中心に位置するサイゼ王国城へと移動していた。

 

 

 

 ちなみにだが移動は徒歩ではない。アリスが保持していた魔法、『転移魔法』により、一瞬にして移動したのだ。

 

 

 

 そんな魔法があるなら、誘拐犯から逃げることも可能なのではと思ったが、魔法には魔力が必要で、満足に食事や睡眠を取っていないと、魔力不足で使えないのだそうだ。

 

 

 

 話を戻そう。

 

 

 

 姫を救い出した俺は、お礼をしたいとの申し出を受け、王の間へと案内された。玉座には黒髭を蓄えた男が背広姿で座っている。

 

 

 

 想像していた王と違い、俺は少し戸惑う。

 

 

 

 異世界の王といえば、ファンタジーで良くある燕尾服と王冠を被っているものだとばかり思っていた。だが眼前の王は、どこかの大企業の社長のようである。

 

 

 

「アリスよ、無事じゃったか」

 

「はい、お父様」

 

 

 

 親子二人はがっしりと抱き合う。アリスは涙を溜めて喜んでいた。

 

 

 

「なにもされなかったのか?」

 

「何度か殴られましたが、純潔は守り抜きました。これもすべてイーリス姉さまのおかげです」

 

「イーリス、お主も無事でよかった!」

 

 

 

 王は随分と涙もろいのか、ポロポロと涙を零す。二人の無事を心から喜んでいるのが分かった。

 

 

 

「お父様、妹ちゃんを救ったのは私ではありません。そこにいる唐沢が、命を賭けて救ったのです」

 

「おおっ、お主が!」

 

 

 

 王は感謝の気持ちを表現すように、俺をぎゅっと抱擁する。

 

 

 

 暑苦しい。男に抱擁されて喜ぶ趣味は俺にはないのだ。

 

 

 

「私からもお礼を言います、ありがとう」

 

 

 

 アリスが頭を下げる。黒い髪がはらりと散った。

 

 

 

「気にしなくていい、当たり前のことをしただけだ」

 

「なんと謙虚な男だ。気に入った! 気に入ったぞ!」

 

 

 

 王が俺の肩をバンバンと叩く。防御の能力値が高いおかげで痛みは感じないが、課金する前の俺なら絶対痛い。

 

 

 

「私からもお礼を言いたい。そして謝罪をしたい」

 

 

 

 イーリスが地面に膝を付き、頭を下げる。所謂土下座だ。突然の土下座に、アリスと王は慌てふためく。

 

 

 

 俺も状況に頭が追いついていなかった。

 

 

 

「私はあなたを犯罪者呼ばわりし、さらには何度も傷つけてしまった。無実の人間を殴った私は、とても許されない行為をしたと反省している」

 

「反省したのは分かった。俺は気にしていないから頭を上げてくれ」

 

「そうはいきません。罪には罰が必要です。私を煮るなり焼くなり好きにしてください」

 

「煮るなり焼くなりと言っても……」

 

「なんでしたら、あなたの奴隷になっても良い」

 

 

 

 奴隷になる。その声には一切の冗談が含まれていない。真剣な声だった。

 

 

 

「イーリス姉様、馬鹿なことを言わないでください。謝罪が必要なら私からも謝ります。お金が必要なら払います」

 

「そうだ、イーリスよ。王族が奴隷などとバカなことを言うでない」

 

 

 

 王とアリスの言う通りだ。奴隷になるとはつまり、俺がイーリスを養っていくということでもある。

 

 

 

 俺は一生遊んで暮らしたいんだ。俺を養ってくれるというならともかく、扶養する相手を増やすなど受け入れるわけがない。

 

 

 

 そのことを伝えると、三者三様の反応を示した。

 

 

 

 王はイーリスを奴隷にすることに反対だということに喜び、アリスは俺に向けていた感謝と尊敬が宿った瞳に侮蔑の色を籠らせ、イーリスはならどう謝罪すれば良いのか分からないと困惑の表情を浮かべた。

 

 

 

「なにか願いはないのですか? 私は贖罪のためなら何でもしますよ」

 

「願いか……」

 

 

 

 思えば外資系投資銀行に入社した俺だが、せっかく若返ったのだし、原点に戻るのも悪くないのではないか。

 

 

 

 つまり専業主夫になるのである。

 

 

 

 相手は一国の姫だ。いきなり結婚してくれと言っても受け入れるとは思えないが、もしかしたら王が資産家の令嬢を紹介してくれるかもしれない。

 

 

 

 あとは資産を食いつぶして、遊んで暮らせば良い。

 

 

 

 グヘヘヘッ、楽しいニート生活の始まりだぜ。

 

 

 

「どんな望みでも仰ってください。私が叶えられることであれば必ず叶えてみせます」

 

「それなら俺と結婚して、養ってくれ」

 

 

 

 言ってしまった。口にしてしまった。

 

 

 

 王とアリスは驚愕で目を丸くしている。突然結婚しろと言い出せば驚くのも無理はない。

 

 

 

 さて、ここからが勝負だ。俺を養ってくれる女性の紹介。専業主夫を許せる広い心を持ったお嬢様をどうにかして引き出すのだ。

 

 

 

 数々のディールを乗り越えてきた俺だ。この程度の試練、楽々と乗り越えられるはずだ。

 

 

 

「う、うぅ……」

 

 

 

 イーリスが突然泣き始める。

 

 

 

 俺に結婚を申し込まれたことが泣くほど嫌だったのか。

 

 

 

 地味に傷つくぞ、おい。

 

 

 

「何も泣かなくても」

 

「違うんです。私、嬉しくて」

 

 

 

 結婚を申し込まれて泣いて喜ぶ。もしかして今の俺、モテ期なのか。

 

 

 

「唐沢君と言ったかな」

 

「はぁ……」

 

 

 

 王が俺の手を取り、ブンブンと上下に振る。

 

 

 

「今日から君はワシの息子だ。そしてワシは王を辞める」

 

「何を言って……」

 

「君がこの国の王となるのだ。頼んだよ、ワシの国と娘の未来を!」

 

 

 

 専業主夫を希望したはずの俺は、なぜか国王をすることになった。




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