実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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今期はぐらんぶるが楽しみです


11話 ニセコイ

 翌日の教室。

 俺は始業前に堀北、綾小路、平田の3人にBクラスから協力の申し出があったことを報告していた。

 

「もちろんオッケーだよ。Bクラスが協力してくれるなんて心強いよ!」

 

 平田が興奮気味に言う。

 

「ま、お互い利害は一致しているからな」

「敵の敵は味方ということね」

「そういうことだ」

 

 さすが堀北。理解が早くて助かる。

 

「界外。なんで急にお前も協力する気になったんだ?」

 

 綾小路が答えたくない質問をしてきた。

 一之瀬の上目遣いがやばかったからです、とは言えない。

 

「……まあ、堀北も動いてたようだし。俺も何かやらないといけないと思ってだな……」

「本当かしら?」

 

 堀北がジト目で俺を見てくる。

 

「理由はどうであれ界外くんが協力してくれるのは助かるよ。一緒に頑張ろう」

「ああ。一緒にCクラスの奴らを退学に追い込んでやろうぜ」

「そこまでする気はないよ!?」

 

 平田は思ったよりツッコミが出来る人間のようだ。

 それより堀北の粘りつくような視線が怖い。遠くからは須藤が俺を睨んでいる。

 こいつら、視線で俺を殺す気なの?

 いたたまれなくなった俺はトイレに逃げ込むのであった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 放課後。

 俺は玄関前で一之瀬と待ち合わせをしていた。

 須藤の件とは別に俺に相談事があるらしい。

 相談事とはいえ、2日連続の一之瀬との放課後ウキウキタイムである。

 心がぴょんぴょんしてしまう。

 

「界外くん、こっちこっち」

 

 俺が心の中で馬鹿なことを言っていると一之瀬が声をかけてきた。

 

「おっす」

「やほー。早速で悪いんだけどついてきてくれる?」

 

 靴を履き、俺は一之瀬に導かれるまま学校の裏側へ向かう。

 辿り着いたのは、体育館裏。

 

「えっとね……」

 

 一之瀬はくるりと俺を振り返った。

 なんか申し訳なさそうな顔をしている。

 

「いきなりで申し訳ないんだけど……私の彼氏のフリをしてもらいたいの」

 

 まさかのニセコイ展開である。

 

「わかったよ、ハニー」

「ハニー!?」

「今日から俺のことはダーリンと呼んでくれ」

「だ、ダーリンっ!?」

 

 まさか一之瀬から彼氏役を任命されるとは。

 まあ、いい。初めは偽彼氏でも本当の彼氏になれるよう頑張るだけだ。

 ニセコイからマジコイにさせてやるぜ。

 

「待って待って!」

「ん?」

「え、えっと、理由とか聞かないの……?」

 

 そういえば理由を聞くのを忘れていた。

 一之瀬の衝撃発言で頭がぶっ飛んでいたようだ。

 

「そうだな。教えてくれるか?」

「うん。……私、ここで告白されるみたいなの」

「え」

 

 そう言って、一之瀬は手紙を取り出し見せてきた。ハートのシールが貼られた可愛らしいラブレターだ。

 いや、もしかしたらラブレターに見せかけた果たし状かもしれん。

 中を見て良いということだったので、罪悪感に苛まれながらも拝見すると、可愛らしい文字が躍っていた。

 入学してから気になっていたこと、最近想いに気づいたこと。

 どうやら本物のラブレターみたいだ。しかもまじゆりと思われる。

 手紙の最後には、金曜夕方4時に体育館裏で会いたいと書かれている。後10分で4時だ。

 

「つまり彼氏がいることにして断りたいんだな」

「うん。色々調べたら、付き合ってる人がいるのが一番相手を傷つけないで済むって……」

 

 一之瀬は相手を傷つけたくないのか。

 でも青春は痛みなしでは過ごせない、って阿良々木さんが言ってたからなぁ。

 

「駄目……かな……?」

「俺は構わないけど」

「本当に!?」

 

 正直、理由はどうであれ一之瀬の彼氏のフリをするのは嬉しい。けれど……

 

「ああ。でも一之瀬は本当にそれでいいのか?」

「え」

「相手を傷つけたくないってことは親しい子がラブレターの差出人だろ?」

「うん。同じBクラスの子」

 

 やっぱり。だから違うクラスの俺に白羽の矢が立ったということか。

 

「一之瀬はその子に彼氏がいると嘘をついて断っていいのか?」

「それは……」

「多分、一之瀬の性格からして嘘をついて断ったら、ラブレターを出した子に対して負い目を感じると思う」

「っ……」

「負い目を感じたまま、友達続けるのって辛いと思うぞ」

 

 友達がいなかった俺が言える立場じゃないけど。

 

「それにその子も今の関係が壊れるのを覚悟して告白しようとしてるんだろ。なら一之瀬はその想いに対してしっかり答えてやるべきなんじゃないか?」

「……うん、そうだよね。私が間違ってたよ」

 

 16時まであと5分。俺はそろそろ退散した方がよさそうだ。

 

「んじゃ、頑張れよ」

「うん!」

 

 俺は一之瀬の吹っ切れた顔を見て、その場を後にする。途中、ショートカットの女子とすれ違った。恐らく彼女が告白相手だろう。

 それから俺は寮へと続く並木道で立ち止まった。

 手すりに腰を預け、一息つく。

 5分ほどして、俺の傍を先ほどすれ違った少女が小走りで駆け抜けていった。

 目には薄らと涙を浮かべていた。

 さらに10分ほどその場から動かず時間を潰していると一之瀬が戻って来た。

 とても沈んだ表情をしながら。

 

「お疲れさん」

 

 一之瀬になんて声をかければいいのかわからなかったので、とりあえず労いの言葉を投げかけた。

 

「うん」

 

 一之瀬は俺の隣に並び手すりに腰掛けた。

 

「告白を断るのって結構きついんだね。明日からはいつも通りにするからって言われたけど……。大丈夫かな?」

「それは二人次第だろ」

「だよね……。今日はありがとう。界外くんのおかげで千尋ちゃんに嘘をつかずにすんだよ」

「いや」

「私、界外くんに助けられてばっかりだね……」

 

 ん? 俺が一之瀬を助けたことなんてそんなにあったっけ?

 監視カメラの存在を教えたり、設置場所の資料を渡しただけだと思うんだけど。

 

「よし!」

 

 両手を空に向けて伸ばし、一之瀬はぴょんと地面に降り立った。

 

「今度は私が協力する番。やれるだけのことはやってみるね」

「ああ。頼りにしてる」

 

 俺がそう言うと、一之瀬は嬉しそうな顔をしながら「うん」と元気よく答えた。

 一之瀬と一緒に解決困難な事件に立ち向かっていく。俺は彼女との初めての共同作業に胸を躍らせ、帰路についた。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 日曜の午後。

 俺は自室で博士と食戟のソーマを1期から見返していた。3期のデレたえりな様は最高だった。

 

「やはりソーマは巨乳キャラが多くてたまらんでござる」

「それな。でも最近は秘書子が気になるんだよな」

「なんと!?」

 

 もちろん、えりな様やアリスも好きだけどね。てかソーマの女キャラは皆好きだ。

 

「なんか知らんけど秘書子が気になるんだよ」

「そうでござったか」

「てか博士は二次元なら強気な女子は問題ないんだな」

「二次元なら直接罵倒されないですしおすし」

 

 なにかトラウマを抱えているようだ。

 

「そういえば昼前に珍しく綾小路殿から電話があったでござる」

「綾小路から?」

 

 博士と綾小路は連絡先交換していたのか。

 

「監視カメラのセッティングを頼まれたのでござるよ」

「監視カメラ?」

「必要になったらということでござったが」

 

 必要になったら?

 監視カメラが必要な場合ってなんだ。防犯の為? 空き巣被害でもあったのか? いや、それなら先生に相談してカードキーを変えたりしてもらえばいいだけだ。

 いったい綾小路は何でそんなお願いをしたんだ……。

 

 ……そうか、そういうことか!!

 30秒ほど考えて、俺は綾小路の企みに気づいた。須藤の件を解決するために監視カメラを使うのだ。問題の解決が難しいなら、問題そのものをなくしてしまえばいいってわけか。恐らくこれは最終手段だろう。理想は他のクラスから目撃者を見つけ出すことだ。しかし綾小路はよく思いついたな。中間テストのポイント購入の件といい、枠にとらわれない思考の持ち主のようだ。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 アニメ鑑賞会を終えた俺は綾小路の部屋の前に立っていた。

 目的はもちろん監視カメラについて確認するためだ。

 インターホンを押すとすぐにドアが開いた。

 

「……界外、どうしたんだ?」

「綾小路に聞きたいことがあってな。少し時間をくれないか?」

「わかった。あがってくれ」

「お邪魔します」

 

 そういえば綾小路の部屋に上がるのは初めてだな。

 部屋に上がろうとした瞬間、俺は多数の靴が並べられてあることに気づいた。

 

「誰か来てるのか?」

「ああ。櫛田たちが来てる」

 

 うげぇ。櫛田たちということは、あいつらもいるってことか……。

 仕方がない。監視カメラの件は別の日に聞こう。

 そう思い引き返そうとした瞬間、櫛田が部屋から顔を覗かせてきた。

 

「あっ、界外くん!」

 

 バッドタイミング。櫛田が声をかけてきたことにより帰りづらくなってしまった。

 

「あ? 界外だと?」

 

 櫛田に続いて、須藤も顔を覗かせてきた。

 

「なんでテメェがここにいんだよ!?」

 

 いきなり須藤に大声で怒鳴られてしまった。

 この子、気性荒すぎない?

 

「綾小路に用があったんだよ。ま、急ぎじゃないからまた今度にするわ」

「そうか」

「ちょっと待って!」

 

 俺が帰ろうとすると、櫛田が俺を呼び止めた。

 

「用って今回の事件のことだよね?」

「まあ、そうなるな」

「綾小路くんから聞いたんだ。界外くんも協力してくれるって。それと界外くんのおかげでBクラスも協力してくれることになったって」

 

 いやいや、一之瀬から協力の申し出があっただけだから。俺の功績じゃないからね。

 綾小路は櫛田に何を吹き込んでるんだよ……。

 

「けっ、テメェもBクラスの協力も必要ねぇんだよ!」

 

 こいつ怒ってばっかで疲れないんだろうか。

 

「須藤くん。そんなこと言っちゃ駄目だよ」

「うっせぇな。こいつも一之瀬って女も気に入らねぇんだよ」

 

 えぇ、俺はともかくなぜ一之瀬まで……。

 そういえば図書室でCクラスと揉め事があった時に、一之瀬が場を収めたんだっけか。それが気に食わなかったんだろうか?

 ま、どうでもいいか。それより……

 

「勘違いしているようだから言っておくけど、別にお前の為に協力するわけじゃないから」

「あん?」

「クラスポイントがなくなるのが困るから協力するだけだ。クラスポイントに影響なければお前なんかとっくに見捨ててるよ」

「テメェっ!!」

 

 須藤が襲い掛かってきたので、俺は須藤の腕を掴み床に押し倒した。

 

「がっ!!」

 

 そのまま須藤を床に押さえつける。

 櫛田が心配そうに見つめてるが無視する。

 

「これが正当防衛って言うんだよ。お前がしたのは過剰防衛だ」

「て、テメェ……」

「一つ忠告しておく。一之瀬を気に入らないのはお前の勝手だけど、あいつに手を出したら……潰すぞ?」

 

 須藤が俺の顔を見て「ひっ」と小さく悲鳴をあげる。

 今の俺ってそんな怖い顔してるのか……。

 

「界外。それくらいにしたらどうだ」

 

 綾小路が俺を見下ろしながら言う。

 

「……そうだな。騒いですまなかった。櫛田も怖い思いさせてごめん」

「う、ううん。私は全然」

「んじゃお邪魔しました」

 

 軽く手を振って綾小路の部屋を後にする。

 自室に戻った俺はうなだれていた。

 やっちまった……。

 挑発したうえに、正当防衛とはいえクラスメイトに手を出してしまった……。

 でも須藤って女子に手を出しそうなタイプだし仕方ないよね。堀北も前に胸倉掴まれたって言ってたし。

 

 1時間後。今度は綾小路が櫛田を連れて俺の部屋を訪ねてきた。

 

「こんな時間にお邪魔してごめんね」

 

 櫛田が申し訳なさそうに言う。

 

「まだ20時だろ。全然問題ないから」

「うん。ありがとう」

「それよりさっきは悪かった」

「ううん。さっきのは須藤くんが悪かったと思うし。ね、綾小路くん?」

「そうだな。まあ、界外の挑発はいらなかったと思うが」

「うっ」

「綾小路くん!」

 

 だよね。須藤相手だったので俺もつい攻撃的になってしまった。

 

「それより二人そろってどうしたんだ?」

 

 俺の用件を気にしてきたのだろうか。

 

「実は須藤から界外を嫌ってる理由を聞いてな」

「綾小路くん、もう少しオブラートに包んで言おうよ……」

 

 櫛田が綾小路を咎めるように言う。

 

「いや、須藤から嫌われてるのは自覚してるから大丈夫だ」

「だそうだ」

 

 綾小路がドヤ顔で櫛田を見る。

 櫛田は呆れた表情でため息をついた。

 

「それで俺が須藤に嫌われてる理由って?」

「ああ。界外、お前は小学生の時にバスケをしてたんだよな?」

「そうだけど」

「実は須藤は小学生の時にお前と対戦したことがあったみたいでな」

「俺と須藤が?」

 

 全然覚えてない。いつ戦ったんだろう。

 

「全国大会の一回戦で対戦したって言ってたよ」

 

 俺が疑問に思っていると、櫛田が答えた。

 え、俺の心の中読めるの?

 

「全国大会の一回戦か。……覚えてないな」

「そうか」

「それで嫌ってる理由って、俺のチームに惨敗したから?」

 

 もしそれが理由だったら理不尽過ぎる。

 

「違う。理由はお前がバスケをやめてたからだ」

「…………はい?」

「えっと、須藤くんは界外くんに憧れてたんだって」

 

 櫛田の言葉に耳を疑う。

 

「界外くんの圧倒的な強さに惹かれたみたいだよ」

 

 圧倒的な強さって……。俺だけの力じゃないんだけど。

 

「須藤くんが髪を赤く染めてるのも、界外くんの真似をしてなんだって。……髪、赤かったの?」

「まあ、若気の至りで……」

 

 某キセキの世代の主将に憧れて染めてました。

 ちなみに片目にカラコンを入れて、オッドアイにもしてました。一人称も僕でした。

 

「そうなんだ。界外くんの赤髪、見たかったなぁ」

「勘弁してくれ」

 

 櫛田が笑いながら俺の髪を見る。

 

「ようは自分より才能がある憧れの選手が、あっさりバスケをやめていることにムカついてるわけだ」

 

 綾小路が簡潔に言う。

 俺が入学当初から須藤に睨まれてた理由がよくわかった。

 

「なるほどね」

「なんで界外くんはバスケやめたの?」

 

 櫛田が問う。

 

「バスケよりバレーに興味を持ったから」

「……そうなんだ。でも全国までいったのにもったいなくない?」

「そういうのは特に思わなかったな。楽しければいいと思ってたし」

「そっか」

 

 そういえばチームメイトから強く引き止められたな。

 あいつらは今もバスケ頑張ってるんだろうな。

 

 その後、綾小路に用があるため櫛田には先に帰ってもらった。

 用とはもちろん監視カメラのことだ。

 

「綾小路。博士に監視カメラのことで相談しただろ?」

「……ああ」

 

 綾小路は相変わらずの無表情で俺の問いに答える。

 俺は続けて綾小路の意図について、自分で考え導き出した答えを説明する。

 なぜ博士に監視カメラの相談をしたのか、なぜ必要かどうか決まっていないのかを。

 

「どうだ。俺の考えは合ってるか?」

 

 再度、綾小路に問う。

 

「凄いな。よくそんな作戦を思いついたな」

「え」

「悪いが博士に相談した件と、須藤の件は全く関係ないぞ」

 

 綾小路はそう言うと、博士に監視カメラの相談をした経緯について話してくれた。

 勝手に櫛田、須藤、池、山内に自分の部屋の合鍵を作られてしまい、山内が平気で盗みを働きそうなので監視カメラを設置するかどうか悩んでるとのことだった。

 綾小路の山内に対する評価が酷いな。友達だと思ってないだろ絶対。

 それより話の筋は通ってるけど怪しい。監視カメラは高額だ。ならば櫛田たちから合鍵を没収した方がコストがかからない。

 

「納得してくれたか?」

 

 綾小路が聞いてくる。

 

「わかった。そういうことにしておいてやるよ」

「本当の話なんだけどな」

 

 俺は騙されないぞ、綾小路。俺が思いついた内容が、お前が思いつかないわけがない。

 俺の綾小路に対する評価は非常に高い。こいつは何かを隠している。俺のシックスセンスがそう叫んでいるのだ。

 その後、綾小路を見送り、俺はベッドに寝転がった。天井を見上げながら今日一日の出来事を思い出す。 

 

「かっこつけないで、一之瀬の偽彼氏になった方がよかったかもな……」

 

 今更後悔しても遅いんだけどね。今は一之瀬と告白した子が一日でも早く関係が修復するよう祈るだけだ。

 厄介なのは須藤か……。高校でバスケをするつもりはないので、卒業まで須藤との関係は今のままだろう。

 こればかりはどうしようもない。

 それより明日から一之瀬たちと一緒に目撃者捜しを行うんだ。気持ちを切り替えねば。

 本当は一之瀬と二人きりがよかったなぁ。





また明日投下します
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