実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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とうとう禁書3期が放送ですよ!
7年も待たせやがって……


41話 堀北は保健体育も勉強熱心

 8月某日。特別試験終了後から日課になっているランニングを終えた俺と堀北は、寮の近くにあるベンチで一休みしていた。

 

「はい」

 

 堀北がレモンのはちみつ漬けを渡してきた。

 

「今日も作ってきてくれたのか」

「ええ」

 

 堀北は必ずレモンのはちみつ漬けを作ってきてくれる。疲労回復に最適なので非常に助かる。

 

「いただきます」

 

 早速タッパーを開け、レモンを口に入れる。

 

「どうかしら?」

「うん。今日も美味しいぞ」

「そう」

 

 嬉しそうに微笑む堀北。

 

「あれだな。堀北は意外とマネージャーに向いてるかもな」

「そうかしら?」

「ああ。気配り上手だし、料理も美味いだろ」

「そんなことないけれど」

 

 堀北の照れ顔は相変わらず可愛い。

 

「それより今日は学校に行くのよね?」

「ああ。生徒会に外出申請書を提出しないといけないからな」

 

 敷地外に出るのは4ヶ月ぶりになる。

 

「私も行ってもいいかしら?」

「え」

「その……兄さんに用事があって」

 

 堀北が生徒会長と会う。つまり例の約束を果たさなければならないということ。

 

「……どうしても生徒会長と会わないといけないのか?」

「ええ。……駄目かしら?」

「用があるなら仕方ないだろ」

「ありがとう。それでまた頭をはたいて貰いたいのだけれど……」

 

 やはりお願いされてしまった……。

 

「……わかった。約束だからな。ただこの前みたいに生徒会長の前ではたくのはしたくない」

 

 さすがに実の兄貴の前で何回もはたけない。

 

「ええ。人目がつかないところでお願いするつもりよ」

「そうか」

「それと昨晩お願いしたことだけれど」

「漫画喫茶に連れていってほしいんだろ」

 

 昨晩、堀北から漫画喫茶に連れて行ってほしいとチャットを通じてお願いをされた。

 

「それじゃ学校帰りにそのまま行くか」

「そうね。……でも、その……勉強は大丈夫かしら……?」

「心配しなくていい。夜に2時間くらい復習するだけで十分だ」

「そう」

 

 安心したような表情を見せる堀北。

 

「それで何の漫画が見たいんだ?」

「スラムダンクよ。以前、界外くんが教えてくれたでしょ」

 

 ファミレスで龍園に初めて絡まれた時か。懐かしいな。

 

「スラムダンクか。31巻もあるから一日じゃ難しいと思うぞ」

「大丈夫。一日で読み切るつもりはないから」

「そうか」

 

 その後、堀北と一旦別れ、11時に待ち合わせをすることになった。

 ところで堀北とのランニングで、レモンのはちみつ漬け以外に楽しみにしていることがある。それはブラ透けだ。早朝とはいえ真夏なので走れば大量に汗をかく。ちなみに今日は黒だった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

「学校に来るの久しぶりだな」

「そうね」

 

 堀北と合流した俺は、1ヶ月ぶりに学校に足を運んでいた。

 玄関で上履きに履き替え、生徒会室に向かう。

 

「界外くん、こっちよ」

 

 堀北はそう言うと、俺の腕を掴み、生徒会室近くの人気がない場所に連れてきた。

 

「ここなら監視カメラもないし、人通りも少ないから大丈夫よ」

「そうか」

「それじゃ早速お願い」

 

 堀北が目を閉じた。

 

「……堀北ははたかれてるのが怖くないのか?」

「特に」

 

 いやいや、少しくらい恐怖感を持てよ。

 

「自分からお願いしておいて怖いと思うなんて界外くんに対して失礼でしょ?」

「そういうもんかな」

「そういうものよ」

 

 ま、変に怖がってるよりマシか。

 

「いつでもいいわよ」

 

 何だろう。堀北をはたくのはもちろん嫌だけれど前より嫌悪感を感じていない。2回目だからだろうか。

 

「それじゃいくぞ」

「……ええ」

 

 右手を振りかざす。そして堀北の頭部をめがけて、一気に振り下ろした。

 

「……あぅ……っ!」

「やべっ」

 

 力を入れすぎたのだろうか。はたかれた衝撃で堀北が壁に激突してしまった。

 

「……っ」

「わ、悪い! 大丈夫か!?」

 

 しまった。久しぶりにはたいたから力加減を間違えてしまった。

 

「……ええ」

 

 倒れた堀北に手を差し伸べる。

 

「力入れすぎたみたいだ。ごめん」

 

 堀北は首を横に振り、俺の手を握った。

 

「いいえ。私が踏ん張り切れなかっただけ。力加減は前回と同じだったわ」

「そ、そうなのか……?」

 

 堀北を起こしながら、質問する。

 

「ええ。私の方こそ、心配掛けてしまってごめんなさい」

「いや、それはいいんだけど……。壁に頭をぶつけたりしてないか?」

「大丈夫よ。それより先に行っててくれる?」

「え」

「お手洗いに行ってくるわ」

 

 俺が「わかった」と返事をすると、堀北は近くのトイレに入っていった。

 

「怪我してなくてよかった……」

 

 歩行も問題なさそうだ。

 それよりはたいた時の堀北の声、可愛かったな。……って俺は何を考えてるんだよ!

 俺は邪念を振り払い、生徒会室に向かった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「はい。確かに申請を承りました」

 

 俺から外出申請書を受け取った橘先輩が言う。

 

「外出許可証は当時に茶柱先生から渡しますね」

「わかりました」

「当日は茶柱先生と共に行動をして貰います」

 

 さすがに生徒一人だけに行かせるわけないか。

 

「詳細は当日に茶柱先生から説明しますね」

「はい」

 

 今日も橘先輩は可愛いな。見てて癒される。

 

「どうしたんですか?」

「いえ。真面目に仕事してる先輩、カッコいいなと思いまして」

「そ、そうですか……」

 

 一気に顔を赤くする橘先輩。

 

「界外」

「……何ですか生徒会長」

 

 ゆでタコ状態の天使を見つめてると、堀北兄から声をかけられた。

 

「調子はどうなんだ?」

「問題ないですね。当日に受験会場に辿り着けないトラブルが起きない限り、合格は間違いないと思いますよ」

「ふっ、大した自信だな」

「どうも」

 

 そういえば生徒会って橘先輩と堀北会長の二人しか会ったことないな。

 

「それと特別試験もご苦労だったな。まさかクラスポイントを500以上も上げるとはな……」

「運がよかったんですよ」

「運だけで勝てるほど甘くないと思うがな」

「なら相手に恵まれていたのかもしれませんね」

 

 言葉を選ばないと、会長から直接生徒会に誘われそう……。

 

「そんなことないですよ。界外くんの実力です!」

 

 橘先輩。褒めてくれるのは嬉しいけど余計なこと言わないで!

 

「さすが私の後輩です!」

 

 一応、1年全員橘先輩の後輩だからね? 俺だけが後輩じゃないからね?

 

「だそうだ」

 

 クククと笑う堀北会長。その笑い方やめろ。龍園を思い出す。

 

「それより鈴音はどうした?」

「お手洗いに行ってます。そのうち来ると思いますよ」

「そうか。……鈴音はどうだった?」

 

 恐らく試験での堀北のことを聞いてるのだろう。

 

「クラスに貢献してましたよ。特に船上試験では優待者の法則を見抜いてましたから」

「ほう」

「それに友達も何人か出来ました」

「……鈴音が?」

 

 驚いたように目を見開く堀北会長。

 

「ええ。食事もクラスメイトととってましたし」

「……そうか」

 

 なんだ。堀北会長も優しく笑えるんじゃないか。

 

「なので堀北を褒めてやって下さい」

「……検討しておこう」

「駄目ですよ! 妹さんが頑張ったんですから。お兄さんである堀北会長が褒めてあげないでどうするんですか!」

 

 橘先輩が援軍になってくれた。ていうか堀北会長に対して強く言えるんだな。

 

「わ、わかった……」

 

 よし。これで堀北も喜ぶだろう。

 

「それじゃ俺はこれで失礼します」

 

 生徒会室を後にした俺は、廊下で堀北を待つことにした。

 5分ほど経つと、堀北がやって来た。もじもじしながら。

 

「遅くなってごめんなさい」

「いや。……っ」

 

 なんだ。堀北の様子がおかしい。

 

「どうしたの?」

 

 堀北が聞いてきた。

 

「な、なんでもない……」

「そう?」

 

 吐息を漏らしながら俺を見つめる堀北。妖艶な雰囲気を醸し出してる。

 

「あ、ああ。それより生徒会室に行って来たらどうだ?」

「そうね。すぐに用を済ますからここで待っててくれる?」

「わかった」

 

 俺の返事を聞くと、堀北は生徒会室に入っていった。

 

「……なんであんなエロい雰囲気になってるんだ……」

 

 トイレに行ってる間に何があったんだろうか。私、気になります!

 生徒会室に入った堀北だったが、1分も経たないうちに部屋から出てきた。

 

「もう終わったのか?」

「ええ。界外くん、お願いがあるのだけれど」

「ど、どうした……?」

 

 部屋から出てきた堀北だが、相変わらずエロい雰囲気を醸し出してる。

 

「来る途中で汗をかいてしまって。一度寮に帰ってシャワーを浴びたいのだけれどいいかしら?」

「わかった。それじゃ寮に戻るか」

「ごめんなさい」

 

 俺が歩き出すと、堀北が横にピタッとくっついてきた。

 

「なあ、顔赤いけど大丈夫か?」

「そんなに顔赤いかしら?」

「ああ。夏風邪じゃないよな?」

「そんなに心配なら触ってみる?」

 

 堀北は前髪をあげ、おでこを出してきた。

 

「いや、堀北がそう言うなら信じるよ」

「……そう」

 

 残念そうな表情をしながら、前髪を下ろした。

 その後、寮に向かう道中で堀北からの視線を何度か感じたが無視した。だってあんな蕩けた表情で見つめられたら動揺してしまうし……。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「ここが漫画喫茶なのね」

 

 時刻は13時。一旦寮に戻った俺たちは、ファミレスで昼食を済ませてから漫画喫茶に来ていた。

 

「ああ」

「どういった料金コースになるのかしら?」

「何時間パックでいくらって感じだな」

 

 入口付近の壁に貼ってある料金コース一覧を見る。

 

「そう。3時間パックでいいかしら?」

「それでいいと思う」

 

 コースを決めたところで受付に向かう。

 

「いらっしゃいませ。会員証はお持ちですか?」

「これで」

 

 携帯でQRコードを表示させ、専用の端末に携帯をかざす。

 

「会員証もデジタル化が進んでるのね」

 

 堀北が感心したように言う。なんか年寄りみたいに見えるぞ。

 

「お時間はどうなさいますか?」

「3時間パックでお願いします」

「かしこまりました。お部屋は?」

 

 部屋か。これは個室二つでいいだろう。

 

「このカップルシートというのでお願いします」

 

 隣に立つ堀北が店員に言う。

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

「おい、なんでカップルシートなんだよ? 個室二つでいいだろ?」

「駄目よ。私は初めて漫画を読むのよ。何か質問したいときに近くにいてもらった方が効率的でしょ?」

「な、なるほど……」

 

 そうか。堀北は漫画を読んだことがなかったのか。

 

「お待たせしました。ドリンクバーはあちらになりますので」

「ありがとうございます」

 

 ドリンクバーコーナーでコップにジュースを注ぎ、割り当てられたスペースへ向かう。

 そこは備え付けのソファとデスクトップのパソコンが一台。それからヘッドホンが二人分用意されている。

 そして狭い。非常に狭い。

 本当にギリギリ二人が入れるくらいのスペースしかない。

 

「これがカップルシートか」

「界外くんはカップルシート初めてなの?」

「当たり前だろ。漫喫は博士としか来たことがないんだ。博士とカップルシートとか拷問だろ」

「そう。初めてなのね」

 

 嬉しそうに微笑む堀北。

 

「それより漫画持ってこようぜ」

「そうね」

 

 小さめのテーブルにコップを置き、漫画を取りに行った。

 目的の漫画を確保し、俺と堀北はソファに腰を下ろした。

 距離が近い。肩が触れ合ってる。7月まで使用してた部室棟近くのベンチより距離が近い。

 

「漫画だとどのくらいのスピードで読めるのか計算出来ないわ」

「読んだことないからな。じっくり読んだ方がいいぞ」

「そうね」

 

 お互い持ち込んだ漫画を読み始める。

 堀北は当然スラムダンク。俺はばらかもん。早く2期やってくれないかな。

 時折、ジュースを飲みながら漫画を読み進める堀北。

 

「ねえ」

 

 30分ほど読み続けてると、堀北が声をかけてきた。

 

「ん?」

「界外くんがバスケを始めたのは、この漫画の影響かしら?」

 

 漫画に関する質問かと思ったら、俺に関することだった。

 

「いや。俺は黒子のバスケだな。スラムダンクを読んだのはその後だ」

「そう」

「2巻まで読み終わったようだけど……どうだ?」

「そうね。面白いと思うわ。主人公がどういったキャラなのか理解できるし、話の展開も丁寧で読みやすいわね」

「そっか」

 

 よかった。これでつまらないとか言われたら熱弁振るった俺の立場がないところだった。

 その後も堀北は、真剣な表情でスラムダンクを読み続けた。

 反対に俺は眠気に襲われ、意識を手放してしまった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「……ん……」

 

 ゆっくり目を開ける。どうやら寝落ちしてしまったようだ。

 

「起きた?」

「……ああ」

 

 堀北の声が聞こえた。体を起こそうとしたが、寝起きで意識と肉体が上手につながっていないので、体が思うように動かない。

 

「…………あれ?」

 

 体を起こそうとした? 確かここはカップルシートで二人しか座れないスペースだったはず。ということは……

 

「どうしたの?」

 

 見上げるとそこには俺を見下ろす堀北の顔があった。

 

「……悪い」

「それは何に対する謝罪かしら?」

「いや、寝落ちしたのと……膝枕して貰ったことです……」

 

 俺は堀北に膝枕をして貰っていた。しかも堀北はミニスカートなので、色々とヤバイような気がする。

 

「別に謝る必要はないわ。膝枕をさせたのは私だもの」

「え」

「最初は肩に寄りかかられたのだけれど、それだと漫画が読みづらいから、横になって貰ったのよ」

「そうだったのか……」

 

 しまった。漫画喫茶に連れて来て、それを妨害するような行為をしてしまうとは……。

 

「それは悪かった」

「別に構わないわ。それでどうするの?」

「なにが?」

「起き上がる気配がなのだけれど。私の膝枕をもう少し堪能したいのかしら?」

 

 堀北にそう言われ、すぐに起き上がった。

 

「ふふ。そんな焦らなくてもいいのに」

「あまり苛めないでくれ……」

「ごめんなさい」

 

 くすくす笑いながら謝罪をする堀北。

 

「それで今何時なんだ?」

「14時半。まだ1時間半残ってるわ」

「そうか」

 

 どうやら1時間近く寝てしまったようだ。

 

「堀北は何巻まで読み終わったんだ?」

「今6巻目よ」

 

 どうやら全巻読むのは数日かかりそうだな。

 

「もし続きが気になるならレンタルショップ寄るか?」

「いいえ。自室だと小説優先で読んでしまうと思うから。だからここでいいわ」

「そうか」

「また付き合ってくれる?」

「もちろん」

 

 スラムダンクを勧めたのは俺だ。責任を持って最後まで付き合わないといけない。

 

「ありがとう。今日は10巻までは読み終わりそうね」

「なら3日間くらいかかるな」

「次は界外くんの試験が終わってからでいいわ」

「わかったよ」

 

 結局、堀北は11巻まで読み終わった。内容に関しては大変満足しているようだった。

 漫画喫茶を後にした俺たちは、カフェに寄り、数時間雑談をしてから寮へ帰った。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 時刻は夜の10時。シャワーを浴び、髪を乾かし終えた私はベッドで横になっていた。

 

「今日は久しぶりにはたいて貰えたわね」

 

 彼にはたいて貰った箇所を触りながら思い返す。

 彼から生徒会室に行くと聞いた私は、自分も連れていくようお願いをした。

 兄さんに用事があると言って、ついていったけれど、本当は用事なんてなかった。実際兄さんと会ったけれど、簡単に近況報告をしただけだった。

 彼についていった理由は一つ。彼にはたいて貰うためだ。

 彼にはたいて貰って、痛みと一緒に与えられる『何か』を確認したかった。

 計画通り、私は彼に頭をはたいてもらえた。

 彼の一撃は思ったより重く、私は勢い余って壁に吹っ飛ばされてしまった。彼には前回と同じくらいの強さだと説明したが、前回よりも明らかに強くはたかれた。

 でも彼を責めるつもりはない。そもそもお願いをしてるのは私。私は彼に『躾』をして貰っている立場なのだから。

 そして私は、痛みと一緒に与えられる『何か』を確認することが出来た。その『何か』を私は薄々気づいていた。ただ認めなくなかっただけ。けれど今日、彼にはたかれたことで、認めざるを得なかった。痛みと一緒に与えられる『何か』

 それは……快感だった。

 彼に頭をはたかれて、自分のあそこが濡れているのがわかった。

 彼に断りを入れて、お手洗いに行き、個室で恐る恐る陰部を確認した。その箇所は、自分が思っていたよりもぐっしょり濡れていた。

 その時、私は自覚した。

 私はどうしようもないほどにマゾヒストなのだと。

 あれだけ否定していたのに、すんなりと自分の性癖を受け入れることが出来た。これだけ濡れていては認めざるを得ない。だからすんなりと受け入れることが出来たのだと思う。

 恐らく長い間兄さんに、肉体的精神的苦痛を与えられ、私の中の被虐性欲が育ったのだろう。それを彼が目覚めさせてくれた。

 自分の性癖を受け入れた私は積極的だった。

 体の疼きを鎮めるため、自分を慰めた。

 生まれて初めての自慰だった。

 別に私は性に興味がなかったわけではない。自慰をする同級生を軽蔑したりもしない。ただ必要性を感じなかっただけ。いずれ異性に興味を持てばするのだろうと考えていた。まさか初めての自慰が学校のトイレになるとは思わなかったけれど。

 何とか体の疼きを鎮めた私は、彼と合流した。そして兄さんに簡単に近況報告をした。

 その後、彼に汗をかいたので漫画喫茶に行く前にシャワーを浴びに寮に帰りたいことを伝えた。もちろん彼は了承してくれた。

 私は彼に嘘をついてしまった。シャワーを浴びたい理由は汗をかいたからではない。下着がびしょびしょだったので取り換えたかったから。

 そして彼に寄り添うように寮へ帰った。

 道中、私は彼の顔を見ながら、彼に痛めつけられる自分を想像していた。そして想像するたびにまたも秘部が濡れるのがわかった。彼は私の方を全く見てくれなかった。恐らく普段と雰囲気が違う私に戸惑ったのだろう。

 自室に戻った私はすぐにシャワーを浴びた。そして漫画喫茶で体が疼かないよう、しっかり性欲処理を行ってから彼と合流した。

 

 漫画喫茶ではカップルシートを指定し、彼と密着することが出来た。

 個室に彼と二人きりであるシチュエーションに興奮しそうになったが、漫画に集中したおかげで理性を保つことが出来た。

 漫画を読んでると、彼が寄りかかってきた。勉強とランニングで疲れていたのだろう。彼は気持ちよさそうに寝ていた。

 私はゆっくりと彼の頭を、膝の上に持ってきた。彼を膝枕しながら、漫画を読む。至福の時間だった。ただ寝てる彼が気になってしまい、彼の顔をついつい眺めてしまった。

 1時間ほどして彼が起きた。寝起きの彼は膝枕をされているの気づかなかったようで、膝枕をしていることを教えた時は驚いていた。

 

 漫画喫茶を後にした私たちは、カフェに立ち寄った。

 アイスコーヒーを飲みながら、彼と2学期以降の学校生活について話をした。9月から私たちはCクラスになる。彼には言わなかったけれど、いずれBクラスとも戦うことになるだろう。

 つまり彼と一之瀬さんが戦う。そして彼の隣に立つのは私。

 想像するだけで信じられないほどの高揚感を得られた。

 けれど彼の隣を狙う女子が一人いる。

 櫛田桔梗。

 私と同じ中学出身で、私を嫌う女子。無人島試験から櫛田さんは彼に積極的に接触するようになった。

 理由はわからない。けれど櫛田さんが彼に好意を抱いてるのは明らかだ。

 ただ彼女の好意も虚しい結果になるだけ。

 彼には一之瀬さんがいる。

 だから私は彼の恋人ではなく、彼のパートナーになることを決意したのだ。櫛田さんは彼の恋人にもパートナーにもなれない。

 それに私は櫛田さんの過去と本性を彼に伝えている。彼が櫛田さんに好印象を抱くことはないだろう。

 だから櫛田さんがいくら頑張ろうと無駄なのだ。

 櫛田さんは私に勝てない。私が一之瀬さんに勝てないように。

 

「ふふ、惨めな考えよね」

 

 つい自虐的な自分を笑ってしまう。

 でも仕方がない。

 どんなに惨めでも、かっこ悪くても、彼の隣にいれるならそれでいい。

 2学期になったら、また兄さんに会いにいこう。彼にはたいて貰うために。

 ……いいことを思いついた。彼にはたかれる直前に体勢を変えれば、顔をぶってもらうことが出来るかもしれない。

 そうだ。次は顔をぶってもらおう。頭をはたいてもらうだけじゃ満足出来ない。

 彼には私をとことん痛めつけて貰いたい。

 当分は想像で我慢するけれど、現実でも痛めつけて貰えるよう努力しないと。

 

「……彼がサディストならいいのに……」

 

 そうすれば私がそこまで努力をしなくても、いたぶって貰えるのに。

 恐らく彼は一之瀬さんに酷いことは出来ないだろう。

 なら代わりに私に酷いことをすればばいい。ストレスのはけ口でも構わない。

 

「……まあ彼がそんな性的嗜好を持つとは思えないけれど……」

 

 やはり自慰をして性欲を満たすしかないようだ。

 彼以外の人間にいたぶって貰うことも出来るが却下。

 彼にいたぶって貰わないと意味がない。

 私をいたぶっていいのは彼だけ。

 兄さんでもない。

 彼だけなのだ。

 彼にならどんなことをされたって構わない。

 

「……んっ……」

 

 駄目だ。体が疼き始めてしまった。

 シャワーは浴び終えているし、洗濯物も既に干してある。

 恐らくこのまま自慰をすれば汗をかくし、下着も汚してしまうだろう。

 効率的に考えれば、我慢した方がいい。

 けれど……

 

「我慢するのは体によくないわよね」

 

 それらしい理由をつけて、私は自分を慰めた。

 学校で一回、彼と出かける前にもしているので、今日で三回目だ。

 一日で三回は多いのかもしれない。しかも私は今日初めてオナ○ーを覚えたばかりだ。

 でもこんなものなのかもしれない。

 性に目覚めたいやらしい牝が性欲に溺れていくのはよくあることだ。ソースは私が呼んできた小説。

 だから何も恥じることはない。

 それに好きな人を想って性欲を満たすことの何が悪いのだろうか。

 

「彼はこんな私を見たらどう思うのかしら……?」

 

 そんなことを考えると、余計に指が動いた。

 翌朝。日課になっているランニングをするため、彼と顔を合わせた。

 昨晩の痴態を思い出し、彼の顔をまっすぐ見れなかったのは言うまでもない。

 




堀北も堕ちました
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