実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
ガンダムはXとデスサイズヘルが好きです
6月某日。
梅雨に入り、連日雨が続いている。
雨は嫌いだ。じめじめするし、湿気も多い。
そして何より洗濯物が溜まる!
実家にいた時は乾燥機があったからよかったけど、寮備え付けの洗濯機には乾燥機能がついていない。つまり部屋干しをしなければならない。余計湿気が多くなる。なんという悪循環。
「梅雨よ、滅びろ」
「何物騒なこと言ってるの?」
どうやら独り言が隣の席の松下に聞こえてしまったようだ。
「梅雨嫌いなんだよ」
「まあ、好きな人は少ないだろうね。でも滅びろは言いすぎでしょ」
松下がクスッと笑う。
「それより次は移動教室でしょ。そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ?」
「そうだな」
教室を出て、松下と一緒に理科室に向かう。
「そういえば昨日のナカイの○見た?」
「見てない。録画したから今日見る」
「なんか違う番組見てたの?」
「いや、11時にはいつも寝てるから」
「早くない?」
え? 11時に寝るのって早いの?
9時なら早いと思うけど……。
「べ、別に早くないだろ。それに夜更かしすると肌荒れちゃうし」
「女子か」
松下が呆れ顔で言う。
いや、一之瀬に肌荒れした顔見せるの嫌だし。
「睡眠不足は美容の敵だぞ」
「……界外くんって女子力高い系男子?」
女子力高い系男子とは?
家庭的な男子という意味だろうか。
「女子力はよくわからないけど、家事は好きだぞ」
「料理も好きだよね。毎日お弁当作ってきてるくらいだし」
「ああ。基本外食もしないな」
「そっかぁ。……優良物件なんだけどなぁ……」
いきなり不動産の話になった。
女子は何を考えているのかよくわからない。
「あの2人がいなければ手を出してたのに」
松下はさっきから何を言ってるんだろう。
あの2人ってどの2人だよ。
松下がぶつぶつ言ってる間に目的地に辿り着く。
理科室に着いても松下は一心に考え込んでるようだったので、俺は彼女を置いて自席へ向かった。
♢♢♢♢♢♢♢
「界外くんって生徒会に興味ある?」
学校へ向かう道中、一之瀬が聞いてきた。
今日もあいにくの雨。2人とも傘をさしているので、いつもより一之瀬との距離が遠い。
やっぱり梅雨は嫌いだ。
それより一之瀬は何で生徒会のことなんか聞いてきたんだ?
……ははーん、わかったぞ。ヒナまつりのネタだな。
一之瀬からアニメネタを振ってくるとは。
これも仲良くなった証拠かも。
「うーん、うちの学校は給食がないから生徒会長になる予定はないな」
「なんで給食!?」
「いや、生徒会長になったら給食改善を公約に掲げないとだろ?」
「もう! 真面目に答えてよー!」
一之瀬に怒られてしまった。
ネタ振りじゃなかったの?
ジト目で俺を睨んでくる。このまま睨んでいてほしいけど、早く答えないとまた怒られそうなので真面目に答える。
「わ、悪い。生徒会には興味ないぞ」
「……そっか。教えてくれてありがと」
「一之瀬は生徒会に興味あるのか?」
「少しだけ」
「……生徒会に入りたいと思ってたり?」
もし一之瀬が生徒会に入ってしまったら、彼女と遊べる時間が減ってしまう。
「ううん。どんなところか興味あるだけだよ」
一之瀬の答えにホッとする。
念のため忠告もしておこう。
「まあ、生徒会は女子にも平気で重たい物運ばせたりするしな」
「そうなんだ……」
そうなんだよ。他の役員共は橘先輩を何だと思ってるんだ。
「だからあまりお勧めはしないな」
「うん。入らないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとね」
一之瀬が笑みを浮かべながらお礼を言う。
この笑顔守りたい。
「そういえばDクラスは学級委員とか作ったりしないの?」
「しないな。リーダー的存在のやつはいるけど」
Bクラスは学級委員を作っており、一之瀬は委員長を務めている。
リーダー気質のある一之瀬にぴったりだろう。
ちなみにクラスメイトの一部からは、一之瀬委員長と呼ばれているようだ。
「平田くんのことだよね?」
「ああ。平田のこと知ってるのか」
「うん。界外くんと同じで結構有名人だよ」
さすがイケメン平田。
てか俺が有名人って、学年主席なだけでそんなに有名になるもんかね。
「それにイケメンランキングで2位だしね」
「イケメンランキング?」
「女子の間で男子の色んなランキングを作ってるんだよ」
女子もうちのクラスの男子みたいなことしてるのか。
「ちなみに1位って誰? 綾小路?」
「Aクラスの里中くんだよ。綾小路くんは5位だね」
綾小路は5位か。俺の中では1位なんだけど。
「ちなみに界外くんは6位だよ」
6位。つまり永遠のシックスマン。
冗談はさておき、意外と高い順位で驚いた。
つまり何人かは俺のことをイケメンと思ってくれてる女子がいるってことだよな。
「どう? 嬉しい?」
「そうだな。でも実感があまりわかないんだよなぁ」
「掲示板で投票されたものだからね」
「投票ねぇ」
「私は界外くんに投票したよ」
「え」
それってつまり……一之瀬は俺のことをイケメンと思ってくれてるってことだよな。
やばい、超嬉しいんですけど。
もしかしてこの雨は、神様が俺を祝福してくれてるんじゃないだろうか。
確か挙式中の雨は、神様の祝福だと言われていると聞いたことがあるし、似たようなものかな。
母さん父さんありがとう。
俺は初めて自分の顔を好きになったよ。
おっと、両親だけじゃなく一之瀬にもお礼を言わねば。
「あ、ありがとな」
「ううん。ちなみに男子は女子のランキングって作ってたりしないのかな?」
「い、いや、どうだろうな……」
言えない。うちのクラスの男子がおっぱい大きい子ランキングを作ってただなんて……。
あのランキングはDクラス限定だったが、1年生に範囲を広めれば間違いなく一之瀬は上位に入るだろう。
俺も抑制力が優れていなければ、ずっと胸ばかり見ていたと思う。
それだけ一之瀬の胸はやばい。だって2つもボタン留めてるのにブレザーを思いっきり押し出してるからねその胸。
いつか一之瀬の胸にビルドダイブしたい。
「界外くん?」
「んぁ?」
「大丈夫? なんかぼーっとしてたけど」
「だ、大丈夫大丈夫! 考え事してただけだ!」
危ない危ない。一之瀬の胸のせいでトリップしそうになった。
「考え事って?」
一之瀬のおっぱいのことを考えてました。
うん。完全に嫌われるな。
とりあえず適当なこと言って誤魔化さなければ。
「え、えっと……この歪んだ世界で自分は何が出来るのか自問自答してて……」
「え」
駄目だこりゃ。
今日の俺はポンコツすぎる。
エトさん、これ以上馬鹿なことを言う前に俺の口を縫って塞いでおくれ。
「本当に大丈夫? 具合悪いなら保健室付き合うよ?」
一之瀬が不安そうな顔をしている。
そんな顔で見ないでくれ。罪悪感で心が押しつぶされそうになる。
「大丈夫だ。アニメ見すぎて寝不足なだけだから」
もっともらしい嘘をつく。
本当は一之瀬に嘘なんてつきたくないけど、これ以上心配させるわけにはいかない。
「そう?」
「そうそう。ほら、昨日の東京喰種で金木くんが覚醒したから興奮しちゃってさ」
「あー、金木くんカッコいいもんね」
「だろ。何回も見直してたんだよ」
ふぅ。なんとか誤魔化せた。
それより一之瀬は金木くんが好きなのか。
中学時代に金木くんの真似して白髪になった時の写真見せてみようかな。それとベッドの下に隠してある眼帯マスクも見せたら喜ぶかな。
……いや、やめておこう。引かれるに決まっている。中学の時に散々痛い目に合ってきたじゃないか。
もし一之瀬に引かれたら死んでしまう。それだけは絶対だめだ。
「そっかそっか。でもアニメが面白いのは仕方ないけど、あんまり夜更かししちゃ駄目だよ?」
「わかった」
夜更かしなんてまったくしてないんだけどね。
とりあえず何とか乗り切った。
明日はいつもの俺でいこう。
クールにいこうじゃないか。
♢♢♢♢♢♢♢
翌朝。
いつも通り寮の玄関ホールで一之瀬と待ち合わせて、学校へ向かおうとしたところ、彼女がお願い事をしてきた。
「実は学校に傘置き忘れちゃって」
「……」
「傘、入れてくれないかな?」
まさかの相合傘である。
もちろん一之瀬を雨に濡らせて学校に向かわせるわけにはいかないので了承するしかない。
「いいぞ」
「ありがとー」
玄関を出て傘を開き、一之瀬が入ってくる。
「界外くんがいてよかったよー」
「そ、そっか。まあ、昨日は帰り雨止んでたから学校に忘れるのも仕方ないな」
「だよね。帰る時、すっかり傘の存在忘れちゃって」
相合傘。
母親以外の女性と一緒の傘に入るのは、人生で初めてのことだ。
大きい傘ではないので、一之瀬はぴったりと体をくっつけてくる。
近い。近すぎる。胸も腕にくっついて……。
腕に伝わる胸の触感が半端じゃない。微かに感じるというレベルじゃない。
一之瀬は俺の腕に胸が当たっていることに気づいていないようだ。
距離が近すぎるせいだろう。一之瀬の甘い匂いが漂ってくる。
「昨日はちゃんと寝た?」
「あ、ああ。11時には寝たぞ」
「そっかー。偉い偉い」
一之瀬はそう言うと、俺の頭を撫でてきた。
体の向きを変えたことにより、よりダイレクトに俺の腕に一之瀬の胸の触感が伝わってくる。
これはやばい。本当にやばい。
「あ、歩きづらいんだけど……」
「あ、ごめんごめん」
危なかった。
もう少しで抑制が崩壊するところだった。
崩れゆく抑制。僕を壊さないで。
「あ、私も昨日東京喰種見たよ」
「どうだった?」
「闇カネキって言うんだっけ? かっこよかったよー」
「10月から2期やるから楽しみだな」
「うん。原作のどこまでやるんだろうねー」
アニメの話になったおかげで、大分平常心を取り戻すことが出来た。
やっぱアニメの力は偉大だな。
「わからないな。前みたいにオリジナルにならなければいいけど」
「だね。クラスの子も同じこと言ってたよ」
「結構見てる子いるんだな」
「女子に人気ある漫画だからねー」
俺は一之瀬と話しながら、腕に胸が当たらないように少しずつ彼女との距離を取る。
右半身が少し濡れてしまうが仕方ないだろう。
「界外くん、濡れちゃうよ」
「え」
一之瀬は俺の左腕を掴み、強引に引き寄せる。
またもや腕に胸の触感が伝わってくる。
「駄目だよ。風邪引いたらどうするの?」
「え、えっと……」
言い訳しようとするが、一之瀬の目を見て言葉を飲み込む。
有無を言わせない力強い目だ。
……これはもう諦めるしかない。
彼女の胸を触感を喜んで受け入れようじゃないか。
「だな。気を付けるよ」
「うん」
気のせいだろうか。
学校に近づくにつれて、一之瀬との密着度が高くなってる気がする。
まあ、雨風が強くなってるせいだろう。
開き直って一之瀬の胸の触感と甘い香りを味わっていると、大きな雷鳴が轟いた。
「きゃっ!」
直後、一之瀬が腕に抱きついてきた。
腕が完全に彼女の豊満な胸に挟まれている。
心がオーバーヒートしそうになるが、一之瀬の姿を見てすぐにクールダウンした。
「雷、苦手なのか?」
「……うん」
一之瀬が震えながら頷く。
彼女の様子を伺っていると、再度耳をつんざくような大きな雷鳴が轟く。
「ひっ」
一之瀬は小さい悲鳴を上げ、腕に抱きつく力を上げた。
こんなに怯える彼女を見るのは初めてだ。
「ご、ごめんね……」
「謝らなくていい。落ち着くまでこのままでいようか?」
「……お願いします」
5分ほど経っただろうか。
一之瀬がゆっくりと抱き付いた腕から離れる。
「ありがとう。もう大丈夫」
「どういたしまして」
「にゃはは。界外くんに情けないところ見せちゃったね」
「別に情けないとは思ってないけど」
雷が苦手な人は沢山いるからね。
「そ、そう? でもBクラスの子には言わないでおいてね?」
「一之瀬以外にBクラスに知り合いはいないから大丈夫だぞ」
「あ、そうだったね」
あはは、と一之瀬が笑う。
泣き顔もいいけど、やはり彼女は笑顔が一番似合う。
「雷もおさまったことだし、そろそろ行くか」
「うん!」
またも一之瀬がぴったりと体をくっつけてくる。
もういいさ。役得だ。
学校に着くまで、しっかりと一之瀬の胸の触感を味わわせて頂こう。
♢♢♢♢♢♢♢
昼休み。
今日は珍しく綾小路とのランチタイムだ。
「今日は焼きそばパンか」
「ああ。……やらないぞ?」
「いらないから」
そんな物欲しそうな目をしてたんだろうか。
「……左腕、怪我でもしたのか?」
パンをかじりながら綾小路が言う。
「え」
「動きがぎこちないぞ」
ぎこちないってなんでわかるんだ。
確かに一之瀬の胸の触感が残ってるせいで変な感じがするけど。
堀北並に観察力鋭いなおい。
「まあ、ちょっとあってな」
「そうか」
「そ、それより今日も雨だな」
「そうだな」
「早く梅雨明けてほしいよ」
「界外は雨が嫌いか?」
「嫌いだな。ただ……」
「ただ?」
「たまには悪くないかもしれない」
一之瀬は天然なのかわざとやってるのかいずれわかります