実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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俺の読んでるラブコメ漫画が次々にアニメ化されていく


29話 IPPAI OPPAI ボク元気

 特別試験6日目の朝。昨日は事件があったせいで走れなかったので今日は走るぞ。クラスが微妙な雰囲気だけどそんなの関係ない。

 俺は須藤と三宅を連れて浜辺に向かった。ちなみに平田は不参加だ。リーダーとしてキャンプ地から離れるわけにはいかないと思っているのだろう。

 浜辺に辿り着くと、Bクラスの面々が既に揃っていた。

 

「よう界外! 昨日はどうしたんだよ?」

 

 柴田が早速聞いてきた。

 どうやら一之瀬と神崎はクラスメイト達にDクラスにトラブルがあったことを伝えてないようだ。まあ、内容が内容なだけに当たり前か。

 

「少しトラブルがあってな。平田は今日も不参加だ」

「そっかー。ま、仕方ないか」

 

 俺の説明に納得してくれたようだ。

 

「おはよう、界外くん!」

 

 少し遅れて一之瀬がやって来た。

 俺は準備体操をしながら返事をする。

 

「おはようさん」

「今日は走るんだね」

「ああ。それに明日で最後だからな」

「そっか。明日で試験終了なんだよね……」

 

 初めての無人島生活なので不安はあったが、楽しく過ごせたと思う。なぜなら……

 

「今日も二人で会える?」

「もちろん」

 

 毎日一之瀬と二人きりで過ごせる時間があるからだ。寂れた神社の本殿。そこが俺と一之瀬のアナザー○カイ。

 

「おーい! いちゃついてないでそろそろ走ろうぜー!」

 

 一之瀬と話してると柴田が大声で叫んできた。

 

「い、いちゃついてないし! それじゃ行ってくる」

「うん、いってらっしゃい」

 

 柴田たちがいるスタート地点に小走りで向かう。

 

「悪い、待たせた」

「どうせ午後にいちゃつくんだから朝くらいは我慢しろよな」

「……待て、柴田。午後にいちゃつくとかどういう意味だ?」

「ん? 一之瀬と二人で会ってるんだろ。うちのクラスはみんな知ってるぞ」

 

 うそーん。Bクラス全員知ってるのかよ。

 

「ち、ちなみに誰から聞いたんだ……?」

「誰からも聞いてないぞ。一之瀬が一人でベースキャンプを離れるとしたら界外に会うくらいしか理由がないだろ」

 

 いや、それ以外にも理由ありそうな気がするんだけど。

 

「やっぱ一之瀬と付き合ってたのか?」

 

 三宅が質問をしてきた。

 

「いや、付き合ってないから」

「説得力ないぞ」

「本当なんだけどな……」

 

 確かに俺が三宅の立場だったら同じく信じないだろうな。

 事実ではないので否定はしてるけど、正直なところ一之瀬と恋人と思われるのは気分が良い。

 

「長谷部に聞いた話だと、掲示板でもお前たちのこと噂になってるようだぞ」

「長谷部? 三宅って長谷部と話すんだ」

「そこそこな」

 

 長谷部が教室で男子と話してるのを見たことがなかったので意外だった。

 俺の知らないところで色々な交友関係があるんだな。

 それより掲示板で噂になってるのか……。

 

「よし、行くか」

 

 柴田の掛け声で一斉に走り出す。

 柴田と須藤とデッドヒートのすえ、今日もなんとか1位でゴールインした。

 俺は案の定ガス欠になってしまったが、一之瀬の膝枕を堪能できたので後悔はしていない。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 ふらふらになりながらベースキャンプに戻り、シャワーを浴びた。

 シャワールームから出て、空を見上げると、どんよりとした曇り空になっていた。今日は天気が荒れそうだ。

 調理場にいくと、既に堀北と櫛田の姿があった。

 

「おかえり、界外くん!」

 

 笑顔で出迎える櫛田。

 

「ああ、ただいま。今日は二人とも手伝ってくれるのか?」

「私だけで十分だと言ってるのだけれど……聞き入れてくれないのよ」

 

 堀北が不満そうに答える。

 

「でも二人より三人で作った方が早いよね?」

「それは……」

 

 珍しく櫛田が堀北を押している。まあ、櫛田の方が正論を言ってるので仕方ないけれど。

 

「早速作るか」

「ええ」

「うん」

 

 今日はいつもより豪華な朝食を作った。理由は簡単。これで少しでもクラスの嫌な雰囲気が払しょくできればと思ったからだ。

 朝食を支給すると、池が大げさに騒いでいた。恐らく池なりにこの雰囲気を何とかしようと思ったのだろう。

 

 朝食後、平田は大勢の生徒を集め激励を飛ばしていた。そして今日を乗り切るための最後の食料を探しに行く班分けを始める。

 ちなみに定例になっているBクラスとの情報交換だが、今日はなしになった。作戦通り俺と堀北が食料探索に参加するためだ。特に交換するほどの情報もないしね。

 

「須藤くんと池くんは引き続き魚を獲って貰いたいんだけどお願い出来るかな?」

「任せろ。座禅をした後の俺の引きは凄いぜ?」

「座禅は関係ねえよ健」

 

 平田の指示に素直に従う須藤と池。座禅ってそんな効果もあったのか……。

 

「ありがとう。それじゃ食料捜しのグループを作っていこう」

 

 次々にグループが作られていく。俺は堀北、櫛田、佐倉、綾小路の組み合わせになった。山内が参加しそうになったが作戦の邪魔をしそうなので違うグループに参加して貰った。

 この余り者が多いグループで櫛田がいるのが珍しい。理由は王さんが女の子の日で体調を崩して、櫛田以外のグループの子が付き添ってるとのことだった。

 

「ねえ、界外くん」

 

 櫛田がそっと俺に耳打ちをしてきた。

 

「なんだ?」

「みーちゃん、この前界外くんの名前を言いながら鼻血を出してたの」

「え」

「何か知ってる?」

「知らないけど……」

 

 心当たりはあるけれど櫛田には言えない……。

 

「なあ伊吹。おまえも一緒に来ないか?」

 

 作戦通り綾小路が伊吹を誘った。

 

「私が?」

「今日で試験も最後だしな。嫌なら無理強いはしないが」

「……そうだな。Dクラスには借りがあるから……わかった、手伝う」

 

 よし。さすが綾小路。堀北を見ると彼女も一安心しているようだった。

 こうして6人になったグループは森の中に足を踏み入れた。

 

「界外くん。今日はなに作るの?」

 

 食べ物を探しながら歩き続けてるが、やたらと櫛田が俺に話しかけてくる。

 

「うーん、釣れた魚によるけど塩焼きにしようと思う」

「また大量に釣れるといいね」

「そうだな」

 

 別に話しかけられるのは構わない。ただ俺と櫛田が話してると、とある女子の機嫌がすこぶる悪くなるのだ。

 

「櫛田さん。私たちは食料捜しに来てるのよ。もう少し集中したら?」

 

 ほらね。ちなみに櫛田の名前しか呼んでないが俺のことも睨んでくる。俺は話しかけられてるだけなのに理不尽だと思う。

 

「ごめんね。界外くんとお喋りするの楽しいからついつい」

 

 櫛田の言い訳に更に堀北の顔が不機嫌になる。綾小路から聞いてお互いに嫌ってるのは知ってるけど、もう少し仲良くしてくれないだろうか。

 それより思ったより櫛田が俺から離れないな。俺は綾小路に目配せする。

 

「櫛田、ひとまずこの辺りを中心に探さないか?」

 

 すぐに綾小路は動いた。

 

「そうだね」

「一人だと危険だから二人で行動しよう」

「界外くん。行くわよ」

 

 綾小路の指示が飛んだ瞬間、堀北が俺の腕を掴んでグループから離れる。

 

「あっ……」

 

 後ろで後を追いかけてきた櫛田が肩を落とすのが見えた。作戦のためなんだ、悪いな櫛田。

 ペアは俺と堀北、綾小路と佐倉、櫛田と伊吹の組み合わせになった。

 俺と堀北は伊吹の位置を確認する。ここからなら十分見えるだろう。

 

「堀北、やるぞ」

「ええ」

 

 小声で堀北に指示を出す。作戦開始だ。

 

「堀北、キーカードを見せてくれないか?」

「いいけれど。……どうするつもりなの?」

 

 恐らく伊吹には聞こえないだろうけど、念のため演技をする。

 

「実は他のクラスでカードらしきものを持ってる生徒を見かけてな。それがキーカードなのか確かめたい」

「わかったわ」

 

 堀北はそう言うと、そっとカードを取り出した。俺はそれを受け取り、まじまじと見る。

 よし、ここから俺の演技力にかかってる。集中しろ俺。

 

「これと同じようだな。ありがとう」

 

 俺はカードを返すふりをして、手元からそれを地面へと落とした。

 

「あっ!!」

 

 俺は注目を浴びるよう大きな声を上げた。堀北は急いでカードを拾い上着にしまった。

 

「どうしたのー?」

 

 櫛田が少し心配そうにこちらを見ていた。伊吹も同様だ。

 

「いや、何でもない。虫がいたから驚いただけだ」

「そっか。界外くん、虫が苦手なんだね。可愛い」

 

 男が虫が苦手だと可愛いのか。初めて知ったぞ。

 

「俺って可愛いのか」

「冗談に決まってるでしょう。何を本気にしてるの?」

 

 俺が呟くと、堀北に睨まれてしまった。

 

「……それより上手くいったかしら?」

「恐らく。綾小路に後で確認しておく」

 

 綾小路は伊吹を見ておくようにお願いをしている。

 あれだけ大声を出したんだ。堀北もカードを拾うのを少し遅らせていた。

 これで伊吹は堀北がリーダーだと気づいただろう。後はどうやってカードを撮影させるか。

 

 お昼前、俺たちは収穫なくベースキャンプに戻ってきた。太陽が出ていなくても森の中は想像以上に暑い。現に食料捜しから帰ってきた生徒たちが大勢シャワールームに並んでいる。俺も一之瀬に会う前にシャワー浴びたいんだけどな……。

 

「界外くん、ちょっと」

「ん?」

 

 堀北は俺の腕を掴み、ベースキャンプから離れた。……俺、何回堀北に腕を掴まれてるんだろうか。

 

「伊吹さんにカードを撮影させる方法を思いついたわ」

「……教えてくれ」

 

 さすが堀北。やる時はやる女だ。

 

「シャワー室が混んでるのを理由に川に水浴びに行くわ。その時に着替えと一緒にカードも岩場に置いておく」

「なるほど。それなら自然に水浴びに行けるか」

「ええ」

「でも風邪は大丈夫なのか? 水浴びなんかしたら悪化するんじゃ……」

 

 昨日も寒気が治まらないと言っていた。現に今も俺の上着を着ている。

 

「大丈夫。上着は念のため着ているだけだから」

「でもな……」

「お願い。やらせて」

 

 真剣な眼差しで俺を見つめる堀北。

 

「……わかった。悪化したらすぐに言ってくれよ」

「看病してくれるのかしら?」

「男子のテントでいいならな」

「それは遠慮するわ」

 

 そりゃ汗臭い男子のテントなんて嫌だよね。

 

「そういえば水浴びするのはいいけど、水着持ってきてるのか?」

「一応ね」

 

 ほーん。堀北も海やプールで遊ぶことを想定していたってことか。

 

「なにその顔は?」

「あ、いや。何でもない」

「……ならいいけれど。それじゃまた後でね」

「ああ」

 

 堀北はそう言うと、自身のテントに入っていった。恐らく水着に着替えるのだろう。堀北の水着姿を見ておきたいがそろそろ昼食の準備に取り掛からなければいけない。

 

 30分後。昼食の準備をしてると堀北が戻ってきた。表情は明るい。どうやら上手くいったようだ。

 

「恐らく上手くいったわ。着替えの周りの足跡が増えていたから」

「そこまで見てたのか……」

 

 よく足跡なんて確認してたな。綾小路の評価は低いけど、やはり堀北は優秀だと思う。

 

「後は伊吹がいなくなれば確認を得られるな」

「そうね」

「伊吹がDクラスから離れやすくなるタイミングを作ってあげないとな」

「その顔だと方法は思いついてるみたいね」

「まあな」

 

 でも俺が考えてるやり方はあまり好ましくない。クラスの雰囲気がより悪くなるだろう。けれどもう今日は試験6日目。明日にはクラスメイトも笑顔になっているはずだ。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 昼食を終えた俺は一之瀬と合流し、いつもの神社へ向かった。

 

「明日でいよいよ試験も終わりだね」

 

 隣を歩く一之瀬が言う。ちなみに今日も彼女の要望で手を繋いで歩いてる。

 

「だな。意外とあっという間だった」

 

 そう感じてるのは一之瀬との時間があったからだろう。この試験のおかげで一之瀬との距離が縮まったと思う。

 感傷に浸ってるうちに神社に辿り着いた。いつものように本殿の扉を開けようとした瞬間、違和感を感じた。

 扉がきちんと閉まっていない。昨日帰る際にきちんと閉じたはずだ。もしかしたら俺たちが帰った後に誰か来たのだろうか。

 

「どうしたの?」

 

 扉を開けずに固まってると、一之瀬が心配そうに顔を覗きこんできた。

 

「いや、今日で最後だと思うとちょっとな」

「だね。ここにはお世話になったもんね」

「ああ」

 

 俺たち以外にも使用する生徒はいるだろう。俺は気にせず本殿の扉を開けた。

 中に変わった様子はない。一人で来たら不気味と感じる雰囲気のままだ。

 いつもの場所に腰を下ろし、一之瀬と他愛もない話をし始める。

 お喋りに夢中になっていると、気づいたら14時半を回っていた。

 

「もう14時半か。そろそろ帰るか」

「え、早くない?」

「今日は天候も悪いからな。雨が降らないうちに帰った方がいいと思う」

 

 本当は二人でもっといたいけど、一之瀬を雨に濡らすわけにはいかない。

 

「そうだけど……今日で最後なんだよ? もう少し一緒にいたいよ……」

「わかった。もう少しここにいるか」

「うん!」

 

 さすがチョロさに定評がある俺。でも仕方ないよね。一之瀬に涙目でお願いされたら断れるわけないじゃん。

 

「あのね」

「ん?」

「試験が終わったら一週間は船の上でしょ」

「そうだな」

「よかったら一緒に色々見て回らない?」

「いいぞ。来るときはずっと部屋に閉じこもってたからな」

 

 博士と二人でずっと氷菓を見てただけだったな……。

 

「そうなんだ。なら残りの一週間は豪華客船を満喫しなきゃだね!」

「だな」

 

 一之瀬と客船デートか。……やばい。今から楽しみすぎる。勉強もしないといけないのでうまくスケジュールを組まないといけないな。

 

「そういえば金田の様子はどうなんだ?」

「うーん、リーダーは見抜かれてないと思うんだよね」

「そうか」

「このまま平和で終わるといいんだけど」

 

 苦笑いをしながら言う一之瀬。

 もしかしたらこの後に何か起きるのか危惧しているのかもしれない。

 

「学級委員長だと気が抜けなくて大変だな」

「そんなことないよ。現に今だって界外くんと一緒にいれるわけだし」

「つまり俺と一緒にいる時はリラックス出来てるってことか」

「うん、そうだよ」

 

 そう言って、一之瀬は甘えるように体を寄せ、頭を俺の肩に預けてくる。

 

「い、一之瀬さん……!?」

「この前お昼寝した時思ったんだけど、この体勢が一番リラックス出来るんだよね」

 

 一之瀬がリラックス出来ても俺が出来ないんだが。いつの間にか腕組みされ、いつものけしからん感触が伝わってくる。

 

「……また昼寝するのか?」

「さすがに今日はしないかな。でも少しこのままでいていい?」

「いいよ」

 

 彼女に甘えられると何でも言うことを聞いてしまう。

 どうやら俺は一之瀬帆波という美少女に完全に首ったけのようだ。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 一之瀬に甘えられてから1時間後。彼女をBクラスのベースキャンプに送り届け、俺はホームに戻った。

 キャンプ地に辿り着くと、櫛田が駆け寄ってきた。

 

「界外くん、やっと帰ってきてくれた!」

 

 櫛田は俺を見て、安心した表情を見せる。

 

「何かあったのか?」

「うん。実はマニュアルが燃やされちゃったの」

「マニュアルが!?」

 

 俺は驚いた表情をわざと浮かべる。マニュアルが燃えたのは知っていた。なぜなら俺が綾小路にお願いしたからだ。理由は単純明快。伊吹にDクラスから抜け出すチャンスを作る為だ。

 櫛田は事件の詳細と伊吹がいなくなったことを説明した。どうやら計算通りに伊吹は動いてくれたようだ。

 

「それでクラスの雰囲気が悪くなっちゃって……」

 

 これも予測していた。下着泥棒事件に続いて放火事件だ。これで雰囲気が悪くならない方がおかしい。

 

「須藤くんがみんなを元気づけようとしてくれてるんだけど……」

 

 ここで須藤の名前があがってくるなんて。どうやら入学当初の須藤は完全にお亡くなりになったようだ。

 

「そうか」

「あのね、こんなこと言いたくないんだけど……」

「どうした?」

「えっとね、あの……」

 

 櫛田が言い辛そうに口ごもる。

 

「伊吹さんなんだけど、このタイミングでいなくなるって……」

 

 櫛田もどうやら伊吹がスパイだと勘付いてるようだ。

 

「もしかしたら伊吹はスパイだったのかもな」

「界外くんもそう思う?」

「ああ。マニュアルを燃やして、タイミングを見計らって逃げたんじゃないか?」

「やっぱりそうなのかな……」

 

 明らかにショックを受けたように肩を落とす櫛田。

 

「それより他のみんなは?」

「テントで過ごしてるよ。小雨降ってるしね」

 

 雨が降ればテントに退避するのは当たり前か。それと今の状況だとテントに引きこもってた方がいいかもしれない。

 そういえば一之瀬と帰る時に雨で下着が透けて見えてしまった。指摘した時の一之瀬の慌てようが可愛かった。あと青いブラも可愛かった。

 

「櫛田はテントに入らなかったのか?」

「うん。界外くんが戻ってくるのを待ってたんだ」

 

 なぜ雨に濡れてまで俺の帰りを待ってたのだろうか。

 

「そうか。遅くなって悪かったな」

「ううん。私が勝手に待ってただけだから」

 

 何が狙いなのだろう。俺の好感度を上げたいのか。櫛田が何を考えてるのかよくわからない。

 

「それよりシャワー浴びたら? けっこう濡れてるよ?」

「そうだな。着替え持って浴びてくるよ」

「うん。それじゃ私はテントに戻るね」

「あいよ」

 

 本当に櫛田は何がしたいんだろう。

 それより堀北は大丈夫だろうか。さすがに女子のテントまで行って様子は見れないからな。

 俺は堀北の体調を気にしながら自分のテントに向かった。

 

 シャワーを浴び終えると、綾小路に森へ連れ出された。

 あの、俺シャワー浴びたばかりなんですけど……。

 

「櫛田から聞いてると思うが上手くいったぞ」

「みたいだな。放火魔さん」

「お前が指示したんだろう」

 

 俺の冗談を不満そうに返す綾小路。

 綾小路はそのまま伊吹の後をつけたこと、伊吹が龍園とAクラスの葛城と接触していたことを教えてくれた。全く気付かれずに追跡するとは……。綾小路ならミスディレクションをマスター出来そうだな。

 

「堀北の様子はわかるか?」

「わからない。ずっとテントの中にいるからな」

「そうか……」

 

 堀北と同じテントには松下がいる。堀北の具合が明らかに悪ければ俺に報告してくれるはずだ。

 

「それより綾小路に聞きたいことがある」

「なんだ?」

「この試験が始まってから櫛田にやたらと絡まれる。何でだと思う?」

「オレに聞かれても困るんだが……」

 

 綾小路は困ったような表情をまったくしないで答える。

 

「櫛田と一番仲良いのは綾小路だろ?」

「あいつは誰とでも仲が良いぞ」

「そうかな……」

 

 櫛田の本性を生で見たのは綾小路だけだ。

 まさか自分から胸を触らせる痴女だとは思わなかった。

 

「とりあえず気をつけろとだけ言っておく」

「全然為にならないアドバイスどうもありがとう」

 

 気をつけろか。既に料理を教える約束しちゃってるんだよね。お願いされた時は嬉しくて即答してしまった。

 まあ、いい。櫛田がどんな人間か直接確かめられるいい機会だ。

 櫛田桔梗。

 俺たちの力になってくれるのか、障害になるのか。

 それより桔梗ってかっこいい名前だな。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 時刻は18時半。俺はこの数日間歩いた森の中を堀北を背負って進んでいた。目的地はもちろん船だ。

 

「まさかあなたにこうしておぶられる日が来るなんてね」

 

 息を切らしながら堀北が言う。

 

「俺も堀北をおんぶする日が来るなんて夢にも思わなかったよ」

 

 結局、堀北は水浴びをしたせいで風邪を悪化させてしまった。歩けないほどではないが、雨で地面がぬかるんでるので、念のため俺が彼女を背負っている。

 

「結局、最後まであなたの上着を借りることになってしまったわね」

「別にいいよ。洗濯しなくていいから試験が終わったら返してくれ」

「あら。そんなに私の匂いを嗅ぎたいのかしら。この変態」

「おい」

 

 さっきから堀北が饒舌すぎる件。

 

「冗談よ。……ねえ、重たくない?」

「全然。軽すぎて不健康じゃないかと心配になるくらいだ」

「そう。一応、運動はしてるから」

「運動ってランニングか?」

「ええ。毎朝ね」

 

 堀北も体型を維持するために努力してるんだな。

 

「そうだ。俺も寮に帰ったら毎朝走ることにしたんだ」

「そうなの?」

「秋に体育祭があるだろ。それに向けて体力を戻しておかないとな」

「……そう。よかったら一緒に走らない?」

「いいけど。多分堀北を置いていくことになるぞ」

 

 堀北も体力はあるんだろうけど、さすがに男子には勝てないだろう。

 

「構わないわ。距離は私の方が短いだろうし」

「そっか。それじゃ一緒に走るか」

「約束よ」

「ああ」

 

 堀北と一緒に勉強とランニングか。堀北と過ごす時間が増えたな。

 それより堀北は気づいてるだろうか。密着が高まりすぎてることに。俺は堀北の胸の触感を楽しめるのでウェルカムなんだけど。

 

「界外くん」

「ん?」

「私、あなたの役に立てた……?」

 

 先ほどとは打って変わって、静かな口調で堀北が問う。

 

「当たり前だろ」

「そう。ならよかったわ」

 

 そんな健気なこと言われるとキュンキュンしちゃうんだけど。

 やっぱ堀北って尽くすタイプなんだな。

 

「それと今回の試験で思い知ったことなのだけれど」

「なんだよ?」

「私には協調性が全くない」

「今更だろ」

「そうね。でもこのままじゃこれからの試験で苦戦するのは確実よ」

 

 だろうな。堀北が優秀なのは間違いないが、俺しか頼れる人がいないのは大きなハンデになる。

 

「だから、その……もう少し人と関わろうと思うの……」

「え」

「もちろん自分からは無理。けれど相手から歩み寄って来てくれたら……受け入れようと思う」

 

 まさか堀北がこんなこと言うなんて。

 

「堀北。もしかして高熱で頭が回らないんじゃ……」

「失礼ね。私は正常よ」

 

 そりゃ失礼しました。でもその変わりようは一体……。

 

「界外くんを見て思ったの」

「俺?」

「ええ。今回の試験であなたは男女間のバランサーになっていた」

 

 バランサー。カッコいい響きだな。

 

「あなたがいなかったら初日から険悪な雰囲気になっていたと思うわ」

「そうでもないだろ。平田だっているわけだし」

「平田くんは駄目よ。決断力に欠けるわ」

「そ、そうなのか……」

 

 綾小路も堀北も他人への評価が厳しいような気がする。

 

「だから今回の試験で一番貢献したのは界外くん。あなたよ」

「なんだか照れるな……」

「照れるのはあなたの専売特許じゃない」

「そんな専売特許はいらない」

 

 確かに堀北に手を握られるだけで照れてしまう男だけれども。

 

「だから私はそんなあなたを見て……自分を変えようと思ったの」

 

 変わるのではなく変える。なんかそんな歌詞の曲があったような。最近音楽聞いてないから忘れちゃったよ。

 

「そうか。でも無理はしなくていいと思うぞ」

「ええ」

 

 堀北の嬉しい変化を感じ、目的地に辿り着いた。

 桟橋にかけられたタラップを上り、俺は船のデッキへと辿り着いた。

 

「ここへの立ち入りは禁止だ。失格になるが……病人か?」

 

 教員の一人が駆け寄ってきた。

 

「はい。彼女が熱を出してしまって。すぐに休ませて下さい」

 

 状況を伝えると、教師は指示を飛ばし担架を持ってこさせた。そこへ堀北を寝かせる。俺の背中から離れる際に名残惜しそうにしていたのは気のせいだろう。

 

「君はリタイアということでいいんだな?」

「はい」

 

 教師の問いかけに堀北が答える。

 

「それとこれをお返しします」

 

 堀北はポケットから取り出したキーカードを教師に手渡した。

 

「それじゃ俺は試験に戻るな」

「ええ。……勝ってきてね」

「任せろ」

 

 俺は雨が降りしきる中再び浜辺へ降り立った。

 そして意外とボリュームがあった堀北の胸の触感の余韻に浸りながらキャンプ地に戻った。




次回で無人島編完結です
堀北ってDカップあるんですよね。一之瀬と佐倉が大きすぎるだけで堀北もナイスおっぱいだと思うんです
王さん、腐女子にしてごめんなさい
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