実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
フライのイラスト好きなんですけど、アニメのキャラデザインがそのままで羨ましい
よう実もトモセイラストに忠実で見てみたかったかも
8月某日。俺は学校のプールに来ていた。
そこは授業で使用しているプールではなく、普段は水泳部専用として使われている施設だ。
普段は部活動で使用される大型のプール施設が今日はまるで様相を違えていた。大勢の生徒で賑わっているのも当然ながら売店までもが展開されている。
「一之瀬まだかな」
まあ待たせるのは女性の特権だから仕方ないよね。
それより自分の身体は一之瀬に見られても恥ずかしくない肉体だろうか。
中学二年までスポーツをやっていたが、中学三年からずっと帰宅部なので、すっかり筋肉も落ちたと思う。水泳の授業で見たけれど、綾小路と高円寺と須藤に比べると明らかに見劣りする体なのは間違いない。
「お待たせー!」
突然背後から声をかけられ、ビクンと肩を震わせつつ振り返る。そこには天使の姿があった。
「ど、どう、かな……?」
ほんのり頬を染め、恥じらいながら後ろで手を組む一之瀬は、フリフリとリボンがついたオレンジのビキニを完璧に着こなしていた。
「やばい」
「それはどっちの意味かな?」
「いい意味で」
水着は可愛い系でも胸のサイズが反則なので結果的にエロスな感じに仕上がっており、包み隠しきれない色気が溢れ出してしまっている。
大きな胸とお尻のコラボが相乗的にエロさを倍増させている。
俺はこの身体を抱きしめてたのか……。
周囲の視線を釘づけにしているその身体を独り占めしていたことに優越感を抱いてしまう。
「それなら素直に可愛いって褒めてほしいよ……」
「凄い可愛い。他の男に見せたくない」
「ば、ばかっ」
素直に褒めたのに怒られてしまった。女の子は難しい。
「とりあえずプールに入るか」
「そ、そうだね」
二人でプールに入り、水に浸かる。
「冷たくて気持ちいいねっ!」
「そうだな」
本来なら準備運動をしてから入るけど、息子が立ちそうだったので、早めに水に浸かった。水中ならばれることはないだろう。
「なあ髪飾りって水に濡れても大丈夫なのか?」
一之瀬のエロい水着姿に注目ばかりいっていたが、彼女は花の髪飾りをしていた。
「大丈夫だよ。……学校のプールなのに気合入れすぎちゃったかな?」
「そんなことない。似合ってるよ」
「えへへ、ありがと」
そう言うと、一之瀬は俺の右腕に抱きついてきた。
よくある展開だが、今の彼女は水着姿で刺激がいつもの比じゃない。
体の柔らかさとか、すべすべの肌の感触とか、悩ましい誘惑に股間がトランザムしそうになる。
「あ、あれだな……。人多すぎて、あまりはしゃげないな」
「うーん、確かに」
プールには大勢の生徒が入っており、二人で思いっきりはしゃげるスペースは皆無だ。遊泳禁止区域ばかりの千葉の海を思い出す。
「それじゃ今日はずっとくっついていようよ」
一之瀬は耳元でそう囁くと、腕をギューッとして甘えてきた。
「……駄目かな?」
場所を考えれば駄目だと言うべきだろう。ここは公共の場だ。
それに美少女に抱きつかれてる俺に、男子生徒からの殺意に満ちた視線が襲ってくる。
けれどそれを払拭させるほどの気持ちよさが彼女の身体にはあって……
「駄目じゃない。ずっとくっついてるか」
一之瀬の誘惑に勝てなかった。
「うんっ!」
「でも少しは泳ごうな」
「スペースがあったらね」
「それな」
この人数じゃ泳ぐのは難しそうだな。競泳コースがあるけれど、一之瀬を置いて泳ぐわけにはいかないし……今日は諦めるか。
「どうしたの?」
一之瀬が顔を覗きこみながら聞く。
「いや。水中なら一之瀬の水着姿を他の男に見られる心配はないと思って」
「……またそんなこと言って」
水着のせいか言動も開放的になってる気がする。
「本当は私も界外くん以外の男子に水着姿見せたくないんだよ?」
「え」
「でも界外くんに私の水着姿見せたかったから。今日だって恥ずかしいけど頑張ったんだよ?」
「そ、そうなのか……」
やばい。嬉しすぎて昇天しそうになる。身体が熱くなってプールの水がお湯に感じてきた。
「うん。だから褒めてほしいな?」
「……つまり頭を撫でろと」
「正解。……あ、耳は禁止だからね!?」
ジト目で一之瀬が言う。
「いや、さすがに人前でアレはしないから」
「あはは、だよね。私も人前であんな姿見せられないからね。……あぅ」
お互い自分で言いながら照れてしまった。
「と、とりあえず撫でるか?」
「お、お願いします」
そっと一之瀬の頭に右手を乗せる。
彼女が目を閉じたタイミングで撫で始める。
思いっきり濡れてる髪で、いつもと感触が違うのがすぐにわかった。
「……ん……」
「なんか濡れてるから変な感じがするな」
「撫でづらい?」
「いや」
公共の場だったので、数分で撫でるのをやめた。
一之瀬が名残惜しそうな顔をしていたが、人前ということもあり、渋々了承してもらった。
♢♢♢♢♢♢♢
2時間ほどプールで遊んだ俺と一之瀬は、プールサイドの椅子に腰を下ろし昼食をとっていた。
売店でジャンクフードを数品購入したのだが、接客していたのは上級生だった。どういう仕組みなのか気になる。
「うん、美味しいね!」
フランクフルトを頬張る一之瀬。
「だな。出店だと余計美味しく思える」
「だよねー」
「この後どうする?」
「うーん、特に決めてないんだよね。界外くんは行きたいところある?」
「そうだな……」
俺も特に決めてないんだよな。一之瀬の水着姿見られたから今日のミッションは終了したし。
「Yシャツとジャージを買いに行きたい」
先日一之瀬に貸したのだが、洗濯中に破けてしまったようで、それらは俺の手元には返ってこなかった。
「あ、そっか。もう二学期始まるもんね」
「ああ」
「それじゃ買いにいこっか。私が買うからね」
「自分で買うから大丈夫だ」
「私が破いちゃったんだから私が買うよ」
一之瀬が有無を言わさぬ口調で言う。
「……わかった。お言葉に甘えるよ」
「うん。食べ終わったら行こうか」
「そうだな」
その後、10分ほどかけて昼食を食べ終えた。
俺は一之瀬の水着姿が見えなくなることに名残惜しさを感じつつもプールを後にした。
時刻は午後1時。俺と一之瀬はケヤキモール内のとある売り場に来ていた。
この店は制服やジャージなど、学校に関する衣類が販売されている。
「初めて来たな」
「私もだよ」
店内には俺と一之瀬しか客がいなかった。
だがこのお店の売り物を見れば空いてるのもわかるだろう。制服やジャージを買い替える機会はそうあるものではない。そもそも制服に関しては学校から二着も支給されている。それでもお店があるということは、少なからず購入する生徒がいるということだろう。
お店をぐるりと一周し、お目当てのYシャツとジャージをかごに入れる。
「これでばっちりだね。他に買うのはない?」
「ないな。一之瀬は?」
「私もないよ。それじゃお会計してくるね」
一之瀬はそう言うと、かごを持ちレジに向かっていった。俺はなんとなく一之瀬についていった。
「すみません。これお願いします」
店員が一之瀬からかごを受け取りスムーズに対応していく。
ちなみに値段はYシャツが1500ポイント、ジャージが1000ポイントだった。
「はい」
一之瀬がショップ袋を差し出してきたので受け取る。
「悪いな」
「ううん。気にしないで」
何だろう。店員が訝しむ目で俺を見てるような……。もしかして一之瀬に貢がせてると思われてるのだろうか。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。行こうか」
「うん」
店員の視線を背後に感じながらお店を後にした。そしてこのお店にしばらく来ないようにしようと心の中で決めた。
「まだ帰るには早いよね?」
お店を出ると一之瀬が言う。
「そうだな……。雰囲気がいい喫茶店を教えてもらったんだけど行ってみるか?」
「行く!」
一之瀬の返事を聞き、橘先輩に教えてもらった喫茶店に向かう。
向かう途中でクラスメイトの池と山内と遭遇したが、特に話すこともないので挨拶程度で会話を切り上げた。
「池くんと山内くんって仲良いよね」
「そうだな」
そういえば旅行中もゲームコーナーで遭遇したっけ。
あの時は山内の一之瀬を見る目がやばかったな。今回は須藤がいなかったが、池がいてくれて助かった。
「親友っていうのかな? ああいうのいいよね」
そう言う一之瀬だが、今回も山内は一之瀬をものすごいエロい目で見ていた。あからさまな視線を送る山内を池が嗜めてくれたが、一之瀬は不快だっただろう。
「界外くんが一番仲良い男子は綾小路くんか博士くんかな?」
「そうだな。後は平田と今度遊びに行く約束してるな」
しかし男子三人でどこに遊びに行けばいいんだろう。カラオケとゲーセンくらしか思いつかない。
「そうなんだ。平田くんってうちのクラスの女子にも人気だよ」
「だろうな。イケメンだし性格もいいし」
本当に何で平田がDクラスなんだろうか。俺たちには見せない闇でもあるのだろうか。
「……界外くんって他人を素直に褒めるよね」
「そうか?」
「うん。そういうところ素敵だと思う」
「……ありがとう」
一之瀬も他人を素直に褒められるよね。そういうところ大好きです。
そうこう話してるうちに喫茶店に辿り着いた。
窓際の席に座り、マスターに注文を告げる。
二人ともコーヒーを頼んだ。
ほどなくして注文したコーヒーが運ばれてきた。
「あ、美味しい。そして飲みやすい」
「だろう。俺もコーヒー得意じゃないんだけど、ここのは飲みやすいんだよ」
どや顔で説明する俺。
「うん。私も今度千尋ちゃんとか連れてこようかな。界外くんは誰にこのお店教えてもらったの?」
「三年の橘先輩」
「橘先輩って生徒会の?」
「そうだよ」
橘先輩が卒業するまで色んなお店教えてもらいたいな。
「……そうなんだ。仲良いんだね」
「まあな。色々面倒見てもらってるんだ」
「ふーん」
しまった。一之瀬が不機嫌になってる。もしかして嫉妬しているのだろうか。
「その橘先輩から言われたんだけど、俺と一之瀬のこと知ってる人が多いらしい」
「え、私たちのこと?」
キョトンとした顔で聞いてくる一之瀬。
「そうだよ。入学して早々に一緒に登校してたのが話題になったらしい」
「そ、そうなんだ……」
一之瀬が嬉しそうな表情をしてる。これで機嫌が直っただろう。
「先輩たちからも知られてるんだね」
「みたいだな。てっきりあの件で噂になってるかと思ったけど違ったよ」
「あー、龍園くんの。……今でも友達にからかわれるんだよね」
「そうなのか?」
「うん。もちろんふざけてだから不快じゃないんだけど」
恐らく白波さんか網倉さんあたりだろう。柴田も言いそうだな。
「界外くんはからかわれたりしない?」
「試験以降会ってるのが綾小路と博士くらいだからな。その二人はからかったりしてこないな」
「そっか。確かに綾小路くんは人をからかうタイプじゃないよね」
その言い方だと、博士は人をからかうタイプに見えると言ってるようなもんだぞ。
「綾小路くんとは何して遊んでるの?」
「アニメ見るだけ」
「アニメだけ?」
「ああ。最近はPSYCHO-PASS見てるぞ」
どうやら来年に新プロジェクトが始まるみたいだから目が離せないな。
「綾小路くんがアニメってあまり想像つかないな」
「本人曰く俺とアニメ見る以外はやることがないそうだ」
「そ、そうなんだ……」
あまりの無趣味っぷりに一之瀬が軽く引いてる。
「……綾小路くんといえばさ、船上試験で一緒のグループだったんだけどね」
「ああ」
「携帯のすり替え、指示出したのって本当に界外くん?」
まさかこのタイミングでそれを聞かれるとは思わなかったな。
「そうだ。優待者を守るにはそれしか思いつかなかったんだ」
「……そっか。変なこと聞いてごめんね?」
「いや。……急にどうしたんだ?」
「ううん。綾小路くんの話題が出てきたから、ついでに聞いただけよ」
「そっか」
今の一之瀬、一瞬だが顔つきが変わった。あれがBクラスのリーダーとしての彼女の姿なのかもしれない。
♢♢♢♢♢♢♢
「一之瀬、もういいか?」
「やだ」
場所は変わりケヤキモール内の人通りが少ない通路。
そこで俺は一之瀬を抱きしめていた。
「人来るかもしれないだろ」
「やだ」
一之瀬を抱きしめてから20分。一向に解放してくれない。
なぜこのような状況になってるかというと、喫茶店を後にした直後に尿意に襲われた俺は一之瀬を置いてトイレに駆け込んだ。
そして俺がいない間に、一之瀬はガラの悪い男二人に言い寄られてしまった。いわゆるナンパである。
一之瀬曰く、言葉ではっきり断ったようだが、しつこく話しかけてきたらしい。暫く無視していたが、無視を決め込んだ一之瀬に男たちが苛立ち、腕を掴んで無理やり連れて行こうとしたようだ。
俺が戻ってきたのは、まさにそのタイミングだった。一之瀬に声をかけると、彼女は男たちの手を振り払い、俺に駆け寄ってきた。
男たちはターゲットが男連れとわかり、ナンパするのを諦めたようで、悪態をつきながらその場を去っていった。
そして現在に至る。
「……怖かった……」
確かにあんな男たちに言い寄られたら恐怖を感じるだろう。
「そうだよな。怖かったよな」
いまだに震えている彼女に優しく言う。
「……怖かったし、痛かった……」
どうやら結構な力で腕を掴まれたようだ。
「一人にしてごめんな」
謝罪するが、彼女は俺の胸に埋めた顔を横に振るだけだ。
「とりあえず帰ろうか」
「……やだ……」
恐らく一之瀬は、この前と同じように抱きしめられて安心感を得たいのだろう。ならば俺が彼女にかける言葉は……
「帰ったら一之瀬が満足するまで抱きしめてあげるから」
「……本当?」
涙を零しながら一之瀬が見上げてきた。
「本当。だから早く帰ろう」
「……わかった」
涙を拭いながら答える。
……なんか最近女子の泣いてる姿ばかり見てる気がする……。
自室に着くと、すぐに一之瀬が抱き付いてきた。
玄関先だったが、部屋に上げると、この前と同じ体勢をするよう求められる可能性があったので、玄関先で俺たちは抱きしめあった。
「……あのね……」
「ん?」
「前にも同じようなことがあったの」
「そうなのか?」
「うん。中学生の時なんだけどね、その時も腕を掴まれて無理やり連れてかれて……」
どうやら以前にもガワの悪い男にナンパをされたことがあるらしい。一之瀬の容姿なら仕方ないのかもしれない。
「その時はどうなったんだ?」
「同い年くらいの男の子が助けてくれたんだよね」
「……そうなのか」
胸がチクリと痛む。
「うん。だからなんともなかったよ」
「それはよかった」
何だろう。今の話を聞いて若干イライラしている自分がいる。
「だからかな。男の人に無理やり腕を掴まれると、その時のことを思い出しちゃうんだよね……」
駄目だ。一之瀬の話が頭に入ってこない。
俺は彼女と出会う前の、彼女のヒーローに嫉妬しているのかもしれない。
「ごめんね。またわがまま言っちゃって」
「気にするな」
本当ならもっと気の利いた言葉を彼女にかけてやりたい。
けど駄目だ。彼女を助けたヒーローが気になってしょうがない。
「ありがとう。……ねえ、もう少し強く抱きしめて?」
一之瀬が言ってるのは俺と彼女が出会う前の話だ。だから俺以外の人間が、彼女を助けたとしても仕方ないわけで……。
「界外くん……?」
「ん?」
「あの、もう少し強く……」
「あ、ああ……」
言われるがままに強く抱きしめる。
「……んっ……」
やめよう。俺の知らない人間に嫉妬してもしょうがない。自分を苦しめるだけだ。
大切なのは現在と未来。
俺が一之瀬を守っていけばいい。
とりあえず一之瀬に言い寄った男二人の顔は覚えた。恐らく上級生だろう。近いうちに一之瀬を泣かした罰を受けてもらう。
一之瀬を泣かしていいのは俺だけなのだから。
一之瀬の思惑通り主人公が少しずつおかしくなってくるかも