実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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13話 かわいいは正義

 放課後。俺はいつものファミレスに来ていた。

 いまここにいるのは俺と一之瀬と神崎。

 あるお願い事をするために、俺は一之瀬と神崎をファミレスに呼び出したのだ。

 

「それでお願いってなにかな?」

 

 俺の隣に座る一之瀬がオレンジジュースを飲みながら問う。

 お願い事をしたいから正面に座って欲しかったんだけど、有無も言わさずに隣に座られたら仕方ないよね。

 

「まず明日の審議だが、『完全無罪』を勝ち取るのはほぼ不可能だ」

「だろうな」

 

 正面に座る神崎も俺と同じ意見のようだ。

 

「相手を殴ったという事実は消しようがない。目撃者の裏付けと証拠が揃っても、相手を譲歩させることくらいしかできないだろう」

「神崎の言う通りだ。このままじゃ須藤の停学は間違いない。つまりDクラスの負けってことだ」

「うんうん。それで界外くんはどうするつもりなのかな?」

 

 一之瀬が再度俺に問う。

 

「一之瀬たちに用意してもらいたいものがあるんだ。恐らくこれが唯一の解決策になる」

「あるものって?」

「監視カメラだ」

「監視カメラ? ……理由を聞いてもいいかな?」

「もちろんだ。理由も言わずに用意してもらおうとは思ってないからな」

 

 俺は唯一の解決策の詳細を、一之瀬と神崎に説明した。

 どうして監視カメラが必要なのか。何に使うのか。どんな目的があるのか。

 説明を終えると、二人は言葉なく黙って考え込んでいるようだった。

 

「お前らならこの作戦のリスクと有効性を理解してくれるはずだ」

「それって……いつから考えてたの?」

「昨日」

 

 本当は綾小路が思いついたんだけどね。本人は否定してるけど。

 綾小路は暗躍したいタイプなのかな。なら俺は頑張って彼の隠れ蓑になろうじゃないか。

 

「……そっか。さすが界外くんだね。うん、いいよ。買ってあげる」

「いいのか?」

「うん。神崎くんもいいよね?」

 

 一之瀬が神崎に同意を求める。

 

「ああ。ただ一之瀬のルール、モラル的には反するかもしれないな」

「あはは、だよねぇ……。反則だよね。でも……確かにたった一つの方法かも」

「ちなみにセッティングはどうするんだ?」

 

 神崎が俺に問うてきた。

 

「クラスメイトに詳しい奴がいてな。そいつに任せれば問題ない」

「そうか」

「もしかして博士って人?」

 

 さすが一之瀬。鋭い。

 ちなみに博士はハッキングも得意なようだ。初春さんが好きで必死に覚えたらしい。親近感が湧くなぁ。さすがに頭に花飾りはかぶらなかったようだ。博士に花飾りだなんて誰得だしね。それと博士には得意のハッキングである生徒の情報を調べて貰っている。

 

「そうだ。よくわかったな」

「だって界外くんと仲良い男子って綾小路くんと博士くんだけでしょ」

「うっ」

 

 またもや同性の友達が少ないことを指摘されてしまった。平田とも仲良い方だと思うんだけどな……。

 

「それでいつ買う?」

 

 一之瀬が傷心の俺に聞いてくる。

 

「明日の審議の後にしよう」

「今日じゃなくていいの?」

「もしかしたらミラクルが起こるかもしれないからな。そしたらポイントが無駄になってしまうだろ?」

「わかった。それじゃ明日一緒に買いに行こうね」

「ああ。よろしく頼む」

 

 その後、神崎は予定があるようで俺と一之瀬を置いて店を出ていった。

 つまり現在テーブル席には俺と一之瀬の二人しかないわけで……

 

「一之瀬、席移動しないのか?」

「なんで?」

「横だと話しづらくないか?」

「全然」

 

 そうですか……。

 もしかして最近は隣同士で座るのが流行ってるのかもしれない。友達が多い一之瀬のことだ。きっとそうなんだろう。

 

「それより期末テストの勉強はしてる?」

「勉強は毎日してるぞ」

 

 事件のことばかり気にしているが、期末テストも迫っている。

 今回の件を解決したら、茶柱先生に特別ボーナスをおねだりしなければ。さすがに今の状況でおねだりするほどKYではない。

 

「一之瀬はどうなんだ?」

「うん、私も毎日勉強はしてるよ。それでね……界外くんにお願いがあるんだけど」

「いいぞ」

「え? 私、何も言ってないよ!?」

 

 一之瀬のお願いなら何でも聞くに決まってるじゃないか。

 私と心中してと言われても聞いてしまうまである。一之瀬がそんな台詞を言うなんてありえないけど。

 

「一之瀬にはお世話になってるからな。お願いを聞くのは既に確定事項ってことだ」

「……私が無理なお願いをしたらどうするつもりなの?」

「頑張る」

「もう……」

 

 一之瀬が呆れ顔で見つめてくるが、照れてるのか若干顔が赤い。

 

「それでお願いって?」

「うん。一緒にテスト勉強して欲しくて。……いいかな?」

「もちろんだ」

 

 一之瀬と一緒にテスト勉強なんて、勉強が百倍楽しくなるな。

 帰ったら予習の為に、ぼくたちは勉強が出来ないを読み返そう。

 テスト勉強で一之瀬との距離を縮めてやるぜ!

 

「ありがとう。ただ、クラスメイトと勉強会もするから、夜遅くなっちゃうかもしれないけど……」

「恐らくうちのクラスも勉強会を実施するだろうから問題ないぞ。かえって好都合だ」

「そっか。よかった……。それじゃよろしくね」

「こちらこそ」

 

 その後、二時間ほどお喋りをして俺たちは帰路についた。

 ちなみに今回の作戦は堀北には伝えていない。理由は明日の審議に集中してほしかったからだ。

 理想は堀北がC組の連中を論破して明日の審議で解決すること。目撃者が佐倉しかいない今の状況だと可能性は非常に低いだろうけどね。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 翌日の放課後。

 俺と堀北と須藤は審議に出席するため生徒会室に足を運んでいた。茶柱先生も同行している。ちなみに佐倉は出番があるまで外で待機だそうだ。

 生徒会室には既にCクラスの生徒3人と担任の坂上先生が席についていた。

 生徒会室で審議を行う。つまり生徒会役員が審議を執り行うということ。生徒会からは橘先輩と堀北に絶対会わせたくなかった生徒会長が出席をしている。

 まさかこんな形で堀北と生徒会長を接触させることになるなんて……。

 隣に立つ堀北の顔を見ると、完全にこわばった表情をしている。

 橘先輩に座るよう指示をされ、俺たちはCクラスの生徒たちの前に腰を下ろした。

 

「これより先日に起こった暴力事件について、生徒会及び事件の関係者、担任の先生を交え審議を執り行いたいと思います。進行は生徒会書記、橘が勤めます」

 

 橘先輩が、そう言い軽く会釈をした。

 俺がつい拍手をしてしまうと、橘先輩は顔を赤くして俯いてしまった。ちなみに生徒会長と両担任から睨まれたのは言うまでもない。

 橘先輩は深呼吸をすると、事件の概要をわかりやすく説明していった。

 その後はしばらく橘先輩と須藤とCクラスの生徒の問答が続いた。

 須藤が大分苛立ってきたようなので、俺は軽く注意することにした。

 

「須藤」

「あん!?」

「落ち着け。ここは審議の場だ。感情に身を任せるな」

 

 俺は須藤を諭すように言う。

 

「ちっ、わーったよ……」

 

 どうやら素直に言うことを聞いてくれるようだ。

 教室を出る際にも熱くならないよう注意しておいたが、その時も軽く悪態をつきながらも「わかった」と答えていた。

 理由はわからないけど、須藤は俺に対して従順になっている。須藤が少し落ち着いたようなので、もう一つ注意しておく。

 

「それと須藤」

「……なんだよ?」

「橘先輩は年上だ。ため口はやめろ。……いいな?」

「……わかった。すんませんした」

 

 須藤はそう言うと、軽く橘先輩に頭を下げた。

 そうそう、それでいいんだ。橘先輩に無礼を働く奴は俺が許さない。

 俺がうんうんと頷いて周りを見渡すと全員目を丸くしていた。

 

「お、おい、須藤。お前、何か変なものでも食べたのかよ……?」

 

 小宮と言う生徒が心配そうに言う。

 小宮って名前なのに滑舌が悪くない。

 

「あん!?」

「須藤」

 

 俺は須藤を軽く睨む。

 

「うっ。……わ、悪かったよ……」

「橘先輩。進めてください」

「あ、はい。それでは審議を再開します」

 

 その後も審議は続いたが、どちらの意見も一致することなく、相手が悪いとしか主張しなかった。

 

「両方の言い分がこれでは、今ある証拠で判断していかざるを得ませんね」

 

 橘先輩が話を締めようとしている。

 

「おい、堀北」

 

 ジッと俯き、発言ができないでいる堀北に呼びかけるが反応を示さない。

 堀北は完全に兄貴を前にして萎縮している。

 俺は堀北に見切りをつけ、挙手をする。

 

「はい、界外くん」

「Cクラスに質問です。先ほど、須藤に呼び出されて特別棟に行ったと言いましたが、須藤は誰を、どんな理由で呼び出したんですか?」

「俺と近藤くんを呼び出した理由は知りません。部活終わりに着替えてる最中に、顔を貸せと言われて……。理由は俺たちが気に入らないとか、そんな理由じゃないですか」

「それじゃ、どうして特別棟に石崎くんもいたんですか。彼はバスケ部じゃないし無関係ですよね」

「それは……用心のためです。須藤くんが暴力的なのは知っていましたから」

「つまり暴力を振るわれるかもしれないと思ってたと?」

「そうです」

 

 小宮はその質問をされることを想定しているかのように、スムーズに答えた。

 

「なら、なぜ顧問の先生に相談しなかったんですか?」

「そ、それは……」

「答えてください」

 

 俺は追撃するように一言付け足した。

 

「あ、あまり顧問の先生に迷惑を掛けたくなかったので……」

「なるほど。なるべく自分たちだけで解決したかったということですね?」

「そうです」

「それで中学時代に傷害罪で逮捕歴がある石崎くんを用心棒代わりとして連れていったと」

「え」

 

 俺の発言に室内が静まり返る。

 坂上先生を見ると、驚愕の表情をしていた。

 

「それ以外にも他校の生徒と喧嘩をして5回も補導されていますね。確かにそんな生徒なら用心棒にぴったりだ」

 

 俺は続けて石崎の情報を言う。

 この情報は博士にお願いして得た情報だ。中学時代に不良だったということで、面白い情報がないか調べるよう博士にお願いをしたのだ。

 もちろんこの情報だけで事件を解決できるとは思っていない。あくまで審議の材料の一つだ。

 

「な、なんで、お前が知ってんだよ……」

 

 石崎が動揺しながら言う。

 もちろん博士がハッキングして調べたからとは言えない。

 

「インターネット社会ですからね。調べれば色々と出てきますよ。色々とね」

 

 俺は自分にできる精一杯の邪悪な笑みを浮かべて言った。

 橘先輩が俺の顔を見て「ひっ」と小さな悲鳴をあげた。ショック。

 反対に須藤はキラキラとした瞳で俺を見ている。キモイ。

 

「それじゃ小宮くん。答えてくれますか」

 

 邪悪な笑みを浮かべたまま、小宮の顔を見据えて言う。

 

「あ、いや、それは……」

「答えられないんですか?」

「……い、石崎くんが不良だったなんて知らなかったんです! た、ただ体格がいいので、頼りになるかなと思って……!!」

 

 小宮が声を荒げて回答する。

 先ほどのスムーズに回答していた時と大違いだ。

 

「そうですか。まあ、同じ中学じゃなければ知る由もないですからね」

「そ、そうです!!」

「ご回答ありがとうございます。それともう一つ。どうしても腑に落ちない点があります」

「腑に落ちない点ですか?」

 

 橘先輩が聞いてくる。

 

「はい。喧嘩慣れしている前科ありの石崎くんを含め、君たちが一方的にやられたことが腑に落ちないんですよね。三対一ですよ?」

「そ、それは俺たちに喧嘩の意思がなかったからで……」

 

 小宮が怯えながら答える。

 

「そうですか。それは石崎くんも同じですか?」

「あ、ああ……」

「へぇ。中学時代に警察に捕まるほど喧嘩に明け暮れていた君がねぇ」

「な、なんだよ……」

 

 石崎は気持ち悪いものを見るように視線を逸らす。

 

「坂上先生は凄いですね。石崎くんのような生徒を更生させるんですから。尊敬しますよ」

「あ、いや……」

 

 坂上先生も俺から視線を逸らした。なんだよみんなして俺のこと避けやがって。

 

「僕からの質問は以上です。ありがとうございました」

「他の方はよろしいですか?」

 

 橘先輩が確認をする。

 改めて堀北を見るが、俯いたままだ。

 

「それではDクラスから事前に報告があった目撃者を入室させて下さい」

 

 橘先輩がそう言うと、落ち着かない様子の佐倉が生徒会室に足を踏み入れた。

 

「1-D、佐倉愛里さんです。佐倉さん、早速ですが証言をお願いできますか」

「は、はい……。あの、私は……」

 

 言葉が止まる。

 そして、静寂の時が流れる。

 どんどん佐倉の顔は下を向き、顔色は悪く青ざめていく。

 ここで橘先輩が動いた。

 

「佐倉さん、大丈夫ですよ。落ち着いて下さい。自分のペースでいいですからね」

「あ、はい……」

 

 橘先輩が佐倉を気遣う。

 

「どうしても緊張がとけない場合は深呼吸をしましょう」

「は、はい……」

 

 佐倉は返事をすると、橘先輩と一緒に深呼吸をし始めた。

 反り腰の状態になり、佐倉の大きな胸が主張される。

 室内にいる生徒会長以外の男性全員が佐倉のたわわに実ったおっぱいに視線が吸い寄せられる。

 

「もう大丈夫です」

 

 1分ほど深呼吸を繰り返し、佐倉が覚悟を決めた顔で言った。

 これならもう大丈夫そうだな。佐倉、頼んだぞ。

 ちなみに橘先輩が佐倉をフォローしてくれたのは、事前に俺がお願いをしたからだ。

 

「私は確かに見ました! 最初にCクラスの人たちが須藤くんに殴りかかったんです。間違いありません!」

 

 おお、佐倉って結構大きな声出せるんだな。

 ちなみにいまだにCクラスの連中は佐倉の胸を無遠慮に見つめている。

 佐倉の胸のおかげでCクラスが反撃してこないようなので、今のうちに佐倉をフォローしておく。

 

「ちなみに佐倉さんが目撃者として名乗りを上げるのが遅かったのは、面倒事に巻き込まれたくなかったからです。特に今回は生徒同士の喧嘩ですからね。佐倉さんのような女子が関わりたくないと思うのは当然のことでしょう」

 

 俺がそう言うと、佐倉が驚いた表情で俺を見てくる。

 なんで話したことないのに私のこと知ってるの? キモイ、とか思われてたらどうしよう……。後で綾小路から佐倉に説明してもらおう。

 

「佐倉。他に言うことはあるか?」

「コショウもあります……!!」

「コショウ?」

「あ、ちがっ、……証拠もあります!!」

 

 びっくりした。いきなり香辛料を出されても……。

 佐倉はなかなかのギャグセンスの持ち主なのかもしれない。

 それより証拠あるのかよ。俺聞いてないんだけど。

 

「これが証拠です」

 

 佐倉はそう言うと、数枚の写真を机の上に置いた。

 橘先輩は佐倉の傍に歩み寄り、軽く断りを入れてから写真に手を伸ばした。

 

「……会長」

 

 写真を見た橘先輩は、生徒会長にその写真を提出する。

 生徒会長は写真を確認すると、俺たちにも見えるように机の上に写真を並べた。

 その写真に写っていたのは、グラビアアイドルの雫だった。

 俺は芸能人に詳しい方じゃないが、雫はヤングジャンプの表紙を何回か飾ったことがあったので知っていた。

 まさか佐倉が雫だったとは……。後でサイン貰おうかな。

 

「私は……あの日、自撮りをするために人のいない場所を探していました。その時に撮った証拠として日付も入っていますっ」

 

 確かに日付は、事件が起きた日と同じだ。俺は初めて見る本物の証拠に、思わず息を呑む。

 ちなみに堀北は相変わらず俯いたままである。まるで生きた屍のようだ……。

 Cクラスの連中の様子を伺うと、明らかな動揺が見て取れた。

 

「し、雫じゃねえか……」

「俺ファンなんだけど」

「俺もだよ」

「……」

 

 おい、そっちに動揺してんじゃねぇよ!

 Cクラスの連中は、自分たちが置かれた状況を忘れ、雫に夢中なようだ。坂上先生に至っては顔を赤くしながら写真を凝視している。

 なんだろう。真面目に審議するのが馬鹿らしくなってきた。

 

「え、えっと、これはデジカメで撮ったものです。も、もちろんパソコンで日付の変更はしてませんっ」

 

 場の雰囲気に慣れてきたのだろう。佐倉がしっかりとした口調で説明する。

 

「だろうな。この写真を見れば一目瞭然だ」

 

 生徒会長は下に重なって見えなかった1枚をスライドさせる。それは須藤が石崎を殴った直後と思われる現場の写真だった。

 

「これで私がそこにいたことを、信じて貰えたと思います」

「佐倉、ありがとう。そしてお疲れさん」

 

 俺は大仕事を果たした佐倉を労う。

 さて、これでCクラスがどう出るかだが……

 

「……先生、もう俺無理です……」

 

 石崎が重たい口調で発した。

 なにが無理なんだ。うん○でも漏れそうなんだろうか。

 

「い、石崎くん……?」

 

 坂上先生が心配そうに言いながら石崎の方を見る。

 

「俺たちは嘘をつきました! 先に手を出したのは俺たちです! 須藤をハメるために今回の事件を起こしました!!」

 

 石崎が立ち上がると、急に大きな声で自白し始めた。

 石崎の思わぬ行動に室内は完全に静まり返る。

 俺もまさかの展開に頭が追いつかない。

 

「石崎君! 何を言ってるんですか!?」

 

 坂上先生は動揺を隠せないようで、石崎を怒鳴りつけた。

 庇ってる生徒がいきなりそんなこと言ったら焦るよね。

 しかし石崎はなぜ急に自白したんだ。

 

「すみません、先生。でも俺は雫の前で嘘はつきたくないんです!!」

「き、君はなにを言って……」

 

 坂上先生が俺たち全員の気持ちを代弁して問う。

 

「俺は雫の大ファンなんです」

 

 石崎が真剣な表情で打ち明ける。

 周りを見ると、全員が口をぽかーんと開け、石崎を見ていた。

 

「俺は中学の時相当な悪でした。襟足が地面についてしまうくらい悪でした」

 

 まさか石崎は茨城愚連隊炎栖覇の総長だったのか。

 てか不良なら襟足の長さじゃなくて、逮捕歴があることをアピールしろよ……。

 

「両親や学校にも見放された俺は喧嘩に明け暮れていました。喧嘩をしてる時しか俺は生きている実感が持てなかった。そんな時に出会ったのが雫だったんです」

 

 石崎はそう言うと、佐倉をチラッと見た。

 

「ひっ」

 

 佐倉は小さく悲鳴を発し、隣にいる橘先輩の背後に隠れた。

 橘先輩は頼られたのが嬉しかったのか、非常に生き生きとした表情で佐倉を庇い始めた。

 なんだか2人が姉妹に見えてきたな。

 石崎は佐倉に怖がられているのを気づかないようで、自分語りを再開した。

 

「初めて彼女を見た時は電撃が走りました。そして俺は決意しました。彼女のファンに相応しい男になろうと」

「い、石崎……?」

 

 小宮が石崎に声をかけるが、石崎はそれを無視する。

 

「それから俺は襟足を切り、真面目に学校に通うようにしました。喧嘩も週6から週2に減らしました」

 

 そんなバイトのシフトみたいに言われても。結局、喧嘩はやめてないじゃないですかー。

 

「そして俺は雫のおかげで無事この学校に合格出来たわけです。彼女と出会わなければ今の俺はいなかったでしょう」

 

 どうやら佐倉は石崎にとって、とても大きな存在のようだ。……可哀相に。

 佐倉の様子を伺うと、涙目になっていた。うん、怖いよね。勇気を出して証言したら、ファンが自分との出会いを語り始めるんだもんね。

 

「だから俺は彼女の前で嘘なんてつけません! そんなことをしたら俺は彼女のファンじゃいられなくなってしまう!!」

 

 石崎の自分語りが終わり、室内が再度静まり返る。

 俺は完全に気持ちが切れてしまい、石崎の話を適当に聞きながら、佐倉の自撮り写真を眺めていた。

 

「え、えっと、つまりCクラスが意図的に事件を起こしたということでよろしいですね?」

 

 橘先輩が戸惑いながらCクラスの連中に問う。

 

「そうです! 俺たちが須藤を退学させるために事件を起こしました!」

 

 石崎が元気よく答える。

 はきはきとした振る舞いの石崎に比べ、他のCクラスの連中は頭を抱えている。どうやら決着はついたようだ。

 

「よく正直に答えてくれました。これで決着がつきそうですね。石崎くん、着席して下さい」

 

 橘先輩に促され、石崎は元気よく「はい」を返事をして椅子に腰を下ろした。

 あれ、おかしいな。石崎が優等生に見えてきたぞ。

 よく見ると表情もすがすがしくなっている。こいつ、こんな爽やかな顔してたっけ。

 

「他に意見や証言がないようであれば、以上で審議は終了します。よろしいですか?」

「はい!」

 

 またもや石崎が元気よく返事をした。

 石崎の返事に比例して、坂上先生の頭の位置がどんどん下がっている。まさかこんな結果になるなんて思ってもいなかったのだろう。俺も思ってなかったよ……。

 

「ないようなので、以上も持ちまして審議を終了します。処分は追って連絡させていただきます。お疲れ様でした」

 

 こうして審議は終了した。

 今回のMVPは間違いなく佐倉だろう。結局、俺があれこれ考える必要なんてなかったんだ。佐倉愛里の正体がグラビアアイドルの雫だと石崎に知らせるだけでよかったのだ。

 俺が今回の審議でわかったことは一つ。

 かわいいは正義。





ガッツ石崎男を見せる!
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