実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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6話 女子の手作り弁当には夢が詰まっている

 翌朝。俺はいつも通り、一之瀬と登校をしている。

 非常に眠い。まさか女の子の手作り弁当一つでこんなに興奮するとは思わなかった。

 一之瀬が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

 

「大丈夫? 凄い眠たそうな顔をしてるよ」

「ああ。昨日寝つきが悪くて」

「そっか。やっぱりショックだった?」

 

 恐らくDクラスのクラスポイントのことを言ってるのだろう。

 

「まあな。さすがに0ポイントは堪える」

「だよね。もし困ったことがあったら言ってね」

 

 その言葉だけで十分力になってるよ。

 本当に一之瀬はいい子だなあ。なんでこんないい子がAクラスじゃないんだろう? 学校の評価基準間違ってるんじゃないの? 堀北と一緒に文句言ってくるか。いや、言えないけど。

 

「ありがとな。その時は頼りにさせてもらう」

「うん。……私、頑張るから」

 

 一之瀬が最後に何を言ったか聞き取れなかった。

 なにか覚悟を決めたような顔をしてたけど何だったんだろう。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 いつも通り真面目に授業を受けていると、あっという間に昼休みになり、堀北がやってきた。

 堀北は、椅子の向きをこちらに向かいあわせるように変えて座った。そして女の子らしい可愛い弁当箱を俺に差し出す。

 

「はい。約束のお弁当」

「お、おう……」

 

 堀北が俺に弁当を手渡したことにより、教室がざわつく。

 周りを見渡すと、綾小路が驚いたような表情をしていた。珍しいものが見れたな。

 

「おい、どういうことだよ!?」

 

 いつものごとく、池が絡んできた。

 俺のことは放っておいてくれないかな。何かある度に絡まれるのは正直うざい。

 

「お前たち、付き合ってるのか!?」

「付き合ってない。ただ弁当を作ってもらっただけだ」

「本当に? 怪しいんだけど」

 

 池に続いて松下も絡んできた。佐藤と篠原も興味深そうにこちらを見ている。

 

「本当だよ。もし本当に付き合ってるとして、2人の仲を隠したいのなら教室で弁当を手渡すわけないだろ」

「私たち付き合ってますアピールをしたいんじゃなくて?」

「それだったら否定しないだろ」

「本当に付き合ってない?」

「付き合ってない」

「……なーんだ、つまんない」

 

 松下は興味をなくしたのか、そう言って教室から出ていった。

 池も納得はしていないようだが、綾小路たちと一緒に教室を出ていく。

 

「本当下らない連中ね」

「まあそう言うな。他人の恋愛事情に興味津々なお年頃なんだよ」

「あなたも?」

「少しは」

 

 そりゃ俺も思春期なんだから興味はあるよ。噂だと平田と軽井沢が付き合ってるらしい。平田はギャル好きだったのか。意外。

 堀北は恋愛に興味はなさそうだな。『そんな下らないものに興味はないわ』とか言いそう。

 

「食べないの?」

「そうだな。あり難く頂くとするか」

 

 俺は期待に胸を膨らませながら弁当の蓋を開ける。男子の夢が詰まってるであろう箱の中身は……

 

「……おい」

「なに」

「なんで白米だけしか入ってないんだよ!」

 

 これは酷い。酷すぎる。堀北は俺の心を踏みにじりやがった。

 

「お弁当はお弁当でしょう」

「弁当を作ってる全ての人たちに謝れ!」

「うるさいわね。おかずがなかったのだから仕方ないじゃない」

「夕食の残りとかあるだろ?」

「ないわ。昨日綺麗に片づけたから」

 

 こいつ最初からおかず入れる気なかっただろ。

 おかず入れないのならせめて梅干しくらい入れろよ。

 

「文句があるなら食べなくて結構よ」

「食べます!」

「そう。どうぞ召し上がれ」

 

 くっ、なんてムカつく女なんだ。

 綾小路はよく仲良くやってるな。

 こいつに腕を掴まれて照れていた自分が恥ずかしい。

 俺は白米の味を噛み締めながら、いつか堀北を痛い目に合わせてやると、心の中で誓った。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 堀北が弁当を冒涜した日から一週間が経とうとしていた。

 須藤だけは居眠りをしているが、他の生徒は真面目に授業を受けている。

 

「たうわっ!」

 

 綾小路の奇声が教室内に響く。

 綾小路が目立つような言動をするとは珍しいな。

 

 昼休みに入るとすぐに平田が口を開いた。

 

「中間テストが2週間後に迫っている。なので今日から参加者を募って勉強会を開こうと思うんだけど、どうかな?」

 

 お、平田がやっと動くのか。勉強会なら勉強ラブコメ愛読者の俺に任せろ。

 

「今日の5時からこの教室でテストまでの間、毎日2時間やるつもりだ。途中で抜けても構わないからぜひ参加してほしい。僕からは以上だ」

 

 そう言って話を終えると、数人の赤点生徒が平田の元へ向かう。

 須藤、池、山内の3人は、平田の下には行かなかった。退学になるのを受け入れたのかな?

 昼食の準備をしていると、堀北が綾小路を連れて教室を出ていくのが視界に入った。恐らくテスト対策でも話し合うんだろう。……あれ、俺は?

 自分が仲間外れにされたんじゃないかと心配していると平田が話しかけてきた。

 

「界外くん、ちょっといいかな?」

「ああ。勉強会のことか?」

「うん。よかったら講師役として参加してれないかな?」

「いいぞ。前に約束したからな」

「ありがとう。入試の主席合格者が教えてくれれば百人力だよ」

 

 平田も俺の入試の成績知ってるのか。けっこう知られてるのか?

 

「なあ、平田。ちょっと聞いていいか?」

「なんだい?」

「俺が入試トップで合格したのって、みんな知ってる感じなのか?」

「そうだね。僕は違うクラスの友達から聞いたから、他のクラスも知ってる人多いんじゃないかな」

 

 なるほど。堀北が知らなかったのは俺と同じぼっちだからか。いや、俺には一之瀬、橘先輩、綾小路がいるからぼっちじゃない。1人でいることが多いだけだ。

 

「そっか。どこから情報が洩れてるんだろうな」

「ごめん。僕もわからないかな」

「だよな。とりあえず今日からよろしく」

「こちらこそ。それじゃまた放課後」

 

 そう言うと、平田は俺のもとを去っていった。……そのまま一緒にお昼食べてもよかったんだぞ。

 結局、その日も俺は1人で寂しく昼休みを過ごした。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 放課後。

 堀北から三馬鹿の為に勉強会を実施すること、綾小路が3人を勉強会に参加するよう説得することになったと報告を受けた。

 

「そうか。俺は約束通り、平田主催の勉強会に参加することになったけどいいか?」

「ええ。ただし必ず赤点を取らせないようにして」

「わかった。そっちこそ大丈夫なのか? お前が人に勉強を教えるイメージがわかないんだけど」

「問題ないわ。それじゃよろしく」

 

 そう言って、堀北は教室を出ていった。

 不安だ。

 大丈夫だろうか。

 堀北がきついことを言って、須藤たちを怒らせる光景が目に浮かぶ。綾小路のフォローに期待するしかない。

 

 

 

「ねえ、界外くん、ここ教えて!」

「あー、ここはだな……」

 

 勉強会を開始して1時間。参加者は比較的真面目に勉強をしている。

 俺は佐藤に英語を教えている。ちなみに佐藤は小テストの結果が赤点ぎりぎりだったようだ。

 

「そういうことか。界外くん、勉強教えるの上手いよね」

「まあな。俺は彼女がいないことと、友達が少ないこと以外は基本スペックが高いんだ」

「いや、それスペック高くても駄目じゃん」

 

 佐藤は笑いながら俺の腕を軽く叩いてくる。この子、ボディタッチが多いんだよな。嫌じゃないからいいんだけど。

 

「ていうかこんな話しながら勉強してていいわけ?」

「問題ない。無言のまま勉強してても息が詰まるだろ?」

「そうだけど」

「今回は赤点回避が目的だからな。軽く雑談しながら楽しくテスト勉強できればいいんじゃないか」

「そっか。入試トップの界外くんが言うんだから間違いないよね!」

 

 佐藤も知ってるのか。この様子だとクラス全員知ってそうだな。いや、別にいいんだけどね。

 

「調子はどう?」

 

 平田が佐藤の様子を伺いにきたようだ。

 

「うん、今のところ大丈夫。界外くんの教えがいいからね」

「そっか。界外くん、この調子でよろしくね」

「ああ。そっちはどうだ?」

「うん、今のところ順調に進んでると思うよ」

「そっか。そういえば部活は大丈夫なのか?」

 

 平田はサッカー部に所属している。まだテスト期間じゃないのに部活を休んで大丈夫なのだろうか。

 

「うん。顧問の先生にちゃんと許可を貰ってるからね」

「ならいいけど」

「僕のこと心配してくれたんだね。ありがとう」

 

 うっ、笑顔が眩しい。俺にはこんな笑顔は作れない。

 

「そうだ、界外くんとは連絡先をまだ交換してなかったよね?」

「ああ、そうだな」

「勉強会が終わったら交換してくれるかな?」

「いいぞ」

「あ、私も私も!」

 

 やった。今日だけで2件も電話帳の登録件数が増えるようだ。よし、この勉強会であと3人くらいと連絡先交換できるよう頑張るぞ。

 

 

 

 翌日の放課後。本日も平田主催の勉強会を実施している。

 今回は、前回参加しなかった生徒もちらほら見受けられた。

 俺は今回初参加の松下と篠原に数学を教えている。

 

「2人って小テストの点数低くなかっただろ?」

「そうだけど。佐藤さんから界外くんが勉強の教え方が上手いって聞いたからさ。ね、篠原さん?」

「そうそう。数学苦手な方だし教えてもらっとこうかなーって」

 

 なるほど。そう言われると気分は悪くない。むしろ気分がいいまである。

 よし、この2人に数学を90点以上取らせるぞ。

 

「それに適度にお喋りしながら勉強出来るって言うし」

「そうそう。松下さん、お喋り好きだもんねー」

「篠原さんもでしょ」

 

 まあ、女子はお喋り好きだもんね。勉強は楽しくすることに越したことはないからな。

 

「てか堀北さんとはどうなの?」

 

 先日の回答じゃ納得してなかったのか、松下が質問をしてくる。

 

「だから堀北とは何もないって」

「でも何もない人にお弁当を作ったりはしないでしょ?」

「弁当といっても白米しか入ってなかったからな」

「白米だけ?」

「おう」

 

 俺が質問に答えると松下と篠原が大笑いしている。

 何がおかしいんだろうか。

 

「白米だけって……。堀北さん最高。あははは!」

「松下さん、笑いすぎだって。ぷぷっ」

 

 いやいや、笑いすぎだろ。こっちは純情な童貞心を踏みにじられたんだぞ。いや、童貞心ってなんだよ。

 

「もういいだろ。そろそろ勉強再開するぞ」

「はーい」

「りょうかーい」

 

 勉強会終了後に松下と篠原から連絡先を聞かれ、昨日に続いて電話帳に連絡先が2件追加された。

 自室に帰ると綾小路から連絡が入った。どうやら堀北主催の勉強会は、俺が危惧したとおり崩壊したようだ。まさか初日から崩壊させるとは……。さすが堀北である。





なにかの漫画で弁当のふたを開けたら500円が入ってたネタがあった気がします

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