実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
夏アニメ次々始まってますね!
「佐倉」
「界外くん?」
俺は佐倉にお礼を言うために声をかけた。
「今回は助かった。全部佐倉のおかげだ。ありがとな」
「そ、そんなことないです……。そ、それに、界外くんもフォローしてくれたので……」
「謙遜しなくていいぞ。佐倉が須藤を助けたんだ」
「わ、私が、須藤くんを……」
俺が佐倉の功績を称えると、彼女は戸惑いながらも嬉しそうな表情を浮かべた。
「私、みんなの役に立てたんですね……」
「役に立てたところじゃない。ヒーローと言っていいまであるぞ」
「ひ、ヒーローって……。大げさです……」
佐倉と初めて会話して気づいたけど、敬語使って話すんだな。敬語女子。いいと思います。
「佐倉、助かったぜ。ありがとな」
須藤が佐倉に近づいて、頭を下げながら謝辞を述べた。
「い、いえ……」
佐倉は半歩程下がりながら答えた。須藤が苦手なんだろうな。それなのによく勇気を出して証言してくれたよ。
「審議は終わった。さっさと帰れ」
茶柱先生に促され、佐倉と須藤が生徒会室から出ていく。
俺はいまだに俯いてる彼女に声をかけた。
「堀北」
「……」
「おい」
呼びかけても反応がなかったので、軽く肩を叩く。
「え」
「審議が終わったから帰るぞ」
「え、あ、終わった……?」
俺に促され、堀北が顔を上げる。久しぶりに見た堀北の顔は虚ろな表情をしていた。
いつまで経っても立つ気配がないので、俺は勇気を出して彼女の腕を掴み無理やり立たせた。
「行くぞ」
「え、ええ……」
堀北の腕を掴んだまま廊下を突き進む。
まさか堀北がこんなになるなんて思わなかった。
今の彼女は抜け殻だ。
須藤の件が解決できたと思ったら、今度は堀北か。俺は新たな問題に頭を悩ませながら玄関に辿り着いた。
「やっほ。随分遅かったね」
そこには結果が気になっていたのか、一之瀬と神崎が待っていた。
「待っててくれたのか」
「もちろん」
俺は一之瀬と神崎に少し待ってくれと制して堀北の方に顔を向ける。
「悪い堀北。俺は一之瀬と神崎に結果を報告をするから、先に帰ってもらっていいか?」
堀北は無言で頷き、一之瀬と神崎を素通りし、帰っていく。
少し心配だが、寮までは近いし一人で帰れるだろう。
「堀北さん、どうしたの?」
「ちょっとな」
ともかく、俺は審議の内容と結果を話して聞かせた。
説明を終え、二人の顔を見ると、何とも言えない表情を浮かべていた。
だよね。まさかこんな結果になるなんて思わなかったよね。
「え、えっと……。なんて言ったらいいんだろう……」
「すまない。俺の頭では理解が追いつかないようだ……」
「気にするな。俺も最後の方は馬鹿らしくなって聞き流してたから」
あれだけ真面目に目撃者捜しを手伝ってくれた二人に俺は申し訳ない気持ちで一杯だった。
使わせてしまったポイントに関しては、須藤に請求しておこう。今のあいつなら俺の言うことを聞いてくれるだろう。
須藤と言えば、審議中にやたら俺のことを見ていたな。あいつが何を考えてるのかよくわからない。
それと審議中、一人称が僕になっていたな。無意識に赤司か金木君の真似でもしてたんだろうか……。
「とりあえず解決できてよかったね!」
一之瀬が微妙な空気を払拭するように言う。
「だな。二人とも協力してくれてありがとな」
「ううん」
「気にするな。結果も聞けたことだし、俺は先に帰らせてもらう」
神崎はそう言うと、靴に履き替えクールに玄関を出て行った。
あのクールさ。俺も見習いたいものだ。
「えっと、打ち上げする?」
一之瀬が俺を見上げ、聞いてくる。
「処分が下されるのは明日だから、明日にした方がいいんじゃないか?」
「だね。それじゃ明日の放課後、予定空けておいてね」
「了解。一緒に帰るか?」
「うん!」
♢♢♢♢♢♢♢
「クラスメイトにグラビアアイドルがいるなんて凄くない?」
帰宅途中に隣で歩く一之瀬が言ってきた。
「だな。普段は眼鏡をかけてるから全然わからなかった」
「雫ってこの子だよね。凄い可愛いよね」
検索したのだろう。一之瀬は携帯に雫の画像を表示させ、見せてくる。
ちなみに今回も腕に胸が当たっている。どうやら今夜も悶々として眠れなさそうだ。
「サインって貰えるかな?」
「明日聞いてみるよ」
「本当? お願いね」
一之瀬も芸能人に興味あるんだな。
てか一之瀬もグラビアアイドルになれるんじゃないだろうか。可愛いし、胸も大きい。一之瀬がグラビアアイドルになれば色んな水着姿が見れるわけで。……いや、そうすると他の男たちにも見られてしまうんだよな。それは嫌だな。
「……」
いやいや、彼氏でもないのに俺は何を考えてるんだよ。こういう考えが気持ち悪いファンを生み出してるんだろうな。
「界外くん、大丈夫?」
「ん?」
「なんかボーっとしてたから。審議で疲れた?」
一瞬考え事をしていただけなのに。一之瀬は人のことよく見てるんだな。
「そうだな。少し疲れたかも」
「そっか。今日は早く寝たほうがいいよ」
「そうするよ」
「またアニメ見て夜更かししちゃ駄目だからね」
「了解」
俺は苦笑いをしながら答える。
夜更かしさせたくないなら、まず胸を当てないで欲しいんだけど。もちろん一之瀬の胸の触感を味わえるのは嬉しい。けれど夜眠れなくなるのだ。俺も健全な男子高校生だからね。
入学当初、一之瀬をエロい目で見てた池と山内を非難したが、今の俺に彼らを非難する資格はないだろう。入学当初もなかったけど。
よし、帰ったら夏目友人帳を見よう。夏目を見て汚れた心を浄化しよう。そうすれば夜もすぐに眠れるはずだ。夏目と言えば……
「一之瀬」
「なに?」
「一之瀬も夏目見てたよな?」
「うん」
「9月に映画やるんだが、一緒に観に行かないか?」
とうとう一之瀬を映画に誘ってしまった。勢いで誘ってしまったが大丈夫だろうか。断られたらどうしよう。でも夏目は女子に人気だから大丈夫だよね。
「うん、行きたい」
よかったぁ。これで断られたら心がへし折られるところだった。
「あと、夏目以外にも見たい映画があるんだよね。それもアニメなんだけど一緒に観に行かない?」
まさか一之瀬からも映画に誘われるとは。今日の審議を頑張ったから神様がご褒美をくれたのかな。神様ありがとう。
「もちろん。ちなみにタイトルは?」
「君の膵臓をたべたいだよ」
「あー、キミスイね。よくCMで見るな」
「界外くん、知ってるんだ」
「そりゃ本も売れてたし。ちなみに原作も読んだぞ」
「私もなんだ。初めて小説読んで泣いちゃったよ」
女の子が好きそうな話だったもんね。
てか一之瀬って小説読むんだ。意外だ。
「それじゃ夏目とキミスイ、一緒に観に行こうね」
「ああ」
よっしゃ。9月は一之瀬と映画館デートだ。しかも2回。
ヒロアカと七つの大罪は、博士と一緒に見に行くか。
一之瀬との映画館デートが決まり、俺は心の中でスキップをしながら帰路についた。
♢♢♢♢♢♢♢
その日の夜。
夏目を見ながら汚れた心を浄化していると、意外な人物が訪ねてきた。
「須藤……?」
ドアを開けると、須藤と綾小路が立っていた。まさか須藤が俺の部屋を訪ねてくるとは。
「どうしたんだ?」
「須藤が界外に話があるようでな。聞いてやってくれないか」
綾小路が俺の疑問に答える。話って何だろう。
「あ、ああ。とりあえず上がるか?」
「悪いな」
「お邪魔するぜ」
綾小路、須藤が順に部屋に上がっていく。
二人とも靴を綺麗に並べないので帝人的にポイント低いぞ。
「それで話ってなんだよ?」
二人を座らせ、早速本題に入る。
悪いが須藤と長話をするつもりはない。
「……今まで悪かった」
須藤はそう言うと、土下座をし始めた。
え、いきなり土下座とか意味がわからない。
もしかして隠しカメラで撮影をして、俺を土下座強要罪で告訴するつもりなのか。
須藤は顔を上げると、入学当初から俺を嫌っていた理由を説明し始めた。話の内容は綾小路と櫛田から聞いたのとほぼ同じだ。付け加えると、バスケを辞めた俺が女子とイチャイチャしているのも気に食わなかったそうだ。イチャイチャなんてしてねぇよ。
そして、最近俺に対する視線が柔らかくなった理由も話し始めた。
「お前に組み伏せられた時によ、お前の目を見てわかったんだよ」
「俺の目?」
「ああ。あの時のお前の目は、バスケをしていた時と同じ目をしてた」
え、マジかよ。無意識に赤司の真似しちゃってたの。
「あの威圧感。王様としてコートに君臨していた時と同じ目だったぜ!!」
須藤が興奮気味に言う。
コート上の王様していたのは、バレー部の時なんだけど……。
「そして極めつけは審議の時だ。あの時のお前は、生徒会室を完全に支配していた。へっ、コートを支配してた時の界外を思い出して武者震いが止まらなかったぜ」
「そんなに凄かったのか?」
「おう! あれだよ。俺はあれに憧れて必死にバスケの練習に打ち込んできたんだよ!」
綾小路の質問に対し、熱弁を振るう須藤。
恥ずかしいからそろそろやめてくれないだろうか。
確かにあの時の俺は赤司をトレースして、勝利至上主義者で、勝利は生きていく上であって当然の基礎代謝と思っていた。須藤は強者を演じていた俺に憧れてしまったということか。
「高校でお前を見た時はがっかりしたんだ。けどよ、バスケをしていなくても、お前は俺の憧れのお前だった」
「なるほど。お前が最近俺の言うこと素直に聞いてくれる理由がわかったよ」
はぁ……。厄介なやつに憧られてしまったな。
二次元好きの俺には、三次元の人間に憧れる気持ちがよくわからない。
「おう。つーわけで今まで悪かった。これからよろしく頼むぜ!」
よろしく頼まれちゃったよ。なんか手を差し出してきてるし握手しなくちゃいけないの?
……仕方ない。綾小路がいるからここは握手しておくか。
「よろしく頼まれた。それじゃ早速お前にお願いがあるんだけど」
「おう! 何でも言ってくれ!」
「お前の退学を取り消すために使った4万ポイント返してくれ」
「っ!?」
友達との金の貸し借りはよくないから返して貰わなくちゃね。……貸したわけじゃないんだけど。
須藤には借用書を3枚書かせた。俺、綾小路、堀北の分だ。
綾小路と堀北は須藤にポイントで須藤の点数を買い取ったことを話していなかったようで、泣きながら俺たちに感謝をしていた。少額ではあるが月々返済していくとのことで話がついた。恩義を感じるあたり根は悪くない奴なのかもしれないな。
その後、何故か須藤は自分の短気な性格を直したいと相談してきたので、毎朝座禅を30分、寝る前に夏目友人帳を見ることを勧めた。座禅は心を落ち着かせることができ、夏目は思いやりを持つことができる。どちらも須藤に足りないものだ。まあ、適当にアドバイスしたんだけどね。須藤は早速夏目をレンタルしてくると言い、部屋を出ていった。
「夏目友人帳ってそんなに面白いのか?」
どうやら綾小路が夏目に興味を持ち始めたようだ。相変わらずの無表情だけど。
「ああ。よかったら一緒に見るか。夏休みに入れば時間あるだろ」
「そうだな。見させてもらうか」
アニメ鑑賞の約束をし、綾小路は自室に帰っていった。
あのクールな綾小路が夏目を見て、どんな反応するのか今から楽しみだ。
夏目とキミスイのダイレクトマーケティング!
冗談はさておき、次は堀北再起動の話です