実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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しばらく櫛田が酷い目にあいます!


57話 裏切り者の末路

「協力関係を解消するってどういうこと、龍園くん」

 

 木曜日の放課後。

 私は人気のない屋上で、Dクラスのリーダーである龍園くんに詰め寄っていた。

 

「そのままの意味だよ。俺はお前に今後協力はしない」

 

 龍園くんは小さく鼻で笑うと、手にしたペットボトルを口に含んだ。

 

「だからその理由を聞いてるの!」

「そりゃ桔梗、お前の利用価値がなくなったからだ」

「…………は?」

 

 私に利用価値がない? 彼は何を言ってるんだろう。

 

「ふざけないで。私はあんたの指示通に情報を提供した。船上試験でも体育祭でもね」

「そうだな。だが体育祭では何も役に立たなかった」

「それは参加表を紛失したから。順番が入れ替わったのは仕方ないでしょ。私の責任じゃない」

「はっ」

 

 私を馬鹿にしたような笑みを浮かべる龍園くん。さっきから鼻につく。

 

「本当にそう思ってるのか?」

「え」

「あのすけこまし野郎が本当に参加表を無くしたと思ってるのか?」

「……もしかしてわざとってこと?」

 

 確かに界外くんがそんな単純なミスをするとは考えにくい。

 

「そうだ。恐らく最初に発表した参加表はダミーだったんだろうな。俺とお前はまんまと騙されたわけだ」

「……ちょっと待ってよ。とすると界外くんはクラスに裏切者がいるって気づいてるってこと?」

「だろうな。じゃなきゃこんなことしねぇだろ」

 

 もしかして彼は私が裏切り者だって気づいてる? いや、それなら私と二人で行動したりしないはず。……違う。裏切り者の私の様子を見ていたってこと?

 

「ククク」

「な、なに笑ってるの……?」

「そりゃお前が面白い表情してるからに決まってるだろ」

「……っ!」

 

 しまった。こいつの前で動揺した顔を見せてしまった。

 

「まさか桔梗のそんな顔が見れるとは思わなかったぜ。最後に面白いもの見せてもらったな」

「最後って……?」

「だから言ったろ。お前にもう利用価値はない。お前とこうして話すのも最後だろうよ」

「ふーん。……それで私の協力がなくて彼に勝てるの?」

「あ?」

「龍園くん、彼に全戦全敗だよね。私、あんたが彼に勝てる姿が想像出来ないんだけど」

 

 言われっぱなしなのはムカつくので軽く挑発をしてみる。

 

「言ってろ。……それより桔梗。お前には最後に大仕事をやってもらうぜ」

「言ってる意味がわからないんだけど。私との協力関係は終わりでしょ」

「ああ。まあ楽しみに待ってな」

 

 龍園くんはそう言い残し、屋上を後にした。

 使えない。あれだけ情報を提供したのに龍園くんは彼に一度も勝てなかった。

 これからどうしよう。

 堀北鈴音を退学させるにはどうすればいいか。

 堀北鈴音。

 私と同じ中学出身で、この学校で私の過去を知る唯一の人物。

 そして他人を見下し、自分を高尚な存在だと自負しているクソ女。

 

 私は堀北を退学させるために、龍園くんと協力関係を結んでいた。ついさっきその関係は解消されたわけだけど。

 あの女がいる限り私の心に平穏は訪れない。

 あいつの性格だと私の過去を他人に言いふらすことはないだろう。けれど可能性はある。可能性がゼロじゃないかぎり私は安心出来ない。

 だから私は堀北を退学させる。

 どんな手段を使っても。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 翌日の金曜日。

 寝坊してしまい、いつもより10分遅く学校に着いた。昨晩はストレスが溜まり、なかなか寝付けなかった。そのせいで寝坊してしまったのだ。

 

「おはようっ」

 

 いつもの笑顔で教室に入る。

 

「お、おはよ……」

「あ……」

 

 おかしい。いつもならみんな元気よく挨拶を返してくれるのに。それに私を見て困惑しているようだ。

 

「寛治くん、おはよっ」

「え、ああ……」

 

 なんだコイツ。私が挨拶したのに苦笑いしてるし。いつもなら気持ち悪い笑顔を浮かべながら挨拶して来るくせに。

 

「ねえ櫛田さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

 珍しく軽井沢さんが私に話しかけてきた。

 

「軽井沢さん、おはよっ。どうしたの?」

「櫛田さんがクラスを裏切ってるって本当なの?」

「……………………え?」

 

 なんで軽井沢さんがそんな質問をしてくるんだろう。

 

「き、急にどうしたの? ちょっと言ってる意味がわからないよ」

「学校の掲示板に櫛田さんがDクラスに情報を提供していたって書き込みがあるんだけど」

 

 掲示板に書き込み? もしかして龍園くんが……。でも書き込みだけなら問題ない。対応できる。

 

「そうなんだ。掲示板はよくわからないけど、私はみんなを裏切ったりしないよ」

 

 笑顔を浮かべて否定する。ここで動揺しちゃ駄目だ。いつもの笑みで堂々と返事をすればいい。

 

「……ふーん。それじゃこの音声は何なの?」

 

 軽井沢さんはそう言うと、携帯を操作し、音声データを流し始めた。

 

『Cクラスの優待者を報告すればいいんでしょ。わかってる』

『ククク。頼んだぜ』

『その代わり例の約束果たしてよね』

『もちろんだ』

 

 それは私と龍園くんの声だった。これは船上試験の初日に私と龍園くんが交わした会話だ。

 

「これ櫛田さんと龍園くんの声でしょ」

「あ、それは……」

 

 音声データをアップロードしたのは龍園くんだ。

 あの男の仕業だと気づいた瞬間、腸が煮えくり返るほどの怒りがこみ上げてきた。

 

「ち、違うの……。これは私が……」

 

 完全に虚をつかれ、上手く返せない。

 どうやってこの状況を抜けられるか。

 そんなことを考えてるうちに、私を見るクラスメイトの疑いの目がどんどん増えていく。

 

「違うって何が違うの?」

 

 軽井沢さんが私に詰め寄って来る。

 

「そういえば船上試験って櫛田さんと南くんの二人が優待者だってDクラスに見抜かれてたよね」

「……そ、そうだよっ。だから優待者だって見抜かれてる私がみんなを裏切るわけないよ」

 

 必死に否定する私を無視して軽井沢さんは再度携帯を弄る。

 

『そうだ。私、50万ポイントも損するわけだから、それくらいの見返りがあってもいいよね?』

『はっ、食えない女だ。いいだろう。とりあえず30万ポイント与えてやる』

『……いいよ。今回はそれで手をうってあげる』

 

 そうだった。見返りについても船上で話していたんだった。

 

「これでよく違うって言えたよね。櫛田さん」

 

 どうする。どうすればこの状況を切り抜けられる。教室を見渡す。全員が私を責めるような目で見てくる。こんな目を向けられるのは中学生以来だ。

 

「ねえなんで私たちを裏切ったの? 理由を教えてよ」

「……そ、それは……」

 

 私が言いよどんだ瞬間、教室のドアが開かれる音がした。

 

「全員席に着け。SHRを始めるぞ」

 

 担任の茶柱先生だ。先生がやって来たことにより、軽井沢さんは私を睨みながら自席に戻っていった。私も恐る恐る自席に向かった。

 

 昼休み。私は一人で寂しく食堂で昼食をとっている。

 そんな私を見ながらひそひそ話をする同級生たち。その中には私と親しい子たちもいた。どうやら私が裏切り者だという情報は他のクラスにも行きわたってるようだ。

 あれから休み時間になる度に軽井沢さんが追及してきた。私が否定しても誰も信じてくれない。仲良くしてあげてるみーちゃんも心ちゃんも私を信じなかった。また普段なら荒事を好まない平田くんも軽井沢さんを止めようとしない。まるでクラス全員が私を敵と認識してるみたい。

 

 放課後。私は屋上に龍園くんを呼び出した。彼は山田くんを引き連れてすぐに屋上にやって来た。

 

「よう桔梗。昨日ぶりだな」

「なんのつもり?」

「何がだ?」

「とぼけないで。掲示板に音声データをアップしたの龍園くんだよね?」

「そうだ」

 

 笑いながら答える龍園くんに私は激しく詰め寄る。

 

「なんでこんなことしたわけっ!?」

「だから言っただろ。最後にお前に大仕事をして貰うって」

「大仕事……?」

「退学だよ。退学」

 

 私が退学? 龍園くんが何を言ってるのかよくわからない。

 

「今お前はクラスで孤立してるだろ?」

「……誰のせいだと思って……っ!」

「ククク。このままいけば裏切り者のお前に居場所はない」

「私を退学まで追い込むつもり……?」

「正解。クラスの人気者だったお前はこの状況を耐えられるか?」

 

 恐らく耐えられない。私は誰よりも人に好かれることに優越感を得ていた。けれどこの状況ではクラスで私を好いてくれる人はいないだろう。

 

「1学期に須藤の馬鹿を退学させようとしたんだが失敗してな」

「須藤くんの代わりが私ってわけ?」

「そうだ」

 

 ふざけるな。なんで私があんな不良の代わりにならないといけないのよ。

 

「許さない」

「あ?」

「絶対あんたを潰してやる」

「そうか。楽しみにしてるぜ」

 

 龍園くんは高笑いしたまま屋上を後にした。

 屋上に残された私は怒りで体の震えが止まらないでいた。

 

「ふざけんなっ! なんで私がこんな目にあわないといけないのよっ!」

 

 ガシガシっと柵を蹴る。

 ここで少しでもストレスを吐き出しておかないと私は駄目になる。

 

 龍園くんと別れてから30分後。私は自室に戻っていた。

 

「このままじゃ中学の時と同じになる」

 

 それだけは駄目だ。

 何とかして状況を好転させないと……。

 

「……そうだ。界外くんに助けて貰えばいいんだ……」

 

 彼は今日風邪で学校を欠席していた。だから今日は一度も彼に会っていない。

 

「今から部屋に行ってお願いしよう。彼なら私を助けてくれるよね」

 

 根拠はないけれど私は確信していた。

 彼とは無人島試験以降仲良くしている。私が積極的に彼にアピールした結果だけれど。彼も私の好意には少なからず気づいてるはず。帆波ちゃんがいるのに私を拒まなかったんだ。少なからず彼も私に好意を抱いてくれてるはずだ。

 

「……でも裏切り者だと知っていて私を仲良くしていたかもしれないんだよね……」

 

 もうそうなら彼に助けて貰えないかもしれない。

 

「……行くしかない……」

 

 それでも彼の部屋に行くしかない。この状況を変えられるのは彼だけだ。

 制服姿のまま私は彼の部屋に向かった。彼の部屋に行くのは夏休みに料理を教えて貰った時以来だ。

 彼の部屋の前に辿り着き、恐る恐るインターフォンを押す。

 風邪で寝込んでるようだけど、無理にでも部屋に上がらせてもらう。

 数秒待つとドアが開いた。ドアの向こう側にいたのは彼じゃなくて……

 

「堀北さん……?」

 

 私の大嫌いな堀北鈴音だった。

 

「櫛田さん? 彼に何か用かしら?」

「なんで堀北さんが界外くんの部屋にいるの?」

「看病よ。彼高熱を出して寝込んでいるの」

「……そうなんだ。少しでいいから界外くんと話がしたいんだけど……」

「無理ね。とても人と会話できる状態じゃないわ」

「そこをなんとかならないかな……?」

 

 なんで私が堀北に許可を取らないといけないのよ。ほんとこの女ムカつく。界外くんじゃなくてあんたが寝込んでいればいいのに。

 

「彼の体調が回復するのを待つしかないわ。……そもそも裏切り者のあなたが彼に何の用なの?」

「……っ」

「彼じゃなくて龍園くんに助けて貰った方がいいんじゃない?」

 

 堀北が龍園くんと同じように私を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 

「それじゃ」

 

 堀北はそう言いドアを閉めた。

 

「……ざけんな」

 

 自室に戻った私は縫いぐるみに拳を突き刺していた。

 

「龍園も堀北も死ね! 死んじゃえ! 私を下に見やがって!」

 

 怒りを爆発させる。もしかしたら隣の部屋に聞こえてるかもしれない。それでもこうしないと私の気が収まらない。

 

「彼に一度も勝てない雑魚のくせに大物ぶりやがって!」

 

 龍園に協力関係を持ちかけたのは失敗だった。あんな無能と手を組んだのがそもそも間違いだったんだ。

 

「何が看病だよ! 彼女面しやがって! どうせあんたも帆波ちゃんに敵わないくせに!」

 

 やはり私は堀北が大嫌いだ。堀北も龍園と一緒に絶対退学にさせてやる。

 

「……明日、界外くんに電話しよう……」

 

 今日は堀北のせいで彼に会えなかった。でも幸い今日は金曜日。土日のうちに彼と接触できればいい。接触さえできれば何とかなる。

 恐らく彼は私に少なからず好意を抱いてくれてる。じゃなきゃ帆波ちゃんがいるのに私と親しくなるわけがない。

 だからその好意を利用すればいい。

 体を使ってでも私を助けさせる。

 あわよくばそのまま肉体関係を続けて、帆波ちゃんから彼を奪えば……。

 

「そうだよ。焦る必要なんてない。彼を利用すればいいんだ」

 

 けれど日曜の夜になっても彼と接触することは出来なかった。

 携帯にかけても電源が入っておらず繋がらない。部屋まで行ってインターフォンを押したり、ドア越しに呼んだりしたけれど反応は全くなかった。

 

「なんでなんでなんでっ!?」

 

 このままじゃ状況が変わらないまま月曜が来てしまう。

 私の今の状況を打破できるのは彼しかいない。

 その肝心の彼に接触できない。

 

「もしかして私見限られた……?」

 

 頭が切れる彼なら私が助けを求めるのは予想出来ただろう。

 そして私を助ける方法も思いついてるはずだ。私だって思いついたのだから。

 

「……どうしよう。彼に接触できるまで学校を休む……?」

 

 駄目だ。ますます状況が悪化する。それに私が学校を休んだら龍園が喜ぶ。そんなの許せない。

 駄目元でもう一度彼に電話をしてみよう。

 そう思った瞬間だった。

 手に持っている携帯に着信が入った。ディスプレイを見ると表示されてる発信者は―――――彼だった。

 

「も、もしもし……っ」

「櫛田。今時間大丈夫か?」

「大丈夫だよっ」

「堀北から色々話は聞いた。悪いな。ずっと風邪で寝込んでてさっき体が動かせるようになったばかりなんだ」

「そうだったんだ。ごめんね。体調悪いところ」

「いや。それより俺に何か用があるんだろ?」

「……うん。今から部屋に行ってもいいかな……?」

「いいぞ。ただシャワー浴びたいから30分後でいいか?」

「わかった。それじゃ30分後にお邪魔するね」

 

 よかった。やっと彼と接触が出来る。どうやら彼は本当に風邪で寝込んでいたようだ。

 

「……私もシャワー浴びないと」

 

 彼と交渉をするために自分の体を綺麗にしておく必要がある。

 服装も露出が多い方がいいだろう。

 30分後に私の今後の学校生活が天国か地獄か決まる。




原作より言葉遣い汚いかも……
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