実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
翌日。ホームルームで審議の結果が茶柱先生の口から発表された。
Cクラスの石崎、小宮、近藤の3人は虚偽の申告により一週間の停学、須藤は一週間のトイレ掃除の処分が下された。またCクラスは3人の停学処分によりクラスポイントが150ポイント差し引かれることになった。
つまりDクラスの完全勝利である。ちなみに支給がストップされていたポイントも明日には振り込まれるとのことだ。
ポイントが支給されることがわかり、クラスのテンションが異常に高くなっている。しかしホームルーム後、平田の一言によりみんなのテンションは一転下がることとなる。
「期末テストが2週間後に迫っている。なので中間テストの時と同じように勉強会を開こうと思う」
「うげ、期末テストがあったか……。すっかり忘れてた!!」
池が頭を抱えながら嘆く。
「前回と同じく5時から毎日2時間この教室で行うからよろしくね」
中間テストと違い過去問は期待できないだろう。さすがに期末テストまで過去問とほぼ同じとは考えにくい。つまり純粋な学力勝負。今回も1位を取りボーナスポイントをゲットしてやる。……その前に茶柱先生におねだりしないとな。
「界外くん、また教えてね」
早速、隣の席の松下から依頼を受ける。
「私も私も!」
「私もよろしくね」
続けて佐藤と篠原からも講師役をお願いされる。
「あいよ。でも今日は予定があるから明日からな」
今日は一之瀬と2人で打ち上げを行う予定だ。
ちなみに博士からも既に依頼を受けている。貴重なアニオタ仲間の博士に赤点を取らせるわけにはいかないのですぐに了承をした。博士、松下、佐藤、篠原の4人はやれば出来る子なので、これから2週間勉強をすれば問題ないだろう。不安なのは3馬鹿だ。今回も堀北が面倒を見るのだろうか。
♢♢♢♢♢♢♢
昼休み。
俺と堀北は新たなベストプレイスである理科準備室で昼食をとっていた。以前の部室棟近くのベンチと比べ、人通りは多いが扉を閉めていれば問題ない。5時間目開始の10分前に出れば次の授業の生徒も入ってこないので、落ち着いて昼休みを過ごすことができる。
「なあ」
「なに?」
「期末テストも3馬鹿の面倒を見るのか?」
弁当をつまみながら堀北に問う。
「そのつもりよ。けれど勉強会は教室で行うわ」
「Cクラスの連中にちょっかいをかけられないようにするためか」
「正解。いつ仕掛けてくるからわからないもの」
昨晩、俺と堀北はCクラスであろう男子生徒から宣戦布告を受けた。いつ、どこで仕掛けてくるのかわからないので、なるべくCクラスの生徒と接触しないよう教室で勉強をさせるのは賢明な判断だ。もしかすると以前に図書室で須藤とCクラスの連中が揉めたのも、Cクラスが仕掛けた罠だったのかもしれない。
「そうだな。とりあえず須藤に関しては手綱を握れそうだから安心してくれ」
「どういうこと?」
俺は堀北に昨日の須藤との一件について説明した。
「そんなことがあったのね」
「ああ」
須藤は早速夏目友人帳を鑑賞したようで、俺に感想を述べてきた。まさか須藤とアニメの話をすることになるとは……。入学時の俺に言っても絶対信じないだろうな。
「あなたがバスケで、そこまで結果を出してたなんてね」
「小学生の時の話だけどな」
「それでも全国大会優勝は凄いと思うけど」
「チームメイトに恵まれていただけだよ。堀北は部活やってなかったのか?」
「特に。空手と合気道は嗜んでいたけれど」
武道嗜んでいるのかよ。もしかしてそこら辺の男子より強いんじゃないか。
「界外くんも武道を嗜んでいたわよね」
「お前と同じく合気道を少々な」
「なぜ合気道を?」
雪ノ下姉妹が合気道を嗜んでいたからです、なんて言ったら軽蔑されそう。
「……自分の身を守る力が欲しくて」
「身を守る力、ね」
「堀北はどうして空手と合気道を?」
「兄さんが習っていたから」
こいつ昔からブラコンだったのか。こんな美少女が好いてくれてるというのにあの眼鏡は何をしてるんだよ。ていうか武道嗜んでおいて妹に暴力を振るってんじゃないよ。
「部活の話に戻るけれどバスケはもうしないの?」
「多分。体育の授業でやれるだけで十分だな」
「そう」
「堀北は勿体ないとか言わないんだな」
先日、櫛田に言われた一言だ。櫛田だけじゃない。俺がバレーに転向すると言った時は色んな人に言われた。勿体ない、才能をドブに捨てるつもりか、など。
「言わないわ。だってあなたが決めたことでしょう。私がとやかくいう権利はないと思うけれど」
「……」
俺が決めたことか。まさか母親と同じことを言われるとは思わなかったな。堀北から発された言葉に思わず笑みを浮かべてしまう。
「なに笑ってるの?」
「いや、なんでもない」
「気味が悪いからやめて」
「え、俺の笑顔ってそんな気持ち悪いのか……」
帰ったら鏡を見ながら笑顔の練習をしよう。俺は固く心に誓った。
15分ほど経ち、2人とも弁当を食べ終える。本来なら5分ほどで食べ終えることができるが、先に食べ終えると堀北を急かしてしまいそうなので、彼女のペースに合わせて食べるように心がけている。
堀北は弁当箱を鞄にしまうと本を取り出す。食後の読書は堀北の日課だ。
彼女が読書をしているため、自然と無言の時間が続くが、綾小路と同様に居心地は悪くない。お互い喋りたいときに喋る。俺と堀北の昼休みはいつもこんな感じだ。
5時間目開始の10分前になり、俺と堀北は教室に帰るべく席を立つ。理科準備室から出ようとすると勝手にドアが開いた。理由は簡単。外から開かれたからだ。
開かれたドアの向こうには俺がこの学校で会いたくない人物第1位の生徒会長が立っていた。
嘘だろ……。昨日の今日でエンカウントしちゃったよ……。
「に、兄さん……」
堀北が呟く。その表情は審議の時と同じで完全に強張っている。
「お前たち、こんなところで昼食をとっているのか」
俺と堀北を見据え、生徒会長が言う。
「え、ええ。俺と堀北の新たなベストプレイスなんですよ」
吃りながら何とか答える。今回ばかりは俺も堀北と同じく動揺している。
くそ! こんな早く接触することになるとは!
俺は心の中で愚痴りながら堀北の手を掴み廊下に出ようとする。
「鈴音」
名前を呼ばれ、びくっとする堀北。完全に萎縮している。
頼むから余計なことは言わないでくれ。俺は祈りながら立ち止まる。
「なんだ昨日の無様な姿は。審議の場で一言も発せないとは。お前は本当に無能だな」
実の兄貴に罵られる堀北。握った左手から堀北が震えているのが伝わる。
……やるしかないのか。堀北の頭をはたくしかないのか……。
いやいや、無理無理! 女子の頭をはたくなんてやっぱ無理!
堀北には悪いけどここは退散するしかない。そう思い堀北の方を見ると……
「界外くん……」
縋るような目つきで俺を見つめてくる。俺の名前を呼ぶ声も弱弱しい。
数秒見つめ合う。
わかったよ。はたけばいいんだろ! はたけば!
俺は覚悟を決め、ゆっくりと平手を振り上げる。そして……堀北の頭をめがけて振り落とした。
「あうっ」
バシっと音が鳴り、堀北がよろける。
やばい。手加減したつもりが強くはたきすぎたか……。
「……」
堀北の様子を伺うと、頭をはたかれたことにより乱れた髪を整えていた。表情は俯いたままなので伺えない。
効果はなかったのだろうか。俺が不安に思っていると、堀北がゆっくりを顔を上げた。
「界外くん、ありがとう」
堀北はそう言うと、生徒会長を見据える。
「もうあんな無様な姿は見せません。彼と一緒にAクラスに上がって、兄さんに私を認めさせます」
高らかに宣言する堀北。その表情はいつもの自信に満ち溢れたものだった。頭をはたいた甲斐があった。こうかはばつぐんだ!
生徒会長の様子を伺うと見たこともない表情をしていた。そりゃそうだ。いきなり目の前で実の妹が頭をはたかれ、はたいた相手にお礼を言っているのだから。完全にアブノーマルカップルである。
「失礼します」
堀北は軽く頭を下げ、握ったままの俺の手を引っ張り、理科準備室から出ていく。
人気のない場所まで突き進むと、堀北が大きく息を吐いた。
「うまくいったわね」
「だな」
堀北の頭をはたいた右手を見つめる。徐々に罪悪感に苛まれてきた。
「頭、痛くなかったか?」
堀北に問う。
「それなりに痛いわ。でもこれくらいがちょうどいいのかもね」
「そうか。力加減がわからなくて不安だったんだ」
「でしょうね。それよりまた機会があったらよろしく頼むわね」
「え」
今回の一発で克服したんじゃないのか……。また機会があったらって……。
「私の兄さんに対するメンタルの弱さを舐めないで。今回の一発で克服できるほど簡単なものじゃないの」
そんな自信満々に自分の豆腐メンタルを言われても……。でもまた堀北の頭をはたけるのか。……いやいや、俺は何を考えてるんだ! 俺は女の子をはたいて喜ぶ性癖なんて持ってない!
「なるべく生徒会長と接触しないでくれよ……」
「善処するわ」
俺はため息をつきながら教室に戻った。教室に入った途端、クラスメイトたちの視線が一斉に俺と堀北に向けられる。
なんだ? なんで俺たちを見る? ……もしかして俺が堀北の頭をはたいてるところを見られたのか!?
やばいやばい! もしそうなら俺の悪評が広まってしまう! もし一之瀬にまで悪評が届いてしまったら俺は生きていけなくなってしまう!
「なぁ、なんで手繋いでるんだ?」
池が恐る恐る質問をしてきた。直後、潮が引いたように教室内に静寂が訪れる。
しまった……。頭をはたいたことで頭が一杯で手を握ってたの忘れてた……。
恐らく堀北も生徒会長との件で頭が一杯だったのだろう。二人とも気づかずに教室まで来てしまったんだ。
その後、例の如く、池や松下たちから質問攻めにあった。須藤は「ちくしょう。負けねぇ!」と言ってた。あいつ、堀北が好きだったのか。
とりあえず俺が堀北をはたいたところは見られていないようだ。生徒会長も言いふらさないだろうし大丈夫だろう。
だが一週間後、俺の耳に嫌な噂が入ることになる。内容は彼女に暴力を振るう男子生徒が1年にいる、というものだった。
♢♢♢♢♢♢♢
放課後の玄関先。俺と一之瀬は打ち上げ場所に向かうべく靴に履き替えていた。
「にゃはは。処分がトイレ掃除だなんて現実にもあるんだねー」
「それな。漫画やアニメの話だけかと思ってた」
「だよね。今日はカラオケでいいんだよね?」
「ああ。一之瀬と一緒に歌いたい曲があるんだ」
「なになにー?」
楽しく会話をしながら校舎を出ようとした瞬間、勢いよく綾小路が駆け出してきた。
「綾小路くん?」
「どうしたんだ?」
声をかけられ綾小路が俺たちの方を見る。
「界外と一之瀬か。悪いけど急いでいる」
綾小路はそう言うと、素早く靴に履き替え、猛然と駆け出していった。
あんなに焦ってる綾小路を見るのは初めてだ。
「ねえ、ただ事じゃなさそうだけど」
「……だな。すまん。後を追っかける」
俺はそう言い、ブレザーと鞄を一之瀬に預ける。俺の脚なら今からでも追いつけるだろう。
「いってくる」
「うん。いってらっしゃい」
追いかけること数分。どうやら目的地に辿り着いたようで、綾小路が佇んでいるのが見えた。結局、追いつけなかったよ……。
俺は乱れた呼吸を整え、綾小路の隣に並ぶ。綾小路は俺を見るや否や、静かにするよう合図を送ってきた。
「いったいどうしたんだ?」
小声で綾小路に問う。
「佐倉がストーカーと対峙している」
「え」
綾小路の視線の先を追うと、男と対峙している佐倉の姿が見えた。
「もう、私に連絡してくるのはやめてください……!」
「どうしてそんなこと言うんだい? 僕はこんなにも君のこと愛しているのに!」
生まれて初めて生のストーカーを見た。
「僕がこんなに愛してるんだから、君も僕を愛するべきなんだ!」
池袋の某情報屋と同じような台詞を言ってるよ。同じ台詞なのにストーカー野郎が言うとキモイしか感想が出てこない。
「助けなくていいのか?」
綾小路に問う。
「決定的な場面を押さえたら、突入する。それまで待ってくれ」
「……わかった」
ここは素直に綾小路の指示に従おう。しかしこんな状況でも冷静に判断できるんだな綾小路は。俺が上条さんの真似をしてた時は後先考えず特攻しまくってたぞ……。
「こ、来ないで……」
男は距離を詰め、今にも佐倉に襲いかかりそうな勢いで歩み出す。
そして佐倉の腕を掴むと倉庫のシャッターに叩きつけるように押し付けた。
「今から僕の本当の愛を教えてあげるよ……」
「いや、離してください!」
「ぐげっ」
佐倉が頭を振りかざし、男の顎にヒットした。
おお、佐倉やるじゃないか。それより……
「おい、まだなのか?」
「……まだだ」
まだなのか。ストーカーが佐倉の反撃で豹変しなければいいんだが……。
「い、痛いじゃないか……。なんで僕を拒否するんだ……。僕と君は運命の赤い糸で結ばれているんだよ!?」
「わ、私……あなたなんて知りません! 来ないで!」
「なっ」
男が動揺したのが後ろ姿からでも明らかにわかる。
これは本当にやばいんじゃないか……。
「……そうか。愛里は照れてるんだね。まったく素直じゃないな」
「な、なにを言ってるんですか……?」
「僕は寛容だからね。許してあげるよ。でも嘘をつく子にはお仕置きをしなきゃね……」
男はそう言うと、ポケットからナイフを取り出した。
「あっ……」
佐倉がそれを見て硬直する。
「愛里がいけないんだよ? 嘘なんてつくから……」
「い、いや……」
男がナイフをかざし、再度佐倉に歩み寄る。
もう限界だな。
「綾小路。もう行くぞ」
俺はそう言い、綾小路の返事を待たずに佐倉のもとへ駆け寄る。
幸い男は佐倉しか見えていなかったようで、簡単に佐倉と男の間に割り込めた。
「な、なんだお前はっ!?」
男は突然現れた俺に驚いたようで、後ずさって距離をとる。
「か、界外くん……?」
佐倉が呆けた声で俺の名前を呼ぶ。
「綾小路もいるぞ」
「綾小路くんも……?」
俺は男の後方にいる綾小路を指さす。隣には一之瀬が立っている。……いつのまに来たんだ?
とりあえず佐倉をこの男から離さないといけない。
「僕の邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
男がナイフを振りかざし襲ってきた。
俺は瞬時にナイフを持つ男の右腕に打撃を与える。男があっけなくナイフを落としたので、それを綾小路の方に蹴り飛ばす。
「うっ」
男の体勢が崩れる。俺はその隙を逃さず、男の急所を思いっきり蹴り上げた。男は「ぱおん」と奇妙な奇声をあげて地面に突っ伏した。
「佐倉。今のうちに綾小路のもとへ」
「え、あ……」
「早く!」
「は、はいっ!」
佐倉は俺に急かされ、綾小路に駆け寄る。男は気絶しているようだ。念のため制服からベルトを外し男の両手の自由を奪っておく。
「ふぅ……。通報はよろしく」
汗を拭いながら綾小路に声をかける。綾小路は「わかった」と返事をすると携帯を操作し始めた。
久しぶりに凶器持った人と対峙したけど、何とかなるもんだな。
「界外くん!」
「ん?」
声をかけられ振り返った瞬間、一之瀬が抱きついてきた。
「もう! なんでこんな危ないことするの!」
一之瀬が声を荒げる。
「相手の人、凶器持ってたんだよ!」
「いや、でも……」
「でもじゃない! 心配したんだから……っ!!」
目を潤ませて俺を見上げる。背中に腕を回されて身動きができない。心臓が大きく跳ねる。
一之瀬は俺に抱きついたまま、か細い声で囁いた。
「こんな無茶しちゃ駄目だよ……」
「ごめんなさい……」
「ん」
これは背中を撫でて慰めたほうがいいのだろうか。今まで女の子に抱きしめられたことがないので、どうすればいいのかわからない。
とりあえずそっと一之瀬の頭に手を乗せ、撫でてみる。
「んっ」
一之瀬はビクっと大きく肩を震わせた。
「わ、悪い……」
「ううん」
彼女が俺の胸元に口を押しつけたままくぐもった。
「もっと撫でて」
思わず「えっ」と言いそうになってしまった。先ほどは勢いで撫でてしまったけど、恥ずかしい。近くに綾小路と佐倉もいるし。てか佐倉が顔を真っ赤にしてこっち見てるんですけど。
「えっと、そろそろ警察が来るんじゃ……」
「まだ来ないよ」
反論する声には涙めいたものが混じっている。そんな声を聞かされたら従うしかない。
どれくらい経ったのだろう。俺は一之瀬の絹のような美しい髪をそっと耳にかけたり、髪の毛の表面を撫でたりしている。
「界外、一之瀬。警官が来たぞ」
綾小路から声をかけられる。
いつまでもこうしていたかったが、一之瀬の髪を愛でる時間は終わりのようだ。
身を裂かれる思いで徐々に体を離すと、一之瀬は泣いて赤くなった目で俺の顔を見上げていた。
「どうしたんだ?」
「なんかごめんね。取り乱しちゃって」
「いや、俺の方こそ心配かけてごめん」
本当に心からそう思う。一之瀬を泣かせるつもりなんてなかった。
「ううん、そんなことな――――――」
一之瀬の言葉が途切れる。彼女の顔が首の付け根まで朱を注いだように真っ赤になっている。今になって抱き付いたことに対して照れてるのだろうか。
「界外。ズボンがずり落ちてるぞ」
綾小路が指摘する。
「え」
視線を下に向ける。
綾小路の指摘どおり、ズボンがずり落ちて俺の可愛らしい下着が露わになっていた。
直後、警官の怒声が響く。
泣いてる美少女の近くで下着を露出している俺ガイル。
警官が駆け寄ってくる。
そして俺は……
♢♢♢♢♢♢♢
その日の晩。俺は自室のベッドで仰向けになり、今日の出来事を振り返っていた。
今日はこの学校に入学してから一番濃い一日だっと思う。
堀北の頭をはたいたり、佐倉のストーカーを撃退したり、一之瀬に抱き付かれたり、下着を露出して犯人と間違えられそうになったり。
結局、一之瀬と綾小路が警官に事情を説明してくれて、俺が拘束されることはなかった。しかし、その後が長かった。4人とも学校の敷地内にある交番で事情聴取を受けた。警官から解放されると茶柱先生にお説教を受けた。なぜか説教中に星之宮先生に絡まれた。
現地で解散後、俺と一之瀬はいつものファミレスで夕食を済ませた。その際にCクラスのリーダーである龍園という男子生徒に注意するよう忠告を受けた。恐らく俺と堀北に接触してきた生徒と同一人物だろう。龍園については博士にお願いして調べてもらう予定だ。
「まあ、考えるのは明日にしよう。今日は早く寝ないとな……」
明日から期末テストに向けた勉強会に参加しなければならない。龍園の情報を仕入れたら対策も考える必要があるだろう。そして夜には一之瀬と二人きりの勉強会がある。そのため早く寝て明日に備えたい。備えたいのに……
「悶々として眠れない……」
一之瀬に抱きしめられた際、彼女が泣いていたので、その時は必死に考えないようにしていた。
彼女の凶悪なまでの胸の触感を。
完全に胸を押しつけられていた。強めに抱きしめられたせいで、俺の胸元に今までの比じゃない彼女の胸の触感が伝わってきた。あれは絶対変形していたと思う。
そして悶々とする理由がもう一つ。
堀北だ。
俺が生まれて初めて手をあげた女の子。
頭をはたいた時、普段クールな堀北からは想像できない可愛らしい声が発せられていた。
堀北の頭をはたくのは精神的に疲れるが、あの可愛らしい声を聞ければ、少しは回復するかもしれない。
もちろん頭をはたかないですむのが一番なんだが。早く堀北が生徒会長に対する苦手意識を克服してくれればいいんだけどね。まあ、気長に見守るしかない。
結局、一之瀬の胸の触感と堀北の可愛らしい声のせいで、眠りにつけたのは深夜3時を過ぎた頃だった。
次回は一之瀬との勉強会です!