実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
無人島編スタートです!
今回はとあるヒロインにフラグ建ててみました
8月某日。
俺は博士と一緒にアニメ氷菓を鑑賞していた。ちなみに場所は自室でも博士の部屋でもなくとある船の一室。
その船には一流の有名レストランから演劇が楽しめるシアター、高級スパまで完備されている。いわゆる豪華客船である。
なぜ俺たちが豪華客船に乗っているかと言うと、学校が用意した2週間の旅行に参加しているからだ。予定では最初の1週間は無人島に建てられているペンションで過ごし、残りの1週間は客船内での宿泊とのことだ。
そんな豪華旅行に参加している俺と博士だったが、クルージングの旅を満喫しているクラスメイトとは反対に陰気で憂鬱な気分になっていた。
理由は簡単。2週間も放送中のアニメが見れないからだ。
「早く家に帰りたいでござる」
博士がため息をつきながら言う。
「だな。ヒロアカの映画もあるのに……」
客船のシアターで上映されるかと期待したがそんなことはなかった。
「ま、博士が円盤持ってきてくれていて助かったよ」
「もっと褒めて欲しいでござる」
「えらいえらい」
「何という棒読み!」
ちなみに氷菓を見るのは5回目だ。そのため博士と駄弁りながら鑑賞している。これが初めて見るアニメならお互い真剣に見入ってたことだろう。
「しかし今回はどのような試験が用意されているのでござろうか?」
「無人島でサバイバルとかじゃないか」
俺と博士は2週間もこんな豪華な旅が続くとは1ミリも思っていなかった。恐らく堀北、綾小路、平田あたりも同じことを思っているだろう。
うちの学校が生徒に甘い蜜だけを与えるわけがない。アニメが見れないだけではなく、試験に対する警戒心も俺たちが旅行を楽しめない理由の一つだった。
『生徒の皆さまにお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』
突如そんなアナウンスが船で流される。その『奇妙』なアナウンスが気になった俺は博士を連れてデッキに向かった。
デッキに辿り着いてから数分後にその島は姿を現した。
俺は島を撮影するため、携帯を操作し動画を撮影し始めた。
他の生徒たちも島が出現したことに気づき、一斉にデッキへと集まり始めた。群衆が押し寄せると、それまでベストポジションを取っていたDクラスの集団を押しのける横暴な男子生徒たちが現れた。
「おい邪魔だ、どけよ不良品ども」
威圧しながら男子の1人が綾小路の肩を突き飛ばした。バランスを崩した綾小路はデッキの手すりを掴み転倒を避けたが、体勢を崩した際に近くにいた松下に接触してしまい、彼女は尻餅をついてしまった。
「いったぁ……」
「悪い。大丈夫か?」
痛がる松下に綾小路が手を差し伸べながら謝った。
「うん。大丈夫」
「すまん」
どうやら松下に怪我はないようだ。
「何すんだよ!」
池が綾小路を突き飛ばした男子を怒鳴る。
「ここは実力主義の学校だ。Dクラスに人権なんてない。不良品は不良品らしく大人しくしてろ。こっちはAクラス様なんだよ」
Aクラスの男子が池を見下ろしながら言う。
突き飛ばされた綾小路と巻き添えを喰らった松下を見て、なんともいえない怒りがこみ上げて来た。
俺はその怒りを鎮めるためゆっくり深呼吸する。
そして久しぶりにあのキャラをトレースした。
「博士、撮影よろしく頼む」
俺は博士に一言言い、綾小路を突き飛ばした男子に向かって歩き出した。
「あん?」
男子の前に立ち、俺は無表情でその生徒を見つめた。
「頭が高いぞ」
俺はその男子の肩を突き飛ばした。
男子は不意の一撃により思いっきり尻餅をつく。
「て、テメェ! 何しやがる!」
俺に突き飛ばされた男子が怒りの表情で威圧してきた。
「雑魚は雑魚らしく大人しくしていろ」
「あ!?」
そう言うと、Aクラスの生徒たちが一斉に俺を取り囲む。
Dクラスの生徒たちは俺を心配そうに見ている。
「Dクラスのくせに何言ってやがる! Aクラスに逆らうんじゃねぇよ!」
「ここは実力主義の学校なんだろ」
先ほど男子が言っていた台詞だ。
「ああ、そうだよ。だからお前らDクラスはな―――――――」
「なら中間期末と学年1位だった僕が絶対だ」
男子の台詞を遮るように俺は言う。
「今のところクラスポイントがかかった試験は中間と期末の学力テストのみ。つまり両方のテストで1位だった僕が現時点で1番の実力者なわけだ」
「なっ……」
「それとさっきからクラスのことばかり言ってるが、お前個人はどうなんだ?」
「何を言って……」
Aクラスが優秀なことは認める。だがAクラスが優秀だからと言ってこの男子生徒が優秀とは限らない。
「言えないのか。どうせお前はAクラスに所属していることしか誇れるものがないんだろう。哀れな奴だ」
「て、テメェ……」
「よかったよ。Aクラスにお前みたいな生徒がいて。……これならAクラスを潰すのも簡単そうだ」
俺がそう言うと、男子は俺の胸倉を掴んできた。どこのクラスにも感情的に動く奴がいるようだ。
「あんま調子乗んなよ!」
男子が凄んでくるが俺はそれを無視して携帯を操作する。そしてある動画を男子生徒に見せる。
「これなんだと思う?」
「そ、それは……」
「さっきお前が綾小路を突き飛ばした動画だ。松下が巻き添え喰らって倒れるところまで撮影してる」
直後、男子の表情が真っ青になる。どうやらこの動画の重みを理解したようだ。
「これを先生に見せたらどうなるかな。クラスポイントに影響が出るんじゃないか?」
笑みを浮かべながら言う。
「調子に乗るな? 調子に乗ってるのはお前だ。僕に触れていいのは、僕が認めた奴だけだ」
やべぇ。久しぶりにトレースしたけど楽しくて止まらない。
「制服がしわになるからその汚い手を離してもらおうか」
「く……っ!」
男子は悔しそうな表情をしながら、掴んでいた手を離した。
本当に扱いやすい奴だなお前。一学期の須藤を見ているようだ。
「……何をすればいい?」
男子生徒が俺に聞いてくる。どうやら状況判断をできる能力はあるようだ
「今すぐこの場所から消えろ。そうすればこの動画は消してやる」
「……絶対だな?」
「くどい。あまり僕をイラつかせるな」
「……わかった。おい、行くぞ」
男子生徒がそう言うと、Aクラスの連中は去って行った。
予定外だったが一応、自分の存在をAクラスにアピールすることができた。
俺は約束通り動画を削除する。
デッキに残った生徒たちの視線が俺に集中する。……さすがに目立ち過ぎた。
「さすが界外だぜ!」
須藤が興奮しながら言う。
「ったくよ。クラス単位でしか人を見られないなんて可哀相な奴らだぜ」
「お、おう……」
「ああいう奴らがいるからこの世から争いがなくならねぇんだ」
「……」
誰だよお前……。短期間で変わり過ぎだろ……。
その後、池と山内も「よくやってくれた」と声をかけてきた。
「やりすぎじゃない?」
3馬鹿が俺から離れると、松下に声をかけられた。
少し怒ってるような表情をしている。
「やりすぎたかもしれないけど後悔はしていない」
「馬鹿。……でもありがと」
松下のその言葉が聞けただけで行動を起こした甲斐があった。
「ていうか人変わりすぎ」
「……あれはお怒りモードみたいなもので」
赤司をトレースしていたと言えず、嘘をついた。
「ふーん。怒ってくれたんだ」
何だろう。今度は松下が満足そうな表情を浮かべる。
一之瀬と堀北もそうだけど女の子の表情がころころ変わるのは当たり前なんだろうか。
「そういえば」
「ん?」
「さっきの俺が胸倉掴まれてたのも撮影してるんだけど。……その動画で更に脅したら引く?」
「うん」
よし。博士の動画も削除しよう。
あの生徒が一安心してるタイミングで博士が撮影した動画を見せつけようとしたけどやめておこう。
♢♢♢♢♢♢♢
松下と別れて10分ほど経ち、船はぐるっと島の周りを回り始めた。
どうやら客船は一周回って島の全体を見せてくれるらしい。
「凄く神秘的な光景だね! 感動しちゃうかも……。界外くんもそう思わない?」
隣に立つ櫛田が目を輝かせながら俺に言う。
櫛田が俺の近くにいるなんて珍しい。
「……まあ、そうだな」
「だよね! ねえ、界外くん」
「ん?」
「いつもの界外くんとさっきの界外くん。本当の界外くんはどっちなの?」
櫛田が声のボリュームを下げ聞いてきた。
「どっちなのって言われても……。どっちも俺なんだけど」
「どっちもなんだ」
「ああ。さっきのは少し演じてる部分はあったけど、あれも自分であることには変わらないからな」
まあ、櫛田が中学時代の俺を見たら多重人格者だと思うんだろうな。
それより櫛田はなんで急にそんなこと聞いてきたんだろう。
「……そっか。ありがと」
「どういたしまして?」
よくわからないけどお礼を言われた。
そういえば櫛田とこうして二人きりで話すのは初めてだ。
「そういえばペンションってどこら辺にあるんだろうね。船からは見えなかったけど」
「……ないのかもしれないな」
「え」
「櫛田。この学校が俺たちに2週間の豪華旅行を素直に与えてくれると思うか?」
「どういう意味かな?」
櫛田が首を傾げながら言う。……可愛いじゃないか。
「俺はあの無人島で何かしらの試験が行われると思ってる」
「試験って……」
「もちろん絶対とは言えない。けれど覚悟はしておいた方がいい」
「……そっか。わかった」
真剣な表情で櫛田が頷く。
『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒たちは30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ち、デッキに集合して下さい。それ以外の私物はすべて部屋に置いてくるようにお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性もあるので、きちんと済ましておいてください』
そんなアナウンスが流れた。どうやら試験の開始が近づいてるようだ。
「ねえ、今のって……」
櫛田が不安そうに俺を見つめてくる。
「嫌な予感が的中しそうなアナウンスだったな。とりあえず急いで準備した方がいい」
「うん」
「また後でな」
俺はそう言い、グループ部屋に戻っていった。
部屋に戻りすぐに学校指定のジャージに着替える。そして鞄を肩にかけ部屋を後にした。
「界外くん」
早めにデッキに向かっていると、一之瀬に声をかけられた。
「よう」
「やほー。ちょっといいかな?」
「いいぞ」
一之瀬に導かれるまま、人通りが少ない通路に案内される。
「ここら辺でいいかな」
一之瀬はくるりと俺を振り返った。
そういえばジャージ姿の一之瀬を見るのはこれが初めてだ。相変わらず彼女のけしからんおっぱいが上着を押し出している。
「さっきの件なんだけどね……」
「見てたのか」
「……うん」
「悪い。怖かったか?」
「ううん! そんなことないよ!」
一之瀬が慌てて否定する。……よかった。一之瀬に怖がられたらどうしようかと思ったぞ。
「ただいつもの界外くんと違ったからね……。気になっちゃってさ」
チラチラ視線を俺に向けながら言う。
「あー、あれはお怒りモードみたいなもんで……」
赤司をトレースしてました、なんて言えない……。
言ったら痛い奴だと思われちゃうかも。でも赤の他人と接する時はキャラをトレースした方が楽なんだよな。さっきので再認識した。
「お、お怒りモードって……っ!」
どうやら彼女のつぼに入ったらしい。一之瀬はお腹を押さえて笑ってる。
「お、面白がってもらえたようでなにより……」
「ご、ごめん。……私も界外くんに怒られるときはあんな感じになるのかな」
「いや、俺が一之瀬に怒ることなんてないと思うんだが」
俺が一之瀬を怒る。……想像が出来ない。
「そんなのわかんないよ。もしかしたら私がいけないことするかもしれないし」
「いけないことって?」
いけないことって何だろう。人を指さしたり、燃えるゴミと燃えないゴミを混ぜてしまったりすることだろうか。
一之瀬なのでいけないことの基準が低く考えてしまう。
「そ、それは……言えないかな……」
一之瀬が顔を赤くして目を逸らす。
急にどうしたんだろうか。
「言ってくれないとわからないんだけど」
「あぅ……」
照れてる一之瀬をもっと見てみたい。
そんな衝動に駆られて俺は珍しく彼女を追及した。
「こ、この話は終わり! もう一つ話があるの!」
一之瀬が俺の追及を断ち切るように大きな声で言う。
まあ、仕方ないか。また機会があったら照れ顔を堪能させてもらおう。
「もう一つの話って?」
恐らくこの後の無人島のことだろう。
「これからのこと。私は無人島で何かしら試験が行われると思うんだけど、界外くんはどう思う?」
一之瀬の話は予想通りの内容だった。
「俺も一之瀬と同意見だ」
「そっか。それで確認したいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「BクラスとDクラスの協力関係ってまだ続いてると思っていいのかな?」
Bクラスとは須藤の冤罪事件で協力をして貰った。今の質問からすると一之瀬たちはまだDクラスのことを仲間だと思ってくれているようだ。
「俺はそう思ってる。ちなみに平田もだ」
今後のBクラスとの協力関係については、平田とすでに相談済だ。平田とは同じ部屋だったので、船に乗った直後に相談した。
ちなみに4人部屋で後の2人は綾小路と博士だ。俺に都合が良すぎる割り当てである。
「よかった。それじゃどんな試験かまだわからないけど一緒に頑張ろ」
「うん頑張る」
なんだろう。一之瀬に頑張ろうと言われると、何でも頑張れるような気がする。
用件を終え、俺と一之瀬は一緒にデッキに向かった。
「界外くんはどんな試験だと思う?」
隣で歩く一之瀬が聞いてきた。
「うーん、サバイバル合宿とか?」
わざわざ無人島まで連れてきたんだ。王道ならサバイバルだろう。
「もしサバイバルだとしたら自信ある?」
「やったことがないから何とも。一之瀬は?」
「私もまったく」
普通そうだよね。一応ゆるキャンの影響でキャンプはしたことがあるけど役に立つかどうか……。
「ま、どんな試験であれPlus Ultraの精神で乗り越えていくしかないな」
「だね! 更に向こうへ!」
「「Plus Ultra!!」」
一之瀬がノリノリである。
恐らく昨日、俺の部屋で一緒にヒロアカを見た影響だろうな。結局、ヒロアカの映画も一之瀬と一緒に行くことになった。博士ごめんね。七つの大罪は一緒に行くから許してね。
Plus Ultraの精神もそうだけど、一之瀬との映画館デートを心の支えにして頑張っていこう。
さすがに上条さんのような一級フラグ建築士にはなれないけれど、三級フラグ建築士ならなれそうな感じです