実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
俺の名前は界外帝人。15歳。本日から高校1年生。AB型。魚座。
家族構成は俺と母親の2人家族。母親の年収がいいことから特に不自由もなく暮らしてきた。
スポーツ経験は非常に多いと自負している。小学生の時はサッカー、バスケット、合気道。中学生の時はバレー、ロードレース、卓球、水泳、剣道だ。
全てアニメや漫画の影響である。スポーツに限らず好きな作品の主人公に憧れては彼らをトレースしてきた。結果、キャラが安定せず友人たちは徐々に俺の周りからいなくなってしまった。
そりゃそうだ。昨日までバレー部の王様キャラだった男子がいきなり省エネ主義のやれやれ系男子になっているのだ。友人がいなくなるのは当然の結果である。
俺が自身の過ちに気づいたのは中学3年の夏休み。完全に手遅れだった。
俺は誓った。高校では創作物のキャラをトレースせず、なるべく素の自分で過ごしていくことを。そして親しい友人を作り、あわよくば可愛い彼女も作って、楽しい学校生活を送ることを目標に掲げたのだ。
♢♢♢♢♢♢♢
春アニメが放送し始める4月。入学式に向かう電車の中で俺は美少女に声をかけられていた。
「その制服、君も高度育成高校の生徒だよね?」
「そうだけど。……もしかしてそっちも?」
どうやらこの美少女は俺が着ている嫌でも目立つ制服を見て声をかけてきたようだ。
「うん。そうだよ。まさか通学途中で同級生に会えるなんて思わなかったよ」
「俺も」
「私の名前は一之瀬帆波。君の名前は?」
「俺は界外帝人。よろしく」
「うん、よろしくね。界外くん」
これが、俺と一之瀬帆波の出会いであった。
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「へぇ。界外くんって東中だったんだ。私は北中だよ」
「北中か。同じ小学校の元友達もいってたな」
「元友達?」
「いや、何でもない」
俺と一之瀬は、電車に揺られながら地元トークに花を咲かせていた。彼女も同じ千葉市内に住んでおり、最寄り駅も一緒だった。
ていうか北中にこんな美少女がいたなんて。俺の家がもう少し北中側にあれば……。悔やんでも仕方ないか。今は一之瀬と一緒の高校に通えることに喜びを感じよう。
「あ、そうだ。連絡先交換しない?」
「いいぞ」
するに決まってるじゃないですか。中学時代、挨拶以外に1人の女子としか会話をしていない俺がこんな美少女の連絡先交換を断る理由がない。
しかし、一之瀬はコミュ力が高いな。俺も見習いたいけど無理だろうな……。
お互いの連絡先を交換し、楽しい時間を過ごしていると、あっという間に降車駅に着いてしまった。もう2、3時間着かなくてもよかったのに。千葉から東京だし仕方ないけど。
「学校までは徒歩で15分位かかるようだけど、どうする?」
「うーん、15分位なら歩いていこっか」
「だな。バス混んでそうだし」
そして15分後。無事、俺と一之瀬は高度育成高等学校に辿り着いた。
「うわ、やっぱバス凄い混んでるね」
「ああ。乗らなくて正解だった。あんな人多いの無理」
「にゃはは。私もあれは勘弁かなー。それよりクラス分けってどこでわかるんだろ?」
「校門にはないから玄関あたりに張り出されてるんじゃないか」
「そっか。同じクラスだといいね」
俺も同じこと思ってる。ていうか一之瀬の100倍は強く思ってる。これで違うクラスだったら生きていけないかもしれない。
もし一之瀬と同じクラスだったら俺、神様信じる。
♢♢♢♢♢♢♢
10分後。俺はふらつきながら、自分が配属されたD組の教室に到着した。俺は神様を信じない。この世に神はいなかったのだ。
教室の中に入ると、既に半数以上の生徒がいるようだ。ぐるりと教室を見渡し、俺は自分のネームプレートが置かれた席へと向かった。
なんだこの教室は。
監視カメラが多数設置されてることに俺は気づいた。教室内に監視カメラがあるなんてさすが高度育成高校である。さすこう。
恐らく授業態度のチェックやカンニング防止に使うのだろう。どうやら、からかい上手の女子が隣にいても相手に出来なさそうだ。
さてどうしようか。クラスメイトを見ると、1人で資料を見たり、コミュ力が高いのか世間話をしていたりする。
1人だけ茶髪のイケメンが俺と同じようにクラスメイトの様子を伺っているようだ。
よし、声をかける前にトイレに行こう。ちなみに声をかけることをためらったわけではない。入学式中に尿意を催さない為だ。
すっきりして教室に戻ってくると、生徒がどんどん登校してきたようで密集していた。
「先を越された……!」
「入学早々随分と重たいため息ね」
先ほど、視線を泳がせていたイケメンが隣の席の黒髪ロングの美少女と楽しく会話をしていた。
声をかけづらくなってしまった。トイレに行かないで声をかけておけばよかった……。
ていうかこの子も凄い美少女だな。一之瀬とはタイプが違うクール系といえばいいのだろうか。
改めて教室内を見渡すと一之瀬や黒髪ロング程ではないにしても可愛い子ばかりである。女子は顔で選ばれてるのではないだろうかと疑ってしまうレベルである。
でも気が強そうな子が多いな。……仲良くなるのは無理そう。
まあ、俺には一之瀬がいるから問題ない。クラスの女子と会話がなくても問題はない。俺はそう自分に言い聞かせ、自分の席へ戻っていった。
それから数分ほど経って、始業を告げるチャイムが鳴った。
ほぼ同時に、スーツを来た巨乳の女性が教室へと入って来る。
「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している」
おいおい担任まで美女かよ。どこのIS学園ですか。ていうか茶柱っておめでたい名字だな。
「この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく」
クラス替えがない。つまり一之瀬と一緒のクラスになることはないってことか……。
この瞬間、2年になったら一之瀬と同じクラスになれるのではないかという俺の淡い期待は吹き飛んだ。
絶望した! クラス替えがないことに絶望した!
「入学式の前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう」
俺が絶望している間にも茶柱先生の説明は続いていく。
Sシステムだのポイントだの色々説明してくれているが、この状態では頭に入ってこない。
資料に書いてあるようだし後で確認すればいいだろう。監視カメラのことも今度聞けばいいや。
茶柱先生は説明を終えるとさっさと教室から出て行った。
俺も茶柱先生の後をつけるように教室から出てトイレへと向かう。
ちなみに廊下を歩いていれば一之瀬と会えるかもしれないと思ったわけではない。あくまでトイレが目的である。
教室に戻ろうとするとクラスメイト達が自己紹介をしていた。
えー、ものすごく入りづらいんですけど。
爽やかイケメンが声かけしたのか、彼が進行して順番に自己紹介をしている。
くそ、タイミングが悪いな。教室に残っていれば俺も空気に逆らわないで参加出来たのに!
どうやら友人を作る道は険しいようだ。
♢♢♢♢♢♢♢
偉い人のお言葉を頂戴し、無事に入学式が終了した。
そして昼前。俺たちは一通り敷地内の説明を受けた後に解散となった。
俺は寮に行く前にコンビニやスーパーに寄ろうと考えていた。
もちろん1人で。
「あ、界外くんだ」
コンビニでの買い物を済ませ、スーパーの中に入ると俺の心の拠り所である一之瀬と鉢合わせた。
まさかこんなところで再会するとは。これは運命なのかもしれない。
「よう」
「やほー。界外くんも買い物?」
「ああ。寮に行く前に色々見て回ろうと思って」
「そうなんだ。私も一緒に回っていいかな?」
「いいけどクラスメイトと遊んだりしないのか?」
「うん。誘われたけど施設を見て回りたいから断ったんだよね」
意外だな。一之瀬のことだからクラスメイトと初日から交流を深めていると思っていた。
「そうなのか。それじゃ色々見て回ってみるか」
「うん」
俺と一之瀬は店内をうろついていた。
商品の値段を見る限り、物価は千葉とあまり変わらないようだ。賞味期限が近いのか無料の食材まで売っている。なんとも学生に優しいお店である。
「コンビニも無料のもの売ってたよな」
「だね。月に10万ポイントも貰えるのにねー」
「使いすぎた生徒への救済措置なのかもしれない。あとは俺の推測なんだが」
「なになに?」
「教室に監視カメラが設置されてただろ」
「え、嘘?」
どうやら一之瀬は監視カメラが設置されていることに気づいていなかったようだ。
もちろんB組の教室は確認していないが、D組だけが設置されている可能性は低いだろう。
「D組には多数設置されてた。多分他のクラスも設置されてると思う」
「全然気づかなかったよ……」
普通は気づかないだろう。俺が目ざとすぎるだけだ。
「恐らく監視カメラで普段の授業態度をチェックするんじゃないかと思ってる」
「なるほどね」
「それで授業態度が悪い生徒に毎月支給されるポイントが減額されるんじゃないかと考えている」
「ポイントが減額?」
「ああ。資料を見ると毎月ポイントは支給されるけど、10万ポイントが毎月支給されるとは書いてなかっただろ?」
「ちょっと待って。資料見てみるから」
そういうと一之瀬は資料を鞄から取り出し見始めた。
真面目な顔も可愛い。こんな美少女と一緒に買い物なんて俺の高校生活は入学初日でピークを迎えたのかもしれない。
「……ホントだ。書いてないや」
「あくまで俺の推測だけどな」
「うん。でも可能性は高いと思う。教えてくれてありがとね!」
「いや別に」
満面の笑みでお礼を言う一之瀬。
こんな笑顔が見れるなんて某省エネ主義の主人公を真似ていた時期があったおかげだな。
あれのおかげで俺の推理力は高まったと思う。どうでもいいことばかり推理してたけど。
一之瀬との放課後デートを終え、寮へ帰り着いた俺は鼻歌交じりに荷物の荷解きをしていた。
なぜ鼻歌を歌っているかというと、一之瀬と別れる際に彼女から非常に魅力的なお誘いがあったからだ。
毎日一緒に通学しないか、というお誘いだった。
了承後に理由を聞いてみたところ、他クラスになってしまった俺と交流を深めたいとのこと。
お互いクラスメイトとの付き合いが忙しくなり、今日のように2人で遊ぶ機会を設けることが難しいのでは、と一之瀬は危惧したようだ。
俺がクラスメイトとの付き合いで忙しくなることはあるのだろうか……。
まあ、いい。とにかく明日から一之瀬と毎日一緒に登校出来るのだ。
俺は一之瀬との登校に胸を躍らせながら荷解きに励んだ。
一之瀬を勝手に千葉県民にしてしまいました