次の日の放課後、材木座は由比ヶ浜が比企谷と一緒に部室へ向かっているのを見た。
二人とも笑顔で歩いている。比企谷から感じていた変な雰囲気も感じられない。
「よかったのう、八幡と由比ヶ浜殿は仲が進展したようだ、でも我の書いたラノベを読んでくれる人いなくなってしまったな」
計画を考えた段階では比企谷から本音を引き出すための演技でしたと言えば誤解は解けると楽観していたが、とてもそんな雰囲気にはならず、さすがに女子の体をまさぐって嘘でしたは無理がある上に学校から追い出される可能性を考えると前のように一人になるしかなかった。
しかし噂というものは防ぐことができず、徐々に噂が広がっていく、由比ヶ浜が自分のグループの人にこっそり話してるのを誰かが盗み聞きしたらしく、
「由比ヶ浜が部室に一人きりの時に「ちゅうに」という巨漢の男が襲いかかり、襲われているところに比企谷が颯爽と現れてボコボコにして助けてくれた」
という話が材木座のクラスまで広がっていた。
「ちゅうに」というのが誰かははっきりしなかったが、由比ヶ浜が材木座のことを「ちゅうに」と呼んでいるのを何人かが目撃していた為、あいつじゃないか?という噂が広がり学年中から今まで以上に避けられるようになった。
余談だが逆に比企谷は由比ヶ浜をピンチから救った英雄として学年中の男女から注目されるようになる。
その為文化祭や体育祭等で広まった悪評も、当時の細かい事情が伝わり、あの場合ああするしかなかったという話が広まって悪評が一気に反転し良い意味で有名人となっていた。
昼休み、クラスに居場所がなくなった材木座は屋上で食事をとっていた。
「八幡の方は株が爆上げしているようだが我の方は暴落してしまった、いじめとまではいかないまでもこうも露骨に避けられるのはかなりくるものがあるな」
購買で買ったパンをもそもそと頬張る
「でも我にはゲーセン仲間もおるし遊戯部の連中もなんだかんだといって構ってくれるしな、問題ないわ!」
材木座は立ち上がり
「ふん、高校なぞ一時の仮住まいのような物、我は大きく羽ばたくのだ!」
そう言うと気分転換に叫びたくなる
「ゴルディオンハンマー!!!!光にぃぃぃなれぇぇぇ!!!!」
大声で叫びハンマーをたたきつける動作をしているところで後ろから声がかかる
「材木座くんお取込み中すまないけどちょっといいかな?」
材木座が振り向くとそこに立ってるのはイケメンの葉山隼人
「いつからみてました?」
「高校なぞ一時の仮住まいと言うあたりかな?」
葉山は苦笑いしながら答える
「葉山殿が我に何か御用か?」
材木座は恥ずかしくなり顔を赤くなりながら話しかける。
「うん、今噂になっていることについて材木座くんに確認したいことがあってね」
とたんに材木座は真っ青になる、とうとうトップカーストに目をつけられてしまった。
そういえば由比ヶ浜は葉山のグループ、当然ただでは済まされないだろう、今までは避けられたり無視されたりするぐらいだったが、これからは具体的ないじめにシフトされるのだろうか?どうしようかとぐるぐると考え込んでしまう。
真っ青になって固まっている材木座に向かって葉山が困ったように話しかける
「材木座くん、勘違いしてるかもしれないが、君を糾弾しに来たわけじゃない、噂の真相が聞きたいだけなんだ」
「真相?どういうことだ?」
「結衣から話は聞いたが、俺としては君のやったことが不自然で腑に落ちない、比企谷にも話は聞いたが君のことになるとあいつらしくなく感情的になって話にならないんだよ」
「そんなのは噂のままでよかろう、葉山殿が気にすることではないし、そもそもそのようなことを知ってどうする?」
「俺は自分だけが犠牲になるようなことをして物事を解決するのが気に食わないし、百歩譲ってそれしか解決の手段がなかったとしても、犠牲になった当人に理解者が一人もいないっていう状況がもっと許せなくてね」
「それでは葉山殿が我の理解者になってくれると?」
「話次第ではね」
「・・・信じていただけるかどうかはわからぬが話の始まりはこうだ」
と由比ヶ浜から涙ながらに比企谷の好みを知りたいという話をされたところから始まる、それから比企谷は本音を言わず困り果てたところで偶然絵本の泣いた赤鬼を読んでそれをヒントに自分が悪者になり、比企谷の口から直接由比ヶ浜へ好意があることを伝えるように仕向けたことを話した。
「すぐ誤解を解くつもりだったが由比ヶ浜殿にやりすぎてしまってこれで冗談でしたとは言えなくてな」
「やっぱりそうか・・・比企谷もそうだがなんで君らはすぐ自分を犠牲にするんだ?もっといい方法があったかもしれないだろ、それになんでそこまでしようとするんだ?」
「我は奴のことを親友と思っている、親友の為に体を張るのは当然であろう、それに奴がもそうだが我も不器用でな、貴殿のようになんでも器用にこなせるわけではない、逆に聞くがこの場合我はどうすればよかったのだ?教えてほしい」
「それは・・・ちゃんと当人達同士できちんと話し合いをしてだ・・・」
その答えに材木座はイラッとくる
「ヌシはアホウなのか?話し合いで本音を言い合える仲なら初めから由比ヶ浜殿は泣きながら我のような輩に相談せぬわ!大体ヌシは同じグループなのであろう!ヌシが察して相談にのるべきだろ!そうすれば我だって悩まずに済んだのだ!このアホウ!」
とここまでまくし立て言い過ぎたと思いハッとなり深々と頭を下げる材木座
「あ、あすみません言いすぎました」
「・・・いや謝るのはこっちの方だよ、こちらこそごめん、いままで散々言われてたのにな、だからこうして聞きに来てたのに、アホなこと言ってすまない、どうか許してほしい」
葉山も深々と頭を下げる、材木座は今まで人に頭を下げられたことがほとんどなかった為オロオロしてしまい
「あ、頭をあげていただけぬか?我も言い過ぎたところもあるし、痛み分けってことで・・・」
よくわからないことを口走る
「結衣にも話をしておくよ、君ばかりが悪者になっているのは正直気分が悪いからね」
そう言って葉山は踵をかえそうとしたところで
「ちょっと待っていただけぬか」
材木座は呼び止める
「今の話はまごうこと無き真実ではあるが誰にも話をしないでほしいのだ」
「何故だ?比企谷と仲を戻したいんじゃないのか?」
「戻したい、だが、例えば貴殿のグループの一人が獄炎の女王の体をべたべたと触って貴殿をマジ切れさせ、その後冗談でしたーまた以前のように仲良くしてねと言われた時貴殿や獄炎の女王は以前と全く同じようにふるまえるか?」
「・・・無理だな」
「であろう、だから言わないでいただけぬか?それに貴殿は我の理解者になってくれるのであろう?トップカーストの頂点が理解者になってくれるのだからこれほど心強いことは無い!」
「君は俺を買いかぶりすぎだよ・・・でも噂を鎮静化させるように働きかけてみるよ、これぐらいはかまわないだろ?」
「葉山殿、恩に着る」
それからしばらくしてどうやったのかわからないが噂は沈静化していった。
材木座の周囲も以前とまではいかないまでも露骨に無視されることも少なったが、やはり女子を襲ったのかもしれない要注意人物として女子からは距離を置かれており、嫌われ者というレッテルはなかなか剥がれることは無かった。