実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
学校2日目。俺は寮の玄関ホールでラブリーマイエンジェルほなみたんを待っていた。
……さすがにほなみたんは気持ち悪かったな。本人には絶対言わないでおこう。
「おはよう。界外くん!」
「おはよう。一之瀬」
「もしかして結構待った?」
「いや、俺も今来たところ」
「そっか。よかったー。それじゃいこっか」
「ああ」
嘘です。本当は30分前から待ってました。
一之瀬との通学が楽しみ過ぎて、つい早く来てしまいました。
俺と一之瀬は雑談しながら学校へ向かっていた。
「え? お弁当作ってきたの?」
「ああ。毎日弁当にしようと思う」
「偉いね。料理好きなんだ?」
「好きだな」
そう。俺は料理が好きだ。どれくらい好きかと言うと遠月学園に入学したいと思うほど好きである。
いつか一之瀬に手料理を振る舞って、おはだけさせたい。
♢♢♢♢♢♢♢
一之瀬と廊下で別れ、教室に入るといきなり男子2人が声をかけてきた。
「界外! お前彼女がいるのか!?」
「一緒に登校してたよな。どうなんだよ!?」
朝からうるさいなこいつら。目立っちゃうからボリューム下げてくれよ。
それより俺の名前覚えてくれたのか。少し嬉しい。ここは優しく接しよう。友達になれるいいチャンスかもしれない。
「一之瀬は彼女じゃないぞ。地元が一緒だから仲良くしているだけだ」
「なんで入学2日目で女の子と仲良く出来るんだよ!」
「お前化物か!?」
化物かって。この後、『今からお前の春を殺す』とか言われちゃうんだろうか。
「たまたま初日に電車に一緒になっただけだぞ」
「そうなのか。運がいいなお前」
「だよな。あんな美少女と仲良くなれるなんて」
本当に運がいいと思う。もう高校生活3年分の運を使い果たしたしてるんじゃないだろうか。
そういえばこの2人の名前がわからない。何とか聞き出して仲良くなるきっかけを作らないと。
「しかも胸大きいしな」
「だよな。あれはヤバイ」
前言撤回。こいつらと仲良くなる気はなくなった。
一之瀬をエロい目で見るとは。クインケで両目を潰してやろうか。
俺が殺気を放っていると始業のチャイムが鳴り、2人は自席へ戻っていった。
授業初日ということもあり、授業の大半は勉強方針などの説明だけだった。
授業中にお喋りをしたり、居眠りをする生徒がいたが先生たちは一切注意をしなかった。
時間を置いて監視カメラの映像を見せられ注意されるのだろうか。それとも監視カメラの存在は知らせずにポイントを減点させていくのか。
物思いにふけていると、いつの間にか昼休みを迎えた。
「えっと、これから食堂に行こうと思うんだけど、誰か一緒に行かない?」
爽やかイケメンは立ち上がると、そんなことを言った。
凄いな。こういうのを当たり前に出来るなんて尊敬する。
周りを見渡すと茶髪のイケメンが手を挙げようとしていたが、爽やかイケメンは女子数人を引き連れて教室の外へと行ってしまった。
茶髪のイケメンは、挙げかけた宙ぶらりんな手で頭を掻いて誤魔化していた。
あいつも俺と一緒で友達が欲しいけど出来ないんだろうな。何だか親近感が湧いてきたぞ。
タイミングを見計らって声をかけてみようかな。よし。隣の女子がいなくなったら声をかけよう。隣の女子が席を立った。よし今だ!
「綾小路くん……だよね?」
ずこーん。勇気を振り絞って声をかけようとしたが他の子とタイミングが重なってしまった。
話しかけられる絶好のチャンスだったのに!
茶髪のイケメンは綾小路っていうのか。覚えておこう。
さて、綾小路を誘うのは諦めて1人で弁当を食べるとするか。
はぁ。1人で弁当食べるのは楽しいなあ。
弁当は美味しいし、周りは静かだし文句ないなあ。
ため息をつきながら弁当を食べていると、スピーカーから音楽が流れてきた。
「本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動の説明会を開催いたします――――」
部活動説明会か。将棋部でも入ろうかな。でもアニメ終わっちゃったからな。
部活は入らずに勉強頑張るか。最近は主人公がヒロインに勉強を教えるラブコメが流行ってるみたいだし。
でも国立だし勉強が苦手な子はいないだろうな。
そういえば綾小路は説明会に参加するのだろうか。ふと気になり彼の席を見ると、隣の女子と仲良くお喋りをしていた。
「……」
虚しさに苛まれた俺は部活動説明会に参加せず、寮へまっすぐ帰宅した。
♢♢♢♢♢♢♢
「いやー授業が楽しみ過ぎて目が冴えちゃってさー」
「この時期から水泳の授業があるなんて最高だよな!」
登校すると池と山内が騒いでいた。
どうやら水泳の授業が楽しみでしょうがないらしい。
ちなみにこの2人の名前は、女子が彼らの陰口を何度も叩いてるのを聞いているうちに覚えてしまった。
この2人の女子からの嫌われっぷりは異常だ。
しかし水泳の授業か。一之瀬の水着姿も見てみたかったな。夏休みに頑張ってプールに誘ってみるか。
「おーい博士。ちょっと来てくれー」
「フフッ、呼んだ?」
太目の生徒が、あだ名なのか「博士」と呼ばれて池へと近づいていった。
「博士、女子の水着ちゃんと記録してくれよ。おっぱい大きい子ランキングの為に」
「任せてくだされ。体調不良で授業を見学する予定ンゴ。おっぱい大きい子ランキングの為に」
おっぱい連呼しすぎだろ。
こいつらは女子達から汚物を見るような目を向けられていることに気づいていないのだろうか。
綾小路が池に呼ばれておっぱい戦士たちに近づいていった。どうやら彼は女子の好感度より男同士の友情を選んだようだ。
ちなみに一番の巨乳候補は長谷部という女子らしい。なんか心を整えてくれそうな名前だな。
「あなたは参加しないの?」
「え」
急に綾小路の隣の席の女子から声をかけられた。
俺もおっぱい好きに見られているのだろうか。確かにおっぱい好きなのは否定しないが、あそこまで本能丸出しにはしない。
「ああいう馬鹿騒ぎは苦手なんだ」
「そう。まともな男子がいてよかったわ」
よかった。まともな男子認定されました。
ていうかこれは彼女と交流を深めるいいチャンスでは?
よし、今度こそ決めてやる。
「えっと、綾小路の隣の席の子だよな。俺の名前は界外帝人。よろしく」
「その覚え方、非常に不愉快なのだけれど」
「ご、ごめんなさい……。まだクラスメイトの名前を覚えていなくて……」
ひええ。怒らせてしまった。
確かにそんな覚え方されたら嫌だよな。また友人を作るチャンスを潰してしまった……。
「堀北鈴音よ」
おお、答えてもらえないと思ってたのに教えてもらえたよ。
まさか男子より先に女子から名前を教えてもらえるとは。
よし、この勢いで世間話をしてみるか。
「それじゃ」
そう言うと堀北は自席へと戻っていった。
くっ、もう少し会話を続けたかったのに。
まあ、堀北から声をかけてくれたことだし、また話す機会もあるだろう。
♢♢♢♢♢♢♢
「うひゃー、やっぱこの学校はすげぇな! 街のプールより凄いんじゃね!?」
着替えを済ませた男子の一部が、プールを見るなり、そんな声をあげた。
確かに凄いな。屋内で天気の影響も受けないし、温水だから春でも十分泳げる。フリーしか泳がない水泳部員がいる高校のとは大違いだ。
「女子は? 女子はまだなのか!?」
鼻をふんふんと鳴らしながら、池は女子を探す。
ここまで本能に忠実なやつも珍しいな。
「うわー。凄い広さ、中学のプールより全然大きい」
男子グループから遅れること数分、女子の声が耳に届いた。
「き、来たぞ!?」
身構える池。そんなに露骨だとまた汚物を見るような目を向けられるぞ。
いや、もう池自体が汚物ではないだろうか。
まあ、俺も健全な男子高校生なので興味ありまくりなのだが。
「長谷部がいない! ど、どういうことだっ!?」
どうやら長谷部は見学のようだ。そりゃあれだけ騒がれていれば見学するだろう。
池たちを見ると、綾小路以外は頭を抱えてその場に崩れていた。
「クソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「なんでだよ! 俺たちが何したっていうんだよ!!」
プールサイド全体に、池と山内の叫びがこだまする。
一部の女子たちからキモ、と呟かれている。
あいつらの近くにいなくてよかった。
「2人とも、なにやってるの? 楽しそうだねっ」
「く、くく、櫛田ちゃん!?」
2人の間を割って入るように、巨乳の子が顔を覗かせた。
この子も可愛いな。しかもスタイルもいい。
櫛田っていうのか。また1人クラスメイトの名前を覚えたぜ。
「綾小路くん、何か運動してた?」
「特に。自慢じゃないが中学は帰宅部だったぞ」
俺がクラスメイトの名前を新たにインプットしていたところ、堀北と綾小路が話しながらこっちへ向って来た。
堀北の水着姿も健康的でいいな。
……ていうか何でこっち来てんだ?
「界外くんは何か運動してた?」
「俺?」
「ええ」
まさか面接以外でスポーツ経験を聞かれるとは思わなかった。
堀北が俺に少しは興味を持ってくれたということだろうか。
「そうだな。バスケット、バレー、ロードレース、サッカー、野球、卓球、水泳、合気道、剣道くらいかな」
「そ、そう……。た、沢山経験してるのね……」
あれ、引かれてる?
おかしいなあ。特に引かれるようなことは言ってないと思うんだが。
「そんな多くのスポーツを経験してるとは凄いな」
堀北に引かれた原因を考えていると、綾小路に声をかけられた。
俺のスポーツ経験の豊富さに感心してくれてるようだ。
よし、このまま自己紹介して交流を深めるぞ。
「ありがとう。俺の名前は界外帝人。よろしく」
「綾小路清隆だ。よろしく頼む」
やったぜ。とうとう男子から直接名前を教えてもらったぞ。
なんだか綾小路とは仲良くなれそうな気がする。根拠はないけれど。
後で連絡先を聞いておこう。
「そういえば堀北は何で俺のスポーツ経験なんて聞いたんだ?」
綾小路との自己紹介を終えたところで、堀北に質問の意図を聞いてみる。
「アスリートのような体つきをしてたからよ」
「なるほど。堀北は筋肉フェチなのか」
「違うわ」
速攻で否定された。
「よーし、お前ら集合しろ」
マッチョ体型のおっさん教師が集合をかけ授業が始まる。
何だかPK学園にいそうな体育教師だな。
「見学者は16人か。随分と多いようだが、まぁいいだろう。準備体操を終えたら、早速泳いでもらう」
「あの、俺あんまり泳げないんですけど……」
「俺が担当するからには、必ず夏まで泳げるようにしてやる。安心しろ」
「どうせ海なんて行かないし、無理して泳げるようにならなくてもいいんですけど」
「そうはいかん。今は苦手でも構わんが、克服はさせる。泳げるようになれば必ず役に立つからな。必ず、な」
教師の説明が終わり、全員で準備体操を始める。それから50mほど流して泳ぐように指示される。
俺は綾小路と一緒に軽く泳ぎ、全員が終えるのを待った。
「とりあえずほとんどの者が泳げるようだな。では早速だがこれから競争をする。男女別50m自由形だ」
自由形だと? つまりフリー。
フリーしか泳がない俺にうってつけの競争じゃないか。ふふふ、勝ったな。
「急ににやついてどうしたの? 気味が悪いのだけれど」
堀北が何か言ってるようだが気にしない。
久しぶりに水に飢えてやろうじゃないか。
「1位になった生徒には、俺から特別ボーナス、5000ポイントを支給しよう。一番遅かった者は、補習を受けさせるからな」
しかも1位に5000ポイントの特別ボーナスだと。
今日はついてるな。堀北、綾小路と交流を深め、5000ポイントもゲットときた。
「堀北、綾小路」
「なに?」
「どうした?」
「明日の昼食奢ってやる。好きなもの頼んでいいぞ」
「え、いいのか?」
「大した自信ね。もう勝った気でいるのかしら」
「俺に勝てるのは俺だけだからな」
30分後。頭を抱えて崩れている少年がいた。ていうか俺だった。
俺は予選を圧勝したものの、決勝では高円寺に競り負け、僅差の2位でレースを終えた。
「惜しかったな」
顔をあげられない俺を綾小路が慰めてくれている。
ちなみに綾小路は予選で10位だったようだ。
「哀れね」
「うっ……」
「俺に勝てるのは俺だけ、だったかしら」
堀北が嘲笑しながら俺を見下ろしている。
死にたい……。
なんであんな調子に乗ったこと言ってしまったんだ。クラスメイトと会話が出来て浮かれていたんだろうな。
ていうかあの金髪、速すぎだろ。Wi-Fiの電波を気にしていそうな奴に似てるくせに。
「界外くん」
「……はい」
「明日、お昼楽しみにしてるわ」
「……はい」
明日はクラスメイトと一緒にランチだ。
嬉しいなあ。ははは。はぁ……。