実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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よう実のコミカライズ全巻揃えました
原作と少し違う箇所もあっていいですね


26話 堀北がセクハラされました

 翌日の朝5時。俺は川で顔を洗っていた。

 枕もマットもなかったのでテントで熟睡できるか心配だったけれど、意外にも気持ちよく寝れた。恐らくテントの下に簡易トイレ用のビニールを大量に敷いたからだろう。あれがなければ腰を痛めていたところだ。

 さて、顔を洗ったことだし行くとするか。

 

「おはよう。早いね」

 

 俺が目的地に向かおうとすると、平田がテントから出てきた。

 

「おはよう。意外と熟睡出来たからな」

「そうだね。博士くんのアイディアのおかげだよ」

 

 そう。テントの下にビニールを敷くと言うのは博士の案だった。本人曰く氷菓を見て頭が冴えてるらしい。確かに俺もいつもより冴えてる気がする。

 

「博士様様だな。それじゃ行ってくる」

「どこに行くんだい?」

 

 平田が目的地を聞いてきた。

 

「浜辺だよ。体がなまってるし走ろうと思ってな」

 

 一番の理由は浜辺で走るのに憧れていたからだ。黒子のバスケやハイキューのOPやEDでそのシーンを見ていつか自分も走ってみたいと思っていた。

 

「僕も付き合ってもいいかな?」

「ああ」

「ありがとう。さすがに僕も2週間運動しないのはどうかと思ってたんだ」

 

 平田はサッカー部に所属している。確かに2週間も体を動かさないのは大きなハンデになるだろう。てか2週間もチームから離脱して大丈夫なのだろうか。この時期ってインハイ敗退した高校が新チームで始動する大事な時期だと思うんだけど。

 

「まあ、アスリートならそう思うよな。待ってるから顔くらい洗ってきたらどうだ?」

「そうだね。それじゃ少し待っててくれるかな」

 

 平田はそう言うと、川で顔を洗い出した。

 

「俺も行くぜ」

 

 背後から声をかけられる。振り返ると座禅の須藤が立っていた。

 

「座禅しようとしたら面白い話が聞こえてきてよ。俺も走るしかねえだろ」

「好きにしろよ」

「おう!」

 

 やだ須藤が爽やかに見える。もちろん平田の足元にも及ばないが。

 

「須藤くんもおはよう」

 

 顔を洗い終えた平田が須藤に挨拶をした。

 

「おう。早速行こうぜ!」

 

 須藤が急かすように言う。

 まさかこの3人で一緒に走ることになるとは。

 俺たち3人は15分ほど歩き、浜辺に辿り着いた。早朝なので浜辺には俺たち以外誰もいなかった。遠目にテントがいくつかあるが恐らくCクラスのテントだろう。

 

「どれくらい走ろうか?」

 

 平田が聞いてくる。

 

「とりあえず1時間くらいでいいんじゃないか」

「だな。6時過ぎまで走って、戻ってから朝食の準備でちょうどいいんじゃねえか?」

 

 まさか須藤が先のことまで考えてるとは。この男、急速に成長してやがる!

 

「そうだね。それじゃ準備体操してから走ろうか」

 

 さすが平田。準備体操の大切さをわかっている。

 その後、準備体操を終えた俺たちは浜辺で1時間汗を流した。

 長らく部活動をしていなかったので、2人についていけるか心配だったけれど、何とか食らいついた。

 思ったより体力は落ちていなかったけれど、このままじゃ駄目だ。秋に体育祭があるのでそれに向けて体力をつけなくては。

 俺は毎日走り込みをすることを決意し、帰路についた。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 ベースキャンプに戻り、シャワーで汗を流した。ちなみにウォーターシャワーはガス缶つきだったのでお湯が出るタイプだった。

 

「さっぱりした」

 

 シャワーを浴び終えた俺は朝食の準備に取り掛かる。

 朝食と言っても昨日の食材の残りを適当に調理するだけなんだけどね。

 

「おはよう。どこに行ってたの?」

 

 堀北が声をかけてきた。どうやら俺たちがベースキャンプから離れるのを見ていたようだ。

 

「浜辺で走りに行ってた」

 

 俺がそう言うと、堀北は驚いた表情を浮かべた。

 

「……そう。よくそんな元気があるわね」

「最近体がなまってたからな。それに平田と須藤は運動部所属だ。2週間も運動しないなんてありえないだろ」

「確かにそうね。何か手伝うことある?」

 

 どうやら朝食作りを手伝ってくれるらしい。

 俺は堀北に指示を出し、調理スピードを上げた。

 美味しそうな匂いに釣られたのか、クラスメイトが徐々に集まってきた。

 

「うわ、美味しそうだね! 今日は界外くんと堀北さんが作ってくれるんだ」

 

 櫛田が笑顔を浮かべて言う。朝からその笑顔は眩しすぎる。

 

「ああ。もう少しで出来るから待っててくれ」

「私も何か手伝おうか?」

 

 櫛田は昨日調理補助をしてくれた。今日も手伝ってくれるようだ。

 

「結構よ。私と彼の二人で十分だから。あなたは料理が出来上がるのを待ってて」

 

 堀北がきっぱりと櫛田の申し出を断る。オブラートに包まず断るのが堀北のポリシー。

 

「そ、そっか。それじゃお任せするね」

 

 櫛田が苦笑いをしながら言う。この子きつい言い方しかできないんだ。ごめんね。

 心の中で櫛田に謝りながら俺は調理に専念した。

 俺と堀北が作った朝食にみんな大変満足してくれたようだ。

 

 朝の点呼を終えた俺たちは自由行動へと移った。平田はクラスメイトに指示を出し、さらなるポイント節約のための作戦を開始する。

 俺と堀北はBクラスとの待ち合わせ時間まで余裕があるのでテントでくつろいでいる。

 

「あ、停学コンビだ!」

 

 突如、池の声がキャンプ地に響き渡った。テントから出るとそこには、二人の男子生徒が立っていた。

 

「本当だ」

「停学コンビ」

「停学に定評がある小宮と近藤でござる」

「停学したのに旅行来れたんだ」

「停学が移るからこっちくんじゃねえよ」

 

 Dクラスからの容赦ない言葉の暴力が小宮と近藤に襲いかかる。

 

「り、龍園さんからの伝言だ……。夏休みを満喫したかったら今すぐに浜辺に来いってよ……。夢の時間を共有させてやるそうだ……」

 

 小宮が涙声で言う。近藤にいたっては目に涙を浮かべてる状態だ。

 ちなみに石崎を含め3人停学したのになぜ小宮と近藤が停学コンビと呼ばれてるかというと、石崎はクラスで裏切者扱いをされて孤立しており、小宮と近藤はいつも2人で行動しているため停学コンビと呼ばれるようになったみたいだ。

 

「停学を満喫したかったら浜辺に来いだってよ」

「それは満喫したくないな……」

「夢の時間ってなんだろ?」

「停学コンビのことでござる。クスリでもやってるのでござろう」

 

 おいそろそろやめてやれ。さすがに可哀相になってきた。

 小宮と近藤は涙を拭いながら帰っていった。

 

「おいこれ苛めじゃないのか」

「そうかもな」

 

 気づくと伊吹と綾小路が話をしていた。

 昨日はあまり顔を見てなかったが、確かに頬が赤く腫れている。昨晩テント内で綾小路から聞いた話だと男子に叩かれようだ。どうやらCクラスには歪んだ性癖の持ち主がいるらしい。

 

「ねえ」

「ん?」

 

 考え事をしてると、綾小路と話してた伊吹が目の前に立っていた。

 

「おまえが界外帝人?」

「そうだけど」

 

 女子におまえって言われたよ。なんだか新鮮だな。見た目どおり伊吹はボーイッシュな女子なんだな。

 

「噂に聞いたんだけど、ナイフ振りかざしたやつを倒したって本当?」

「まあ、本当だけど」

 

 噂になってるのかよ。目立つのが苦手な佐倉は大丈夫だろうか。

 

「ふーん。教えてくれてどうも」

 

 伊吹はそう言うと、少し離れた木の傍へ向かった。

 それよりわざわざ向こうから誘ってくれるとはね。お言葉に甘えてCクラスの様子を見に行かせて貰おう。

 小宮たちが向かった方向に歩き出す。直後に背後から声をかけられた。

 

「待って」

 

 この声は堀北だ。いつかと同じように俺の袖を掴んでる。

 

「Cクラスの様子を見に行くの?」

「ああ」

「私も行くわ」

 

 そう言うと思ったよ。堀北の性格からして自分の目で確かめておきたいもんね。それに堀北の観察力で何か気づくこともあるかもしれない。ただ気になるのは……

 

「動いて問題ないんだな?」

「ええ」

 

 昨日より顔色もよくなってる。上着を2枚着てるので寒気はまだするようだけど、本人が問題ないと言ってるので信じるとしよう。

 

「それじゃ行くか」

 

 俺がそう言い、堀北がこくりと頷く。

 無言で頷く堀北ってけっこう可愛いんだよな。普段は大人っぽいけど、この仕草の時だけは小動物に見える。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「嘘でしょ……」

 

 Cクラスのベースキャンプの光景を目にしながらも信じられないのか、堀北は何度もあり得ないと口にした。

 浜辺に陣取ったCクラスのベースキャンプには、仮設トイレやシャワーが設置されてるのは当然として、バーベキューセットやお菓子にドリンクなど娯楽に必要なありとあらゆる設備が揃えられていた。沖合いでは水上バイクが駆け抜け、海を満喫する生徒が楽しんでいる様子が伺える。あ、転倒しやがった。ざまぁ。

 目に見える範囲だけでも150ポイント以上消費しているのがわかった。

 

「Cクラスはポイントを節約するつもりがないってこと?」

 

 そう考えるしかないだろう。

 茂みから二人で浜辺へと足を踏み入れ、砂を踏みしめていく。

 そうすると男子が俺たちのほうに駆け寄ってきた。

 

「龍園さんがお呼びだべ」

 

 酷い訛りで声をかけてきた男子生徒。どこ出身なんだろう。

 

「まるで王様ね。クラスメイトを使いにするなんて。どうする?」

「ここまで来たんだ。行こう」

「ええ」

 

 俺たちは男子生徒の言葉に返事をし、ついていく。

 海に近づくと先ほどDクラスのベースキャンプに足を運んでいた小宮と近藤がクラスメイトに慰められてるのが見えた。どうやら俺が思ったより精神的ダメージを負ってるようだ。

 そしてCクラスのリーダー龍園へと近づいた。

 

「よう。こそこそ嗅ぎまわってると思ったらお前らだったか。俺に何か用か?」

「いや、停学コンビに誘われたから来たんだけど……」

 

 お前から誘ってくれたんじゃないか。痴呆症でも患ってるのかな。

 

「随分と羽振りが良いわね。相当豪遊しているようだけれど」

 

 堀北が水着姿でチェアーに寝そべる龍園を見下ろしながら言う。

 

「見ての通りだ。俺たちは夏のバカンスってやつを楽しんでるのさ」

 

 手を広げ自慢げに浜辺に展開した充実した娯楽を披露する龍園。

 

「これは試験なのよ。それがどういうことだかわかっているの? ルールそのものを理解していないんじゃないかと呆れているのだけど……」

「ほう? 敵である俺に塩を送ってくれてるのかよ?」

「トップが無能だとその下が苦労する。それが不憫なだけよ」

 

 俺は堀北と龍園のやり取りを聞きながら、彼の身の回りを確認する。俺と綾小路の予想が当たっていれば例の物があるはずだ。……あった。

 

「どれだけ使ったの。これだけの娯楽を堪能するのに」

「さぁな。ちまちま計算なんてしてねーよ」

「計算出来ないの間違いじゃないか。お前ら全員偏差値低そうな顔してるもんな」

 

 安い挑発をしてみる。さて龍園はどう返してくるか。

 

「はっ、言ってろ」

 

 さすがに乗ってこないか。

 

「俺たちは夏のバカンスを楽しんでいるだけさ。つまり、この試験中お前らの敵にはなりようがないってことだ。わかるだろ?」

 

 龍園の言葉に、堀北は頭痛がするのか額を押さえ眉間にしわを寄せた。

 

「敵とか言う以前の問題ね。警戒してここまで来た私が馬鹿だったわ」

「馬鹿なのはどっちだ? 本当に俺のほうか? それともお前らか?」

「いや、堀北が自分が馬鹿だって言っただろうが」

 

 俺がそう突っ込むと堀北に睨まれてしまった。

 

「こんなクソ暑い無人島でサバイバルだと? 冗談じゃないな。小さなクラスポイントを拾うためにお前ら最底辺のDクラスは飢えに耐え、暑さと虚しさに耐える。想像するだけで笑えてくるな」

 

 まあ、豪遊してる龍園からしたら真面目に試験に挑んでる俺たちは滑稽に見えるのだろう。ただ一つだけ訂正させなければ。

 

「確かにお前の言う通りだな。だが一つだけ間違ってるぞ龍園」

「あん?」

「Dクラスには俺と堀北がいる。俺たちの料理の腕を舐めてもらっては困るな。お前たちが食べてるお菓子や肉より俺の作った料理の方が美味い」

 

 先ほど焼かれてる肉を見たが、外国産の安い牛肉だった。お菓子もそこら辺のスーパーで売ってるものばかりだ。俺の料理の敵じゃない。

 

「つまり食事の時間なら俺たちの方が楽しんでいる。あんな安い肉やお菓子で満足してるお前たちが哀れに見えるぜ」

 

 ドヤが顔で言い放つ。龍園は黙って俺を見上げている。

 

「あなたは何を言ってるの……」

 

 堀北が呆れた様子で俺を見る。……え、なんで!?

 

「ククク。小宮から聞いた話と雰囲気が違うが、思った以上に面白い奴じゃねぇか」

 

 なんだろう。少し恥ずかしくなってきた。またもやシュタインズ・ゲートの選択を間違えてしまったようだ。

 

「……今回は、耐え、工夫し、協力しあう試験よ。あなたには最初から無理そうね。満足な計画すら立てられないのだから」

 

 堀北が仕切り直して言い放つ。

 

「協力? 笑わせるなよ。人なんざ簡単に裏切る。嘘をつく。信頼関係なんざはなから成り立つことはない。信じられるのは自分だけさ」

 

 そんな悲しいこと言うなよ。須藤が聞いたらそんなこと言いそうだな。

 

「偵察が済んだのなら帰りな。それともここで遊んでいくか? 肉を食おうが水上バイクで楽しもうが好きにしていいぜ。それとも俺と別の遊びでもするか? 専用のテントくらい用意するぜ」

「以前、宣戦布告してきた人間とは思えない答えね」

「俺は努力が嫌いなんだよ」

「そう。なら好きにすればいいわ。私たちからすれば好都合よ」

 

 どうやら堀北はCクラスを敵から除外して問題ないと判断したようだ。

 踵を返そうとした堀北だが、一歩踏み出したところで思いとどまった。

 

「用件がもう一つあったわ。あなたのクラスの伊吹さん。うちのクラスで保護しているわよ」

「ほう」

「彼女、顔を腫らしていたわ。あれはどういうこと? 誰がやったの?」

 

 犯人は龍園だとほぼわかっているが、堀北は遠まわしに確認する。

 

「伊吹は俺の言うことに従おうとしなかった。だからお仕置きをしてやったのさ」

 

 そう言って手で頬を叩くような動作を見せる。やはり歪んだ性癖の持ち主は龍園だったか。

 

「もう一人逆らった男がいたから、そいつ共々追い出してやったんだよ。死んだって報告は聞いてねえから、どこかで雑草でも食いながら生き延びてるんだろうさ」

 

 いや、学校側が死なせるわけないだろ……。

 それよりもう一人いたのか。そいつがどこにいるのか気になるな。

 それより伊吹が点呼に不在でもCクラスに影響はなかったのだ。だからクラスメイトの心配もしなければ、捜しもしない。少し遅れて堀北もそれに気づく。

 

「あなた……初日で全てのポイントを使い切ったのね?」

「そう言うことだ。俺は全てのポイントを使った。つまり伊吹がどうなろうとポイントを引かれる心配はないってことだ。それがどれだけ自由なことだかわかるか?」

「……まさか0ポイントであることを逆手にとるなんてね」

 

 マイナス要素を打ち消す0ポイント作戦。予想外の戦い方だが、それで高成績が残せるわけではない。ポイントがなければ必然的にCクラスは最下位。全クラスのリーダーを的中させても150ポイントまでしか伸ばせない。

 

「伊吹がお前らのところにいるならさっさと追い出した方がいいぜ。下手な同情心で助ければ、一人分余計に水や食料、寝床が必要になる。どうせ耐えられなくなればここに戻って来る。土下座でもすれば許してやるからよ」

「短絡的な思考ね。今はポイントの恩恵を受けているだけ。豪遊しきった後はどうするの? その後で食料を集めようと思っても苦労するだけよ」

「ククク。さあ、どうするかな。結局凡人どもには単純な考えしか浮かばないのさ。与えられたポイントを守ろうと躍起になる。リーダーが誰かを探ったり、スポットを必死に押さえ、汗だくで森を駆け回る。心底くだらねえな」

 

 ポイントを使い切ったらどうするか。そんなの簡単だ。高円寺のように仮病を使ってリタイアすればいい。そうすれば船に戻れる。

 

「戻りましょう界外くん。これ以上ここに居ても気分が悪くなるだけよ」

「またな鈴音」

 

 おい俺には言ってくれないのかよ。これが男女差別か……。

 

「気安く人の名前を呼ばないでくれる?」

「お前みたいな強気な女は嫌いじゃないぜ。いずれ俺の前で屈服させてやるよ。そのときは最高な気分を味わわせてやるよ」

 

 龍園はそう言って、右手を自らの股間に持っていき水着の上から触れて挑発した。

 こいつ、よく女の子相手にそんな台詞言えるな。完全にセクハラじゃないか。

 堀北を見ると、ありったけの侮蔑を込めた目で龍園を見下していた。

 

「堀北、行くぞ」

「……ええ」

 

 俺と堀北は背を向けて歩き出した。

 Cクラスの状況は詳しく確認が出来た。不機嫌モードの堀北を抜かせば収穫は上々と言えるだろう。

 

「堀北、Cクラスが豪遊しきったら、あいつらはどうすると思う?」

「それは食料を探したりするのだと思うけれど」

「違う。龍園はそういう努力は嫌いだと言ってただろ。ポイントを使い切った後でも楽に過ごせる方法が一つだけあるだろ」

「……まさか」

 

 やっと堀北も気づいたようだ。風邪を引いてるせいかいつもより頭が回らないのだろうか。

 

「リタイアするってこと?」

「ああ。高円寺のように仮病を使って船に戻るつもりだろ」

「そんなことって……」

「龍園は俺たちとは考え方が全く違う。そこを理解しないとこれから戦うときに苦労するぞ」

 

 龍園も綾小路と同じく枠にとらわれない思考の持ち主だ。そのことが今日でよくわかった。

 

「最初から試験を放棄するなんて間違ってるわ」

 

 堀北が呟く。

 俺が堀北にアドバイスできるのはここまでだ。後は自分で考えて貰う。

 2学期の試験に向けて堀北に成長して貰う。

 俺と綾小路が掲げた夏休みの課題だ。

 綾小路は俺以外に堀北にも自身の隠れ蓑になってもらいたいようだ。

 綾小路が表に出ない以上、Aクラスを目指すには堀北の力が必要だろう。綾小路からすると堀北はまだ使い物にならないとの評価だった。俺からすれば堀北は十分優秀だと思ってるんだけど。

 

「しかし龍園は凄いな」

「何が凄いのかしら?」

 

 俺の独り言に堀北が反応する。

 

「女の子相手にあんなことを言えることだよ。しかも堀北みたいな美少女にだぞ」

「び、美少女って……」

 

 俺には絶対無理だ。それよりあいつ一之瀬にも同じようなこと言ってないだろうな。

 もし言ってたら……潰してやる。

 




次回は一之瀬とイチャイチャするだけです
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