実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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タペストリーの一之瀬可愛すぎですね
10巻イラストで使われると思うから、色々と妄想が膨らむ


60話 ハンドクリーム

 11月1日。今日は月一のクラスポイント発表日だ。いつも通りチャイムが鳴ると茶柱先生が教室に入って来た。

 茶柱先生は挨拶を終えると、すぐに黒板に大きな白い紙を貼りつけた。

 その大きな白い紙に各クラスのクラスポイントが書かれている。

 各クラスのクラスポイントは以下の通りだ。

 

 Aクラス: 964

 Bクラス: 803

 Cクラス: 817

 Dクラス: 242

 

 CクラスがBクラスを逆転している。つまり俺たちは……

 

「おめでとう。今日からお前たちはBクラスだ」

 

 茶柱先生がお祝いの言葉を述べた直後、クラスメイトたちが喜びの声を上げた。

 

「やった!」

「俺たちBクラスだってよ!」

「すげぇよ!」

 

 寛治たち調子乗りグループはもちろん、女子たちも騒いでいる。

 それよりDクラスだけ置いてけぼりだな……。

 

「でもおかしくないか?」

 

 ここで寛治が疑問の声を上げた。

 

「球技大会でBクラスに負けてたよな?」

「確かに」

 

 球技大会で俺たちのクラスは、一之瀬率いるBクラスより結果を残せなかった。つまり球技大会だけの成績を見れば、俺たちがBクラスに昇格することはありえないのだ。

 

「今回は特別にポイントの内訳を教えてやる」

 

 生徒たちの疑問を解消をすべく茶柱先生が説明し始めた。

 

「まず体育祭で-50ポイント。球技大会で90ポイント。そして界外が気象予報士試験に合格したことにより150ポイントが加算されている」

 

 そう。俺が気象予報士試験に受かったことにより、クラスポイントが150ポイント加算されたのだ。

 試験は8月下旬に行われたのだが、合格発表が10月だったため、クラスポイントに反映されるまで時間がかかった。ちなみに俺が国家試験を受けたのを知ってる生徒は、堀北、清隆、洋介、博士の4人だ。

 

 クラスメイトたちは驚きを声を上げて、俺を見つめている。

 ククク。尊敬してもいいんだぞ。

 

「ちなみに界外には、国家試験を合格したことにより、150万プライベートポイントが与えられている」

 

 刹那。隣人の金の亡者がとてつもない圧をかけ始めた。

 先生、余計なことは言わなくていいんですよ。

 クソ。SHRが終わったらちやほやされようと思ったのに、すぐにトイレに逃げなくては。俺が頑張って稼いだポイントが貪られてしまう。

 

「それではSHRを終わりにする」

 

 茶柱先生がそう言った直後、俺は教室のドアに向かって駆けだす。そして扉に手をかけようとすると……

 

「行かせないよ、界外くん」

 

 佐藤が立ちはだかった。反対側のドアには篠原がいる。

 どうやら松下の指示で出入り口を塞いだようだ。

 

「佐藤、どいてくれ」

「それはできないし」

 

 佐藤はか弱い女の子だ。力づくでどかせることも出来るが、そんなことはしたくない。

 なので俺は佐藤の弱みを利用することにした。

 

「涎」

「……っ」

 

 たった一言で、佐藤は顔を真っ赤にしながらドアを開けた。

 そして俺は、佐藤の横を通り、教室を後にした。

 

「佐藤さん、何してるの!?」

 

 篠原が佐藤を嗜める声が背後から聞こえたが、無視してトイレに駆け込んだ。

 なぜ佐藤が素直に退いてくれたのか。

 それは俺に弱みを握られてるから。

 あれは9月の出来事だった。俺の部屋でアニメ鑑賞してた佐藤が寝落ちをしてしまい、テーブルの上に涎の海を作ってしまった。このことを誰にも話さないよう涙目の佐藤にお願いをされた。もちろん誰にも話すつもりはないが、今回のように困った時は、脅しで使わせてもらってるわけだ。

 

 学校で一番落ち着ける場所でくつろいでると、男子生徒たちの話し声が聞こえた。

 

「あーあ、今日からCクラスか……」

「だな。でも僅差だしすぐにBクラスに戻れるさ」

「だといいんだけどな」

 

 どうやらCクラスの生徒たちのようだ。

 俺たちのクラスがBクラスに昇格したのは喜ばしいことだ。だが一つだけ懸念点がある。

 帆波だ。

 学級委員長である帆波に、クラスメイトから不満をぶつけられるのではないかと俺は考えた。比較的いい人が多い帆波のクラスだが、他人に不平不満をぶつける輩も少しはいるだろう。それに帆波は俺と仲が良い。俺との関係を突っ込まれる可能性も考えられる。

 

「どうしたもんだか」

 

 恐らく神崎や白波さんたちがフォローをしてくれるだろう。ただ俺がいないところで帆波に傷ついてほしくないので、どうしても気になってしまう。

 

「様子を見るしかないか」

 

 もし帆波がCクラスに落ちたことにより、責任を取らされるようなことになっても、他クラスの俺が出来ることはないだろう。

 だから様子を見るしかない。

 やっぱり帆波と同じクラスがよかったな……。

 俺は大きくため息をつきながら教室に戻った。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 昼休み。俺はベストプレイスで堀北と一緒に昼食をとっていた。

 

「今日は人気者ね」

 

 卵焼きを口に運びながら堀北がからかうように言った。

 

「まぁな。人生でピークを迎えているかもしれない」

「そう。……次はいよいよAクラスかしら」

「どうだろうな。Cクラスとは僅差だし、そう上手くはいかないだろう」

「でもあなたがいればAクラスも敵じゃないと思うわ」

 

 それは買いかぶりすぎだろ。実際Aクラスとは100ポイント以上離されている。

 

「……まぁ、頑張るよ」

「ええ。もちろん私も全力を尽くすわ」

「一緒にAクラスを目指す。堀北との約束だもんな」

「……うん」

 

 頬を紅潮させた堀北が可愛らしく頷いた。

 いつも返事は「ええ」なのに、たまに言う「うん」にドキッとさせられてしまう。

 

「ねえ、今日の放課後暇?」

「あー、松下たちとケヤキモールに行くことになってる」

「そう……」

 

 いや、そんな落ち込まなくても……。つーか、堀北も後で誘われるんじゃないか。

 

「堀北も行くか?」

「行くわ」

「お、おう……」

 

 即答だった。

 

「奢るの?」

「違う違う。なんか佐藤が俺の愛用してるハンドクリームを気に入ってさ。購入した店舗を案内するだけだよ」

「そうなの。……ちなみに今そのハンドクリームはあるかしら?」

「あるぞ」

 

 鞄からハンドクリームを取り出し、堀北に渡した。

 

「つけてみてもいい?」

「いいぞ」

「ありがとう」

 

 お礼を述べた堀北は、ゆっくりと蓋を開けた。そして両手に塗り始める。

 

「けっこういい匂いね」

「だろ。それと匂いだけじゃないんだ。シアバターが配合されていて、保湿性も抜群なんだぞ」

「そ、そうなの……?」

「ああ。俺、乾燥肌ですぐ荒れちゃうからさ。保湿性いいやつじゃないと駄目なんだよ」

 

 真冬の皸はきついんだよな。皸があるだけでやる気が100は削がれてしまう。

 

「本当に女子力高いのね」

「そうか。まいったな」

「なぜ嬉しがってるのかしら」

「いや、女子力高い男子ってモテるらしいから」

「……モテたいの?」

 

 冷気を放ちながら堀北がジト目で訊ねる。

 

「あ、いや、その……」

 

 そりゃモテないよりモテる方が嬉しいだろう。でも素直に言ったらヤバそうな雰囲気なので濁しておく。

 

「どうだろうな」

「……もういいわ。それより櫛田さんの様子はどう?」

「相変わらずしつこく絡まれるくらいだな」

「拒絶すればいいのに」

 

 君たち相変わらず仲が悪いね。

 

「人前では拒絶しにくいんだよ。二人きりの時は、きちんと言ってるぞ」

「二人きり……?」

「あ」

「どういうことか詳しく説明してもらえる?」

 

 怖い怖い。それに顔が近いよ堀北。

 堀北との問答は昼休みが終わるまで続いた。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 放課後。俺たちは佐藤の買い物に付き合うため、ケヤキモールに足を運んでいた。

 最初は5人で行く予定だったが、最終的に10人の大所帯になっている。面子は俺、堀北、松下、佐藤、篠原、櫛田、王、井の頭、軽井沢、森。

 あまり話したことない女子もいるんだけど……。

 

「私も界外くんと同じハンドクリームなら買おうかなっ」

 

 隣を歩く櫛田が上目遣いで言ってきた。

 

「乾燥肌ならお勧めだぞ」

「界外くんも乾燥肌なんだ。私もだよ。同じだねっ」

 

 いつものあざとい笑顔を見せる櫛田。

 それより近い。近すぎる。腕くっついてるから。

 

「櫛田さん。界外くんが歩きづらそうにしてるわ。少し離れたらどう?」

 

 さすが堀北。俺が言いたくても言えないことを、言ってくれる。

 

「……歩きづらいの?」

「……少しな」

「そっか。ごめんねっ」

 

 ようやく櫛田が離れた。人前ではあっさり引き下がるんだよなこいつ。

 

「ねー、界外くん」

「ん?」

 

 今度は佐藤が話しかけてきた。

 

「買い物終わったら暇だったりする?」

「本屋行く予定だけど」

「そっか。週末にアニメ見たいんだけど、またお勧めの教えてくれる?」

「いいけど。……また俺の部屋で見るのか?」

「うん」

 

 いい加減ブルーレイプレイヤー買いやがれ。ポイントは十分溜まってるだろうが。

 

「ブルーレイレコーダー買おうか迷ったんだけど……。界外くんが無駄遣いするなって言うから」

 

 俺が原因だった。なら強く言えないな。

 

「そっか。わかったよ」

「やった。それじゃ土曜お邪魔するね」

「午後からでいいか?」

「うん。午前中は予定あるの?」

「橘先輩がご飯奢ってくれるんだよ。Bクラスに昇格したお祝いに」

 

 刹那。松下と軽井沢が、苦虫を噛み潰したような顔で俺を見てきた。

 堀北と櫛田もなんか睨んできてる。

 なるほど。デートなのに男子が奢って貰うなということか。

 

「ちなみに佐倉も一緒だからな。三人でご飯に行くんだ」

 

 これで橘先輩とのデートじゃないとわかってくれるだろう。

 

「うわっ」

 

 再び松下と軽井沢が、ゴミを見るような目で俺を見てきた。

 他の人たちも引いてるような気がする。

 おかしい。どこで俺は間違えたんだろう。

 仲良しの先輩に奢って貰うという、よくある話なのに……。

 

「佐倉さんって眼鏡外してから人気凄いよね」

「そうだな」

 

 佐倉は橘先輩のアドバイスにより眼鏡を外した状態で学校に来ている。

 恐らく橘先輩に恋愛相談でもしたのだろう。

 佐倉が眼鏡を外したことにより、他のクラスの男子共が、俺たちBクラスにやってくることが多くなった。もちろん教室に入る勇気ある生徒はおらず、遠巻きから眺める程度だ。

 

「佐倉可愛いもんな」

「は?」

 

 一瞬、櫛田がドスのきいた声を出したような気がした。

 

「なにか言ったか?」

「何も言ってないよ」

 

 唇に人差し指を当てながら、可愛く傾げる櫛田。

 どうやら気のせいだったようだ。

 

「だよね。だてにグラビアアイドルやってないよね」

「そうだな」

 

 おかしい。佐藤と話すにつれて、雰囲気が重たくなってる気がする。

 特におかしい会話はしてないはずなんだけど。

 何とか雰囲気を変えようと思った時だった。

 

「よう、すけこまし野郎。今日は大量に女連れてるじゃねぇか」

 

 龍園とエンカウントしてしまった。

 龍園が現れたことにより、女子たちに緊張感が走る。

 佐藤は龍園が怖いようで、俺の背中に隠れてしまった。

 

「いい加減名前で呼んで欲しいもんだな。俺には界外帝人って名前があるんだからさ」

 

 やっぱり龍園と話すと、喧嘩腰になってしまう。

 

「気が向いたら呼んでやるよ。それと桔梗、久しぶりだな」

「久しぶりだね、龍園くん」

「どうやらこいつに助けて貰ったようだな。股でも開いたか?」

 

 半分正解。股開くつもりはあったぞこの女。

 

「やだな。なんのことかな」

「……まぁいい。それじゃな」

 

 龍園はそう言い、あっさり去っていった。

 どうやらたまたま見かけたから声をかけてきただけのようだ。

 

「……あー、怖かった……」

 

 涎女がなんか可愛く振舞ってる。

 

「佐藤は龍園が苦手なのか?」

「だって怖いじゃん。私、ヤンキー苦手なんだよね」

「……意外だ」

 

 見た目からしてヤンキーの彼女っぽい雰囲気を醸しだしてる。

 

「意外とか失礼だし」

 

 確かに中身は普通の女の子だもんね。ちょっとアホなところあるけど。

 

「それよりさっさとお店に行かない?」

 

 軽井沢が急に仕切り出した。

 そういえばなんでこいつもいるんだろうか。

 

「そうだね。行こうか」

 

 隣人の松下が促すように佐藤と篠原の背中を押しながら言った。

 

 30分後。無事にハンドクリームを購入し終えた俺たちは、コスメショップに来ていた。

 女子たちが色んな商品を漁っている。当然俺はコスメショップに用事はないので、先に本屋に行こうとしたら、櫛田に待つように止められてしまった。

 

「……暇だな」

 

 楽しそうに買い物をする女子たちを見ながら呟いた。ちなみにこういうお店に興味なさそうな堀北も、佐藤たちと一緒に店内を回っていた。

 

「暇そうだね」

 

 一足先に買い物を済ませた櫛田が戻って来た。

 

「だったら本屋に行かせてくれよ」

「駄目だよ。これだけ可愛い子がいるんだから騎士さんが一人はいないとね」

「騎士って……」

 

 ランスロット・アルビオン用意してくれたら喜んで騎士になるぞ。

 

「ていうか、龍園ムカつく。死ねばいいのに」

「急に本性を現すな」

 

 あの事件以降、時折櫛田が俺に本性を見せるようになった。大体愚痴を聞かされてるだけなんだが……。

 

「早くあいつを退学にさせてよ」

「無茶言うなよ……」

「龍園を退学にさせたら、界外くんの性奴隷になってあげるから」

 

 セフレからパワーアップしてるんだけど……。

 それでもなって"あげる"ってところに櫛田のプライドの高さが見られる。

 

「はいはい」

「酷いな。女の子の勇気を出した告白を受け流さないでよ」

「そんな勇気は捨ててしまえ」

 

 寛治なら喜んでオッケーするんだろうな。そういえば寛治は篠原といい感じだが、櫛田はもう諦めたのだろうか。

 

「それとさっきのはなに?」

「さっきの?」

「佐倉さんが可愛いって話」

「……事実を言っただけだが」

 

 なんて顔で睨んできやがるんだこの子は。

 

「ふーん。帆波ちゃんといい、界外くんは胸が大きい女の子が好きなんだね」

「嫌いじゃないな」

「ちなみに私も大きい方だと思うんだけど」

 

 櫛田はそう言うと、腕に胸を当ててきた。

 

「そうだな。大きいと思うぞ」

「でしょ。揉みたいと思わない?」

「揉んだら通報されそうだから思わない」

「そんなことしないよ。ほらほら」

 

 櫛田は誰も見てないことをいいことに、胸を押し当ててくる。

 

「服越しで押し当てられてもな」

「…………は?」

 

 帆波に水着越しで押し当てられてますしおすし。

 

「わかった。買い物終わったら界外くんの部屋に行くから」

「来るな。いい加減諦めろ」

 

 櫛田は俺と肉体関係を結ぶのを諦めていない。

 どうやら変に意地を張ってしまってるようだ。

 

「嫌だったら前みたいに引っ叩いて説教でもすればいいよ」

「うぐっ……」

 

 3日前。再びあられもない状態で迫ってきた櫛田を俺は説教した。もちろん上条さんと違い、殴ったりはせず、軽く頬を叩いたくらいだ。

 結局、俺の言葉は何も響かなかったようだが……。

 

「私、界外くんになら殴られても蹴られても平気だから」

「人をDV彼氏みたいに扱わないでくれない?」

 

 また風評被害が広がっちゃう。

 

「……ん……」

 

 櫛田が急に内股でもじもじしだした。

 

「さっきから何なんだよ?」

「こ、これは違うから……っ」

「何が違うんだよ。たまに俺の前でそうしてるけど、なんか意味あるのそれ?」

「そ、それは……内緒だよ……」

 

 蕩けた表情をしながら櫛田が答えた。

 こいつ頭がおかしいんじゃないだろうか。

 俺が呆れてると、他の女子たちも買い物を終えたようで戻って来た。

 

「それじゃ私たちはこれで」

「またね」

 

 軽井沢と森は、本屋とレンタルショップに用はないようで先に帰っていった。

 櫛田、王、井の頭は、他に寄りたいお店があったようで、三人ともここで別れることとなった。

 残ったのは俺、堀北、松下、佐藤、篠原の5人。

 この面子なら恥ずかしい表紙のラノベを買っても問題ないな。

 そう判断した俺は、本屋を目指して歩きだした。

 

 本屋に着くと、俺は真っ先にラノベコーナーに向かった。堀北は一般小説。松下たちはファッション誌を立ち読みして、時間を潰すようだ。

 今日は11月1日。つまりスニー○ー文庫の発売日だ。

 早速お目当ての物をゲットし、他に買い忘れてるラノベがないかチェックをする。

 

「なさそうだな」

 

 いい加減図書室にもラノベを置いて欲しい。でも堀北会長はオッケーしてくれないんだよね。

 

「界外くんじゃないですか」

 

 背後から声をかけられた。振り向くとそこには……

 

「橘先輩。こんにちは」

「はい、こんにちは。ラノベ買いにきたんですか?」

 

 俺が手に持ってる本を見ながら橘先輩が訊ねた。

 

「はい。橘先輩がこのコーナーにいるって珍しいですね」

「界外くんの後ろ姿が見えたので」

 

 後ろ姿で俺ってわかるのか。……照れるな。

 

「そうですか。橘先輩も本買いにきたんですか?」

「はい。今日は好きな作者さんの新刊が出るので」

 

 嬉しそうに話す橘先輩。やっぱこの先輩天使だわ。

 

「界外くんはお一人で来たんですか?」

「いえ。クラスメイトと。橘先輩は?」

「私は一人ですよ。あまり本好きの友人いなくて」

 

 あははと苦笑いしながら答える。

 やばい。抱きしめたい。

 

「そうだ。今度私にお勧めのラノベを教えてもらえますか?」

「え」

「実は本を読みつくしてしまって。なのでラノベを読んでみようかと思いまして」

「も、もちろんです。ラノベなら大量に持ってるので貸しますよ」

「本当ですか? ありがとうございます」

「よかったら俺の部屋に来て下さい」

「へ、部屋にですか……?」

「はい」

 

 部屋に誘ったら橘先輩の顔が赤くなってしまった。

 付き合ってもない異性の部屋に上がるのはハードルが高いことなのか。最近女子たち+清隆が入り浸ってるせいで麻痺してるのかもしれない。

 

「そ、それじゃお言葉に甘えて……」

「は、はい……」

 

 そんな赤くしながら答えないで。誘った俺まで恥ずかしくなってくる。

 

「い、行くときは事前に連絡しますねっ!」

「お願いします」

「そ、それと、土曜日の件も連絡しますね!」

「はい」

 

 橘先輩は、顔を赤くしたまま、「それじゃ」と言い、本屋を後にした。

 ……あの先輩、本買ってなくない?

 

 本屋で買い物を済ませた俺たちはレンタルショップに移動した。

 俺と佐藤はアニメコーナーに。堀北たちは適当に見て回るようだ。

 

「それで今回はどういうのが見たいんだ?」

「うーん、恋愛もの!」

「それは清隆に恋してるからか?」

「う、うるさいっ!」

 

 佐藤が頬を紅潮させながら肩を叩いてきた。

 今日は照れる女の子が多いな。

 

「それで他に条件は?」

「ハッピーエンドのものがいいかも」

 

 なるほど。それじゃスクールデイズでいいか。……絶対怒られるな。

 

「2クールものでもいいか?」

「いいよ」

「それじゃ……これかな」

 

 とらドラのパッケージを指差す。

 少女漫画原作ものは、読んでそうだしな……。これくらいしか思いつかないな。

 

「それじゃこれ借りてくるね」

「ああ」

 

 佐藤はディスクをパッケージから抜いて、そのままレジに向かった。

 

「……佐藤もアニオタ化してきたな」

 

 とらドラは全24話あるので半日じゃ見終わらないだろう。

 どうやら今週は佐藤と土日を過ごすことになりそうだ。




切実によう実のギャルゲが欲しいです
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