実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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ハッピーシュガーライフとぐらんぶるの落差が激しすぎる


32話 一之瀬は耳が感じやすい

 無人島での特別試験が終わってから3日。俺は好奇の視線に晒されながらも、それなりに豪華客船の旅を満喫していた。

 午前中と夕方以降は茶柱先生におねだりして手に入れた個室で勉強。日中は博士と綾小路と一緒に氷菓を見たり、一之瀬、堀北と船内の施設で遊んでたりしている。

 サバイバル終了直後は、大半の生徒がこれで特別試験が終了したと思っておらず、学校側が何か仕掛けてくると踏んでいた。だがまるでその気配がない。その為、3日目の今は大半の生徒がリラックスして楽しい旅行を満喫している。

 

「本当にもう試験は行われないのか」

 

 カフェでアイスコーヒーを飲みながら呟く。

 

「界外くん、心配しすぎじゃないかな。もう3日も何もないんだし大丈夫だと思うよ」

 

 テーブルを挟んで向かい側に座る櫛田が言う。

 俺はカフェで櫛田と穏やかなティータイムを過ごしていた。

 

「そうだな」

 

 確かに心配しすぎもよくない。今は勉強と青春を謳歌することに集中しよう。

 それより今の俺の状況で櫛田が誘ってくるとは意外だったな。

 

「なあ、櫛田」

「なに?」

「俺なんかと一緒にいていいのか?」

 

 一之瀬や堀北と違って、俺と櫛田は親しくはない。彼女に話しかけられるようになったのもつい最近だ。なのでこの状況で俺と一緒にいる理由が見当たらない。

 

「大丈夫だよ。だって界外くんと帆波ちゃんはやましいことしてないんでしょ?」

「そうだけど……」

 

 帆波ちゃんって。一之瀬と櫛田は仲良かったのか……。

 

「なら私は堂々としてればいいと思うな」

 

 堂々としてても櫛田の評判は大丈夫なのだろうか。俺はもう慣れたので大丈夫なんだけど。

 

「いや、櫛田の評判を気にしてるんだが……」

「私の……?」

「俺といて櫛田にまで悪い噂が流れたら困るだろ」

 

 みんなの人気者である櫛田の立場を考えれば、俺と一緒にいるのはデメリットしかないはず。

 

「私の心配してくれてるんだ。……嬉しい」

「え」

「でも大丈夫だよ。私、他のクラスの友達にその噂はデマだって言ってるから」

 

 まさか櫛田がそんなことをしてくれてるとは……。

 

「昨日もCクラスの子たちと遊んだんだけど、私が言ったら信じてくれたよ?」

 

 龍園のクラスの子かよ。龍園より櫛田の言うことを信じるのか。

 

「そ、そうか。ありがとな」

「ううん。私が好きでしてることだから」

 

 満面の笑みを浮かべる櫛田。裏の顔があるとわかっていても可愛いと思ってしまう。

 

「それよりこの後プールに行こうよ」

「プール?」

「うん。無人島じゃ界外くんと一緒に泳げなかったし……どうかな?」

「そうだな……」

 

 一之瀬とも堀北ともプールに行かなかったし。一回くらい行ってみるか。

 俺が返事をしようとした瞬間、俺と櫛田の携帯が同時になった。

 キーンという高い音。それは学校からの指示であったり、行事で変更などがあった際に送られてくるメールの受信音だった。ちなみにマナーモード中でも音が強制的に出るようになっている。

 

「なんだろうね?」

 

 櫛田が不思議がるのも無理はない。入学してから重要メールが届いたことは一度もないのだから。

 ほぼ同時に、船内アナウンスも入る。

 

『生徒のみなさんにご連絡いたします。先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。また、メールが届いていない場合には、近くの教員に申し出てください。非常に重要な内容となっておりますので、確認漏れがないようにご注意ください。繰り返します―――――――――』

 

 どうやら俺の嫌な予感があたったようだ。

 

「……今届いたメールのことだよね?」

「それしかないだろ」

 

 携帯を操作してメールを開くと、そこには次のことが書かれていた。

 

『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合してください。10分以上遅刻した者にはペナルティを科す場合があります。本日20時40分までに206号室に集合してください。所要時間は20分ほどですので、お手洗いなどを済ませ、携帯をマナーモードか電源をオフにしてお越し下さい』

 

「やっぱり特別試験じゃないか……」

 

 試験内容はメールに記載がなかったので、集合場所で説明を受けることになるのだろう。

 ……龍園、今回もお前を叩きつぶしてやるよ。

 

「界外くんの嫌な予感、当たっちゃったね」

 

 苦笑いしながら櫛田が言う。

 

「だな」

「界外くんはどんな内容のメールが届いたの?」

 

 そう言ってきたので、櫛田に画面が見れるように携帯をかざす。

 

「私と時間も集合場所も違うね」

 

 櫛田も俺に携帯の画面を見せてきた。確かに時間と集合場所が違う。

 

「なんでこんな変な呼び出し方するんだろうね?」

「さぁな。それも時間になればわかるのかもしれない」

 

 また勉強をする時間が減ったらどうしよう……。本番まで2週間くらいなのに。

 ため息をついてると、堀北からチャットが届いた。

 

『今学校からメール届いた?』

『届いたぞ』

『私は20時40分からに指定されていたわ。界外くんは?』

『俺も同じだ。ちなみに櫛田は時間も場所も違ってた』

『なぜ櫛田さんのメールの内容をあなたが知ってるの?』

 

 何だろう。チャットから怒気を感じるんだが……。

 

『一緒にお茶しているからだけど』

『そう。仲が良いのね』

 

 なんか怒ってるっぽい。俺が櫛田に対して警戒がなさすぎると思ってるんだろうか。

 

『警戒はしてるから大丈夫だぞ』

『もういいわ。集合場所に行くときは一緒に行きましょう。行くときに連絡するから』

『わかった』

 

 堀北と一緒か。綾小路はどうだろうか。後で聞いてみよう。

 

「界外くん?」

 

 チャットに集中していた俺の様子が気になったようで、櫛田が心配そうに声をかけてきた。

 

「悪い。他の生徒から情報を聞いていた」

「そっか。さすが界外くんだね。行動が早いなー」

 

 向こうからチャットが送られてきただけなんだけどね。

 

「櫛田」

「なに?」

「今晩二人で会えないか?」

「…………え?」

 

 恐らくいくつかのグループに生徒を隔離して試験開始を告げるのだろう。

 別グループに割り当てられた櫛田から色々情報を仕入れたい。

 

「ふ、二人でって……」

 

 いつの間にか櫛田の頬が紅潮していた。

 

「……うん、いいよ。二人で会おっか」

「ああ。21時には終わるだろうから、終わったら連絡するな」

「うん」

 

 部屋に戻ったら平田と博士のメールも見させて貰おう。

 今回の試験、もし頭を使うようなものならこっちのものだ。なぜなら俺は氷菓を見て頭が冴えてるから。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 時刻は20時25分。俺は平田を連れて、堀北との待ち合わせ場所に向かった。

 

「界外くんと同じ組で心強いよ」

 

 隣を歩く平田が嬉しいことを言ってくれてる。

 

「そうか。ま、力を合わせて今回の試験も勝利しようぜ」

「そうだね」

 

 ちなみに俺と平田は先に説明を受けた生徒から話を聞かされて、試験内容を理解している。

 待ち合わせ場所に着くと、堀北の姿が見受けられた。

 

「待たせたか?」

「いいえ。私も今来たところ」

 

 ちなみに堀北も先に説明を受けた松下から話を聞いてるらしい。どうやら宣言通り、徐々に自分を変えていってるようだ。

 

「界外くんに聞いてると思うけど、僕も一緒の組なんだ。よろしくね、堀北さん」

「ええ。こちらこそよろしくお願いするわ」

 

 堀北が平田とまともに会話をしている。1学期じゃ見られない光景に俺は少し感動してしまった。

 

「それじゃ行きましょうか」

 

 堀北が歩き出す。俺と平田も彼女の後を追うように歩き出した。

 階段を降りて、説明会が設けられている2階に着いた。

 そこには壁にもたれている生徒、携帯を弄りながら座り込む生徒、ヨガをしている生徒など、今から説明を受けるとは思えない者の姿もあった。

 

「全員同じグループ……ではなさそうだよね」

 

 平田が周りを見渡して言う。

 ざっと見えるだけでも10人近くいる。もしかして部屋に居場所がない生徒たちが集まってるのかな。

 すれ違う俺たちに視線を向け、彼らはすぐに携帯を操作し何か打ち込んでいるようだった。……もしかして裏掲示板に俺のことを書き込みしてるのでは……。

 つーか、知らない生徒ばかりだな。一応、各クラスの重要人物は覚えたつもりなんだけど。

 

「平田は知ってる生徒いたか?」

「ヨガをしてるのはAクラスの森宮くん。エレベーター近くにいるのはCクラスの時任くんだね」

 

 さすが平田。平田も櫛田と同じく他クラスに友達が沢山いるんだろうか。

 

「他クラスの生徒の情報もこれから必要になってくるかもしれないわね」

 

 堀北が呟く。

 

「だな。俺と堀北じゃ他クラスの顔見知りが少なすぎる」

「そうね」

 

 Bクラスなら一之瀬含めて何人も友達がいるんだけどね。ちなみに試験終了後に柴田と連絡先を交換している。つまり柴田も友達にカウントしてオッケーということだ。

 目的の場所に着くと、数人の男女が扉近くに集まっていた。誰か知り合いがいないか期待したが誰もいなかった。

 

「もし俺の勘違いでなければ、20時40分組じゃないか?」

 

 Aクラスを統率する双頭の一人、葛城が声をかけてきた。

 こいつ本当に高校生だろうか。老けすぎじゃないか。

 

「そうだよ。同じグループとしてよろしくね葛城くん」

 

 平田が爽やかスマイルを浮かべながら応えた。

 

「こちらこそよろしく頼む。平田、堀北、界外」

「よろしく」

「ええ」

 

 俺と堀北も挨拶を返す。

 以前の堀北なら無視していただろうに……成長したな。

 

「君たちとは、一度改めて話したいと思っていたところだ」

「話をしたかった? 俺たちDクラスと?」

 

 俺は皮肉の意味を込めて言った。

 

「ああ。正直俺は今までDクラスの存在は眼中に入れてなかった。しかし前の試験の驚異的な結果を見れば、注目しないわけにはいかないだろう」

 

 確かにDクラスがあれだけ圧勝すれば注目せざるをえない。

 俺は別の意味でも注目を浴びてしまってるんだけど……。

 

「もしこれから先いつかはわからないが……DクラスからCクラスに上がってくるようであれば、Aクラスは容赦なく君たちを叩くだろう」

「そうか。それじゃ来月から俺たちは容赦なく叩かれるわけだ」

 

 俺の発言に周囲が少しざわめく。

 そしてなぜか堀北が袖を掴んできた。堀北の顔を見ると、満足そうな表情を浮かべていた。どうやら俺の言動を褒めてくれてるようだ。

 

「大した自信だな。だがあまり調子に乗らない方がいいと思うが」

「調子に乗っているタイミングを見逃すなという茶柱先生の教えがあるんでね」

 

 そんな教え受けたことないけどね。あの人何も教えてくれないし。個室を与えてくれたのは助かったけど。

 

「そうか。しかしたまたま自らの戦略が一度成功したくらいで調子に乗らない方がいい。クラスポイントの差が今も歴然であることは忘れないでもらいたい」

 

 確かにAクラスとのクラスポイントの差は開いたままだ。

 

「確かにクラスポイントの差は開いたまま。けれどまだ1年の夏休みであることも忘れないでもらいたいわね」

 

 俺の袖を掴んだまま堀北が堂々と言う。

 

「確かに堀北の言う通りだ。俺たちBクラスにもAクラスを追い抜くための時間はたっぷり残っているということだ」

 

 神崎の声が後ろから聞こえてきた。

 振り向くと神崎と俺の知らない男女の生徒が立っていた。……一之瀬はいないのか。残念無念また来週。

 

「神崎も20時40分組か?」

 

 神崎に問う。

 

「ああ。よろしく頼む」

「こちらこそ」

 

 神崎とは無人島で情報交換の場や早朝ランニングで共に時間を過ごしてきた。どうやら今回の試験でも一緒にいる時間が多くなりそうだ。

 いつのまにか堀北の隣に俺、背後に平田と神崎がおり、傍から見ると堀北が逆ハーレム状態で葛城と対峙する構図になっていた。

 

「クク。男を3人も従えるなんてよ、やるじゃねぇか。鈴音」

「龍園か」

 

 冷静だった葛城の声色が、少しだけ険しくなった。

 

「おまえもこの時間に招集されたのか?」

「ああ。残念なことに、お前らと同じ時間のようだな」

 

 龍園は後ろに3人の生徒を従え歩いてきた。

 

「なるほど。この組は学力が高い生徒が集められていると思っていたが、お前とそのクラスメイトを見る限りそうではないかもしれないな」

「学力だ? くだらねーな。そんなものには何の価値もない」

「それこそ残念な発言だ。学業の出来不出来は将来を左右する最も大切な要素だ。日本が学歴社会であることを知らないのか?」

 

 ふざけた態度に葛城が正論をぶつける。

 俺たちは置いてけぼりである。暇なので堀北の綺麗な黒髪を眺めて時間を潰すとしよう。

 

「……なに?」

 

 俺の視線に気づいたのか、顔を横にしながら堀北が聞く。

 

「いや、暇だから堀北の綺麗な黒髪でも眺めてようと思って……」

 

 小声で素直に答えた。

 

「……そ、そう。べ、別に見るだけなら好きなだけ見てもいいけれど……」

 

 堀北は髪を触りながら頬を赤らめた。

 

「俺はお前の非道さを許すつもりはない」

「あ? 非道さ? 身に覚えがねーなあ。具体的に教えてくれよ」

「……まあいい。今回同じグループになったとしたら、ゆっくり話す時間もあるだろう」

 

 こいつらまだ話してるのかよ。

 

「負け犬同士仲良くしろよな」

 

 俺がそう呟くと両者から睨まれてしまった。思ったよりボリュームがあったようだ。……無人島でも同じようなミスをした記憶がある。

 

「はっ、言ってくれるじゃねえか。猿野郎」

「先ほどの俺の忠告を既に忘れているようだな。案外記憶力がないのか?」

 

 龍園と葛城が俺に言う。君たち仲良いね……。

 

「界外くん、負け犬の相手をしていても時間の無駄よ。行きましょう」

 

 龍園たちに向かって、冷たい一言を言い放つと堀北は俺の手を取り髪をなびかせて歩き出した。

 後ろから鋭い殺気を感じるが無視してその場を後にした。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「これより特別試験の説明を行う」

 

 指定された部屋に入室してから5分。真嶋先生より特別試験の説明が行われる。

 俺たち3人はある程度の試験内容は聞いているが、漏れがないように真面目に説明を聞く姿勢をとっている。

 

「今回の特別試験では、1年全員を干支になぞらえた12のグループに分け、そのグループ内で試験を行う。試験目的はシンキング能力を問うものとなっている」

 

 『シンキング』。考える力、考え抜く力といった意味合い。つまり今回は頭を使う試験ということ。

 続けて真嶋先生は、シンキングについて丁寧に説明してくれた。この先生、話が長いんだよな……。

 

「ここまでで何か質問は?」

 

 真嶋先生に聞かれ、平田は俺と堀北に確認する。

 

「特にありません。説明を続けて下さい」

「よし。続いてグループについて説明をする。グループは1つのクラスで構成されることはなく、各クラス3から5人ほどを集めて作られるものになる」

 

 そのグループが葛城や龍園と同じってわけだ。なんで一之瀬がいないんだよ……。どうやって決めたのかわからないけど、星之宮先生が気を使って別のグループにしてくれたのかもしれない。

 

「君たちの配属されるグループは『辰』。ここにそのメンバーリストがある。これは退室時に返却させるので必要性を感じるのであればこの場で覚えておくように」

 

 渡されたハガキサイズの紙。そこにはグループ名と合計14人の名前が記載されていた。

 

 Aクラス:小野田道坂 葛城康平 西川亮子 的場信二

 Bクラス:安藤紗代 神崎隆二 津辺仁美

 Cクラス:小田拓海 鈴木英俊 園田正志 龍園翔

 Dクラス:界外帝人 平田洋介 堀北鈴音

 

 一人弱虫ペダルにいそうな名前の人がいるのが気になる。

 それと龍園って名前は翔って言うのか。案外可愛い名前じゃないか。

 

「今回の試験では、大前提としてAクラスからDクラスまでの関係性を一度無視しろ。そうすることが試験をクリアするための近道だ」

 

 クラスの関係性を無視ね。今のアドバイスは重要そうだ。

 

「今から君たちはDクラスとしてでなく、竜グループとして行動をすることになる。そして試験の結果の合否はグループ毎に設定されている」

 

 竜か。十二支大戦で大戦前にリタイアしてた双子と同じじゃないか……。不吉なグループに割り当てられてしまったな。

 

「特別試験の各グループにおける結果は4通りのみ。例外は存在せず必ず4つのどれかの結果になるように作られている。分かりやすく理解してもらうために結果を記したプリントも用意してある。ただし、このプリントに関しても、持ち出しや撮影は禁止されている。この場でしっかり確認するように」

 

 3人分用意された紙は少しくしゃくしゃになっていた。なんだか嫌な気分になる。

 書かれてある基本ルールは以下の通りだった。

 

『夏季グループ別特別試験説明』

 

 本試験では各グループに割り当てられた『優待者』を基点とした課題となる。定められた方法で学校に解答することで、4つの結果のうち1つを必ず得ることになる。

 

 ○試験開始当日午前8時に全員にメールを送信し、「優待者」に選ばれた者にはその事実を伝える。

 ○試験の日程は明日から4日後の午後九時まで行う(1日の完全自由日を挟む)。

 ○1日に2度、グループごとに所定の時間と部屋に集まり1時間の話し合いを行うこと。

 ○話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねる。

 ○試験終了後、午後9時半~午後10時の間のみ、優待者が誰であったかの答えを受け付ける。なお、回答は1人1回までとする。

 ○解答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信すること。

 ○『優待者』はメールにて解答する権利はない。

 ○自身が属するグループ以外の解答は無効。

 ○試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。

 

 これが基本的なルールとして目立つように書かれていた。

 真嶋先生が言っていた定められた『結果』も記載してある。

 

 ○結果1:グループ内で優待者及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員にプライベートポイントを支給する。優待者は100万プライベートポイント、優待者以外の者は50万プライベートポイントが支給される。

 ○結果2:優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合、優待者には50万プライベートポイントを支給する。

 

 2つしか書いてないじゃん。裏にでも書いてあるのだろうか。

 

「表に記載してある2つの結果は理解したか? 問題ないようなら残りの結果がプリントの裏に記載されているのでめくってくれ」

 

 真嶋先生に言われるがままにプリントの裏をめくる。

 そこには残り2つの結果が記載されていた。

 

 以下の2つの結果に関してのみ、試験中24時間いつでも解答を受けつけするものとする。また試験終了後30分以内であれば同じく受け付けるが、どちらの時間帯でもペナルティが発生する。

 

 ○結果3:優待者以外の者が試験終了を待たずして正解した場合、答えた生徒の所属するクラスのクラスポイントに50ポイントを得ると同時に、正解者には50万プライベートポイントが支給される。また優待者を見抜かれたクラスは-50クラスポイントのペナルティを受け、グループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが正解した場合、解答を無効とし試験は続行される。

 ○結果4:優待者以外の者が試験終了を待たずして不正解だった場合、答えを間違えた生徒の所属するクラスは-50クラスポイントのペナルティを受け、優待者は50万プライベートポイントが支給されると同時に、優待者の所属クラスは50クラスポイントを得る。答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、解答を無効とし試験は続行される。

 

 よし。これで優待者を沢山見つけ出してCクラスに昇格してやる。

 

「今回学校側は匿名性についても考慮している。試験終了時には各グループの結果とクラス単位でのポイント増減のみ発表する。つまり優待者や解答者の名前は公表しない」

 

 なるほど。優待者の人がカツアゲされちゃう可能性もあるからね。

 

「望めばポイントを振り込んだ仮IDを一時的に発行することや分割して受け取ることも可能だ。本人さえ黙っていれば試験後に発覚する恐れはない。もちろん隠す必要がなければ堂々とポイントを受け取っても構わん」

 

 堂々とポイントを受け取ったら隣人の女子にまた無心されてしまう。

 

「3つ目、4つ目の結果は他の2つとは異なるものだ。よって裏面に記載した。これにて今回の試験の説明は完了する」

 

 やっと終わったか。櫛田に連絡をして情報を聞かねば。

 

「君たちは明日から、午後1時、午後8時に指示された部屋に向かえ。当日は部屋の前にそれぞれグループ名の書かれたプレートがかけられている。初顔合わせの際には室内で必ず自己紹介を行うように。室内に入ってから試験時間内の退室は基本的に認められていない。トイレ等は済ませていくように。万が一我慢できなかったり体調不良の場合にはすぐに担任に連絡し申し出るように」

 

 昼食後と夕食後の時間帯か。眠たくなりそうだな……。

 その後、禁止事項も軽く口頭で説明され、解散となった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 時刻は9時半。俺はラウンジで櫛田とテーブルを挟んで向かい合っていた。

 

「こんな遅い時間に悪いな」

「ううん。それで私を誘った理由ってなにかな?」

 

 そんなの櫛田のグループの情報を得るために決まってるじゃないか。

 

「櫛田のグループについて教えて欲しいんだけど」

「……だよね。うん」

 

 櫛田ががっかりしたような顔をしている。もしかして遊びたかったのだろうか。

 

「えっと、話が終わったら二人で適当にぶらぶらするか?」

「……いいの?」

「いいも何も俺から誘ってるんだけど」

 

 逆に今の俺と一緒にぶらついていいのかと俺が聞きたいくらんだけど。

 

「そ、そうだよね。うん、話が終わったら遊びに行こっか」

「ああ。それで櫛田は蛇グループなんだよな」

「そうだよ。爬虫類は苦手なんだよね」

 

 てへっと笑う櫛田。可愛いけど今はやめてね。

 

「そっか。それでグループの生徒はわかるか?」

「うん。部屋にメンバー全員を書いたメモがあるよ」

「後で写させてもらっていいか?」

「もちろん。界外くんのグループはどんな人たちがいるの?」

 

 櫛田に聞かれ、竜グループ全員の生徒の名前を説明した。

 

「なんか凄い人ばかりだね……」

「だな。各クラスのリーダー格ばかりだ」

 

 他の生徒で竜グループにいてもおかしくないとすれば一之瀬と坂柳くらいだろう。後は櫛田も入るか。

 

「だよね」

「だからDクラスに俺や堀北がいて、櫛田がいないのも少し疑問だな」

「そ、そんなことないよ……。私、自分がリーダーだなんて思ってないし……」

「櫛田が思ってなくても、実質女子のリーダーはお前か軽井沢の二人だと思うぞ」

 

 松下がそう言ってたし。堀北はスペック高いけど女子の友達一人もいないしね……。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいかも」

 

 頬を指で掻きながら照れる櫛田。

 

「それじゃそろそろ行くか」

「もういいの?」

「ああ。試験始まってからも話聞かせてくれると助かる」

「うん。全然話すよ。界外くんが都合いい時に誘ってね」

「助かる」

 

 俺と櫛田はラウンジを後にして、1時間ほど船内の施設を回りながら時間を潰した。

 時折、好奇な目が向けられるも、以前より大分減ったと思う。特別試験が始まることも影響しているのだろう。

 

「送ってくれてありがと。おやすみ」

「おやすみ」

 

 櫛田は胸元で手を振りながら自室のドアを閉める。

 送り届けたのはいいけど、ここって女子の部屋しかないフロアなんだよな。……よし、すぐ帰ろう。

 

「あ、界外くんだ!」

 

 誰にも見つからないうちに帰ろうとしたところ、一之瀬に声をかけられた。

 

「……一之瀬か」

「やほー。こんなところで何してるの?」

「櫛田と試験について話しててな」

「桔梗ちゃんと? 珍しい組み合わせだね」

 

 一之瀬も櫛田を下の名前で呼んでるのか。

 

「一之瀬は櫛田と友達なのか?」

「うん。言ってなかったっけ?」

「ああ。仲良さそうだな」

「お互い下の名前で呼ぶくらいにはね」

「そうだったのか。ま、仲良いのは何よりだな」

「だよね。……界外くん、この後少し時間ある?」

 

 まさかこの時間で一之瀬から誘われるとは。

 

「あるけど……時間大丈夫か? もう10時過ぎてるぞ」

「私は大丈夫。よかったら界外くんと話したいなと思ってね」

「そっか。それじゃカフェでも行くか」

「うん!」

 

 この時間じゃカフェくらいしかないよね。

 そういえば一之瀬も遊びの帰りだったのだろうか。まさか櫛田を送り届けて、一之瀬と遭遇するとは。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 10分後。カフェにやって来た俺と一之瀬はカウンター席に座っている。テーブル席も空いてるんだけど……。

 

「綾小路くんから聞いてるかな? 私、兎グループなんだよね」

 

 あいかわらず距離が近い。腕がくっついてる。

 

「聞いてる。俺は竜グループだ」

「神崎くんから聞いたよ。竜グループの人たち凄いよね。各クラスのリーダーが集まってる感じかな」

「ああ。……もしかしたら星之宮先生が気を使って、一之瀬を兎グループにしたのかもな」

「にゃはは。星之宮先生はそんな気遣い出来ないよ」

 

 そうなのか。一之瀬の星之宮先生に対する評価が案外辛辣で驚いた。

 

「でも私も竜グループがよかったな。界外くんがいるから」

「そ、そっか……」

 

 そんなストレートに言われると照れちゃうよぉ。……俺キモイな。

 

「界外くんは私がいなくて寂しい?」

「……そうだな」

「えへへ、嬉しいこと言ってくれるねー」

 

 俺が素直に答えると、一之瀬は非常に満足げな表情を浮かべている。

 そしてカウンターに乗せている俺の左手に、自身の右手を重ねてきた。

 

「……寮に帰ったら、またいつもの打ち上げしようね?」

「そうだな」

 

 そういえば無人島試験が終わったが打ち上げしてなかったな。

 

「それと……今回の試験は負けないからね」

 

 そう言うと、好戦的な目を向けてきた。

 

「俺も負けない。この試験でCクラスになる予定だからな」

 

 今回は無人島試験と違う。協力関係を結んでるBクラスとも戦うことになりそうだ。

 

「お互い頑張ろうね」

「ああ」

 

 好戦的な目を向けてくる一之瀬だけれど、重ね合った手がいつの間にか握られていた。しかも恋人繋ぎで。

 表情と手の動きが一致してないんだけど……。

 

「……一之瀬」

「なに?」

「手、指絡められて少し恥ずかしいんだけど……」

「え」

 

 一之瀬はゆっくり視線をカウンターに移す。そして……

 

「わああっ!?」

 

 どうやら無意識でやっていたようだ。無意識で恋人繋ぎされるとは……。

 

「ご、ごめん……」

「いや、別にいいんだけど。ただかっこつけた状態で手を握られるとは思わなかっただけだ」

「うっ……。界外くんがいじわるしてくる……」

 

 そりゃいじわるもしたくなる。きりっとした表情で、甘えるように手を握ってくるのだから。

 

「一之瀬は甘えん坊さんなのかな?」

「や、やめてよぉ……」

 

 からかい続けてると、一之瀬が涙目になってしまった。そろそろやめておこう。

 

「悪かった。冗談だよ」

「むぅ。界外くん、船に戻ってからちょっといじわるだよ!」

 

 頬を膨らませながら怒る一之瀬。可愛いだけで全然怖くない。

 

「だからごめんって。許してくれ」

「やだ」

 

 やばい。さすがにやり過ぎたかも……。

 

「……許してほしい?」

 

 ジト目で一之瀬が言う。

 

「ほしいです」

「それじゃ私の頭撫でて」

「え」

「私がいいって言うまで撫でてくれたら許してあげる」

「……ここで?」

「ここで」

 

 周りをゆっくり見渡す。幸い店内には数人の生徒しか見当たらない。

 

「……わかった」

 

 俺はそう言い、一之瀬の頭に手を乗せる。

 

「ん」

 

 一之瀬は頭を一撫でされて、気持ちよさそうに目を細めた。

 そういえば無人島では、俺が一之瀬に頭を撫でられたな。

 そう思い返しながら、彼女の綺麗な桃色の髪を薄硝子の人形でも撫でるようにそっと撫で続けた。

 

「……く……んぅ……んぁ……っ」

 

 指が耳に触れるたび、一之瀬が甘い声をあげる。

 やばい。エロい……。

 

「……もういいよ」

 

 何分撫で続けたのだろう。途中から撫でるというより、髪を弄っていただけなような気がする。

 

「ありがとう……」

 

 甘い吐息を吐きながら言う。

 

「界外くんにしてもらうの……すごく、気持ちよかったよ……」

 

 言い方に気をつけて! それだと誤解されちゃうから!

 

「……そっか」

「うん。そろそろ帰ろっか」

 

 なんで頭撫でたり、髪を弄っただけで、そんなエロい雰囲気醸し出してるんだよ……。いや、理由はわかってるんだけどね。恐らく一之瀬は耳が感じやすいんだろう。

 一之瀬を部屋の前まで送り届けたが、彼女は最後まで蕩けた表情をしていた。

 




4巻は主人公活躍させるつもりです
Aクラスのあの子も出るかも
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