実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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9巻イラストの一之瀬が儚過ぎてやばい
8巻の橘先輩に続いて9巻は一之瀬が酷い目に合いそう……


18話 ハッピー・バースデイ

 とうとう期末テスト当日を迎えた。

 思えばこの二週間はとても充実していたと思う。平日は放課後にクラスでの勉強会でみんなの講師役に従事する。勉強会後は一之瀬と夕食を済ませ、俺の部屋で二人きりの勉強会を毎日行った。

 一之瀬との勉強会では胸の触感、背中からの透けブラ、テーブルの上に乗せられたおっぱい、天使過ぎる寝顔とたっぷり一之瀬を堪能できた。さすがに俺のベッドで仮眠すると言って、朝まで起きなかった時は焦ったけど……。あの時はやばかった。寝ている彼女に興奮しないように上条さんを参考にして湯槽で一夜を過ごした。翌日は筋肉痛が酷かった。上条さんはよく毎日続けてられるな……。

 ちなみに一之瀬は自室に帰る際に早朝ランニング帰りのクラスメイトと遭遇してしまい色々と大変だったようだ。まあ、早朝に制服姿で男子が住んでる階からエレベーターに乗ったら誤解されるよね。……いつか本当に一之瀬が朝帰りするような関係になりたいものだ。

 

「今日はお互い頑張ろうね」

 

 隣で歩く一之瀬が言う。

 

「ああ。今回も負けないぞ」

「ボーナスがかかってるもんね。でも私だって負けないよ」

 

 好戦的な目を向ける一之瀬。なるべく彼女と争うことはしたくないが、ボーナスがかかっているので仕方がない。

 

「勝負だな」

「勝負だね」

 

 前回の中間テストは俺が1位で一之瀬が2位だった。ちなみに入試も俺が1位で一之瀬が2位。彼女も万年2位という汚名を返上したいのだろう。

 

「あっ、勝負するのはいいけど、打ち上げはいつも通りしようね」

「ああ」

 

 当然じゃないか。一之瀬と打ち上げをしないと、イベント事が終わった気がしないからな。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 廊下で一之瀬と別れ教室に入ると勉強をしている生徒が多く見受けられた。

 

「やあ、おはよう」

 

 自席に向かう途中で平田に挨拶をされた。

 

「おはよう。みんな集中してるな」

「うん。いい雰囲気だよね」

 

 平田の言う通りだ。まさかうちのクラスがこんな雰囲気を出せるなんて。入学当初のDクラスが嘘のようだ。

 改めて教室を見渡すと、池と山内も真面目に勉強しているのが見受けられる。須藤は座禅をしている。どうやら精神統一をしているようだ。ちなみに一部のクラスメイトからは、座禅の須藤と呼ばれてるようだ。

 

「界外くんは今回も1位取れそう?」

「ああ。人事も尽くしたしな」

「凄い自信だね。僕にも少し分けて欲しいよ」

 

 あはは、と笑いながら平田が言う。

 

「平田だって上位を狙っているんだろ」

「もちろん。少しでもいい点数を取れば、クラスポイントにも影響が出るかもしれないからね」

 

 本当にクラスのことを考えているんだな。ボーナスのことばかり考えてる俺とは大違いだ。

 

「それじゃお互い頑張ろう」

 

 平田はそう言うと、自席に戻っていった。

 

「おはよ」

 

 隣人の松下が声をかけてきた。

 

「おっす。調子はどうだ?」

「今までで一番調子いいかも」

「それはなにより」

「界外くんは1位取れそう?」

 

 松下が平田と同じ質問をしてくる。

 

「恐らく」

「そっか。……それじゃ例の約束よろしくね」

「了解」

 

 そう。俺は松下とある約束をしたのだ。俺が期末テストで1位を取りボーナスポイントをゲットしたら彼女に焼肉、2位以下ならパフェを奢ると言う約束だ。ちなみに佐藤と篠原には内緒である。

 

「土曜は世話になったな」

「ううん。それに私に声をかけて正解だったと思うよ。界外くん一人だったら絶対変なもの買ってたでしょ?」

「……多分」

 

 先週の土曜日。俺はある人物に贈るプレゼントを買うため、松下に買い物に付き合ってもらった。その報酬として期末で1位を取ったら焼肉を奢る約束をしたのだ。

 

「彼女、喜んでくれるといいね」

「……ああ」

 

 本当に松下にはお世話になった。彼女の為にもボーナスポイントをゲットして、焼肉を奢れるようにしなくては。

 暫くして茶柱先生が教室に入ってきた。室内にピリピリした空気が漂う。

 俺は松下との会話を切り上げ、テストに向けて集中力を最大限まで引き上げた。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 2日後の放課後。俺と一之瀬は打ち上げをするためカラオケ店に足を運んでいた。

 

「かんぱーい!」

 

 いつも通りドリンクバーで乾杯をする。

 

「今回も負けちゃったよー」

「惜しかったな」

 

 この日は期末テストの結果が返ってきた。俺は全教科満点で学年1位をとり、無事にボーナスポイントをゲットした。一之瀬は今回は調子が悪かったようで4位だった。それでも十分凄いんだけどね。

 

「英語のケアレスミスが痛かったかな」

「一之瀬がケアレスミスって珍しいな」

「にゃはは。私も人間だからミスくらいするよ」

 

 一之瀬が笑いながら言う。特に悔しそうな様子もない。

 ちなみに博士も英語のテストはケアレスミスが痛かったと言っていた。50点のくせに何がケアレスミスなんだろうか。

 

「もうボーナスポイントは振り込まれたの?」

「ああ。これで大分懐が潤った」

 

 現在のポイント残高は10万ポイント強ある。これくらいあれば一之瀬と出掛けたり、博士と映画を観に行くのに余裕で足りるだろう。秋には大量のポイントも手に入る予定だしね。

 

「なら遠慮なく遊びに誘っても問題ないってことだよね」

 

 一之瀬が問う。

 

「もちろん」

「じゃあさ、今日のうちにどこに遊びに行くか決めちゃおっか」

「そうだな。予定は早めに立てておいたほうがいいからな」

「だよね」

 

 それから俺と一之瀬はお互いに行きたい場所を言い合った。とりあえず確定したのは、プールと猫カフェの2か所だ。

 

「水泳部専用のプールか」

「うん。夏休み終了の一週間だけ全校生徒に開放されるんだって。市民プール並の設備なんだよ」

「なるほどな……」

 

 よし。これで一之瀬の水着姿が見られる。ただ他の男共にも見られることになるのか……。

 

「えっと、プールあんま行きたくない感じ……?」

 

 俺が難しそうな顔をしてると、難色を示したように見られたのか一之瀬が不安そうに聞いてきた。

 

「いや、違うぞ! 人が多そうだから、一之瀬と二人きりになれる場所の方がいいなと思っただけで!」

 

 危ない危ない。一之瀬に勘違いされるところだった。

 

「ふ、二人きりって……」

 

 一之瀬が俯いてる。どうしたんだろう。

 

「界外くんは私と二人きりになれる場所がいいの?」

「そうだな」

 

 だって人多いところは落ち着かないし。二人きりの方がゆっくりできるからね。

 

「そ、そうなんだ。気持ちは凄い嬉しいけどプールも行きたいよ……」

「あ、ああ。プールはもちろん行くぞ」

「うん。……えっと、二人きりになれる場所に関しては界外くんが決めてね。私、どこでもいいから……」

 

 一之瀬が顔を赤くしながら言う。

 二人きりになれる場所か。自室で勉強するか、カラオケと満喫くらいしか思い浮かばないな。

 

「わかった。考えておく」

「うん」

「それよりそろそろ歌うか」

「だね! 歌おう歌おう!」

 

 それから俺と一之瀬は2時間ほど熱唱した。最近J-POPを勉強した俺だったが選曲の8割はアニソンだった。

 

「界外くんが俳優さんの曲を歌うの珍しいね」

 

 一休みをしてる俺に一之瀬が聞いてくる。

 

「いや、ヒロアカの映画の主題歌だからね」

「え、そうなの?」

「ああ。3期のエンディングにも使われてるけど」

「全然知らなかったよ。今月テスト勉強しててアニメ溜めちゃってるからさー」

 

 と言うことは、夏アニメを全然見ていないってことか。

 

「今期のお勧め教えてね」

「ああ。リスト作っておくよ」

 

 ぐらんぶるとあそびあそばせはリストから除外しておかないと。一之瀬に悪影響を及ぼしてしまうからな。

 それよりそろそろ例の物を渡すとするか。

 

「一之瀬」

「ん?」

「一之瀬に受け取って欲しいものがあるんだけど」

「なになに?」

「これなんだけど」

 

 俺はそう言うと、鞄からラッピングされた小さな箱を取り出す。

 

「これ。誕生日おめでとう」

 

 恥ずかしかったのでぶっきらぼうに彼女に手渡す。

 

「え」

「7月20日。今日は一之瀬の誕生日だろう」

「な、なんで……? 教えてないのに……」

「いや、アドレスに日付入ってたから」

「あっ」

 

 自分のメールアドレス忘れてたのかよ。抜けてる一之瀬も可愛いな。

 

「あ、ありがとう。……開けてもいい?」

「もちろん」

 

 一之瀬が箱をテーブルの上に置き、丁寧にラッピングを剥がしていく。気に入ってもらえるだろうか。緊張してきた。

 

「あ、これ……」

 

 ラッピングを剥がしたプレゼントの中身は……

 

「置き時計?」

 

 そう。俺が松下と相談して一之瀬の誕生日プレゼントに選んだのは置き時計だ。もちろんただの置き時計ではない。音感知機能つきの木製LEDデジタル目覚まし時計だ。松下のアドバイスによると、女性らしさのあるナチュラル感な物が人気とのことだったのでこのデザインの置き時計に決めた。

 

「ああ。前に置時計が欲しいって言ってただろ」

「覚えててくれたんだ」

 

 少し前に一之瀬と雑貨屋に行った時に彼女がそう呟いてたのを覚えていた。

 

「……嬉しい」

 

 置時計を大事そうに抱える一之瀬。どうやら気に入ってもらえたようだ。

 

「本当に嬉しい……」

 

 直後、一之瀬の目から瑠璃のような光る涙がこぼれた。彼女の涙はそのまま結晶になるのではないかと思うほど綺麗だった。

 次々とこぼれていく彼女の涙に目を奪われる。一之瀬は自身の指で涙を拭った。

 俺は我に返り、未使用のハンカチを一之瀬に渡した。

 

「ありがとう」

「いや……」

 

 俺は常にハンカチを2枚持っている。1枚は自分の手を拭くもの、もう1枚は女性の涙を拭くものだ。なぜ2枚携帯しているかと言うと、マイ・インターンという映画で主人公のベンが言った「ハンカチは貸すためにある。女性が泣いたときのため、紳士のたしなみだ」という名言に感化されたためだ。佐倉のストーカーを撃退して一之瀬を泣かせた時は抱き付かれてパニクって渡せなかったけど、今回は渡せた。

 

「ごめんね。大げさだよね」

「そんなことない。泣くほど喜んでもらえるなんて光栄だ」

 

 本当なら泣いてる一之瀬を抱きしめたい。でもへたれな俺には無理なのです。ハンカチを手渡すだけで精一杯なのです。

 5分ほど経って一之瀬が泣き止んだ。

 

「ごめん。もう大丈夫」

「そっか。もうそろそろ時間だけど延長するか?」

「ううん。お腹も減っちゃったし、いつものファミレスに行こ」

「わかった」

 

 一之瀬を連れてカウンターに向かう。いつも対応してくれる店員さんだったが、明らかに泣いて目が腫れてる一之瀬を見てギョッとする。そして訝しげな目を俺に向ける。俺が泣かせたわけじゃないんだけど。……いや、泣かせたのは俺か。

 ファミレスでは一之瀬のクラスメイトと遭遇した。その際に白波さんという女子に睨まれてしまった。どうやらカラオケの店員さんと同様に俺が一之瀬を泣かしたと勘違いしたようだ。正確には勘違いではないので誤解を解くのは大変だった。結局、目を腫らしたままの一之瀬が説明してくれて事なきを得た。





また明日!
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