「ノックしてもしもーし、いるっすかー?」
「意外と礼儀正しいのね。恐れ入ったわ、特別に入れてあげる」
「すっげ馬鹿にされた気分……あっ、これ差し入れっす」
「……箱買いの乾麺?気が効くじゃない」
「代わりつっちゃなんすけど、匿ってくんねすか?」
「居るだけなら構わないわ。邪魔はしないで」
「へいへい、それでいいっすよー」
──気の置けない──
「ずぞぞ……ねー、さっきから机に向かって何してんすかー?」
「見て分からない?空間把握能力の鍛錬」
「見てわかんないから聞いたんだっつの。つか、この部屋……」
「……」
「乙女が住むにはなんつーか、ミスマッチすぎね……?じゃね、例え方がさ、こう……なんだろ、お好み焼きをおかずにパンを食べる、みたいな……?」
「しばかれたいのかしら」
「じゃなくて、なんだこの既視感……あっ、分かった!これあれだ、ホームセンターの一角だ……!」
「目指したもの」
「嘘ッ、マジで!?」
「冗句よ。気が付いたらこうなっていただけ」
「……鉄道模型喫茶とか聞いたことありますけど、ここまで来たら工具喫茶とか出来そうですなー」
「レイアウトが圧倒的に足りないわ。少なくともこの二倍の部屋の規模で四倍の展示が要る筈よ」
「まさかのマジレスにヤマダちゃんびっくり」
「言われたから答えただけ」
「……工具の良さって?」
「お好み焼きの層のように積み重ねられた、先人達の知恵と経験の結晶。だからこその機能美。無骨で飾らないその様は、この上無く合理的で何より美しいものよ」
「……機械?」
「人だからこそよ……よし、出来た!」
「おっ、終わったか……って、何それ。米に……顔?筆で??」
「ふっふーん、これは米丸くんと名付けよう」
「……何処となくマスターに似てるすな」
「そう?気のせいよ」
「はぁー、乙女」
「もう二十歳だけどね」
「あっ、仕舞って誤魔化すんだ」
「さて、次の鍛錬よ」
「脳味噌筋肉かよ……」──
──「くーじゅく」
「はっ……!」
「ひゃーく」
「ふぅっ……!」
「……逆立ちで腕立て伏せするアイドルってどうなの」
「ん……鍛えた分だけ戦場で剣を振れる数とマスターを抱き抱えられる時間が増えるわ。それって素晴らしいことじゃないかしら」
「前半はげどの後半は草」
「不測の事態には備えるものよ。備えあれば嬉しいな」
「……」
「口元を押さえるほどの事じゃないでしょ」
「録音しときゃよかった」
「それは残念ね。もう二度と言わないわ」
「悪かったっす」
「いつもの事でしょ」
「いやヤマダちゃん良い時の方が多いから。基本良い娘だから」
「胸に手を当ててみなさい」
「はーいざんねーん!ジブン胸無いんでー!」
「……」
「おいこら目元に手当てんなこっちをみろ」
「大丈夫、所詮胸なんて脂肪の塊だから……!」
「ゆーてミサキさんも結構いろっぺーしなぁ」
「そう?なら健康美よ。筋肉は裏切らないわ」
「まあ、理屈はわかりますが。土台があればその分増えるんすかね」
「さて、体もあったまった所だしシミュレーターに行くけれど……来る?」
「おっ!いいじゃんいいじゃん!!話がわっかるぅー!!」──
──「あーー!やっぱりいいっすなぁー、おもいっきり敵をぶちのめすのはー!!」
「体の動かし方はどれだけ身に染み込ませてもいい……剣を握ると、やっぱり実感するわね」
「……そいや、動き方。前と変わりました?なんか、前はもっと尖ってたっつーか、あの敵ぐらいならワンテンポ先に踏み出してたっしょ」
「ああ……敵の動き方を把握できてるシミュレーターならそれでいいけどね。実践の敵の動き方も踏まえて、ほんの少し引くようにしてみたの……その方がもっと「観える」、「守れる」と思って。合わせてくれるでしょ?」
「らしい理由。ま、そりゃ言わんでも──」
「あーーーーっっ、ちょっとヤマダ!!こんな所で油売ってたの!!?」
「うげっ、アヤさん……!?おいミサキ、足止めをっ」
「はいはい」
「ちがっ、ジブンじゃなくて!!こら首根っこ掴むな、猫じゃないんだから!!!」
「私が受けた依頼は匿う事だけだから」
「ありがとね、ミサキ。ほらっ、まだ次のライブの振り付け終わってないんだから行くよ!」
「……この恨みはデカいっすよ、ミサキさーん……」
「いつでも来なさいな。残ってる限りはいつでもお湯を沸かしてあげるわ」
「……へっ」
「ふふっ」