実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
今期は水泳とバドミントンと部活ものが熱いですね
翌日の放課後。
勉強会開始の17時まで時間があるためDクラスの教室には、友達とお喋りをしている生徒、既にテスト勉強を開始している生徒、座禅をしている須藤の姿が見受けられた。
「ねえ、なんで須藤くんは座禅してるの?」
隣の席の松下が聞いてくる。
「さあ。精神集中してるんじゃないか」
俺がアドバイスしたからとは言えない。つーか放課後まで座禅しろとは言ってないんだけど。
俺と松下が話していると、佐藤が近づいてきた。
「界外くん、今日はよろしくね!」
「おう。ちなみに昨日は何の教科勉強したんだ?」
「昨日はしていないよ」
「え」
「ちなみに私も」
「松下もかよ」
佐藤も松下も期末テストが近いのに何をしてるんだよ。
俺が白い目を向けると佐藤が言い訳をし始めた。
「昨日は界外くんいなかったからさ……」
「俺がいなくても平田と櫛田がいるだろ」
「だってその二人は人気だからあまり質問できないし」
それは遠まわしに俺は人気がないと言いたいんだろうか。俺はイケメンランキング6位なんだぞ!
「界外くんに質問するのは私たちか博士しかいないもんね」
松下が非情にも俺に現実を突きつけてきた。
「そうそう。それに楽しく勉強できるしさ。ね、松下さん?」
「うん。リラックスして勉強できる感じかな」
「あ、そうですか……」
最後は持ち上げてくれたからよしとするか。
理由はどうであれ俺を頼ってくれてるのは事実だから彼女らの期待に応えねば。
「そういえば篠原はどうしたんだ?」
松下、佐藤、篠原は仲良し三人組だ。こういう時に一人だけいないのは珍しい。
「なんか廊下で池くんと口喧嘩してたけど」
佐藤が答える。
「あの2人よくやるよね。喧嘩するほど仲が良いっていうかさ」
松下が呆れたように言う。
確かに池と篠原はよく口喧嘩をしている。最初は櫛田や平田が止めに入っていたが、今や「またやってるよ」くらいしか俺たちは思っていない。
「仲が良いって言えばさ」
佐藤がにやにや笑いながら俺を見てくる。その顔ムカつくからやめろ。
「今日は堀北さんと手繋がないの?」
うん。絶対いじってくると思ったよ。
「あれは事情があったんだ。もう忘れてくれ」
「事情ってどんな事情?」
佐藤がしつこく聞いてくる。うぜぇ……。
「それは言えない。その話はもういいから勉強しようぜ」
「えー、まだ早くない?」
早くねぇよ。お喋りしてる時間あったら勉強しろよ。
「ま、時間勿体ないしそろそろやろっか」
意外にも松下に援護される。
「松下さん、真面目じゃん。どしたの?」
「後ろ」
「後ろ?」
俺は佐藤と一緒に後方を確認する。
そこには遠くからジト目で俺たちを睨んでいる堀北の姿があった。
どうやら勉強しないでお喋りしているのにご不満な様子だ。
「これ以上楽しくお喋りしてると私と佐藤さんが危ないからね」
「確かに確かに」
なんで松下と佐藤だけなんだ。俺も怒られると思うんだけど。
「それじゃよろしくね」
「よろしくねー」
「あいよ」
こうして堀北の粘りつくような視線を感じながら勉強会が開始された。
♢♢♢♢♢♢♢
勉強会が始まって1時間。
俺は松下、佐藤、篠原、博士の講師役をしつつ、自身の復習をこなしていた。
堀北を見てみると、中間テストの時と同様に3馬鹿に勉強を教えていた。3人とも真面目に勉強をしているようだ。
綾小路は時折、櫛田と話をしながら一人で黙々と勉強をしている。……綾小路と櫛田って仲良いよな。2人で行動しているのもたまに見かける。そういえば俺の部屋に来た時も2人だった。付き合ってるわけではないだろうけどなんか怪しいな。俺のシックスセンスがそう囁いている。
「ちょっとお手洗いに行ってくる」
四人に声をかけ、教室から出る。
廊下を突き進むと背後から「ちょっと」と声をかけられる。立ち止まり振り向くと堀北の姿があった。
「おう。お疲れ」
「お疲れ様」
「3馬鹿の様子はどうだ?」
「一応真面目に勉強してると思うわ」
「そっか」
「そっちは楽しくお喋りしていたようだけど」
堀北はそう言うと、先ほどと同じようにジト目で睨んできた。
やはり怒っていらっしゃるようだ。
「うるさかったのは謝る。けど開始前だったし大目に見てくれ」
「別にうるさいとは言ってないわ」
「ならなんで怒ってるんだよ」
「怒っていないけれど。ただ私は事実を言っただけ」
いや、その目は絶対怒ってるよね?
腕も組んでるせいか威圧感が凄いんですけど……。
「……お喋りはしてたけど別に楽しくはないぞ」
「本当かしら」
「本当だよ。昨日の件でからかわれてただけだし」
「昨日の件とは?」
「……俺と堀北が手を繋いで教室に戻ったことだよ……」
「あっ」
なんで昨日の俺はあんな失態をしてしまったんだ……。
あんなことしたら松下たちにからかわれるのは目に見えてたじゃないか。
「堀北が相手しないから、俺に全部しわ寄せが来るんだぞ」
「し、知らないわよ。あなたが勝手に私の手を握ったんでしょ……」
「確かに最初に握ったのは俺だけど、引っ張っていたのは堀北だろ」
「……覚えてないわね」
このアマ……。今度は強めに頭をはたいてやろうか?
……いや、駄目だ。俺は何考えてるんだ……。もう少しでそっち側にいくところだった。危ない危ない。
「まあ、いいや。また後でな」
「ええ」
その後、トイレの個室に入った俺はあまりの居心地の良さにより10分ほど寝てしまった。
トイレの個室が学校で一番居心地がいいと思ってしまうなんて末期だな俺……。
眠気覚ましに顔を洗い、トイレから出るとなんと一之瀬がいた。
「やほー」
「よう。どうしたんだ?」
「界外くんがお手洗いに入るのが見えてね、待ってたの」
どうやら俺に用があるようだ。
「この後のことなんだけどさ」
「勉強会か?」
「うん。夕食済ましてから二人の勉強会しようと思って。帰ってから夕食作ったりするの面倒でしょ?」
「そうだな。それじゃクラスの勉強会が終わったら、待ち合わせしてどっかで飯食べるとするか」
「うん。そしたら界外くんの部屋に行こうね」
まあ、この時間じゃどちらかの部屋でやるに決まってるか。ファミレスじゃ騒がしくて集中できないもんね。
「わかった。それじゃまた後で」
「うん。またね!」
♢♢♢♢♢♢♢
その日の夜8時頃。俺と一之瀬はいつものファミレスで夕食を済ませ、帰り道を歩いている。
「こんな時間なのにまだ暑いね」
手で顔を仰ぎながら一之瀬が言う。
「だな。部屋に着いたらすぐにエアコンつけないと」
「こういう時スマホで遠隔できるの欲しいよね」
「それな」
大量にポイントが入ったらそういう機能ついたエアコン買おうかな。
そうこう話しているうちに、あっという間に寮に辿り着く。一之瀬と一緒にいると時間が経つのが早く感じる。
呼び出しボタンを押してエレベーターに乗り込もうとすると、綾小路と鉢合わせした。
「よう」
「やほー、綾小路くん」
「二人とも、今帰りか。遅いな」
「飯食べてきたんだ。綾小路は今からお出かけか?」
「ああ。ちょっとコンビニにな」
通りでラフな格好なわけだ。それより用があるなら引き止めちゃ悪いな。
「そうか。それじゃまた明日な」
「またね、綾小路くん!」
「ああ」
綾小路を見送り、エレベーターに乗り込む。
そういえば今から一之瀬を部屋に上げるんだよな。少し緊張してきた……。
部屋は綺麗にしてるし、夜の体育の教材はすべてPCの中。特に見られて困るものはない。
頭の中で考えてると四階に着いた。エレベーターを降りて、部屋に向かう。
「なんだか緊張しちゃうな」
玄関の前で一之瀬が言う。
「ん?」
「私、男の子の部屋上がるの初めてだから」
一之瀬がえへへと照れながら笑う。
つまり俺が一之瀬の初めての男ってわけか。なんか自分に自信がついたぞ。
「そ、そっか。まあ、大して面白くもない部屋だが……」
俺は自虐をしつつ、扉を開ける。
「お邪魔しまーす」
とうとう一之瀬を部屋に招き入れてしまった。
「結構片付いてるんだねー」
「散らかる物がないだけだぞ」
俺はそう言いながら、ハンガーを一之瀬に手渡す。部屋の中までブレザーを着ていても暑いだけだ。
「ありがとう」
一之瀬がゆっくりブレザーを脱ぐ。
なんでだろう。ただ上着を脱いでるだけなのに、エロく感じてしまった。
「どうしたの?」
やべ、見惚れてたのがばれてしまった。何か言い訳しないと……。
「い、いや。暑いのにブレザー大変だなと思って……」
「にゃはは。それは界外くんも一緒でしょ」
「た、確かに……」
ふぅ。何とか誤魔化せた。
「それじゃ早速やろっか」
一之瀬、主語を言って主語を! じゃないと変なこと考えちゃうから!
落ち着きを取り戻した俺はテスト勉強を始めた。テスト勉強と言っても、二人とも毎日勉強をしているので行っているのは復習程度だ。
「今日はこれくらいにしとくか」
一時間位経っただろうか。切りがいいところまで進んだので一之瀬に言う。
「だね。初日だしね」
一之瀬が教科書を閉じながら言った。
「そういえば期末テストも特別ボーナス出るの?」
「ああ。今日おねだりしておいた」
「また5万ポイント?」
「そうだ。今回もゲットしないと」
前回は須藤のせいで4万ポイントを即使うことになってしまったからな。
「夏休み近いからポイントはあるに越したことはないもんね」
「ああ。それに9月には一之瀬と映画にも行くからな」
「だね! あとね……」
「ん?」
「夏休みも何処か一緒に遊びに行きたいなーって」
一之瀬がチラチラと見てくる。
まさか一之瀬から誘ってもらえるとは。
これは一之瀬も俺と遊びたいという気持ちがあるってことだよな。
「もちろんだ。予定は空けておくからいつでも誘ってくれ」
「うん! 約束だよ?」
「ああ」
「そうだ! 指切りしよ!」
「あいよ」
一之瀬と指切りを交わす。
「指切りげんまん、嘘ついたら耳に生きたムカデを入れる♪」
「え」
「指切った♪」
この子なんて言った? 生きたムカデを耳に入れる? どこのヤモリさんだよ……。
「い、一之瀬? 今不穏なこと言わなかったか?」
「にゃはは。冗談だよ冗談」
「なんだ、冗談か……」
「当たり前だよー。そんなことするわけないじゃん」
ですよねー。びっくりした。お互い東京喰種ファンだから一之瀬なりの冗談だったのだろう。
「はぁ、なんだか眠たくなってきちゃった」
テーブルに伏せながら一之瀬が言う。恐らく集中が切れて一気に眠気が襲ってきたのだろう。かくいう俺も眠い。
「俺もだ」
「一緒だねー。……よし、そろそろ帰ろうかな」
一之瀬がゆっくりと立ち上がる。表情を見ると大分眠たそうだ。眠たそうな顔の一之瀬も可愛い。
ハンガーにかけてあったブレザーを取り、玄関へ向かう。
「それじゃまた明日ね」
「ああ。またな」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
一之瀬を見送り、俺はすぐにシャワーを浴びた。頭を乾かし終わったころには10時を過ぎていた。いつもより一時間早いが今日はもう寝るとしよう。ベッドに横になると昨日とはうって違い、のび太並にすぐに眠りの世界に旅立つことができた。
翌朝。いつも通り6時に起床し、携帯を見ると一之瀬からチャットが入っていた。
『間違って界外くんのブレザー持って帰っちゃった! ごめんね!』
一之瀬のチャットを見てから、壁に掛けてあるブレザーを見る。確かにそこには俺のサイズより明らかに小さいブレザーが掛けられていた。昨日は大分眠たそうしていたので、一之瀬が間違えるのも仕方ない。現に俺も彼女のチャットを見るまで気づかなかった。
『俺も気づかなかったからお互い様だ』
一之瀬に返信すると、すぐに彼女からチャットが入る。
『そう言ってくれると助かるよー。いつもの待ち合わせ場所で交換しよ』
『了解。それじゃまた後で』
『うん。またね!』
一之瀬とのチャットを終え、朝食と弁当作りに入る。昨晩は自炊しなかったので当然残り物がない。今日の弁当は冷凍食品中心で作るしかなさそうだ。味気ないが仕方ない。
2時間後。いつもの待ち合わせ場所に向かうと、既に一之瀬がいた。
「あ、おはよう。界外くん」
「おはよう。待たせたか?」
「ううん。それよりこれ」
一之瀬がブレザーを渡してくる。
「おう」
彼女からそれを受け取り、俺も一之瀬にブレザーを渡す。
「ごめんね。寝ぼけて間違えちゃったみたいで……」
「気にしなくていいぞ」
それより俺のブレザーが少ししわくちゃになっているような……。
「やっぱ気になるよね。昨日ハンガーに掛けないで、そのまま寝ちゃって……」
一之瀬がブレザーを確認する俺に察したようで言う。
「ごめんね」
非常に申し訳なさそうな顔で謝る一之瀬。しょんぼりしてる彼女も可愛い。
「夏休みに入ればクリーニングに出す予定だったから大丈夫だ」
「そっか。そう言ってくれると助かるかも」
「それよりそろそろ行こうぜ。遅刻する」
「そだね。いこっか」
やっといつもの一之瀬に戻った。しょんぼりしてる姿も可愛いけど、やっぱり一之瀬は笑顔じゃないとね。
彼女の笑顔を見るだけで、今日も一日頑張ろうと思える。
俺は彼女の笑顔の虜であると再認識させられた朝だった。
テンポ重視で一之瀬との勉強会の描写少ないかもです。今度SS②で投下するんでよろしくです!