実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
吉報:10万UA突破しました! みなさんのおかげです。ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします!
悲報:一之瀬が援助交際してそうなアニメキャラ2018の1位になってしまいました……
私の名前は一之瀬帆波。ちょっと特殊な学校に通う高校1年生。
良い先生や友人に出会えて、楽しい学校生活を送っている。退学が懸かった試験や他のクラスとのいざこざがあったりしたけど、そこはクラス一丸になって乗り越えてきた。これからも沢山の試練が待ってるだろうけど、Bクラスのみんなとなら乗り越えられると信じている。
そんな私には好きな男の子がいる。好きというのはもちろんライクじゃなくてラブの方。
彼と出会ったのは中学3年に上がる前の春休みのことだった。
今でも鮮明に覚えている。
私と彼の運命の出会いを。
♢♢♢♢♢♢♢
あの日、私は寝坊してしまい友達との待ち合わせ場所に走って向かっていた。
その時の私は、焦っていて前をちゃんと見てなかったせいで通行人の男の人にぶつかってしまった。
『いてっ』
『あ、ごめんなさい』
私は慌てて、頭を下げて謝った。顔を上げて相手の様子を伺った瞬間、私は固まってしまった。
なぜなら相手の男の人の表情が怒りに満ち溢れていたからだ。
『おい、ジュースが服にかかっちまったじゃねえか』
恐る恐る男の人の上着を見ると、確かに飲み物がかかった跡が見受けられた。
『ぎゃはは! だせぇ!』
『女にタックルされてんじゃねぇよ!』
男の人の友人であろう人たちが大笑いで煽る。そのせいで男の人の表情がより険しいものになる。
『うるせぇよ。おい、どうしてくれんだよ』
男の人はそう言うと、私の胸倉を掴んできた。
『あ、す、すみません……』
私はこういったトラブルにあうのが初めてだった。この時の私はただ怖くて怖くて謝ることしかできなかった。
『この服高かったんだぞ。弁償しろよ』
『え、あ、えっと……』
恐怖で声がうまく出ない。全身の震えが止まらない。
そんな私の態度が気に入らなかったのだろう。男の人が苛立っているのがすぐにわかった。
『なんとか言えよ! このブス!』
男の人が近くに駐輪してあった自転車を蹴り倒す。その倒れた音により恐怖感が増す。
『おい、あんま目立つことすんなよ』
『裏連れてこうぜ』
『だな』
男の人は友人の提案を受け入れたようで、私の腕を掴む。
『ひっ』
恐怖で動けずにいる私は抵抗することもできず無理やり歩かせられる。
周りにいる人たちに助けを求める目を向けるが、通行人たちは見て見ぬふりをしていく。
誰でもいいから私を助けて。
心の中で何度も助けを求めたが、そんな私の願いも虚しく路地裏へと連れ込まれてしまった。
『いたっ』
路地裏に着いたと同時にコンクリートの地面に突き飛ばされる。
男の人は怒りの表情で、仲間の2人はにやにやとした表情で私を見下ろす。
『んで連れ込んだのはいいけど、どうすんの?』
友人の片方が男の人に問う。
『弁償させるに決まってるんだろ。おい、財布を出せ』
『は、はい……』
私は男の人に言われるがままに、鞄から財布を取りだそうとするが、手が震えてうまく鞄が開けない。
早く財布を渡さないと痛い目にあわされてしまう。
そう思い何とか鞄を開けようとするも、手の震えが酷くなり一向に鞄を開けないでいた。
『もういいから貸せ!』
男の人はそう言うと、私から鞄を取り上げる。そして無造作に地面へ鞄の中身をばら撒く。
『おい、財布がねえぞ』
『本当だ』
『へえ、女子の鞄の中身ってこんなの入ってんだ』
そう。この日の私は自宅に財布を忘れてしまったのだ。
お金を渡せば解放されるかもしれない。
そんな淡い希望は脆くも崩れ去ってしまった。
『おい、鞄に財布入ってねえじゃねえか。俺を騙したのか?』
『ち、ちがっ……。い、家に忘れて……』
私は男の人の問いに、必死に声を振り絞り答えた。
『あ? ナメてんのか!』
男の人の堪忍袋の緒が切れたようで、私は脛を思いっきり蹴られてしまった。
『……っ』
私はあまりの痛さに声を発することもできず、うずくまることしかできなかった。
『おいおい、女の子に手をあげちゃ駄目っしょ』
『そうそう。可哀相じゃねえか』
仲間の2人が笑いながら言う。
『あ? こんなブス、女扱いできるかよ』
私は男の人から何度もブスと罵られた。確かにこの頃の私は眼鏡をかけ、髪型も三つ編みで、地味で冴えない女の子だったと思う。でもさすがに何度もブスと罵られれば傷つく。
『ひっぐ、ぐすっ……』
私は心と体の痛みに耐えきれず、とうとう泣き出してしまった。
『おいおい、泣けば許されると思ってんのかよ』
男の人が冷たい口調でいい放つ。そして投げ捨てられている私の鞄を蹴り飛ばす。
私もあの鞄のように蹴り飛ばされてしまうのだろうか。そう思ったら余計涙が止まらなくなってしまった。
そんな私に苛立った男の人は、私の髪を掴み無理やり顔を上げさせた。
ああ、私はこのまま殴られるんだ。誰にも助けて貰えずこのまま痛めつけられるんだ。
そうだよね。私は物語のヒロインじゃない。どこにでもいる普通の女の子だ。そんな私なんかに都合よくヒーローが現れてくれることなんてないんだ。
やっと自分の状況を受け入れられた私は少しでも恐怖を和らげられるよう目を閉じた。
何秒経ったのだろう。髪は掴まれたままだけど、痛みがやってこない。
恐る恐る目を開いてみると、男の人の近くに私と同い年くらいの男の子が立っていた。
『アンタ、何やってんだよ』
男の子が問う。
『あ? てめぇ誰だよ』
『誰だっていいだろ。いいから女の子から手を離せよ』
男の人はそう言われ、掴んでいた私の髪を離す。そして男の子に襲いかかっていった。
『ガキが! 調子乗ってんじゃねえよ!』
刹那、男の人がコンクリートの地面に叩きつけられた。男の人の仲間2人の顔を見ると、何が起きてるのかわからないような表情をしている。
男の子が即座に馬乗りになる。
『いいぜ。アンタが女の子に手をあげるってんなら……まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!』
男の子は当時の私にはわからない台詞を言いながら、思い切り右腕を振った。
『がっ』
渾身の右パンチを喰らった男の人は一発で気絶してしまった。
凄い。強い。
私は完全に男の子に見惚れてしまっていた。
『歯を食いしばれよ、最強。俺の最弱は、ちっとばっか響くぞ!!』
男の子は、気絶してる人相手に歯を食いしばれと言う鬼畜な台詞を言いながら、再度右腕を振った。
2発目を喰らわせると、男の子は静かに立った。そして男の仲間2人を睨みつける。
『アンタ達もやるか?』
男の子が問いかける。すると仲間2人は倒れてる男の人を放置して逃げてしまった。
『ふぅ。3人相手だからどうなるかと思ったけど、なんとかなったな』
男の子が手で汗を拭いながら一息つく。そして私のもとへゆっくり歩いてきた。
『大丈夫か?』
中腰になりながら男の子は私に手を差し伸べてきた。私は恐る恐る差し伸べられた手を取る。
『怪我してないか?』
男の子の問いに静かに頷く。まだ脛が痛いけど怪我をしてる程じゃないと思う。それよりお礼を言わないと。
『あ、あの……』
『ん?』
『あ、ありがとう……』
私はしどろもどろになりながらも感謝の言葉を述べた。
男の子は笑顔で「おう」と応える。
当時の私にとって彼はヒーローで、そのヒーローの無垢な笑顔は物凄く眩しく見えた。
私は男の子に手を引かれながら表通りへ歩いていく。その間、私は彼の横顔をずっと眺めていた。
表通りに出ると、彼は「あ、悪い」と言いながら慌てて手を離した。
私は手を離された瞬間、とても寂しい気持ちになった。
『ここまで来れば大丈夫だろ。それじゃ!』
『ま、待って……!』
私は慌てて走り去ろうとする彼の腕を掴んだ。
『なんだ?』
『えっと……』
私は彼と別れる前にどうしても聞きたかったことを質問した。
『なんで私を助けてくれたの?』
『え』
『相手は3人もいたのに。危険だと思うんだけど……』
もし私が彼の立場だったら見て見ぬふりをしていたと思う。
なんで彼は他人の私を助けてくれたのだろう。
私はその理由が知りたかった。
『なんで助けたか?』
『うん』
『そんなのアンタが泣いて助けを求める目をしてたからに決まってるだろ』
『え』
『それに俺は泣いてる女の子の側に立てれば本望なんだ』
『……っ!』
ずっきゅーんと、私の心臓が跳ね上がる。
そして女の本能が生まれて初めて芽を吹き始めた。
そう。この瞬間、私は生まれて初めて恋に落ちた。
♢♢♢♢♢♢♢
懐かしいな。今でもあの時のことは鮮明に覚えてる。だって私と彼の運命の出会いだもん。当たり前だよね。
あの後、彼は名前を告げずに去ってしまった。せめて名前くらいは聞きたかったけど焦りはなかった。なぜなら彼の制服を見て、隣の東中の生徒だとすぐにわかったからだ。
その日の夜から私は彼の情報収集をし始めた。運よく東中には私の幼馴染が通っていたので、彼について幼馴染に聞いてみたところ、驚いたことに彼と同じクラスだったのだ。
幼馴染によると彼はキャラが安定しないせいで周りから敬遠され学校では浮いた存在とのことだった。特にバレー部を全国ベスト4まで導いた直後に退部してからはキャラが大渋滞して周りも対応に困っていたとのことだった。
私はてっきりクラスの人気者だと予想していたので、この情報は意外だった。もちろんこの程度のことで私の彼に対する思いは薄れることはなかった。
翌日。彼の住所を調べた私は、早朝から彼の自宅近くで彼が出てくるのを待ち伏せた。そして外出する彼を尾行した。
そう。私、一之瀬帆波はストーカーだ。
当時の私は彼のことを少しでも知りたくて必死だった。尾行するのはいけないことだとわかっていても、その気持ちを抑えることはできなかった。
尾行は1週間は続いたと思う。あの時の彼は、目に入る困ってる人たちを片っ端から助けていた。私と同じように不良に絡まれてる女の子、ナンパで困ってる女の子、落とし物をして泣いている幼女、自殺をしようとする女の子などを助けていた。……なんか女の子ばかり助けてる!
1週間の尾行の中でわかったことは一つ。
私は彼の中で助けられた女の子の一人にすぎない。
このままストーキングしているだけじゃ駄目だ。
私は彼の特別になるため、幼馴染にあるお願い事をした。
中学3年に上がると、彼の詳細な情報が手に入るようになった。
理由は簡単。幼馴染に彼と親しくなってもらい、彼のことを私に教えてくれるようお願いをしたからだ。幼馴染が彼と親しくなるのは正直嫌だったけど、彼の情報を手に入れるためなので仕方ないと我慢をした。
彼は久しぶりに友達ができたようで、幼馴染に何でも教えてくれた。チョロいのは昔からだったんだね。そんなところも可愛い。
彼は重度のアニオタだった。幼馴染との会話の9割はアニメの話とのこと。ちなみに幼馴染もアニオタなので話は合ったようだ。私も将来彼と話が合うようにアニメを見始めた。アニメに興味なかった私だけど見始めると自分がアニメにはまっていくのがわかった。
アニオタな彼だけど現実の女の子に興味はあるとのこと。この時は本当に安心した。これで彼が二次元にしか興味なかったら私は自殺するところだった。
私は彼の好きなアニメ、好きなキャラをリストアップし徹底的に分析した。その結果、巨乳キャラが好きであることがわかった。性格は絶対ではないが主人公に尽くす子が好みのようだ。
そして私はなるべく彼の好みに近づけるよう、彼のストーキングをしつつ、自分磨きに取り掛かった。まず眼鏡からコンタクトに変えた。そして三つ編みもやめ、髪を下ろした。髪を下ろしただけだと地味だと思ったので軽めのシャギーにした。そして胸が大きくなるよう、毎日牛乳を飲んだりマッサージをしたりした。
自分磨きに取り掛かった私だけど効果はすぐにあらわれた。まず異性にもてはやされるようになった。そして胸もどんどん大きくなっていった。秋ごろには今と同じくらいの大きさになっていたと思う。その頃から男子が私をいやらしい目で見るようになった。私を性的な目で見ていいのは彼だけ。彼のためにこんなに大きくしたんだもん。
そして自信をつけ始めた私はある計画を立てた。まあ、計画と言っても彼と同じ高校に進学して、彼と恋人同士になり楽しい学校生活を送る、という内容なんだけどね。
夏休み。幼馴染から二つの重要な情報が伝えられた。一つ目は彼が東京にある高度育成高等学校を志望していること。二つ目は彼がアニメのキャラの真似をやめたこと。
一つ目に関してはまず思ったのが国立の名門校に二人とも合格できるのか不安だった。でも私と彼なら大丈夫なはず。私はそう自分に言い聞かせた。
二つ目に関しては正直驚いた。幼馴染曰く、素の彼は穏やかで少しシャイな性格とのことだった。……私より先に素の彼と接するなんて羨ましすぎる。
2学期が始まると、私はより一層受験勉強に力を入れた。元々勉強はできる方だったけど、国立の学校なので油断はできなかった。勉強中に集中力が切れた時は、盗撮した彼の写真を見て自分を奮い立たせた。ちなみに実家にあるPCには彼の画像が5000枚位入っている。もちろん寮のPCにも保存してある。
あっという間に受験の日を迎えた。会場に辿り着くと彼の姿が目に入った。この時は受験のためストーキングを1週間休んでいたので、1週間ぶりに見る生の彼に私はドキドキが止まらなかった。
私は興奮する気持ちを押さえつつ、テストと面接に挑んだ。
結果は上々だった。テストは自己採点でほぼ満点だったし、面接も受け答えがしっかりできたし、自己PRも申し分なかった思う。不安があるとすれば中学2年の秋に長期で学校を休んだことくらいだ。
2月。とうとう合格発表日を迎えた。恐らくこの日は15年の人生で一番緊張した日だったと思う。高校生になったら彼との初体験が一番緊張する日になるのかな。……うん、私って妄想がたくましいんだよね。
味気ないけど私はネットで確認した。結果は合格。まずは一安心。問題は彼が合格したかどうか。
自身の合格を確認してから幼馴染からチャットが来た。内容は彼も合格したとのこと。
私は歓喜した。
これで計画通り彼と2人で高校生活を送れる。その日から彼と再会するまで私は毎晩妄想にふけた。
ピュアな一之瀬が好きな人ごめんなさい!
次回タイトル「一之瀬帆波:ライジング」