修学旅行が終わりしばらくした日、材木座は例によって新作の原稿を手に奉仕部へと向かっていた
「ムフ、今回は一応最後まで書いたからな、八幡も読んでくれるに相違ない!」
そうブツブツいいつつ奉仕部の扉を開く
「たのもう!八幡待たせたな!この剣豪将軍ただ今参上つかまつった・・・ってアレ?」
そこには比企谷も雪ノ下もおらず由比ヶ浜が一人で携帯をいじっているだけだった。
「もー中二驚かせないでよ!ノックしてってゆきのん毎回言ってるじゃん!あとキモイ!」
「フヒ、そ、それは失礼した、あのー八幡は?」
「ヒッキーは小町ちゃんに呼び出されてさっき帰っちゃった、ゆきのんは平塚先生に呼び出されちゃってまだ帰ってこない。あたしは留守番なんだよ!」
と何故かドヤ顔で話す由比ヶ浜
「そういうことならまた来ますので我はこれにて失礼を・・・」
そういい帰ろうとする材木座だったが
「中二ちょっとまって!こっちに来て!」
由比ヶ浜に呼び止められる、女子と二人っきりというシチュエーションに戸惑いながらおずおずと由比ヶ浜の真正面の椅子に座り質問する材木座
「あのーなんでしょう?」
由比ヶ浜はもじもじしながら話し出す
「あのね・・・中二ってヒッキーと仲がいいじゃん?それでね、ヒッキーの好みとか聞いたことないかなって・・・」
「や、奴の好みならマックスコーヒーと妹と戸塚殿ではないか?」
当然女子と目を合わせることができないから明後日の方向を向いて答える材木座
「んもー!そういう意味じゃなくて!その・・・どんな女の子が好みなのかなって・・・」
「な、なぜそのようなことを、ち、直接聞けばよかろう!」
何故こんなことになったのか困惑する材木座
「あのね・・・実は修学旅行で色々あってね、ヒッキーとの仲がおかしなことになっているの、それであたしね、ヒッキー好みの女の子になればきっとヒッキーの態度も変わって、今まで通りいくかなって思ってね、でも今までも色々してるんだけど全然振り向いてくれなくてね・・・もしかして全然タイプじゃないのかなって・・・どうすれば振り向いてくれるのかなって・・・中二ならヒッキーと仲よさそうにしてるからなにか聞いたこと無いかなって思って・・・」
顔を赤らめてもじもじしながら由比ヶ浜は話す。
「わ、我はこのような話は苦手ゆえ、戸塚殿に聞けばよかろう、ではこれにて」
そういって立ち上がろうとするが、由比ヶ浜は話を続ける
「こんなことゆきのんにも相談できなくて・・・もちろんヒッキーに聞いたこともあるんだけどさいちゃんや小町ちゃんが好みだっていっつもはぐらかされて・・・あたしは嫌われてるのかなって思って、ハニトーもつれってってもらえないし・・・」
由比ヶ浜は話しているうちに鼻声になってくる
「修学旅行の時は酷いこといっちゃったし、ヒッキーは優しいから嫌いなあたしにも平等に接してくれてるのかなって思って・・・本当のことなんて聞けなくて・・・だからヒッキー好みの女の子になれば振り向いてくれるのかなって・・・」
ちらっと見ると下を向いた由比ヶ浜が震えてるのが分かる、泣いているのか?
この状況は傍から見ると自分が泣かせているようにしか見えない、こんな現場を雪ノ下に見られたら殺されるのは確定だ
「わ、わかった、わかった、今度聞いておく、それでよかろう、なので泣くのはやめてくれまいか?」
その一言で元気を取り戻す由比ヶ浜
「本当!ありがとう中二!」
案の定目には涙が浮かんでいる
「期待はせぬようにな、ではこれにて失礼」
とりあえず雪ノ下が戻ってこないうちにできるだけ遠くに逃げなければとさっさと奉仕部を後にする
自販機のところまで来てジュースを飲みつつ落ち着いてくると面倒なお願いをされたと気が付く
比企谷の雰囲気ががおかしいことは材木座の目から見ても分かるぐらいだった。
「ふうむ、修学旅行で何かあったのか?よくは知らぬが好みがどうこうということは振った振られたとかそういうことでは無さそうだし」
また、比企谷は奉仕部の二人に対して一定以上の信頼や好意を持っているのは明らかだった
「前に奉仕部は美人ぞろいで羨ましい、普通の男なら骨抜きにされておるだろうと言ったことはあるが、奴は「あいつらとはそんな関係じゃねぇよ、茶化すな」と割と真剣に言ってきたからな、」
この場合、好みはさておき奴が由比ヶ浜に八幡自身が直接どう思っているか言うのが正しいのだろうなと材木座は思う、結果はどうであれ嫌ってはいないということが通じればと思ったからだ、しかしよっぽどのことが無いと直接女子相手に自分がどう思っているかなんて伝えるなんてことは普通はしない、ひねくれている比企谷ならよっぽどだ
「よっぽどの状況がおきればなぁ、でもそんなのまるで想像がつかん」
それからしばらくは廊下で由比ヶ浜に会うたびに比企谷の好みは聞いてくれたか?と質問責めをされる、
一応聞くだけは聞いてみたが、やはり妹やら専業主夫として養ってくれる人だのばかりでてんで話にならない、
冗談半分を装いなんとか由比ヶ浜のことについてどう思っているかと聞いた時には
「あいつとはただの同じ部活仲間でクラスメイトってだけだ」
とそれしか言わない、さすがにそれを直接言うのはあまりにも酷なので由比ヶ浜にはちょっと待ってくれと言う日々
「困った」
自宅の部屋で頭を抱える材木座
「八幡の友人でもある由比ヶ浜殿に涙ながらにお願いされては聞かぬわけにもいかぬし、おそらく八幡の為にもなるはずだがどうすればいいかわからん」
ふと本棚を見る、多数のラノベに紛れて昔読んだ絵本が隅っこの本棚の下段に突っ込まれている
ラノベはナンバーを綺麗にそろえてジャンルごとに分けてるのに対してその辺は乱雑になっている
「そういえばこの辺の整理を全くしてないな」
気分転換に整理でもするかと突っ込まれている一部を取り出す
「ふむ、懐かしいな」
取り出したのは『泣いた赤鬼』
「これ初めて読んだときは我も泣いたな、この青鬼みたいなのを真の親友と言うのであろう」
ぱらぱらとめくって読んでいるとふと解決策を思いつく
「うむ、良い案を想いついたぞ、これならば八幡も本音で言うしかあるまい、我の立場は危うくなるがまあ何とかなるだろ」