実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
まさかの超電磁砲3期決定!
よう実も2期やってくれないかな……
8月某日。時刻は午前11時。俺はケヤキモールに足を運んでいた。
最近ケヤキモールに来すぎなよう気がするが、買い物する場所が少ないので仕方がない。
「お待たせ」
背後から声をかけられる。振り向くとそこには買い物袋を持った松下が立っていた。
「おっす」
「待った?」
「いや、今来たところ。……買い物してたのか?」
「まぁね」
「するならもっと早く待ち合わせてもよかったんだぞ。荷物持ちくらいならするのに」
松下には日頃お世話になってるので、それくらいはお安い御用だ。
「いや、界外くんが入れないお店で買い物してたから」
「俺が入れないお店?」
「ランジェリーショップ」
おっふ。確かに俺が入れないお店だ。
「……そうか。それじゃ行こうか」
「うん」
松下がランジェリーショップで買い物。つまりあの袋には松下の下着が入ってるということか。
「今日も焼肉でいいのか?」
「もちろん」
行き先を確認し、歩き出す。
松下に焼肉を奢るのは今日で2回目だ。前回は一之瀬の誕生日プレゼント選びに付き合ってもらったお礼に焼肉を奢った。
「肉好きだな」
「うちのクラスの女子は肉好き多いよ」
「そうなのか?」
「うん。恋愛に関しては肉食はいないけど」
そういえばうちのクラスで恋人がいるのって平田と軽井沢だけらしい。
「松下は肉食系に見えるけどな」
「どうだろうね」
「はぐらかすねぇ。狙ってる男子いないのか?」
「いないかな。まずうちのクラスの男子はないでしょ」
ないのか。綾小路と三宅あたりはいいと思うんだけどな……。
「それとこの学校だと、他のクラスの子と仲良くなるのって難しいでしょ?」
「そうだな」
俺は一之瀬と親しくしてるが、たまたま通学中に出会ったからだ。櫛田のように他クラスに友達が多い生徒は珍しいだろう。
「年上と付き合うにしても、卒業されたら、私が卒業するまで会えないわけじゃない」
この学校は卒業するまで敷地外に出るのはもちろん、外部と接触するのを禁じている。
「だから恋人を作るには難しい環境だと思うんだよね」
「……そうか。うちのクラスの男子にもいいのがいると思うんだけどな」
さりげなく相棒をアピールしておこう。
「そう? 彼女持ちの平田くん以外誰かいる?」
「いるだろ」
「まさか自分とか言わないよね?」
「ち、ちがわいっ!」
どうやら松下の俺への評価は大分低いようだ。思わず方言で否定しちゃったよ。
「うーん、他に誰かいるかな? ……綾小路くんは顔はいいけど暗いしねぇ」
綾小路はそんな風に思われているのか。確かに口数は少ないけど……。
「沖谷くんは中性的過ぎるでしょ。三宅くんも綾小路くんと同じで暗そうだし。幸村くんは感情的になりやすいのが駄目でしょ」
次々とクラスメイトが駄目だしされていく。
「三馬鹿と外村くんはあり得ないし。高円寺くんは性格がアレだし。……いなくない?」
「そうですね……」
そっか。男子が思うカッコいいと女子が思うカッコいいってけっこう違うんだな。
でも綾小路は容姿は褒められてるんだから、もう少し明るくすればモテるんじゃないだろうか。
「あ、そういえば松下は俺と二人でいて大丈夫なのか?」
船上試験で俺と一之瀬が龍園のせいで注目を浴びた時、人前で話しかけないよう言われていたのだ。
「うん。試験が終わってから一週間以上経ってるしもう大丈夫でしょ」
「ならいいけど」
「なに? 気遣ってくれてるんだ?」
「当たり前だろ」
「ふーん。そっかそっか」
松下が悪目立ちしたくないのは知っている。それと彼女は上手く自分のポジションを確立させている。俺と二人でいるのせいでそのポジションを崩壊させたくはない。
「さすがすけこましだね。気遣い上手だこと」
「誰がすけこましだ! 彼女いない歴=年齢だぞ!」
「……そうなの?」
松下が驚いたような顔で聞いてきた。
「そうだよ」
「中学の時いなかったの?」
「いない。むしろ友達もいなかった」
「……意外。界外くんってぼっちだったんだ」
しまった。つい中学時代のこと話してしまった。
「ぼっちはぼっちでも孤高のぼっちだ」
「なにそれ」
くすくす笑いながら松下が言う。
「ま、私もぼっちだったけどね」
「前に言ってたあれか」
「そう」
無人島試験の時に、松下から中学時代に苛めにあっていたと聞いている。
今の松下からは想像出来ない。彼女が上手く立ち振る舞うよう気をつけてるのは、中学時代の苛めが原因なのかもしれない。
「それじゃ今日は元ぼっち同士仲良くしよっか」
「そうするか」
なんか今ので松下との距離が縮まった気がする。
入学当初、松下を見てビビってた自分が懐かしい。まさかこうして二人で食事に行くほど親しくなれるとはね。
♢♢♢♢♢♢♢
「ふぅ。美味しかった」
昼食を終えた俺たちは、ケヤキモール内の休憩スペースでくつろいでいた。
お互い腹いっぱいになるまで肉を食べつくしたので、すぐに寮には帰らずここで休憩することにした。
「人の奢りだと余計に美味しく思えるよね」
「さいですか」
俺は友達に奢ってもらったことがないからわかりません。
「あ、そうだ。佐藤さんからチャット来たよね?」
「ああ。明日俺の部屋に来るそうだ」
「なんで界外くんの部屋なの?」
「俺の部屋にブルーレイレコーダーがあるから」
佐藤の部屋にはDVDは見れるが、ブルーレイを見れる環境がないとのことだ。
ちなみに見せるアニメは四月は君の嘘。恐らく佐藤なら気にいるだろう。
「なるほどね。私も行っていい?」
「いいけど……松下も金欠なのか?」
「まぁね。ていうかうちのクラスの大半の生徒は金欠でしょ?」
「だろうな」
特別試験で得たクラスポイントとプライベートポイントは9月1日に振り込まれるようになっている。プライベートポイントだけでも早めにくれればいいのに。
「篠原も来るのか?」
「わかんない。後で聞いておく」
「わかった。ちなみに9時集合だぞ」
「なんでそんな早いの?」
「アニメが22話あるんだよ。朝から見ないと見終わらないだろ」
主題歌も好きだったからオープニングとエンディング飛ばしたくないんだよね。
「一日で全部見る気なんだ?」
「ああ。他の日は予定入ってるんだよ」
「ふーん。ちなみに誰と遊ぶ予定があるの?」
「一之瀬、堀北、櫛田、橘先輩と佐倉、綾小路と平田と博士だな」
おや。俺を見る松下の目が変わってきたぞ。
「佐倉さんにまで手を出してるとはね……」
「……いや、それは誤解だ。俺は佐倉に手を出したりしてない」
「そういうことにしておいてあげる」
「待って! 話を聞いて!」
俺は必死に佐倉と遊ぶことになった経緯を説明した。
「そうなんだ。佐倉さんが生徒会書記の先輩とねぇ」
どうやら松下も佐倉が上級生と交流を持っていることに驚いたようだ。
「いい先輩だね」
「だろ」
橘先輩が褒められると嬉しい気分になる。
「そういえば船上試験で佐倉の面倒を見ててくれたんだよな」
「たまに声掛けしてあげるくらいだけどね。あの子、私が話しかけると驚いて逃げちゃうからさ……」
確かに松下は見た目気が強そうなので、佐倉が苦手なタイプと言えるだろう。
「佐倉さん、眼鏡外せば、凄い人気出るのにね」
「あまり目立ちたくないんだろ」
「グラビアアイドルなのに?」
「なにか事情があるんだろ」
確かに佐倉が眼鏡を外せば、一気に佐倉は人気者の女子になるだろう。ただしあくまで男性目線だけどね。
「事情か。なら私がそこまで気にする必要はないね」
「そうだな。……そろそろ行くか」
「そうしよっか」
休憩スペースを後にした俺たちは、寮に帰って行った。
自室に戻ってから一時間ほど経った頃に、松下からチャットが届いた。内容は篠原は夏風邪をひいてるので明日は来れないとのことだった。
見舞いに行かなくていいのか、と返信をすると、風邪を移されたくないから無理、と松下から返信があった。……クールドライ松下健在である。
♢♢♢♢♢♢♢
翌日9時過ぎ。軽く部屋の掃除を終えた俺がアニメ鑑賞をしていると、来客を知らせるチャイムが鳴った。
玄関のドアを開けると、そこにいたのは予想通りの二人の女子。松下と佐藤だ。
「おはよう。今日は一日お邪魔するね」
「お邪魔するなら帰ってください」
「朝から私の扱いが雑なんだけど!?」
これも親しくなった証拠だよ佐藤。
「とりあえずお邪魔します!」
「お邪魔します」
「お邪魔されます」
佐藤と松下を部屋に案内する。
最近女子ばかり部屋に上げてる気がする。
「意外と綺麗にしてるんだ」
佐藤が部屋を見渡しながら言う。
「意外とは失礼だな。俺は綺麗好きだぞ」
「みたいだね。掃除は毎週してるの?」
「もちろん」
松下の問いに答える。
「適当に座ってくれ」
二人を来客用のクッションに座らせ、俺もベッドに腰を落ち着ける。
「界外くん、朝からアニメ見てたんだ」
アニメが一時停止されてる画面を見ながら佐藤が言った。
「本当に好きなんだ」
「なんだ疑ってたのかよ」
「別に疑ってたわけじゃないけど。それで何を見せてくれるんだっけ?」
「四月は君の嘘。実写映画したこともあるアニメだよ」
佐藤との問いに丁寧に答える。
本当に漫画原作の実写化多いよね。
「あー、山崎○人が出てたやつだよね?」
「そうそう」
佐藤と話しながらディスクをセットする。
ちなみに四月は君の嘘のブルーレイは全巻持っていたので、レンタルする必要はなかった。
セットを完了しリモコンの再生ボタンを押す。
「飲み物何か飲むか?」
「うん。私オレンジジュースで!」
「私はアイスコーヒーをお願い」
松下め。気を使って「私もオレンジでいいよ」とか言えないんだろうか。
「わかった」
まあ松下には逆らえないので素直に用意するけど。
台所に行き、飲み物を用意する。今日は一日かけてアニメを観るので、飲み物はそれなりに用意してある。
「あいよ」
コップを二つテーブルに並べる。画面を見るとオープニングが始まったところだった。
「ありがとう」
「アイスコーヒー置いてあったんだ。ありがと」
置いてないと思ってたのかよ。俺だって来客用にアイスコーヒーくらい用意するんだからね。
「全部で22話あるから、夕方までには見終わると思うぞ」
9時から観れば、17時前には終わるだろう。
夜は綾小路と遊ぶ予定なので、今日は予定がびっしり詰まってることになる。
15年の人生で一番濃い夏休みを過ごしてる気がする。
「けっこうあるんだね」
「半年放送されてたからな」
「ふーん。半年だとそんなもんなんだ。それを考えると少ないかも」
確かに佐藤の言う通り、半年で22話は少ない方だ。2クール放送だと24~25話の作品が多いだろう。
そういえば禁書は26話あるんだっけ。希望としては3クール放送してほしかったけど仕方ないか。
「へえ、けっこういい曲だね」
「そうだろ。アニソンもけっこう馬鹿に出来ないんだぞ」
「別に馬鹿にはしてないけど……」
松下が不満そうに言う。ごめんね。曲を褒められて嬉しくて調子乗っちゃったんだよね。
アニメを見始めて2時間が経過した。
佐藤は最初こそ携帯を弄ったりしていたが、今は真剣に画面を見入ってる。松下も表情を見る限り真剣に見入ってるようだ。
俺はそっと立ち上がり、昼食の準備をし始めた。外食するか考えたが、それだけのために炎天下の下、外に出るのが面倒だったので、自分で昼食を用意することにした。
ちなみに今日作る料理は、『そうめんの焼きビーフン風』だ。これなら暑さで食欲がなくても食べれるだろう。それに一皿で主食と野菜やお肉がいっしょに取れるので、洗い物も少なくてすむ。
「昼食作ってくれてるの?」
調理をしてると、松下がキッチンにやって来た。
「ああ。外出るの暑くて嫌だろ」
「うん。何か手伝うことある?」
「それじゃお皿を用意して貰っていいか?」
「わかった。適当にとっていい?」
「ああ」
チラッと佐藤を見る。どうやら俺が料理してるのを気づかないほど、アニメに集中してるようだ。勉強もそれくらい集中してくれると嬉しいんだけど。
「ここ置いとくね」
「悪いな」
「ううん。こっちこそ面倒かけさせてごめんね」
「いや。料理好きなだけだから気にしないでくれ」
「わかった。それじゃ私戻るね」
松下はそう言うと、元にいた場所に戻っていった。
俺は再度調理に集中する。中華スープの素を入れて味をなじませて、醤油を入れる。
「よし。完成だ」
出来上がったそうめんの焼きビーフン風をお皿に盛りつける。
「昼食出来たぞ」
皿をテーブルに並べる。我ながら美味しそうだ。
「え? 昼食作ってくれたの?」
「さっきから作ってたじゃん。佐藤さん、気づいてなかったの?」
「全く……」
それだけアニメに集中してたってことだ。
「なんかごめんね。手伝いもしないで……」
佐藤が申し訳なさそうに言う。
「気にしないでいい。それに佐藤に手伝って貰ったら不味くなりそうだし」
「朝から私の扱いが酷いんだけど!?」
「腐った魚の腸みたいになりそうだ」
「ねえ私何かしたっ!?」
うんうん。佐藤はこれくらい元気じゃなきゃ。友達を気遣えるなんて俺も成長したな。
「界外くん、さすがに言いすぎだと思うけど」
「え」
「だよね? 女の子に対して酷いんですけど!」
どうやら成長したのは俺の勘違いだったようだ……。
「まあいいけど。……そろそろ食べてもいい?」
「あ、ああ。もちろん。……あっ、おあがりよ!」
「「は?」」
「すみません。何でもありません」
やはりこの二人にも通じなかった。それと女子二人に睨まれると怖い。
「それじゃ頂きます」
「頂きます」
「どうぞ召し上がれ」
佐藤も松下もちゃんと両手合わせて言えるんだな。帝人的にポイント高い。
「あ、美味しいっ!」
「うん。美味しい」
「なんかビーフンみたいな味わいがする」
「そりゃそうめんの焼きビーフン風だからな」
「なんでビーフンみたいになってるの?」
「野菜をササッといためてからめるとビーフンの様な味わいになるんだよ」
佐藤の質問に答える。他にも色々アレンジしてそーめんを作ったが、一番合うのがこの料理だった。
「へえ。界外くんって本当に料理上手なんだね」
「まぁな。俺に勝てる生徒はこの学校にいないだろう」
なにせ第一席だからね。最近櫛田が第三席になりました。一之瀬は朝食だけだったので保留。
「あ、うん……」
なんか佐藤が引いてるようだけど気にしない。
「そういえば二人は料理はどうなんだ?」
「私はまったく……」
「私は人並み程度には」
佐藤は予想通り料理は苦手なようだ。松下の人並みがどれくらいか気になる。
「そっか」
「とりあえず2学期に家庭科の授業があったら、界外くんと同じ班の方がいいよね?」
「確かに」
佐藤の問いに答える松下。家庭科の授業あったら嬉しい。
お喋りをしながら、昼食を食べ終えると、松下と佐藤が洗い物をしてくれることになった。
俺は横になりながら、洗い物をする二人を見る。
うん。女の子が洗い物をしてるのを眺めるのっていいよね。
♢♢♢♢♢♢♢
「……うぐ……ぐっす……」
とある学生寮の一室。
そこには号泣する少年少女の姿があった。
ていうか少年は俺だった。
「なんで界外くんも泣くかな……」
佐藤を慰めてる松下が呆れ声で言う。
「……いや、だって……」
仕方ないじゃないか。感動しちゃったんだから。
「……ひっぐ、うっ……」
佐藤も嗚咽を漏らしてる。
まさかここまで感情移入をしてくれるとは思わなかった。
「佐藤さんもいい加減泣き止んでよ……」
「だ、だっでぇ……か、かをりちゃんがぁ……」
やばい。俺も涙が止まらない。
四月は君の嘘を見るのは3回目なのに、こんな泣くとは思わなかった。しかも女子の前で……。
「いや、面白かったけど、泣きすぎでしょ」
その後、泣き止まない俺と佐藤を捨てて、松下は帰って行った。せめて佐藤を持ち帰ってよ……。
結局、俺と佐藤が泣き止んだのは、松下が帰ってから10分後のことだった。
「お互い酷い顔してるな」
「ふふ、だね」
俺も佐藤も泣き腫らした目をしている。
「かをりちゃんが死んだのはショックだったけど面白かったよ」
「そう言ってもらえてよかったよ」
予想通り佐藤に四月は君の嘘はドンピシャだった。
「またアニメ教えてくれる?」
「もちろん。今度は冷血な松下を省いて二人で見るか」
「そうしよっか」
俺の冗談に佐藤が笑いながら応える。
「それじゃ私もそろそろ帰るね」
「ああ」
「今日はありがとう。またね」
「またな」
玄関で佐藤を見送る。
俺が佐藤を泣かせたという噂が流れたのは翌日のことだった。
どうやら俺の部屋から出た佐藤をたまたま山内が目撃したようで、男子と女子たちに言いふらしたようだ。
いつか山内を粛正しよう。俺はそう決意した。
次回は一之瀬とプールデート回