実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
今回はお料理回
翌日。終業式が終了し、無事に一学期を終えた。
一学期最後のホームルームで茶柱先生から夏休みに行われる2週間の豪華旅行の説明があった。旅行内容は豪華客船によるクルージングの旅。……怪しい。この学校のことだ。俺たちに甘い蜜を吸わせるだけのイベントであるはずがない。俺は警戒心MAXで茶柱先生の説明を聞いた。ちなみに他の生徒たちは明日から夏休みということもあり浮かれた様子で説明を聞いていた。
「ねえ」
「ん?」
ホームルーム終了後、松下が声をかけてきた。
「焼肉いつにしよっか?」
そう。俺は一之瀬の誕生日プレゼント選びに付き合って貰ったお礼に松下に焼肉を奢る約束をしている。
「俺はいつでもいいぞ」
「それじゃ明日は?」
「いいぞ。時間は任せる」
「わかった。後でチャット送るね」
「あいよ」
一之瀬に誕生日プレゼントを渡したら泣くほど喜んでくれた。これも松下のおかげだ。明日はいい肉をご馳走しようじゃないか。
松下に帰りの挨拶をして教室を出る。
「ちょっと待って」
玄関に向かおうとしたところで後ろから声をかけられる。振り向くと堀北が俺の袖を掴んでいた。こういうことされるとドキっとしちゃうからやめてくれませんかね。
「どうした? 買い物か?」
「それもあるけれど例の約束を果たそうと思って」
「もしかして手料理作ってくれるのか?」
俺がそう問うと、堀北は静かに頷いた。
マジかよ。今日は堀北の手料理、明日は焼肉。豪華すぎるじゃないか。
「夕食、作ってあげる」
「お願いシャス!」
「ええ。それじゃ行きましょうか」
「ああ。……その前に袖、離してくれない?」
「……ごめんなさい」
俺がそう言うと、堀北はそっと掴んでいた袖を離した。顔が若干赤くなってる。この子は俺を萌え死にさせたいのだろうか。
その後、二人でいつも通っているスーパーに足を運んだ。恐らく他の生徒たちは、今頃教室で夏休みの計画を立てているのだろう。店内には俺たち以外客が誰もいなかった。
「なにが食べたいの?」
俺がかごを持つと、堀北が聞いてきた。
「そうだな……」
堀北が作るものならなんでもいいんだけど……。でもそんなこと言うと怒られそうだよな。ならばあれを作って貰おう。
「オムライスで」
「そんなのでいいの?」
「そんなのと言っても、具材を切ってチキンライスから作り始めると結構手間がかかるぞ」
オムライスを舐めたらいけない。溶き卵でチキンライスをとじるのも難しいんだぞ。
「確かにそうだけれど……。わかったわ、オムライスね」
堀北はそう言うと、真剣な表情で食材選びを始めた。卵、鶏もも肉、玉ねぎ、パセリと順にかごに入れていく。珍しく0円コーナーには目もくれず、全て有料の食材を選んでいた。
30分ほどして俺と堀北は店を出て寮に向かった。
「ねえ、界外くんは夏休みも勉強するの?」
隣で歩く堀北が聞いてきた。
「もちろん。堀北もだろ?」
「ええ。……よかったら、たまにでいいから一緒に勉強しない?」
「いいぞ。その時は連絡くれ」
「わかったわ」
俺の夏休みの予定が一つ増えた。ちなみに堀北は期末テストで学年2位だった。3位は幸村だ。なんとDクラスが1位から3位を独占である。圧倒的じゃないか、我が軍は。
寮に着くと、エレベーターホールで綾小路と会った。
「二人で買い物してきたのか?」
俺と堀北が持つスーパーの袋を見て綾小路が問う。
「ああ」
「こうして見るとまるで夫婦だな」
おいおい。そんなこと言ったら堀北に罵倒されるぞ。綾小路は学習能力がないな。
「そう」
堀北は表情を変えず、綾小路に応える。……怒らないんだ、意外。
綾小路の顔を見ると、彼も怒られると思っていたのだろう。わかりづらいけど意外そうな顔をしている。
そうこうしているうちにエレベーターが降りてきた。ドアが開き順に乗り込んでいく。
「それじゃまたな」
「ああ」
4階に着き、綾小路と別れる。俺はエレベーターのドアが閉まるのを確認すると堀北に質問をした。
「なんでさっき綾小路に怒らなかったんだ?」
「さっきとは?」
「いや、俺と堀北が夫婦に見えるってからかってきただろ」
「……別に怒るほどのことではないもの」
おお、どうやら堀北は懐が深くなったようだ。俺も見習わなければ。
その後、堀北の部屋の前まで荷物を持っていき一旦解散となった。料理が出来次第堀北から連絡が来る予定だ。
♢♢♢♢♢♢♢
19時。堀北から連絡を受け、彼女の部屋に向かう。インターホンを押すと、エプロン姿の堀北が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。あがって」
「……」
「界外くん?」
「……あ、ああ!」
やばい。完全に見惚れてしまっていた。堀北はシンプルで清潔感のある白いエプロンをつけていた。髪も後ろ髪を結んでおり、ポニーテールになっていた。
「もう少しで出来上がるから座って待っててくれる?」
「はい」
堀北に部屋まで案内される間、俺はずっと彼女のうなじを見ていた。特にうなじフェチというわけではないが、目が吸い寄せられてしまった。
普段髪を下ろしてる女の子がポニーテールにするだけで、こんなにもギャップと破壊力があるとは……。
部屋まで案内され腰を下ろす。堀北の部屋はシンプルの一言だった。女子らしい小物などはないが、無駄なものを置いてなくシンプルで清潔感がある部屋だ。
つーか、初めて女子の部屋に上がったんじゃないか俺。……なんだか緊張してきたな。
俺がどきまぎしていると堀北が料理を運んできた。
「お、ミネストローネか」
「ええ」
ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎと具たくさんなのが帝人的にポイントが高い。それとトマト系スープはオムライスによく合うんだよな。
続けて副菜が運ばれてくる。これも美味しそうだ。そして最後にメインのオムライスが食卓に並べられた。
「どうぞ」
「いただきます」
オムレツにスプーンで横に切れ目を入れ、割いていく。鮮やかにトロトロなオムライスが出来上がった。食べてみるとトマトの酸味と卵のコクが混ざり合ってとてつもなく美味しい。
「どうかしら?」
堀北が不安そうに聞いてくる。
「凄い美味しいぞ」
「そ、そう。まあ、私が作ったのだから当然よね」
「ああ。見た目、味、匂い、食感どれをとってもトップクラスだ」
「ほ、褒め過ぎじゃない……?」
褒め過ぎじゃない。俺は続けて感想を言う。堀北は褒められ慣れてないのだろう。どんどん顔が赤くなっている。
堀北のペースに合わせて20分ほどかけて食べ終えた。
「ご馳走様でした」
「お粗末様」
堀北も食べ終えたようだ。ちなみにまだ顔が紅潮している。
「いやー、堀北って本当料理上手だよな」
「……そうなのかしらね」
「小学生の頃から作ってたんだろ。家族に褒められなかったのか?」
「特には」
マジかよ。もしかして堀北家って味音痴なのだろうか。
「界外くんは本当に美味しそうに食べてくれるのね」
「いや、本当に美味しいから」
そりゃ美味しいものは美味しそうに食べるよ。
しかし、堀北がここまで実力があるとは……。さすが高度育成高校第二席の実力の持ち主だ。ちなみに第一席は俺である。
「あの……」
「ん?」
「夏休みに一緒に勉強をする約束をしたじゃない」
「したな」
「よかったらだけど……勉強会をする日にまた作ってあげてもいいけれど……」
堀北がもじもじしながら言った。
これは非常に嬉しい提案だ。断る理由がない。
「それじゃお願いしていいか?」
「ええ」
こくりと頷く堀北。改めて彼女の顔を見ると、照れて伏し目になっている。
やばい。まさか堀北に一日に何度もキュン死させられそうになるとは。
堀北の照れ顔を堪能した後、俺は彼女と一緒に洗い物をしてから自室に帰った。洗い物をした際は、台所が狭かったので体が常にくっついていて緊張した。洗った食器を渡す際に指と指が触れ合い、お互いどきまぎしてしまった。
「また堀北の手料理食べたいな……」
この学校で堀北の手料理を食べたのは俺だけだろう。ベッドで横になり、優越感に浸っていると携帯の着信音が鳴り響いた。
画面を見ると堀北からのチャットが表示されていた。
『明日、勉強しない?』
どうやら二日連続で堀北の手料理が頂けることになりそうだ。
次回タイトル「一之瀬帆波:オリジン」