金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

5 / 32
プロローグ ~『美的感覚の違い』~

株の世界には優良不人気株というものが存在する。

 

 

 

 会社の業績や財務は優れているのに、流動性が低いために人気がない株のことを指すのだが、外資系投資銀行ではこういった株は敬遠されていた。

 

 

 

 というのも人気がないため、株が市場に出回ることが少なく、買い手も少ない。だから売りたいときに売れず、買いたいときに買えないリスクがある。

 

 

 

 だが会社そのものは良い会社なのだ。毎年きちんと配当を運んでくれる。だからかそんな株だけを狙って買うマニアも存在する。

 

 

 

 そしてイーリスに結婚を申し込んだ俺も、マニア扱いされていた。

 

 

 

「まさか三国一のブス姫と揶揄されるイーリスに結婚を申し込む男がいるとは……」

 

 

 

 王は葡萄酒片手に機嫌良く笑う。本当に嬉しそうだ。 

 

 

 

「う、うぅ、嬉しいです。こんな私に求婚してくれる殿方がいるなんて……」

 

 

 

 イーリスは頬を真っ赤に染めながら、まだ泣き止んでいない。

 

 

 

「イーリス姉さんには悪いけど、一生独身だと思っていたわ」

 

「ワシも、ワシも!」

 

 

 

 こいつら本当にイーリスの家族か。普通に酷いぞ。

 

 

 

「正直、ワシは孫の顔を見るのを半分諦めておった。アリスは美人だから結婚できるじゃろうが、イーリスは、ブスだからのぉ」

 

「いや、イーリスは美人だろ」

 

 

 

 俺が真剣な口調でそう告げると、王は葡萄酒の入ったグラスを俺の前に差し出す。俺も合わせるように手元のワイングラスを持ち上げた。

 

 

 

「唐沢君の腐った魚のような瞳に乾杯」

 

 

 

 王は機嫌良くワインをガブガブと飲んでいく。

 

 

 

 なんだか馬鹿にされている気がする。

 

 

 

「隣国の王子にも見習わせてやりたいのぉ」

 

「隣国の王子?」

 

「イーリスの元婚約者でな。酷い男だった」

 

「浮気でもしたのか?」

 

「いや、イーリスの顔を見た瞬間、嘔吐しよった。あまりのブスさに耐えられなかったらしい」

 

「最低なやつだな」

 

「そう思うだろ。詳しく聞いてみたら、結婚し、誓いの接吻をする場面を想像したら、我慢できなかったそうだ」

 

「それで婚約はどうなったんだ?」

 

「破棄になった。仕方あるまい。隣国の王子の言い分も理解できる。ワシも娘とキスしろと言われれても無理じゃもん」

 

「ひでぇ」

 

 

 

 こいつ本当にイーリスの親なのか。

 

 

 

「だが待ってくれ。アリスは美人なんだよな。イーリスとそう変わらん顔つきだろ」

 

「顔はそうかもしれん。だが顔なんぞオマケじゃろ」

 

「なら何で美醜を判断するんだ」

 

「当然髪の色に決まっている」

 

 

 

 王が語る美醜の感覚は、俺とかけ離れたものだった。

 

 

 

 この世界では髪の色が魅力と同義だと言うのだ。

 

 

 

 黒髪が一番人気があり、美しいと褒めたたえられる。次に金髪と茶髪がこの世界の普通であり、特別モテることもモテないこともない。

 

 

 

 そしてイーリスのような銀髪は、どんな男からも避けられ、ブス扱いされるのだそうだ。

 

 

 

 つまり黒髪であるアリスは美人で、銀髪のイーリスがブス扱いされる。しかも二人の髪色は濃い。アリスはより一層美人だと褒めたたえられ、イーリスは三国一のブスだと貶される。

 

 

 

「髪なんて染めればいいだろ」

 

「馬鹿を言え。そんなことをすれば、ファミレ神への侮辱になるじゃろ」

 

 

 

 髪を染めるのは宗教的な理由で、できないのか。

 

 

 

「黒髪がモテるなら俺もモテるのか?」

 

「当たり前じゃろ。お主がモテないのなら誰がモテるんじゃ」

 

「へぇ、俺ってモテるのか」

 

「顔が良いのを鼻にかけおって。嫌味な奴だのぉ」

 

 

 

 貶されたけど、すげえ嬉しい。

 

 

 

「イーリスとの結婚を途中でやめるのはなしじゃぞ」

 

「分かっている」

 

 

 

 この世界の住人はイーリスの魅力に気づいていない訳だ。

 

 

 

 最高だ。優良株が捨て値で売られているのを見つけた気分だ。

 

 

 

 イーリスは一国の姫だから金はあるし、性格も真面目だし、なにより顔が良い。元の世界にいたならば、高嶺の華すぎて手を伸ばそうとも思わない美人だ。

 

 

 

 イーリスという不人気優良株は、俺にとって最高の証券だった。

 

 

 

「さて明日が楽しみだのぉ」

 

「明日何かあるのか?」

 

「戴冠式と結婚式を行う。善は急げだ」

 

 

 

 王は狙った獲物は逃がさないと、血走った眼でそう告げた。




面白いと思った人は評価してくれると嬉しいです。続きを書くモチベーションになります

カクヨムでは既に完結しています。すぐに続きが気になる人はぜひ!
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154905761
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。