実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
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翌朝。俺はビュッフェレストランに足を運んでいた。
店内には多くの生徒で溢れかえっている。そんな店内の中で俺は一人ぽつんと寂しく朝食をとっている。
昨日、一緒に朝食をとった堀北は松下たちと朝食を食べている。あの堀北が他の女子と飯を食べる日が来るなんて感無量である。
しかし、昨日は驚いた。まさか櫛田に抱きつかれるとは……。櫛田のおっぱいのせいで余計寝付けなくなってしまった。正直眠たくて仕方がない。
「界外くん、おはよー!」
顔を上げると、トレイを抱えた一之瀬が立っていた。
「お、おはよ……?」
「なんで疑問形なの? 一緒に朝食食べよ」
一之瀬はそう言うと、向かいの椅子に腰を下ろした。
まさか朝一で一之瀬と話せるとは思ってなかった。おかげで眠気がすっ飛んだ。
「いただきまーす」
両手を合わせながら一之瀬が言う。
「うん! 美味しい!」
本当に美味しそうな表情をする。いつか俺の料理で同じ表情をさせたいものだ。それより……
「いいのか?」
「なにが?」
「いや、今試験中だろう。他クラスである俺と一緒にいていいのかと思って……」
てっきり試験中だから昨日俺と会わなかったのかと思ったんだけど。
「それって今更じゃない? 無人島試験なんて毎日一緒にいたでしょ」
「確かに」
「本当は昨日だって会いたかったんだよ? ただ、試験初日なこともあってクラスメイトの相談に乗ってたら、いつの間にか深夜になっちゃって……」
明らかにしょんぼりとした表情をする一之瀬。
「だから今日は界外くんと一緒に朝食をとろうと思って。……駄目だった?」
一之瀬が不安そうに聞く。
「全然駄目じゃない。むしろ朝から一之瀬と話せて元気が出たまである」
「ホント? よかった。それじゃ明日も一緒に朝食とろっか?」
「クラスメイトはいいのか?」
「うん。むしろクラスメイトから勧められたというか……」
そう言いながら苦笑いする。誰か勧めたのかわからないけど感謝する。あなたに神のご加護がありますように。
「そうだ。昨日の猿グループの試験終了の通知来たよね?」
「もちろん」
「まさか初日から裏切り者が出るなんて予想外すぎるよー」
だろうね。予想外の男、その名は高円寺。
「龍園と葛城も驚いてるだろうな」
「あの二人の驚いてる姿は想像出来ないけどね」
葛城は無人島試験の結果発表の時に物凄い驚いた表情をしてたけどね。
「そういえば界外くんはその二人と同じグループなんだよね」
「ああ。その二人が全く話し合いに参加しないから困ったもんだよ」
ま、その話し合いも今日で終わりだけどな。
「そっか。でも界外くんなら、何かしらの方法で優待者を見つけだすんじゃない?」
「期待に応えられるよう頑張る」
「にゃはは。今回ばかりは頑張って欲しくないかも」
悪いな、一之瀬。今回も頑張らせてもらうぞ。
それより相変わらず視線が気になるな。試験中なので少しは落ち着くかと思ったけど……。やはり二人一緒にいると注目されてしまうのか。
「どしたの?」
「いや、何でもない」
「そう? ならいいんだけど……」
あまり納得していない表情だな。ここは話題を変えるか。
「一之瀬。実は昨日眠れなくて深夜にデッキに行ったんだけどさ」
「うん」
「綺麗な夜空が見れたんだよ」
「そうなの?」
「ああ。……もしよかったら今夜一緒に見ないか?」
昨日夜空を見ながらずっと思ってた。一之瀬と一緒に見たいと。
「見る!」
大きめの声で一之瀬が答えた。
「ちなみに界外くんは一人で見たの?」
「…………ああ」
本当は櫛田と二人で見たんだけど。ここは一人で見たと言った方がいい気がする。
「なに今の間は?」
ジト目で一之瀬が見てくる。
「何でもないぞ」
「ホントに?」
「ああ。カップルばかりで肩身が狭かったし」
「……わかった。それじゃ今夜は一緒に夜空を見ようね」
どうやら信じてくれたようだ。ひと安心ひと安心。
一之瀬と甘い時間を過ごしていると、昨日と同じ男が近づいてきた。
「よう猿野郎。今日は一之瀬か。女をとっかえひっかえして、いいご身分だな」
龍園だ。一人不気味な笑みを浮かべて近づいてくる。
「ああ。負け犬のお前と違っていいご身分なんだよ」
「だそうだ、一之瀬。この男に捨てられないように気をつけろよ」
「ご忠告ありがとう。龍園くんも彼に負けないように気をつけてね」
龍園の挑発を挑発で返す。
「噂通りのバカップルのようだな。それより優待者を見つけ出す算段はついたか?」
「どんな考えを私がしてるにせよ、龍園くんに聞かせるつもりはないよ」
「それは残念だな。猿野郎はどうだ?」
「同じくお前に聞かせる理由はない。……それとも自分じゃ考えられないから、俺の考えが聞きたかったのか?」
歪んだ笑みを浮かべながら言う。……やべぇ、一之瀬の前でやっちゃいけない表情をしてしまった。
「かもな。……ただ、その様子じゃ優待者の絞り込みは進んでないように見えるな」
「その言い方だと、龍園くんは優待者が誰なのかわかってるように聞こえるけど」
龍園はその言葉を待っていたかのように余裕の笑みを見せた。
「優待者の正体は既に分かり始めている。そういえば信じるか?」
つまり龍園はクラスの優待者を把握しているということか。独裁者の龍園が優待者を確認する方法。龍園が平田や櫛田みたいに呼びかけして優待者が名乗り出るのを待つとは思えない。なら思い当たる方法は一つだ。
「……お前、クラス全員のメールを見ただろ?」
「ご名答」
「え、そんなのあり?」
一之瀬が驚きながら言う。
「ありだな。もちろん他クラスの生徒の携帯を無理やり見たなら禁止事項に触れる。けど同じクラスなら問題ない。誰も訴えさせないようにすればいいだけだ」
「ククク。俺のことよくわかってるじゃねぇか。お前、本当は俺と同じ人種だろ?」
馬鹿言え。俺は女子を殴ったりしない。……頭をはたいたことはあるけど。
「お前と一緒にするな」
「どうだろうな。てめぇも本当は独裁者なんだろ? 俺にはわかるんだぜ」
確かにバスケとバレーをしてた時はそうだったかもしれない。
「そういえば猿グループが昨日終了したけど、そのことについて思うことはないのかな?」
話題を変えるように一之瀬が問う。
「特にないな。雑魚どもが何をしていようと知ったことじゃない。またな猿野郎」
龍園はそんな言葉を残して去っていった。
「二日連続で朝食で龍園に絡まれるとは……。不幸だ……」
「昨日も絡まれたの!?」
またもや驚いた表情で一之瀬が聞いてきた。
「ああ。どうせ話し合いでも顔を合わせるんだから。あいつ、俺のストーカーなのかな?」
「それは笑えない冗談だよ……」
「だよな。一之瀬も悪かったな」
「ううん。ていうか龍園くん、私は眼中になかったと思うよ」
確かに挨拶も俺にしかしてなかった。どうやら俺は龍園に完全にロックオンされたようだ。
言葉は悪いが一之瀬が龍園の眼中にないのはいい傾向だ。このまま一之瀬に手を出させないまま、龍園を潰す。そしてCクラスに昇格する。
朝食を済ませた俺たちは、お互いの部屋へと戻っていった。
♢♢♢♢♢♢♢
一之瀬と別れてから30分後。俺は自室に堀北を呼び出していた。
「答え合わせの前に聞かせて。猿グループの試験を終わらせたのは高円寺くんで間違いないのよね?」
「うん。彼の同室の幸村くんに聞いたんだけど、幸村くんの目の前でメールを送ったらしいよ」
堀北の問いに平田が答える。
「……そう」
「ま、優待者が当たってることを願うしかないな」
高円寺もそこまで馬鹿じゃないだろう。優待者の法則性を導き出してメールを送ったに違いない。……多分。
「そうね。それじゃ本題に入りましょうか」
「本題ってなにかな?」
そういえば平田にはまだ言ってなかったんだった。
「多分だけど、優待者の法則性がわかった」
「本当かい!?」
平田が驚きながら言う。
「ああ。堀北もわかったみたいだから、答え合わせしようと思って、呼び出したんだ」
「そうだったんだ。……教えてくれるかな?」
「わかった。俺から言っていいか?」
「ええ」
堀北の了承を得たので説明を始める。
「まずなぜ干支の動物で12グループに分けたのか」
「それは一番メジャーだからじゃないかな」
「平田の言う通りだ。ただ他にも十二使徒とかあるだろ」
むしろ十二使徒の方が中二病的にカッコいい。……いや、もう卒業してるんだけどね。
「最後の晩餐だっけ?」
「ああ。それにグループを分けるならアルファベッドや数字でもよかったはずだ」
「確かにそうだね」
「だから俺は干支の動物で12グループに分けた理由を考えた」
そこに何かしらの理由があるはずだと俺は思ったのだ。
「そして真嶋先生が言っていた言葉。『クラス分けの関係性を忘れろ』と言っていたのを覚えているか?」
「もちろん覚えているよ」
平田の記憶力なら当然だな。愚問だった。
ちなみにさっきから俺と平田ばかり話してるが、綾小路と博士も部屋にいる。綾小路は相変わらずの傍観者スタイル。博士は苦手な堀北がいるので沈黙を貫いている。
「俺はそのアドバイスを2つの意味で捉えた。一つはクラス間の争いを忘れて協力すること。もう一つは……これだ」
そう言い、平田に蛇グループのメンバーリストを記載した紙を渡す。
「これは……そういうことだったのか!」
俺が渡した紙には蛇グループのメンバー全員が記載してある。クラスを無視した名前順で。
「干支の動物の順番と割り振られた生徒たちの名字が、優待者を探し出す鍵だったんだね」
「そうだ。蛇グループの名前順で6番目は櫛田。だから蛇グループの優待者は櫛田だったんだ」
俺は前髪を弄りながら説明を続ける。
「ちなみに馬グループの優待者は名前順が7番目の南。これも説明した法則性に当てはまる」
「よく導きだせたね! 凄いよ!」
平田が興奮しながら言う。
「ちなみに堀北はどうなんだ?」
「私も同じよ。……ただ、優待者が二人しかわからないのが心許ないわね」
それな。けれどこの法則性がわかったおかげで、もう一人の優待者を確認することが出来る。
「平田、お前にお願いがあるんだけど」
「なにかな?」
「この法則性からすると兎グループの優待者は軽井沢だ。彼女に確認してくれないか?」
彼氏の平田にならすぐに教えてくれるだろう。
「わかった。早速聞いてみるよ」
「よろしく頼む」
「任せて」
平田はそう言うと、携帯を持ってトイレに入っていった。別にここで電話してもよかったんだけど。
「綾小路と博士はどうだ? 何か意見はないか?」
「拙者はないでござる」
「オレもだ。よくわかったな」
白々しい。綾小路だって気づいていただろうに。そもそも綾小路にはチャットで既に知らせてあるから。同部屋なのにチャットで会話とは最近の若者って感じがした。
「お待たせ。軽井沢さんも優待者だって確認取れたよ」
平田が携帯をかざしながら戻ってきた。……よし。これでデータは三人。
「ありがとう。……それじゃこれから試験をどうするかなんだが」
「攻めにいくつもり?」
堀北が問う。
「ああ。上手くいけば450クラスポイントが得ることが出来る。みんなはどう思う?」
「私は賛成よ。一気にBクラスに昇格出来るチャンスだもの」
すぐに堀北が賛同してくれた。
「……僕はもう少し慎重にいった方がいいと思う。優待者がわかっているのは3グループのみ。他のグループも同じ法則性とは言い切れないよね?」
「そうだな。平田の言う通りだ。Dクラスが優待者のグループだけが、この法則性の可能性も考えられる」
平田が慎重になるのも当たり前だ。だからそんなに睨まないでやってくれ堀北。
「綾小路はどう思う?」
「オレも平田の意見に賛成だ。リスクが大きすぎる。もし間違えていたらクラスポイントを450も失うことになる」
「博士は?」
「拙者はデータベース。答えを導き出せないでござる」
いや、意見を聞いてるんだけど……。
綾小路と博士の言葉を聞いて、堀北がますます不機嫌になっている……。
「……そうか。わかった。確かに9つのグループの優待者を当てにいくのはリスクが高すぎるな」
「界外くん!?」
動揺するな堀北。反対されるのはわかっていた。けれど俺には交渉材料がある。
「なら三人まで。三人までなら優待者を当てにいっていいか?」
「なんで三人なのかな?」
平田が疑問に思うのも当然だろう。なぜ三人にしたのか。それは優待者を三人まで間違えても、2学期で損失したクラスポイントを賄えるからだ。
俺は堀北以外に黙っていた、クラスポイントを150ポイント得る方法と可能性について説明した。
「……わかったよ。そこまで交渉材料を提示されたんじゃ反対出来ないね」
平田が納得してくれたようだ。……さっきから綾小路が睨んできてる。黙ってて悪かったよ。サプライズしたかったんだよ。もちろん報連相は大事だけど、たまにはサプライズするのも大事なんだよ。
「だから茶柱先生から個室を借りていたでござるか」
「ああ。ここで勉強したらお前たちにばれるからな」
「言ってくれたらよかったのに」
苦笑いしながら平田が言う。
「私は知っていたけれど」
堀北が自慢げに言う。ま、堀北の部屋で勉強してたから教えるしかなかったからね。
「それでどのグループの優待者を狙うのかな?」
平田が聞いてきた。
「まずは俺が責任を持って裏切る。他はCクラスが優待者のグループに狙いを絞ろうと思う」
「Cクラスを突き放すつもりね?」
「ああ」
ただ今朝の龍園の言葉が気になる。クラス内の優待者を把握しているなら、あいつもこの法則性に気づいている可能性もある。もしくは……
「誰にお願いするかは界外くんに任せるよ」
「いいのか? リーダーは平田だろ」
「別に僕は自分のことをリーダーだと思ったことないよ。……ただみんなの役に立ちたかっただけだから」
健気なことを言う。本当、なんで平田がDクラスなんだろうな。いつかその理由を知る機会はあるのだろうか。
「……わかった。夕方までに考えるよ」
「夕方ということは今日中に3つのグループの試験を終わらせるってこと?」
「そうだ」
堀北の問いに即答する。
「……あ、そうだ。お前らにお願いしたいことがあるんだ」
「なに?」
「なにかな?」
「なんだ?」
「なんでござるか?」
「軽井沢が優待者だってことは俺たちだけの秘密にして欲しい。絶対に他の人には言わないでくれ。軽井沢にも他の奴に言わないよう釘を刺しておいてくれないか?」
全員の了承を得ると、俺は気分転換の為に船内を探索することにした。堀北もついて来ようとしたが、先約が入っていたらしく渋々部屋に戻っていった。
「さてさて、どんな結果になるのか」
結果によっては、上手くいけばCクラスを徹底的に叩くチャンスを得られるかもしれない。
本当に今の俺は頭が冴えわたっている。やはり氷菓を見たおかげだろう。
♢♢♢♢♢♢♢
午後になり、竜グループの俺は再び同じ部屋にやってきた。
……やってきたのはいいが、眠たい。船内の探索なんてしなければよかった。仮眠しておけばよかった。
「まだ誰も来てないわね」
堀北がそう言いながら椅子に座る。今座ったら寝そうだな……。
「……座らないの?」
椅子の前に立ち尽くしていると俺に堀北が聞いてきた。
「座るよ」
ゆっくりと腰を下ろす。……駄目だ。絶対に寝るパターンだこれ。
「早く来すぎたかな?」
「他のクラスが遅いだけだと思うけれど」
平田と堀北がなにか喋ってるな……。
「そっか。……今日も葛城くんと龍園くんは、会話に参加しないつもりかな?」
「でしょうね」
「堀北さんはどう思う?」
「どうとは?」
「他のクラスの人たちも法則性に気づいてるのかな?」
「……わからないわ。ただ気づいていれば龍園くんなら既に試験を終わらせてるはずよ」
「そうだね」
駄目だ。頭に入ってこない……。もういいや。話し合いしても意味ないし……。
俺は眠気に抗うことを諦め、ゆっくりと目を閉じた。
「――――――くん、界外くん」
誰かが俺の名前を呼んでいる。
「界外くん、起きて」
……この声は堀北だ。そうか。俺は話し合いの前に寝てしまったのか。
「……おはよ」
「おはよう。気持ちよさそうに寝てたわね」
確かに堀北が言ったとおり、ずいぶん長く眠った感覚があり、体全体が心地よく痺れている。
「ああ」
ゆっくりと周りを見渡す。Aクラスは既に全員退室したようだった。神崎と龍園は何か話している。
「寝過ぎよ。話し合いが終わってから20分近く経ってるわ」
マジかよ。熟睡しすぎだろ俺……。
「話し合いはどうだった?」
「DクラスとBクラスが話をするだけだったわ」
前回と同じか。恐らく神崎は龍園に話し合いに参加するよう説得しているのだろう。
「平田は?」
「軽井沢さんに呼び出されたようでさっき出て行ったわ」
「そうか」
俺はそう言い、神崎と龍園に声をかけた。
「よう。何の話してるんだ?」
「界外か」
「今頃起きたのかよ。猿野郎」
どうやら龍園の中で俺のあだ名は猿野郎に定着したようだ。
「随分眠たそうじゃねぇか。昨晩は一之瀬とお楽しみだったのか?」
「お楽しみは今晩だよ」
龍園の挑発にもだいぶ慣れてきたな。
「はっ、どうやら開き直ったようだな」
「それで何の話してるんだ?」
「なーに。俺が全クラスの優待者を把握していることを教えてやってるのさ」
やはり龍園も優待者の法則性に辿り着いていたのか。それとも……
「嘘に決まっているわ」
堀北も既に話を聞いてるようで、切り捨てるように否定した。
直後、扉が開く音がした。
「お、お邪魔しまーす……」
扉の方を見ると、恐る恐る入室する一之瀬の姿があった。後ろには綾小路もいる。
「なぜあなたがいるの? ここは竜グループの部屋なのだけれど」
堀北が強い口調で一之瀬に問う。
「様子を伺いにね。それともう試験の決まりである1時間は過ぎてるから大丈夫だと思うよ」
確かに試験以外の時間に出入りするのは自由だろう。禁止事項にも記載していなかった。
一之瀬の答えに、堀北は不満の表情を浮かべる。……仲良くしてくれないかな。
「やっほ、界外くん」
一之瀬はそう言いながら、俺の右隣に座った。どうやら神崎は昨日と違う椅子に座ってるらしい。
「お、おう……」
「もしかして寝てた?」
「……なんでわかったんだ?」
「界外くんのことだからわかるよ」
そう言い、俺の顔をじっと見つめる。寝起きに一之瀬の顔を見ると眠気が吹っ飛ぶな。
「クク。わざわざ愛しの彼に会いに来たのか?」
龍園が小さく笑いながら言う。
「それもあるけど。……葛城くんの説得と、竜グループの偵察が目的だよ。それと時間外に何を話していたのか興味あるな」
俺を愛しの彼と言われて、否定しない一之瀬。いいぞ龍園。もっと言え。
「そりゃそうだろうさ。本来ならお前が神崎とこの場所にいると思っていたからな。ところが蓋をあけてみればお前は別のグループ。それも、凡人だらけのチンケなチームに振り分けられてるなんてな。それとも、お前はそこまでの人間だったのか?」
「やだな龍園くん。戦略もなにも、学校側が決めたことだし詳細はわからないよ。それとも学校側は意図してグループ分けしたってこと?」
意図してグループ分けされたことは明らかだろう。……もしかして一之瀬が兎グループになったのって、綾小路を警戒されたからなのか。綾小路の異常な入試の成績は教師陣は全員知っているはずだ。
「気づいてないようなら教えてやるよ。今回の全てのグループ分けが、意図を持って教師連中によって決められたのは明らかだろ? となれば、Bの筆頭であるお前が外れた理由はなんだろうな」
「それは龍園くんが原因じゃないかな?」
「はっ、あの事かよ。担任が気遣ってお前と猿野郎を別グループにするよう仕向けたってわけか」
一之瀬曰く星之宮先生にそんな気遣いは出来ないとのことだけどね。
「確かにそれくらいしか理由は考えられねぇな。悪かったな、俺のせいで猿野郎と離れ離れにさせちまってよ」
まったく悪びれずもせず謝る龍園。
「別にいいよ。話し合い以外の時間でも会えるからね。それより何の話をしていたのか教えてくれると有難いんだけどな」
「いいぜ、教えてやるよ。俺が全クラスの優待者を把握してることを話してたのさ」
「……ホントに?」
「嘘に決まっているでしょう。それなら既に試験を終わらせているはずよ」
一之瀬の問いに堀北が答える。
「信じるかどうかはお前たちの勝手だ。それじゃ俺は帰らせてもらうぜ」
龍園は立ち上がり部屋を出ようとする。
「なんだ、お前。いつからいたんだ」
どうやら綾小路が部屋にいたのに気づいていなかったようだ。
「そうとう影が薄い奴もいるもんだな」
龍園はそう言い、立ち去って行った。
「そんなにオレは影が薄かったのか……」
綾小路が呟く。
「龍園くんのことだから、挑発を込めてそう言ったんだと思うよ」
「だといいんだがな」
「龍園の言うことは、あまり気にしない方がいい」
Bクラスのトップたちにフォローされる俺の相棒。
「それじゃそろそろ帰るか」
部屋に帰ってから誰に裏切ってもらうか考えないといけない。
全員で竜部屋を出た後、すぐに解散となり俺と堀北は自室に戻って行った。
綾小路は一之瀬に呼び止められ、兎グループであろうBクラスの面々とどこかに行ったようだ。
一之瀬が綾小路にどのように仕掛けるのか興味あるので、部屋に帰ってきたら聞いてみよう。
それより愛しの彼か。……龍園もいいこと言うじゃないか。
ほんの少し俺の中で龍園の評価が上がったのだった。
次回Aクラスのあの子が登場