昼休み、部室で昼食をとる葉山と材木座、海老名は三浦達と食事をとると言ってこなかった。
「先日はすごかったな、雪ノ下姉は美人だしなんかこわいし大変な傑物だな」
「まあね、出会った人はみんな一目置く、そんな人だよ・・・比企谷を除いてね」
「なんと!八幡はやはり豪の者であったか・・・さすがだな」
「いや、そういうのではなくて、一目で陽乃さんの本性を見抜いたんだよ」
「本性とな?それは八幡達の情事を聞いた後のあの態度のことか?」
「いや、ああいうのではなくて、比企谷の言葉を借りると陽乃さんは仮面をかぶっているんだよ」
「仮面とな?つまり素の性格は全然違うと?」
「まあそうなるね・・・まあ、あの人の素にはあんまり触れたくないけどな」
「・・・よくわからぬが、我が触れることはたぶんあるまい、ところで陽乃殿はあの後どうだったのだ?」
「あの後また雪乃ちゃんの愚痴に付き合わされてね、私も奉仕部の関係に割り込めないかとか言ってたから無理と全力で否定してあげたんだよ、そしたらヤケ酒だとか言って酒を飲み始めてね、遅くまで酒を飲みつつ今度は家族やら大学やら全方向の愚痴が始まって、最後はタクシーに押し込んで無理やり帰らせたよ」
「なにやら葉山殿は陽乃殿の愚痴担当者になっておるな、葉山殿には申し訳ないがそれで八幡達に迷惑が掛からない様にしていただくと助かる」
「そうだね、まあ君もそのうち付き合えよ、君の話題もしてたしね、自分の知ってるアニメオタクとはあまりにも違って面白いから今度連れてこいだって」
「・・・買いかぶりすぎであろう、まあアニメとラノベの話題であればいつでもと伝えておいてくれ」
「ハハハハ・・・伝えとくよ、ところで材木座くん、実は放課後比企谷から呼び出されているんだよ、君と俺」
「・・・とうとう来たか、してなんとする?」
「正直にすべてを話すか・・・」
「うーむ、そこだ、もし正直に話したとして八幡が『ありがとう!お前たちのおかげだ!仲直りしよう!』と言うと思うか?」
「絶対言わないな」
「即答だなおぬし、我もそう思うし、おそらくよりこじれると思う、自分達の力でやったと思ってたものが、実は自分らが嫌悪する人達が裏でこそこそと手伝いをしていたので成功してたなんて知ったら奴の場合自己嫌悪に陥るやもしれん、その結果奉仕部の関係は悪化する可能性があるな、いまは少々仲良くなりすぎてるがその分反動も大きいであろう、もしかすると氷の女王とて例外ではないやもしれぬ。」
「・・・そうだな・・・ハハハ本当に厄介な奴だよ比企谷は!」
「そんな奴に惚れた我らも大概だがな!」
そして放課後、奉仕部へ呼び出される二人、さっそく比企谷から質問が来る
「なあ材木座、お前結衣を襲ったとき何か特別な意図があって襲ったのか?」
「わ、我がそんな思慮深いわけなかろう・・・あのときはすまなかった・・・」
材木座は比企谷と目を合わせずに答える
「そんな・・・だって中二!あたしがヒッキーのこと聞いてってお願いしたからなんでしょ?それにわざわざ廊下の様子見てたじゃん、あれってヒッキーたちが近くにくるのを確認してたんでしょ?」
「由比ヶ浜殿のお願いは関係ない、廊下を見たのは単純にまだ八幡達が来ていないのを確認しただけだ・・・」
「ほらな、結衣、こいつはこういう奴なんだよ」
比企谷は無表情で言い放つ
「中二はそれでいいの?だってヒッキーと仲良しだったじゃん!」
「・・・我からは以上だ・・・」
「次に葉山だが・・・」
結局葉山の方も材木座と同じようなことを話した、雪ノ下はもともと葉山を嫌っていたため深く言及されず話は終わった。
しかしやはり由比ヶ浜は納得しておらず葉山の比企谷を挑発するような台詞について疑問を呈してた
「あまり言いたくないが、一応二人には礼を言っておく、俺と雪乃と結衣の仲をいい方向に持っていくきっかけになったわけだからな、でもお前らがやったことはゆるせねぇ、それとだ、選挙の時やクリスマスイベントの時お前らなんかやったか?雪ノ下さんから妙なこと言われて少し気になったんでな」
二人とも首を振る
「色んな奴に聞いたんだがコミニュティセンター内で不審な男女が出入りしてるのを見たとか、誰かが役に立ったとかなんとか叫んでいたという話も聞いた、あと選挙の時は海老名さんにツイッター操作を依頼したんだが、そもそもあそこまで複雑に使い分ける能力は海老名さんには無いらしい、三浦に頼んで聞き出した、なんでも知り合いにお願いしたとか言ってたそうだ。もしかしてお前らが手を貸したのか?、特に材木座、お前以上にそういうことができるやつを俺はしらない」
「なんのことかさっぱりだな、葉山殿は何か知っておるか?」
「俺もしらないな・・・」
「結衣と雪乃の件の間に屋上でお前ら二人が接触しているのを給水塔の下で昼寝をしていた川崎が目撃していたんだがこれについては?」
「・・・それは結衣のことについての噂についての真偽を確認するために・・・」
「二度もか?かなり真剣に話をしていて材木座が葉山へ怒鳴りつけていた時もあったとか言っていたが?」
「そ、それはあまりにしつこかったからな・・・怒鳴りもするであろう・・・」
比企谷は材木座をじっと見る
「・・・学校内でお前らが楽しそうにつるんで歩いてる所を見たって奴もいる、もしかして何か企んでるのか?」
「いや、葉山殿が最近ラノベに興味があるということで何冊か貸して感想を言い合っていたところをみられたのであろう、そもそも我がこのようなトップカーストのリア充とつるむわけなかろう・・・」
「・・・ふーん、葉山、そうなのか?」
「あ、ああ、グループからも追い出されたし部活が休みだと暇になることも多くてね、たまたま以前に結衣から材木座くんの話を聞いていたからさ・・・」
「・・・そうか・・・俺の考えすぎだったようだな、雪乃からはなにかあるか?」
「私からはとくにないわ、強いて言うなら早く二人を視界から消し去りたいわね」
「まあそういうことだ、呼びつけて悪かったな、すまない」
二人は奉仕部を後にする
「分かってはいたがこれは心にくるな・・・」
「そうだな・・・」
「しかし比企谷はもっと感情的に俺らを糾弾するのかと思ったが、色々証拠を集めてたんだな」
「八幡は暗愚ではない、もしかすると気が付いているのかもしれぬ、しかしそれを言葉に出してしまうと後に引けなくなる、その辺は奴もわかっていると信じたい」
そう言いながら二人で廊下を歩いていると後ろから声がかかる
「二人ともまってよ!」
由比ヶ浜が立っていた
「なんで本当のこと言ってくれないの?こんなのおかしいよ!」
葉山が由比ヶ浜の方を振り返り
「結衣、以前俺はみんな仲良くできる方法を模索していた、でもそれは無理なことだと比企谷から教わった、それでも俺はあがいて探し続けたが俺には見つけられなかった、きっと俺たちは離れていくようにできてるのかもしれない、でも見えない絆、切っても切れない縁みたいな物はあると信じたい、そしてそれを実感できるのは今ではないと思う、材木座くんから見せられたアニメの言葉を借りるとワインのように熟成に時間を要する人間関係もあるんだよ。きっとな」
「・・・よくわからないよ・・・二人ともヒッキーのこと嫌いなの?・・・」
材木座は由比ヶ浜へ近づきかがみこみ目線を合わせる。
「・・・由比ヶ浜殿は今幸せか?」
「え?中二何?突然、当然ジャン!ヒッキーともゆきのんとも本音で話し合えて仲良しで・・・最高だよ!」
「その幸せが我らの一言で終わるとしたらどうする?」
「・・・え?」
「世の中には知らなかった方がよかった、知っていても言葉にしなかった方がよかったということも多分にある」
「どういうこと?」
「我らは八幡の女を寝とろうとした外道、奴もそう理解しているはずだ。それでいいであろう、由比ヶ浜殿も今の幸せな時間を楽しむがよい」
「・・・・・・・」
由比ヶ浜は何も言えない
「あーそれと、貴殿らは声が大きい、部室内でナニをやっているのかはしらんが退学にならない程度にほどほどにな?」
材木座はそうニヤっとしながら言う
「中二のバカー!!!」
由比ヶ浜は顔を真っ赤に染めると奉仕部の方へ走り去った。
「これでよかったのかな・・・」
「わからぬ、もっといい選択があったかもしれぬが、我には今の選択しか思いつかぬのでな、葉山殿、道連れにしてしまってすまぬな・・・」
「元々俺が道連れにしたようなもんだろ、屋上で会った後さっさと君の誤解だけ解いておけばよかったんだ」
「だからそれは・・・ふん、まあよいわ!」
「そう言えば材木座くん、君女性は苦手では無かったか?さっき結衣と目線を合わせて顔を見ながら話してたような気がするんだが」
「フム、なんと言えばいいのかの、女体の神秘を体感したからかのぅ」
「またなんかのエロゲや薄い本のことかい?それとも今流行りのVRって奴?」
「VR?ふっ、甘いな葉山殿、今の我は将来義体化したとしても個別の11人には選ばれない存在になったということよ!」
「え?それってつまり・・・」
「さ、さあ今頃海老名殿がコーヒーを淹れて我らを待ちわびてるぞ!我のゴーストがそうささやいておる!、行くぞ!葉山殿!」
「ええ?ちょっと!・・・ってかコーヒー淹れたってメールが来てるじゃないか、何がゴーストなんだか、やれやれ、ネットは広大だな、材木座くん」
ロングコートを翻し元気に前を歩く材木座に肩をすくめて返事をする葉山
見た目は正反対だが思いは一緒の嫌われ者達は寒々とした廊下を部室に向けて歩いて行くのだった。