実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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いよいよよう実9巻発売ですね!
一之瀬帆波は犯罪者だ。
このネタこの作品でも使える!


36話 私の性欲は半端ない

 時刻は夜の9時過ぎ。4回目の話し合いを終えた俺たちは急いで自室に戻ってきた。

 俺は携帯を片手にベッドに腰を下ろしている。そんな俺に寄り添うように堀北が隣に座っている。

 

「一気に7つのグループの試験が終了したらみんな驚くだろうな」

「驚くどころじゃないと思うわ」

 

 初日に猿グループが試験終了してあれだけ動揺してたんだ。2日目にまさか8つのグループが試験終了するなんて誰も思っていないだろうな。

 

「なんだか緊張してきたね」

「平田が緊張してどうするんだよ」

「そうなんだけどね」

 

 あははと苦笑いする平田。

 

「そういえば博士は?」

「トランプに負けたのが悔しいからストレス発散しにいくと言っていたぞ」

 

 少し遅れて部屋に戻ってきた綾小路が答える。兎グループはトランプで遊んでいるのか。羨ましい。

 

「俺も将棋持ち込んで神崎と対局すればよかったな」

「なんで神崎くんなのかしら?」

「将棋できそうな顔してるから」

 

 ついでに袴も似合いそうだよね。あのイケメンくん。

 

「私でよかったら今度対局をしてもいいけれど」

「堀北、将棋指せるのか?」

「ええ」

「それじゃ旅行から帰ったら対局してくれるか?」

「いいわよ」

 

 やった。やっと対局してくれる人が見つかったよ。

 

「将棋もアニメの影響なのか?」

「ああ。3月のライオンに影響されてな。綾小路、一緒にアニメ見るか?」

「面白いのか?」

「個人的に。夏目を見終わったらどうだ?」

「そうだな。正直、お前たちとアニメ見る以外やることないからな」

 

 意外と綾小路が寂しい夏休みを過ごしているんだが……。

 

「なら今度僕たちで遊びに行かないかい?」

「……いいのか?」

「もちろん。界外くんと綾小路くんとは前から遊んでみたいと思っていたんだ」

 

 お、綾小路が嬉しそうな顔してる。

 

「そうか。それじゃよろしく頼む」

「うん。界外くんもいいかな?」

「いいぞ。ただ試験が終わってからにしてくれ」

「どっちの試験のことを言ってるんだ?」

 

 綾小路が野暮な質問をしてきた。

 

「あっちに決まってるだろ」

「そうよ。彼は大事な試験を控えているの。あまり邪魔をしないでちょうだい」

 

 そんなきつい言い方しなくても……。櫛田の件といい、堀北は少し過保護なところがあるな。

 

「もちろん試験の邪魔はしないつもりだよ」

「平田が邪魔するとは思ってないぞ。……そろそろ20分だな」

 

 優待者の名前は既に入力している。後は送信ボタンを押すだけ。

 

「これで晴れて2学期からCクラスだ」

「そうね。思ったより早く上がれそうね」

 

 5月のクラスポイント0だったもんね。よく短期間でここまで上がってきたと思うよ。

 

「20分だ。送信するぞ」

 

 俺はそう言い、迷いなく送信ボタンを押した。

 直後、携帯に学校からの通知が届いた。

 そのままメール画面を操作し、受信メールを開く。

 

「……どうやら全員、言った通りにメールを送ってくれたようだ」

 

 受信したメールは7件。鼠、牛、虎、竜、鳥、犬、猪グループの試験が終了した。

 

「多分、平田あたりに問い合わせが沢山来ると思う。面倒だと思うけれどよろしく頼む」

「面倒だなんて思わないよ。……ただ、みんなに嘘をつくのはしんどいかもね」

「平田の性格からすると当然だな。……ま、これからの試験、嘘をつく必要がある場面も出てくるかもしれないから、予行練習だと思って割り切ってくれ」

「そうするよ」

 

 恐らくDクラス以外のリーダーたちにも問い合わせが殺到するだろう。

 ……あれ? それって一之瀬にも問い合わせが殺到するってことだよね?

 もしかしたらその対応に追われて星空見に行く時間がなくなっちゃうんじゃ……。

 

「いきなり意気消沈したような顔をしてどうしたの?」

 

 堀北が顔を覗きこんできた。どうやら心配してくれているようだ。

 

「いや、なんでもない……」

「なんでもないような顔には見えないのだけれど」

 

 試験終了させるの明日にすればよかった……。今さら遅いのでどうしようもないけど。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 多くのグループの試験が終了してから1時間後。部屋には俺と綾小路の二人の姿があった。

 

「界外、お前に聞きたいことがある」

「なんだ?」

「お前は軽井沢と話したことはあるか?」

「あるけど」

 

 まさか綾小路から軽井沢について聞かれるとは思わなかった。

 

「お前の知ってる範囲でいい。軽井沢はどんな人間だ?」

「うーん、借りてるポイントを返さないだらしない女子って感じだな」

「他には?」

「……そうだな。無人島試験の時にやたらボディタッチして来たのを覚えている。彼氏いるのにあれでいいのだろうかと思った」

 

 そう言えば、今回の試験でもAクラスの男子にべったりしてるんだっけか。平田というイケメン彼氏がいるのに……。

 

「そうか」

「急に軽井沢のことを聞いてどうしたんだ? 利用でもする気か?」

「そうだ」

「え」

 

 冗談で言ったつもりが、真顔で返されてしまった。

 

「もしかしたらいい駒になるかもしれん」

「そ、そうか……」

「今は何とも言えない。進捗があったら報告する」

「お、おう……」

 

 よくわからんが綾小路の報告を待つことにしよう。それより……

 

「連絡来ないな……」

「誰からのだ?」

「一之瀬。今日、一緒に星空を見る約束してるんだけど」

 

 さすがに今日は無理か。無理そうだったら明日以降にしようとチャット送っておこう。

 ため息をつきながら携帯を操作し、一之瀬にチャットを送る。

 

「本当に仲が良いな」

「そうだな。綾小路は佐倉とはどうなんだ?」

「なぜそこで佐倉の名前が出てくる?」

「いや、綾小路が一番仲良い女子って佐倉だろ」

 

 佐倉と櫛田の二人しか知らないんだけどね。なんか堀北とは険悪そうな雰囲気だし……。

 

「そうかもしれないな。佐倉とは仲良くしてるつもりだ」

「そっか」

 

 この調子だと佐倉の気持ちには気づいてないだろうな。

 

「界外は櫛田とも最近仲が良いようだな」

「櫛田が一体何を考えてるのかわからない」

 

 この前なんて抱きつかれたからね。……しまった。また櫛田の胸の感触を思い出してきた。

 

「案外、ただ仲良くなりたいだけかもしれないな」

「そうだとしても……綾小路と堀北から櫛田の本性を聞いてると、警戒してしまうんだが……」

「警戒するに越したことはない。引き続き気をつけて対応するんだな」

「それしかないよな……。よし、シャワー浴びてくる」

 

 その後、シャワーを浴び終えた俺は勉強をするため、個室に移動した。

 1時間ほど勉強し、時刻は11時を迎えた。

 

「いまだに一之瀬からの返信はなしか……」

 

 一之瀬の立場を考えれば仕方ない。仕方ないけれど、寂しいものがある。

 

「部屋に戻って寝るか」

 

 そう思い、椅子から腰を上げた瞬間、携帯にチャットが届いた。

 すぐに携帯の画面を確認する。

 

『遅くなってごめん。起きてる?』

 

 愛しの一之瀬からだった。

 チャットの返信でこれだけ喜んだのは生まれて初めてかもしれない。

 

『起きてる。問い合わせの対応に追われてたんだろ?』

『うん。今、落ち着いたところ』

『お疲れ様。今日どうする?』

 

 一之瀬も疲れてるだろう。なら無理に連れて行くつもりはない。連絡があっただけで十分だ。

 

『行きたい。もちろん界外くんがよかったらだけど……』

『疲れてるのに大丈夫か?』

『疲れてるからこそ界外くんに会いたいの』

 

 やばい。一之瀬からのチャットが届くたびに顔がにやけてしまう。

 

『わかった。それじゃ今から行くか?』

『うん。ラウンジで待ち合わせしよ』

 

 一之瀬とのチャットを終え、俺は勉強部屋を後にした。

 待ち合わせ場所のラウンジに辿り着くと、既に一之瀬がいた。

 

「やほー」

「おっす」

 

 いつも通り元気に挨拶してきた一之瀬だが、その表情には少し疲れの色が見える。

 

「ごめんね、遅くなっちゃって」

「一気に7つのグループに裏切り者が出たんだ。仕方ないだろ」

 

 そもそも俺のせいだしね。謝るのは俺の方。

 

「そう言ってくれると助かるよ。……それじゃいこっか」

「ああ」

 

 俺の返事を聞いて、一之瀬が足を踏み出した。

 

「これで残ったグループは3つだけだね」

「だな。一之瀬の兎グループも残ってるんだよな」

「うん」

 

 一之瀬の隣を歩きながらデッキに向かう。

 通路は誰の姿も見受けられなかった。

 5分ほど歩き、デッキに辿り着く。そこには……

 

「凄い。綺麗……」

 

 昨日と同じく、美しい光景が広がっていた。

 昨日と違うのは、俺たち以外に人がいないことだ。

 

「凄い凄い! 千葉でもこんな綺麗な星空見れないよ!」

 

 一之瀬が興奮しながら言う。

 

「そうだな。昨日これを見て、一之瀬にも見せたいと思ったんだ」

「そうなんだ。……嬉しい」

 

 一之瀬はしばらく星空を見上げていた。

 そんな彼女の横顔は、星空に負けないほど綺麗に見えた。

 

「くしょんっ」

 

 一之瀬の横顔に見惚れてると、彼女は可愛らしいくしゃみをした。

 

「思ったより涼しいね。上着を着てくればよかったよ」

 

 苦笑いしながら両腕をさする。

 俺は自身の上着を脱ぎ、一之瀬に手渡した。

 

「え」

「風邪ひくといけないから。よかったら着てくれ」

「いいの?」

「もちろん」

 

 一之瀬に風邪をひかせるわけにはいかないからね。試験も残ってることだし。

 

「ありがとう」

 

 上着を受け取り、それを着始める。

 

「えへへ、ぶかぶかだね」

 

 上着を掴みながら、体を回転させながら一之瀬が言う。

 

「ま、俺の上着だからな」

 

 堀北が着た時もぶかぶかだったな。

 

「ちなみに洗濯してあるから安心していいぞ」

「そうなんだ。別に洗濯してなくても大丈夫なんだけどね」

 

 一之瀬が大丈夫でも俺が大丈夫じゃないのです。

 

「界外くんは寒くない?」

「ああ」

 

 嘘。本当はうっすら寒い。我慢出来るレベルだから問題はないけれど。

 

「そう? 上着を借りてる私が言える立場じゃないけど、風邪ひいちゃやだよ?」

「大丈夫大丈夫」

「うーん、念のためこうしてよっか」

 

 一之瀬はそう言うと、体を密着させ、腕を組んできた。

 

「これなら少しは温かくなるんじゃないかな」

 

 温かくなるどころじゃない。熱くなってしまう。どこがとは言わないけど。

 久しぶりに俺の腕が一之瀬の胸に挟まれている。……やはり一之瀬のおっぱいが至高か。

 

「ていうか、人が全然いないね」

「昨日は沢山いたんだけどな。みんな、それどころじゃなくなったんだろうな」

「7つのグループが一気に試験終了したらそうなるよね」

 

 お互い苦笑いする。

 

「ま、おかげで一之瀬と二人きりになれたからよかったよ」

「……うん。私もそう思う」

 

 ぎゅっと俺の腕を挟む力が強くなった。

 

「あのね」

「ん?」

「明日はインターバルで試験はないでしょ?」

「ああ」

「一緒に遊ばない?」

 

 驚いた。まさか試験中に遊びに誘われるとは思わなかった。

 

「俺はいいけど……いいのか?」

「うん。うちのクラスはそういうの自由だから」

「そうか……」

 

 でも一之瀬はBクラスの学級委員長だ。試験中に遊んでるのを好ましく思わない生徒もいるのではないだろうか。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。試験は真面目にやるから」

「ならいいけど」

 

 そこまで言うなら、一之瀬を信じるしかない。

 

「界外くんの方こそ大丈夫なの?」

「なにが?」

「ほら、私って一応Bクラスの学級委員長だし。試験中に他のクラスの人と仲良くしてて、何か言われたりしてないのかなって」

「言われたことないな」

 

 確かにこれだけ試験中に接触していれば言われそうなもんだけど。

 

「そうなんだ」

「ま、あんな噂が流れてるんだから今さらなんじゃないか」

「……そうだよね。今さらだよね」

 

 一之瀬はそう言うと、そのまま肩に頭を乗せてきた。

 

「クラスの子が言ってたんだけど、私たちなんて言われてるか知ってる?」

「知らない」

「淫乱カップルだって」

「え」

「裏掲示板ってあるでしょ。そこに好き放題書かれてるらしいよ」

 

 そういえば三宅が掲示板に俺と一之瀬のことが書かれてると言ってたな。

 

「淫乱カップルって失礼しちゃうよね」

「だな。……一之瀬はそういう掲示板とか見たりしてるのか?」

「ううん。ただお節介な友達が見せてくる感じかな」

「なるほど」

 

 女子ってそういうゴシップ好きそうだもんね。

 

「あと伊吹さんが界外くんの下着盗んだことも書いてあるよ」

「あっ」

「濡れ衣なのに可哀相だよね」

 

 そうだ。一之瀬と綾小路の二人には本当のことを言ってるんだった。

 伊吹が盗んだのは、軽井沢の下着だけであることを。

 

「でも軽井沢の下着は盗んだわけだし……」

「それはそうなんだけどね」

「クラスの雰囲気を悪化させないためには仕方なかったんだ」

「うん、わかってる。……界外くんってだいぶ変わったよね」

「変わった?」

「うん」

 

 俺の何が変わったんだろ。一之瀬と堀北のおかげで女子に触られても平気になったことかな。

 

「ほら、前はクラスの為にそこまで頑張ったりしなかったでしょ?」

「……確かに」

「私はいい傾向だと思うよ」

「そうなのか?」

「うん。……クラスの為に頑張ってる界外くん、カッコいいと思うし」

 

 薄暗いのでよく見えないが、なんとなく一之瀬が照れてるのがわかる。

 

「あ、ありがとう……」

「ううん」

「つーか、一之瀬こそカッコいいだろ。入学してからずっとクラスの為に頑張ってるし」

「……そう見える?」

「見える」

 

 逆に見えなかったら俺の目がおかしいことになってしまう。

 

「ありがと。そう言って貰えると嬉しい」

 

 噂だとBクラスも最初は今みたいにまとまってなかったと聞いてる。一之瀬や神崎あたりが頑張ってクラスをまとめたのだろう。

 

「……もしも、もしもだよ?」

「うん?」

「もしも私が頑張ることに疲れちゃって、学級委員長を辞めたら……界外くんはどう思う?」

 

 一之瀬が思いつめたような顔で質問してきた。

 

「うーん、お疲れ様って感じだな」

「え」

「今までお疲れ様。後は他の人に頑張ってもらえって声かけるかな」

「え、え……?」

 

 どうしたんだろう。一之瀬が戸惑ってるようだ。

 

「それだけ?」

「それだけとは?」

 

 もっと労えこの野郎って言いたいんだろうか。

 

「だって途中で学級委員長辞めちゃうんだよ? 無責任だとか思わないの?」

「思わないけど。そもそも同じ人が学級委員長を続けなきゃいけないわけじゃないだろ」

「そ、それは……」

「ライフなんか学期ごとに委員長変えてただろ」

 

 確か学力テストで男女1位の人が学級委員になってた気がする。

 

「それに自分勝手な考えで申し訳ないけど……」

「なに?」

「一之瀬が学級委員長辞めたら、もっと遊ぶ時間が増えるかもしれないと、よこしまな考えを持ってる」

 

 自己中心的すぎる考えで申し訳ない……。

 

「……そっか、そうなんだ」

 

 そうなんです。ていうか、ぶっちゃけすぎたかもしれない……。

 

「うん、なんだかすっきりしたかも」

「そ、そうか……」

「うん。界外くん、ありがとう!」

 

 笑顔で礼を言う一之瀬。先ほどの思いつめた顔が嘘のようだ。

 

「それじゃそろそろ帰ろっか」

「そうだな。明日の為に寝ないといけないしな」

「うん」

 

 携帯を見ると0時を過ぎた頃だった。早く寝ないとお肌が荒れちゃう。

 

「いこ?」

「いこって……腕組んだまま?」

「うん。誰も見てないないから大丈夫だよ」

「そうか。大丈夫か」

「大丈夫大丈夫」

 

 二人同時に足を踏み出す。

 どうやら今日は寝るまでに相当時間がかかりそうだ。

 だって俺の腕がずっと一之瀬のおっぱいに挟まれてるからね。しかも歩くたびに胸で擦られてる感じがするし。今夜は悶々コースに決定。

 その後、一之瀬を部屋まで送り届けたが、誰にも遭遇することはなかった。

 

「今日は遅くまでありがとな」

「こっちこそだよ。遅くなってごめんね」

「一之瀬が謝る必要ないから。それじゃ明日な」

「うん。おやすみ」

「おやすみ」

 

 彼女は名残惜しそうに扉を閉めた。

 ……なんか忘れてるような気がする。なんだろ……?

 あっ、上着を貸したままだった。……仕方ない。明日返して貰おう。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 彼と別れてから30分。私は彼の上着を抱きしめながらトイレにこもっていた。

 くんくん。

 彼の匂いがする。

 無人島試験では堀北さんがずっと着てたようだけど、洗濯してくれたおかげで、彼だけの匂いがする。

 

「帝人くん、帝人くん」

 

 小声で彼の名前を連呼しながら、上着に顔を埋める。

 ちなみに普段は名字呼びだけど、私一人や心の中ではいつも名前呼びをしている。早く名前で呼び合いたい。

 

 今日は色々なことがあった。羊グループが試験終了したと思ったら、夜に7つのグループが一斉に試験終了したのだ。

 一気に7件も学校から通知が来たときは、驚きより残念な気持ちが勝っていた。

 なぜなら彼と星空を見る約束が果たせなくなるかもしれなかったから。

 一斉に7つのグループが試験終了したら、みんな困惑する。結果、私と神崎くんに問い合わせが殺到する。

 実際、初日に猿グループの試験が終了した時も、私と神崎くんに問い合わせが殺到した。

 優待者捜しの相談ならわかるけど、私が裏切ったわけじゃないのに、裏切り者が誰かなんて私に聞かれても正直困る。

 

 クラスメイトからの相談が全て終わったのは11時を過ぎた頃だった。

 彼はいつも11時には寝ているので、駄目元でチャットを送った。結果、彼は起きていて無事に約束を果たせることができた。

 彼と一緒に見上げた星空は凄く綺麗だった。多分、隣に彼がいたのも影響したと思う。彼と一緒なら曇り空でも綺麗に見える気がする。

 そんな彼だけど、私の横顔をじっと見ていた。もしかしたら私に見惚れてくれてたのかも。……嬉しい。

 

 夏といえど、夜の海上は涼しかった。半袖でデッキに来てしまった私は、若干寒気を感じた。そんな私を気遣って、彼は上着を貸してくれた。

 ……ごめん。本当は彼の上着を貸してほしくて、わざと半袖でいました。だって堀北さんにだけ、彼の上着を着させるなんて許せなかったから。

 彼の上着に包まれた私は、幸せのあまり、勢いで彼の腕に抱きついてしまった。彼の腕を胸で挟んだけど、反応はイマイチだった。もしかしたら私の胸の感触に慣れてきたのかもしれない。……付き合う前から胸の感触に慣れさせるなんて、私はなにをやってるんだろ……。

 

 彼の肩に頭を乗せ、星空を見上げながら、しばらく雑談を続けた。

 裏掲示板に私たちのことが書き込まれていたり、無人島試験での出来事などを話した。

 彼には淫乱カップルくらいしか言わなかったけれど、本当はもっと酷いことが書き込まれてる。

 私が中学の時に暴力沙汰を起こしたり、援助交際したり、窃盗して補導されたり、薬物使用で施設に入れられていたり、私が彼にBクラスの情報を流してる、など。……ほとんど私のことばっかりだっ!?

 証拠はないけれど、誰が書き込んでいるかは予想はついてる。裏掲示板はデマが多いので、今のところ私に対する中傷を信じてる生徒はいない。けれど試験の結果によっては、私が彼にBクラスの情報を流してるというデマを信じる生徒が出てくるかもしれない。

 もしそうなったら、潔く学級委員長を辞めるつもり。もちろん否定はするけどね。本当は彼と付き合えたら辞めるつもりだったけれど、仕方がない。それに私が学級委員長を辞めても、彼から失望される心配もなくなったし。

 本当に彼の考えは面白い。あの雰囲気でアニメを例えに出すかな……。ま、そんな彼が大好きなんだけどね。

 

 0時を過ぎた頃に私たちはデッキを後にした。

 彼との愛しの時間を終えた私は、彼と腕組みをしたまま部屋に向かった。道中、誰とも遭遇しなかったのは残念だった。私と彼の仲を見せつけたかったのに。……主に堀北さんと桔梗ちゃんに。

 

 今日、彼は私に一つ嘘をついた。それは昨日、一人で星空を見たと言ったこと。

 私、知ってるんだよ。本当は桔梗ちゃんと二人で見てたんだよね。しかも桔梗ちゃんに抱きつかれてたよね。私、全部知ってるんだから。

 あの日の夜、神社の本殿で彼に胸を握られた感触を忘れずにいた私は、みんなにばれないように夜中にトイレで自分を慰めていた。無人島ではずっと我慢していたので、溜まりに溜まった性欲を満たすため、30分以上はトイレにこもっていたと思う。

 自慰を終えた私は、ふと彼が何をしているのか気になり、携帯を操作して彼の位置情報を確認した。寝てると思ったけど、彼は船内を移動していた。

 彼がこんな遅い時間に何をしているのか気になり、私は果てた体を何とか動かし、彼の後を追った。

 辿り着いた先はデッキ。どうやら気分転換で夜空を見に行ったようだった。私は偶然を装って、声をかけようとしたけれど、私より先に彼に声をかけた女子がいた。桔梗ちゃんだ。

 そのまま二人は一緒に星空を見上げていた。私はカップルが沢山いる中、一人で彼と桔梗ちゃんの様子を伺っていた。

 暫くすると桔梗ちゃんが彼に抱きついた。

 さすがにその光景には私も驚いた。いつの間に桔梗ちゃんは彼を好きになったのだろう。もちろん桔梗ちゃんの口から聞いたわけじゃないけど、あんな抱き付き方は好きな異性にしかしないはず。

 

 櫛田桔梗ちゃん。

 

 私とは下の名前で呼び合う友達。私以外にもBクラスに友達が沢山いて、社交性なら学年で一番と言っていいかもしれない。成績もよくて運動神経もいいと聞く。まさに絵に描いたような優等生。

 そんな桔梗ちゃんだけれど、私は彼女の本性を知っている。

 あれは中間テスト間近の5月。

 テスト勉強の息抜きをするため私は、屋上に行った。そこで面白い光景が目に入った。

 あの優等生の桔梗ちゃんが、暴言を吐きながら柵を蹴っていたのだ。

 私はそっと死角に移動して、しばらく桔梗ちゃんの様子を伺った。

 どうやら桔梗ちゃんは堀北さんの態度が気に入らないようで、ずっと堀北さんの悪口を言っていた。

 暫くすると綾小路くんがやってきた。桔梗ちゃんはパニくったのだろう。綾小路くんに自分の胸を揉ませ、脅した。内容はこのことを言いふらしたら、綾小路くんが桔梗ちゃんをレイプしたと報告するとのこと。

 正直、笑ってしまった。テンパった桔梗ちゃんの対応もそうだし、綾小路くんにビッチ扱いされ怒り狂う桔梗ちゃんが面白くてしょうがなかった。

 彼女の本性を知ってしまった私だけれど、意外と桔梗ちゃんのことは好きだったりする。

 だってあんな人間臭い女の子なんて珍しいもん。 

 そんな桔梗ちゃんが、まさか彼を好きになるなんて……。ノーマークだったので、経緯が全然わからない。

 桔梗ちゃんのことだから、私が彼に手を出して―――彼と仲が良いことは知ってるはず。なので彼を狙うのなら私と争うことになることはわかっているはず。だからみんなの人気者を演じてる桔梗ちゃんが、彼を狙うとは思ってもみなかった。

 桔梗ちゃんについてはこれから情報収集しないといけない。……もちろん、私の敵じゃないけどね。ただ油断は大敵。彼の特別になるため私は人事を尽くすだけ。

 ちなみに私は彼に嘘をつかれたことについては怒っていない。むしろ嬉しいと思ってる。だって私に桔梗ちゃんと二人で星空を見たことを隠したってことは、私に他の女の影を見せたくなかったってこと。私をただの友達と思ってるなら素直に言ったはず。けど彼は嘘をついた。つまり私を完全に異性として意識しているということだ。

 ていうか、あれだけ好き好きアピールしてるんだから、意識してくれないと困る。それにさすがの彼も私の気持ちに気づいてくれてると思うんだけどなぁ……。

 ま、彼が私に好意を抱いてるのは間違いないから、これからも頑張ってアピールしていくしかないんだけどね。 

 

「明日もデート出来るから、頑張らないと」

 

 そう。明日はインターバルで特別試験はお休み。なので彼を遊びに誘った。彼はまだ試験が終了していない私を気遣ってくれた。本当に優しいんだから。

 明日はなにして彼と遊ぼうか。彼が私に内緒にしている個室にこっそり遊びに行っちゃおうかな。そこなら無人島の時みたいに二人で一緒に昼寝出来るかも。

 ……駄目だ。またあの時のこと思い出しちゃった。

 初めて男の子に胸を揉まれた。と言っても無理やり私が揉ませたんだけど……。

 そんな貴重な初体験で、私は握りつぶされるくらい強く胸を揉まれた。どれくらい強かったと言うと、3日間握られた跡が消えなかったほど。

 痛くて痛くてしょうがなかったのに、気持ちよく思えちゃうなんて……。

 

「……んっ、もうこんな時間なのに」

 

 身体が疼き始めてしまった。

 どうしよう。携帯を見ると時刻は0時半。

 明日は彼と船内デート。それに朝食も一緒に食べる予定。だから早く寝たほうがいいんだけど……

 

「駄目だ。我慢できないや」

 

 私は本能に従って、ゆっくりジャージとショーツを下ろした。

 左手で彼の上着を顔に押しつけ、右手を秘部に触れさせる。

 

「ごめんね、帝人くん」

 

 彼の上着を汚してしまうことはわかっていたので、彼に謝罪をしてから自分を慰め始めた。

 

 私がベッドに戻ったのは1時半を過ぎた頃だった。

 案の定、彼の上着を汚してしまった。主に私の唾液で……。

 でも仕方ないよね。声を出さないようにするのに、口の中に入れるしかなかったんだから。

 それに時間が経てば乾くだろうし、彼にはばれないだろう。

 明日、上着を返すけれど、彼は洗濯しないで着てくれるだろうか。

 私の唾液が染み込んだ上着を彼が着るのを想像する。

 

「……駄目駄目。また眠れなくなっちゃう……」

 

 自分を戒める。さすがにもう寝ないと。これ以上変なこと考えちゃ駄目だ。

 私は自分にそう言い聞かせ、目を閉じる。後は寝るのを待つだけ。待つだけなのに……

 

「……もうやだ……」

 

 再度トイレに向かう。

 結局、私が眠りについたのは、それから1時間後だった。

 さすがに今回は自分の性欲の強さが嫌になった。

 付き合う前からこれで、彼と付き合ったら私はどうなってしまうんだろう。

 裏掲示板に書き込まれてるとおり、淫乱カップルになってしまうんじゃないだろうか。

 そんな心配をしながら、私はゆっくりと眠りについた。




また明日!
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