実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
今4巻読み直してるんですけど堀北と神崎って相性よさそうですよね
Cクラスのベースキャンプを後にした俺と堀北はBクラスとの待ち合わせ場所に向かっていた。
場所はDクラスとBクラスのお互いのベースキャンプの中間地点にある森林だ。今後、島を探索していい場所が見つかればそこに変更する手はずになっている。
「そういえば綾小路はAクラスのベースキャンプに辿り着いたかね」
「どうかしら」
俺たちがCクラスの様子を伺いに行くと同時に綾小路はAクラスのベースキャンプを探索することになっていた。まあ、あいつなら既に辿り着いてるだろう。ついでにAクラスのリーダーを見破ったりしてくれてるかも。
そうこう話してるうちに待ち合わせ場所に辿り着いた。そこには既に一之瀬と神崎の姿が見受けられる。
「界外くん、やっはろー!」
一之瀬が千葉県民特有の挨拶をしてきた。
「やっはろー」
俺が挨拶をし返すと堀北と神崎は怪訝そうな表情をする。ごめんね、君たちには意味がわからないよね。それにしても一之瀬はガハマさんに声が似てるな。
「悪い。待たせたか?」
「ううん、私たちも今来たところだよ。ね?」
「ああ。それに待ち合わせ時間までまだ5分もあるからな」
「ならよかった」
お互い時間厳守で何よりだ。さてこの2人に堀北を紹介せねば。
「こうしてちゃんと話すのは初めてだよね。私は一之瀬帆波。一応Bクラスの学級委員長やってるよ」
「俺は神崎隆二だ。副委員長を任されている。よろしく頼む」
俺が紹介する前に向こうが自己紹介をしてくれた。さすが一之瀬と神崎だ。
「堀北鈴音よ」
そんな2人に対し、堀北はぶっきらぼうに名乗るだけ。コミュ力の格差社会を垣間見たぞ……。
「よろしくね、堀北さん!」
「ええ」
一之瀬と堀北のテンションの差も激しいな。いや、テンションが高い堀北を見たいわけじゃないんだけど。
「それじゃ早速情報交換しよっか」
どうやら一之瀬が仕切ってくれるようだ。
俺たちは、まず購入した物と使用ポイント数を教え合った。
Bクラスは広いスペースがないため、テントを最小限に抑えてハンモックで寝泊りするスペースを確保しているとのことだった。
「70ポイント使用か。随分抑えたな」
俺は正直に感想を言う。
「界外くんのおかげだよ。ウォーターシャワーのこと教えて貰わなかったら仮設シャワー購入してたし」
「そうだな。本当に助かった」
うん。人から感謝されるのって気持ちいいよね。それが一之瀬なら尚更だ。
「あなた、昨日何してたの?」
堀北がジト目で聞いてきた。
「偶然Bクラスのベースキャンプに辿り着いてな」
「それでキャンプ道具について色々教えて貰ったんだよね」
俺の説明に一之瀬が補足する。
「随分面倒見がいいのね」
何だろう。堀北が不機嫌になってるような……。
「そ、それより、昨日スイカ畑を見つけたんだけど」
「スイカ畑?」
「ああ。それでBクラスも収穫したらどうだ?」
「……いいの?」
一之瀬が目を見開きながら確認してきた。
「沢山あるから問題ない」
「ありがとう!」
一之瀬が俺の右手を両手で握ってくる。そして天使の微笑みを俺に向ける。
「その代わりにBクラスも食材が収穫できるいい場所があれば教えて欲しいんだけど」
「食材の共有か」
さすが神崎。理解が早くて助かる。それよりそろそろ手を離してくれないかな一之瀬さん。堀北からの圧が凄いんだけど……。
「すぐには食べれないがバナナ畑なら紹介出来る」
まさかこの無人島にバナナ畑があるとは。これが本当のBANANA FISHか。
「すぐに食べれないとは?」
今まで黙っていた堀北が不機嫌な表情のまま神崎に問う。
「どうやら収穫してから2,3日吊るしておかないと駄目らしい」
「うちのクラスに実家が農家の子がいるんだよね。汁が出なくなるまで吊るさないといけないんだって」
神崎と一之瀬が続けて説明する。バナナって収穫してすぐに食べれないのか。
その後、食材について話し合いが続けられ、食材が収穫出来る場所の共有の他に、魚が大量に釣れた場合は分け合うことになった。また、DクラスとBクラスはお互いのリーダーを当てないことを約束した。
「最後に聞いておきたいことがあるんだが」
正直、これが一番重要だ。あ、やっと一之瀬が手を離してくれた。
「なになに?」
「Cクラスの生徒を保護したりしてないか?」
俺がそう問いかけると、一之瀬と神崎はお互いの顔を見合った。
「……うん、保護してるよ。金田くんって言うんだけどね」
一之瀬がそう答える。
「そうか。実はうちのクラスもCクラスの生徒を一人保護してるんだ」
「なに?」
どうやら神崎の反応からすると、Cクラスから二人追い出されてることは知らなかったようだ。
俺は龍園から聞いた情報をそのまま伝える。
「そんなことがあったんだ。金田くんは事情を話したがらないから無理に聞かなかったんだよね」
スパイの可能性もあるだろうに。一之瀬の優しさが感じられる。
「ちなみに一之瀬と神崎はCクラスの状況は知ってるのか?」
「うん。本気で試験に取り組むつもりがないみたい。試験終了前にポイントが不足するのは目に見えて明らかだもんね。ここから節約モードに切り替えるとも思えないし。スポットも探してないみたいだし。ちょっと理解に苦しむかな」
一之瀬も正しい答えを導き出せていないようだ。
「この試験でズルは出来ない。今は楽しいかもしれないけど、後で絶対後悔するはずだよ」
「一之瀬。本当にそう思うか?」
「え」
「本当にこの試験はズルが出来ないと思うか?」
「……どういうこと?」
一つだけこの試験でズルをする方法がある。もちろんそれは試験を乗り越える為ではなく、リタイアする為の方法なんだけどな。
「実はうちのクラスで一人離脱者が出てしまってな」
「それがズルとなんの関係があるの?」
「そいつ仮病でリタイアしたんだよ」
「仮病……? ねえ、それってまさか……」
さすが一之瀬。すぐに答えに辿り着いたか。神崎の様子を伺うと彼も気づいたようだ。
「ポイントを使い切ったら全員リタイアするってこと?」
一之瀬が問う。
「恐らくな」
「つまり龍園は最初からこの試験を放棄していたわけか」
「ええ。本当に愚かなことだわ」
神崎が先ほどの堀北と同じようなことを言っている。その堀北も神崎の発言に反応する。一之瀬の発言にも反応してあげてくれないかな。
Cクラスの話題が終了すると、続いてAクラスの話になった。一之瀬たちは昨日のうちにAクラスのベースキャンプの様子を伺いに行ったが、ガードが固く、情報は全く得られなかったとのことだった。
全てと言っていい情報を共有し終え、解散することになった。帰る際に一之瀬から午後に二人で会わないかと誘われたので速攻で了承した。
♢♢♢♢♢♢♢
ベースキャンプに戻った俺は早速綾小路に仕入れた情報を報告した。ちなみに綾小路もBクラスと同様にAクラスの情報は得られなかったようだ。
「それよりこの後一之瀬と会う約束してるんだけど」
「彼女がいないオレに嫌みか?」
「違う。つか俺も彼女いないんだけど」
誤解してる生徒が多いが、俺は一之瀬とも堀北とも付き合っていない。年齢=彼女いない歴のピュアボーイだ。
「BクラスにもCクラスの生徒が保護されてると言ったろ」
「言ったな」
「そいつがスパイだと一之瀬に言っていいもんかと思ってな」
そう。俺と綾小路は伊吹がスパイであることを特定したのだ。証拠として伊吹を見つけた場所に埋められていた無線機。それと伊吹の鞄に入っていたデジカメ。……女子の鞄を勝手に漁るなんてなかなかできることじゃないよ!
ともかくCクラスから追い出された伊吹が持ってるのは明らかにおかしい。更に伊吹をスパイだと確定させたのが龍園の近くに置いてあった無線機だ。あれは伊吹が隠してたものと全く同じものだった。よって俺と綾小路は伊吹はCクラスから送り込まれたスパイだと断定した。
つまり金田も伊吹と同様にスパイの可能性が高い。同日に追い出された生徒が一人ずつ違うクラスに保護される。証拠がなくても怪しさMAXである。
スパイが送り出されたのはDクラスとBクラス。ちょうどCクラスにとって目上と目下のクラスだ。Aクラスにスパイが送られていないことからすると、2つのパターンが考えられる。一つ目は単にAクラスを敵から除外していること。二つ目はCクラスがAクラスと協力関係であることだ。DクラスとBクラスが協力関係を結んでるんだ。AクラスとCクラスが結んでいてもおかしくはない。むしろBクラスを突き放したいAクラスと、Bクラスを追撃したいCクラスならば有効な手段と言えるだろう。実際、BクラスはCクラスを突き放すためにDクラスと協力しているのだから。
「界外はBクラスに保護されてる生徒もスパイだと思うのか?」
「逆に思わない方がおかしいだろ」
「そうだな」
「一応、本人にカマはかけてみるけどな。それで一之瀬に言っていいか?」
「なぜオレの許可を求めるんだ?」
そりゃ報告・連絡・相談は大事だからに決まってるだろ。それに……
「一応、相棒だからな。それと報・連・相だ」
「そうか。堀北に教えなければ問題ない」
「わかった」
どうやら綾小路はとことん堀北を今回の試験で試すようだ。
「堀北が自力で俺たちが持ってる情報まで辿り着けるか。あまり甘やかすなよ」
「俺が堀北をいつ甘やかしたんだよ?」
「自覚がないのか……」
綾小路が呆れてる。体調を気遣ってる以外に心覚えはないんだけどな。
綾小路との話を終え、俺は昼食の準備に取り掛かった。
今回は櫛田が手伝ってくれている。堀北は悔しそうな表情をしていた。そんなに俺と一緒に料理したかったのか。可愛い奴め。
俺が調理してると綾小路と堀北が二人でどこかに行くのが見えた。入学当初はよく見かけたが、最近では珍しい光景だ。
綾小路も何かアドバイスをするつもりなのだろうか。やれやれ、甘やかしてるのはどっちだよ。
「界外くん、どうしたの?」
隣で調理している櫛田が顔を覗きながら聞いてきた。
「堀北と綾小路が二人で行動してるの久しぶりに見たなと思って」
二人が行った先を指さす。
「確かに。……もしかして嫉妬でもしてるの?」
「え、なんで?」
なぜ俺が嫉妬をしないといけないだろう。俺の相棒を連れ出すんじゃない、ってか。
「……ううん。してないならいいの。変なこと聞いてごめんね?」
「いや。それより今日も手伝って貰って悪いな」
「謝らないで。私が手伝いたいんだから」
櫛田は本当に優しいな。堀北から中学の時の話を聞いてなかったらマジで俺も落とされていたかもしれない。それと綾小路から聞いた話もね。
「あ、あのね……、界外くんにお願いがあるんだけど……」
「どうした?」
「今度、私に料理を教えて欲しいなって。……いいかな?」
まさか料理の講師役をお願いされるとは。もちろん答えは……
「いいぞ」
「ホント? ありがとう!」
櫛田はそう言うと、俺の手を握ってきた。一日に二回も女の子に手を握られるとはね。
「ちなみにどんな料理を教わりたいのか決まってるのか」
「うーんとね―――――――」
櫛田からリクエストを承り、お互い都合がいい日に二人だけの料理教室を開くことが決まった。
マンツーマンならしっかりと教えられるから有難い。
それより夏休みの予定がどんどん埋まっていくな。
♢♢♢♢♢♢♢
「後片づけしてたら時間ぎりぎりになっちまったな」
昼食と後片づけを終えた俺は一之瀬との待ち合わせ場所に佇んでいる。
時刻は13時25分。約束の時間まであと5分だ。一之瀬との待ち合わせには基本30分前に待ち合わせ場所に着いてる俺にとっては遅刻も同然な時間だ。
心の中で反省していると、視界がいきなり真っ暗になった。
そして背中には、極上とも言える柔らかな感触が。
「だ~れだ!?」
女子が男子にする(リア充に限る)定番の悪戯台詞。
まさか俺が女子にこんなことをされる日が来るなんて……。
「ふふふ。正解するまで離さないよ?」
「なら一生正解を言わない」
「なんで!?」
そんなのたわわな果実を俺の背中でずっと感じてたいからに決まってるじゃないか。
「冗談だよ。Bクラスの学級委員長さんだろ?」
「名前で言って」
不機嫌そうな口調で彼女が言う。
「一之瀬」
「正解!」
目隠しが解除され、振り向く。
「えへへ。ベタすぎたかな?」
「かもな。でも初めてされたから新鮮だった」
「そっか。ならよかったー」
無邪気な笑顔を見せる一之瀬。昨日のエロい表情とギャップが凄い。
「それじゃ早速いこっか」
「どこに?」
「誰にも邪魔されない二人きりになれる場所!」
一之瀬に導かれながら歩くこと20分。辿り着いた場所は……
「神社……?」
なんでこの島に神社があるんだ。小さいながら門と本殿もある。
「午前中に探索してたら見つけたんだよね」
「一之瀬が?」
「うん。正確には私たちって言うべきかな」
改めて神社を見る。建てられたから大分経ってるようで本殿の劣化が激しい。
「中入ろ」
「え」
腕を掴まれ本殿に連れてかれた。
一之瀬は本殿の扉を開け、なんと中に入っていってしまった。
「界外くんも早く」
「いや、本殿に入るとか罰当たりじゃないか……?」
「大丈夫だよ。悪さをするわけじゃないんだから」
一之瀬がそう言うなら仕方ない。ゆっくりと足を踏み入れる。
本殿の中は文字通り何もなかった。どうやら長い間放置されているようだ。
「座って座って」
本殿を見渡してると、一之瀬に隣へ座るよう手招きされた。
ややスペースを空けて、彼女の隣にゆっくりと腰を下ろす。
「凄いな。学校の管理してる島に神社があるなんて」
「だよね。私も見つけた時はびっくりしたよー」
そう言いながら距離を詰めてくる一之瀬。相変わらずの距離感である。
「夏目好きの界外くんなら、こういうの好きかなって」
「そうだな。正直島に来てから一番ワクワクしてる」
「そっか。なら連れてきて正解だったかな」
にひひと笑う一之瀬。俺の反応に満足しているようだ。
「ここなら誰にも邪魔されずに二人きりになれるでしょ?」
「そうだな」
確かにここなら周りの目を気にせずに落ち着いて話せる。
無人島だとどこで誰かが見てるかわからないからな。
「……もしかして明日からの情報交換もここでするのか?」
「ううん、しないよ」
「え」
「ここは私と界外くんだけの場所だよ」
そんな見つめられながら言われると照れちゃうんだけど。
「で、でも他の子と一緒に見つけたんだろ? なら他に使おうとする子もいるんじゃないか?」
「それはないかな」
「なんでだ?」
「私以外の子は気味悪がってたから」
なるほど。確かに女子にとっちゃ無人島の神社なんて気味悪いか。長い間放置されてる神社ならなおさら。
夏目にはまってる綾小路と須藤を連れてきたら喜びそうだな。
「だから他の人に教えちゃ駄目だよ?」
「うん、教えない」
二人ともごめんね。ここは俺と一之瀬で独占させて貰うね。
「んしょ」
いきなり一之瀬がジャージの上着を脱ぎだした。
その動作によりたわわに実ったけしからんメロンが大きく揺れる。
「ここなら紫外線気にしなくてすむからね」
上着が体操着一枚になった一之瀬が説明する。
確かに男子と比べて女子は炎天下でもジャージの上着を着てる子が多かった。ちなみに堀北にジャージを貸してるため常時半袖の俺だけど日焼け止めはしっかり塗っている。将来シミになったら嫌だしね。
「界外くんはずっと半袖だよね」
「ああ。堀北に上着を貸してるから」
「なんで?」
「…………ッ!?」
なんだ。急に一之瀬から威圧感が……。
「いや、堀北が風邪気味で寒気するから貸してあげてるんだけど……」
「……そうなんだ。界外くんは優しいね」
なんだ気のせいか。さっきのはもしかしたら俺に見えない妖が放った邪気なのかもしれないな。
その後、俺たちは駄弁りながら時間を潰した。
「え、朝から走ったの?」
「ああ。前から浜辺で走ってみたいと思ってて」
「……もしかしてハイキューとかの影響かな?」
さすが一之瀬。正解である。俺のことわかってくれてて嬉しい。
「そうだよ」
「千葉にいた時は走らなかったの?」
「走らなかった。海まで行くのに電車に乗る必要あったしな」
「そうなんだ。……ねえ、私も見に行っていいかな?」
「いいけどつまらないと思うぞ」
人が走るのを見るだけって相当つまらないだろ。駅伝や陸上ならまだしも。
「ううん、そんなことないよ。それに界外くんが走ってるところ見てみたいし」
軽く頬を染めながら一之瀬が俺をちらっと見る。
「そ、そうか。なら思う存分見てくれ」
「うん!」
そんな顔されたらオッケーするしかないじゃないか。
今日は昨日と違っていつもの一之瀬って感じだ。時折昨日のことを思い出すが今のところ普通に会話が出来てる。俺も成長したもんだな。
さて、名残り惜しいけどそろそろ真面目な話をしなければ。
「一之瀬、お前に報告しておきたいことがある」
「なに?」
「朝、うちのクラスに伊吹って女子を保護してるって言ったろ」
「うん」
「伊吹はCクラスが送り込んできたスパイだ」
「え」
俺からの情報に戸惑いを隠せない一之瀬。俺は一之瀬が落ち着いてからなぜ伊吹をスパイと断定したのか説明した。もちろん綾小路のことは伏せて。
「……そうだったんだ」
「だから金田って生徒もスパイの可能性が高いと思う」
「普通に考えたらそうだよね。それにAクラスと協力してるかもなんて……」
一之瀬はまんまと龍園の作戦に引っかかったことにショックを隠せないようだ。
「二人とも殴られたのも信憑性を持たせる為ってことだよね?」
「だろうな」
綾小路が伊吹の所持品を見つけなければ、俺も少しは信じていたかもしれない。
「Dクラスは伊吹さんのことどうするの?」
「泳がせることにした。それに伊吹をスパイだと知ってるのも俺くらいだ」
「他の人に教えてないの!?」
一之瀬が驚いた様子で質問してきた。
「ああ。伊吹にスパイだと見抜いてることを悟らせたくないからな」
「……そっか」
「一之瀬はどうするんだ?」
「そうだね……」
一之瀬はそう言いながら、いかにも考え込んでいる様子で、手の上にあごを乗せた。
やっぱ一之瀬はどんな動作をしても絵になる。
「うん、決めた。私も泳がせることにするよ」
「そうか」
「神崎くんには報告するつもり。……一緒に来てくれる?」
不安そうに一之瀬が言う。そんな顔しなくても大丈夫だぞ。
「ああ。それと金田と話をさせてほしい」
「いいけど、大丈夫?」
「少しだけだよ。スパイと見抜いてることは悟らせない」
「うん。後は金田くんを発見した場所も調べたほうがいい?」
「本人にばれないようにな。無理はしない方がいい」
「わかった」
そして俺は万が一リーダーを見抜かれた場合の対処法を伝えた。これならCクラスに一泡吹かせることができるはずだ。
「あと、一之瀬に聞いておきたいことがあるんだけど……」
「なになに? なんでも聞いてよ」
「一之瀬は龍園と接触したことはあるか?」
「うーん、直接話したのは1,2回かな……」
やはりリーダー同士接触してるよね。俺が知らない間にバチバチやりあってたもんね。
「それがどうかしたの?」
「いや、実は龍園と接触した時に堀北がセクハラまがいのことを言われて……。一之瀬は被害にあってないかなと思って……」
一之瀬の答えによって俺の対応が変わる。さあ、どうなんだ!?
「私は言われてないかな。Bクラスを潰す的なことは言われたけど」
「……そっか。ならよかった」
よかったな龍園。これで一之瀬にセクハラしてたらお前の前歯が全て差し歯になってたぜ。
「心配してくれてるんだ?」
「当たり前だろ。大切な人を心配しないはずがないだろ」
「た、大切……」
そう言えば前に須藤に凄んだことがあったっけ。あの時は感情的になってしまったな……。
「え、えへへ。嬉しいなぁ……」
「ん?」
「ううん、にゃんでもなーい」
いつの間にか一之瀬が随分嬉しそうな顔をしている。
「もし龍園に何かされそうになったら言ってくれ」
「うん!」
今回は龍園がDクラスとBクラスに同時で仕掛けてるのは間違いない。
ならば俺がやることは一つ。それを阻止して、今後はDクラスにあいつの狙いを集中させることだ。
「えっと、もしもなんだけど……」
「どうした?」
「もしもの話だよ? もし私が龍園くんに酷い目にあわされたらどうするのかなって思って」
一之瀬が龍園に酷い目にあわされたら。
その可能性は十分ある。なにせ一之瀬はBクラスのリーダー。龍園にとって目の上のたんこぶだ。実際、Dクラスが眼中になかった時はBクラスを集中的に狙っていた。
それに龍園は目的のためなら女子に手をあげる鬼畜野郎だ。
可能性はあるけど俺はわざとそのことを考えなかった。何故なら、そのことを考えただけで殺意が芽生えてしまうからだ。もちろん人殺しになるつもりはない。だから俺は……
「半殺しだな」
別に金木くんみたいに全体の骨を半分折るというつもりはない。つかそんなこと出来ない。
随分と物騒なことを言ってしまったけど一之瀬の反応はどうだろうか。
「……そっかそっか。うん」
またまた嬉しそうな表情をしている。しかも一人で納得してるようだ。
「ありがとう。変な質問してごめんね」
「いや」
「それじゃそろそろいこっか?」
「そうだな」
腕時計を見ると午後3時半を過ぎていた。気づいたら2時間近くも神社にいたようだ。
神社を後にした俺たちはBクラスのベースキャンプへ向かった。一之瀬の足元がおぼつかなかったので、途中から手を繋いで歩いた。
手を繋ぎながら20分ほど歩いただろうか。ようやくBクラスのベースキャンプに辿り着いた。
ベースキャンプに踏み入れると一之瀬に次々とおかえりと声がかかる。さすが学級委員長だ。
「それじゃ早速金田くんに紹介するね」
「ああ」
今回で2日目となるアウェイの地。何だろう。前回より注目されてるような気がする。もしかして感謝の目を向けられてんじゃないだろうか。確か俺のアドバイスでポイントを節約出来てると一之瀬が言っていた。ならこの視線の多さも納得だ。
「多分、この時間ならあそこにいると思うんだよね」
一之瀬に導かれながら金田がいるであろう場所に向かう。
「あ、いたいた。金田くーん!」
一之瀬の視線の先には髪型がキノコカットの男子がいた。こいつが金田か。
「一之瀬さん、どうしたんですか?」
「実は金田くんに紹介したい人がいるんだけど……」
一之瀬は俺をチラチラ見ながら言う。
「えっと、Dクラスの界外だ。よろしく」
一之瀬に促され自己紹介をする。自分なりに爽やかに出来たつもりだ。
「Cクラスの金田です。よろしくお願いします」
Cクラスのくせに言葉遣いが荒くない。
「実は金田に提案があって」
「提案ですか?」
「ああ。うちのクラスで金田のクラスメイトの伊吹って女子を保護してるんだけど」
「伊吹さんを?」
知ってるくせになんて白々しいんだ。
「ああ。ただ一人だけ違うクラスだからか肩身が狭いようでな」
「はぁ」
「だから金田もうちのベースキャンプに来ないか?」
「え」
「伊吹も金田もクラスメイトがいたほうが気が楽だろ。ちなみに一之瀬の許可も取ってある」
「一之瀬さんの?」
「うん。お互い一人で肩身が狭いなら、そっちの方がいいかなって思って」
「そ、そうですか……」
さあ、どうする。どう切り抜ける?
「お、お誘いはありがたいのですが、僕と伊吹さんは話したことがなくて……」
「一度も?」
一之瀬が問う。
「はい。なので一緒にいると気まずくなると言いますか……」
なるほど。そう来たか。
「……そっか、わかった。ならいいんだ」
「せっかくお誘い頂いたのにすみません」
「気にしないでくれ」
「はい。……それよりずっと気になってるのですが」
「ん?」
金田の視線が俺と一之瀬の間で行ったり来たりする。
「お二人はお付き合いされてるんでしょうか?」
「にゃっ!?」
急な質問で一之瀬が動揺する。猫娘にはまってるのかな。
「な、なんで、そんなことを聞くんだ……?」
金田に問う。こいつは急に何てこと聞いてくるんだよ。
「いえ。ずっと手を繋いでいらっしゃるので」
「「あ」」
俺と一之瀬の間抜けな声が重なる。そして瞬時に手を離す。
また同じミスをしてしまった……。
俺と一之瀬は金田の誤解を解き、急いで金田のもとを去った。
「ずっと手を繋いでたんだな……」
「だね。なんか手を繋いでるのが当たり前になって、離すの忘れちゃった……」
20分も繋いでいたらそうなるのか。勉強になるな。
俺はアウェイだから問題ないけど、一之瀬はこの後が大変そうだな。
現に女子の一部がにやにやと俺と一之瀬を見ている。彼女のその視線に気づいてるようで、顔を赤くして俯きながら歩いている。
そんな視線に耐えながら、昨日、見送りされた場所に着いた。
「迷惑かけてごめんな」
「ううん、迷惑だなんて思ってないよ」
「そっか」
「そうだよ。……明日も二人で会おうね?」
「ああ」
そんなの当たり前じゃないか。俺と一之瀬だけの場所。なんて響きがいいんだろう。
「後、浜辺のランニングも。絶対見にいくからね」
「あいよ」
「また明日ね」
「またな」
一之瀬に見送られ、俺は自身のベースキャンプへ戻っていく。
彼女は俺の姿が見えなくなるまで見送り続けてくれた。
その姿が俺はなんとも愛おしく思えた。
次回は一之瀬と堀北とイチャイチャします
試験そっちのけでいちゃついてばっかりだな……