実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。   作:田中スーザンふ美子

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原作1巻分完結です!



8話 女の子の手は柔らかい

 翌日のSHR。茶柱先生が教壇に立つと同時に、平田が発言する。

 

「先生。本日採点結果が発表されると聞いてますが、いつですか?」

「そんなに結果が気になるか。喜べ、今から発表する。放課後じゃ、色々と手続きが間に合わないこともあるからな」

 

 手続きか。ポイント付与の手続きならすぐに終わるだろう。もしかして……

 

「それ……どういう意味ですか?」

「慌てるな、平田。今から発表する」

 

 生徒の名前と点数の一覧が載せられた大きな白い紙が黒板へと張り出される。

 俺は全教科100点だった。これでボーナスゲットだぜ!

 

「正直、感心している。お前たちがこんな高得点を取れるとは思わなかったぞ」

 

 他の生徒の成績を見ると、満点が10人以上いる科目もあった。

 この好成績は、櫛田が用意した過去問の功績が大きいだろう。

 

「それと界外。お前が単独で学年1位だ。よくやった。約束通りボーナスポイントを付与する。放課後職員室に来るように」

「はい。ありがとうございます」

 

 やったぜ。

 後は須藤が赤点を回避しているかどうかだが。

 

「しゃっ! 赤点なしだぜ!」

 

 須藤が立ち上がり叫ぶ。確かに小テストの際には書かれていた赤点ラインを示す赤い線は見当たらない。

 

「見ただろ先生! 俺たちもやるときはやるってことですよ!」

 

 池がドヤ顔を決める。

 

「ああ。お前たちが頑張ったことは認めている。ただ、お前は赤点だ。須藤」

「は? ウソだろ? なんで俺が赤点なんだよ!」

「須藤。お前は英語で赤点を取ってしまった」

「赤点は31点だろうが! 俺は39点取ってんだろ!」

「誰がいつ、赤点が31点だと言った」

「いやいや、言ってたでしょ! なぁみんな!?」

 

 池が須藤をフォローする。

 

「お前らが何を言っても無駄だ。前回、そして今回の中間テストの赤点のラインは40点未満だ。惜しかったな」

「よ、40点!? 聞いてないですよ!」

「なら、お前らにこの学校の赤点の採点基準を教えてやる」

 

 茶柱先生は黒板に数式を書き始めた。

 そこに書かれたのは、79.6÷2=39.8という数字。

 なるほど。そういうことか。

 

「赤点基準は各クラス毎に設定されている。その求め方は平均点割る2。その答え以上の点数を取ること」

「ウソだろ……俺が、退学、ってことか?」

「短い間だったがご苦労だった。放課後退学届けを出してもらうことになる。それには保護者の同伴が必要になるからな。私から連絡しておく」

 

 高得点を叩きだした生徒が多かったのが裏目に出てしまったようだ。

 堀北が英語の点数が低かったのは、平均点を下げる為だったのか。

 

「残りの生徒はよくやった。文句なく合格だ。次の期末テストもこの調子で頑張ってくれ」

「先生。本当に須藤くんは退学になるんですか? なにか救済措置はないんですか?」

 

 須藤を真っ先に気に掛けたのは、平田だった。

 さすがクラスのリーダーだな。須藤から嫌われているのは自覚しているはずなのに。

 

「事実だ。赤点を取ってしまったらそれまで。須藤は退学にする」

「……須藤くんの解答用紙を、見せて貰えないでしょうか?」

「言っておくが採点ミスはないぞ? それでもいいなら好きにするといい」

 

 須藤の英語の解答用紙を平田へと手渡す。

 平田はすぐに問題へと視線を落とすが、すぐに暗い表情を見せた。

 

「採点ミスは……ない」

「納得がいったなら、これでホームルームを終わる。須藤、放課後職員室に来い。以上だ」

「……茶柱先生。少しだけよろしいでしょうか」

 

 堀北が、スッと細い腕を挙げ、挙手をした。

 

「珍しいな堀北。お前が挙手するとはな。なんだ?」

「先生は、前回のテストは32点未満が赤点だと仰いました。そしてそれは今の計算式によって求められた。前回の算出方法に間違いはありませんか?」

「ああ、間違いない」

「それでは疑問が生じます。前回のテストの平均点は、私が計算したところ64.4でした。それを2で割ると、32.2になります。つまり32点を超えています。にもかかわらず、赤点ラインは32点未満でした。つまり小数点以下を切り捨てている。今回の求め方と矛盾していませんか?」

「確かにそれなら、中間テストは39点未満が赤点になる!」

「なるほど。お前は須藤の点数を見越して、英語の点数を下げたんだな」

 

 ハっとしたように、多くの生徒たちが張り出された紙に目をやって気づく。堀北の点数が英語だけ極端に低いことに。

 須藤が堀北に心配を掛けなければ、堀北も全教科満点だったのかもしれない。

 

「もし私の考えが間違っているなら、前回と今回で計算方法が違う理由を教えてください」

「そうか、なら、もっと詳しく教えてやろう。赤点を導き出す際に用いる点数、小数点は四捨五入で計算される」

「っ……」

「お前も気づいていたんだろう? 可能性を信じて進言してきたんだろうが……残念だったな。私は行くぞ」

 

 ぴしゃりと教室の扉が閉まり、静寂に包まれた。

 

「……ごめんなさい。私がもう少し、ギリギリまで点数を削るべきだったわ」

 

 短くそう言い、堀北はゆっくりと腰を下ろした。

 だが、51点というのは堀北からしてかなり落とした点数だ。もっと落としていれば、自分が退学になるリスクもある。

 しかし、堀北が自分の点数を下げてまで須藤を助けようとするとはね。……いや、あくまで自分の為なんだろうな。

 須藤とはこれでお別れか。まあ、こればかりは仕方がない。寝落ちとはいえ、人事を尽くさなかった須藤が悪いのだよ。

 気持ちを切り替えていると、綾小路が教室から出ていった。

 茶柱先生に直談判しに行ったのか。必死に堀北を説得してたもんね。俺の中の綾小路のポイントがぐんと上昇した。

 

「ちょっと来て」

「ん?」

 

 綾小路をどう元気づけようか考えていると、堀北が目の前にいた。

 

「どこに行くんだよ。もう1時間目が始まるぞ」

「いいから」

 

 堀北はそう言うと、俺の腕を強引に取り、教室から連れ出した。

 

「堀北。俺をどこに連れていく気だ。遅刻したらどうするんだ?」

「茶柱先生のところに行くわ」

「須藤のことは諦めろ。……それとも何か策があるのか?」

「ないわ」

 

 ないのかよ。だったら何しに行くんだよ。

 

「ただ諦めたくないだけ」

 

 往生際が悪いな。堀北ってこんな諦めが悪いのか。

 堀北にエスコートされながら、廊下を早歩きで突き進んでいくと、1階の廊下で綾小路と茶柱先生の姿が目に入った。

 

「この場で10万ポイントを支払うなら、テストの点数1点分売ってやってもいい」

「意地悪っすね、先生は」

 

 え、テストの点数ってポイントで買えるの?

 しかし、1点10万ポイントは高いな。

 

「私たちも出します」

 

 ふぁっ!? 私たち”も”って俺も入ってるの?

 こいつ、何言ってんだよ。

 

「堀北、界外……」

 

 綾小路が振り向く。

 いや、俺は出さないからね? ポイントは一之瀬と遊んだり、博士と一緒にいくら丼を食べるのに使うんだ。

 

「クク。やっぱり、お前たちは面白い存在だ」

 

 なんで茶柱先生は面白がってるんだ。

 

「界外くん、いいわよね?」

「いや、それはちょっと……」

「お願い」

 

 堀北が、真剣な眼差しで俺を見上げる。

 だがハガレンを見て手に入れた俺の鋼のような心は揺るがない。

 俺は鋼の男子高校生だ。

 

「力を貸して」

 

 堀北はそう言うと、俺の右手を自身の小さな両手でそっと包み込んだ。

 なにこれ。

 女の子の手ってこんな柔らかいの? それに全てが吸い付く感じがしてやばい!!

 

「は、離してくれ……」

「あなたの了承を得るまで離さないわ」

 

 卑怯だ。俺が女子との触れ合いに免疫がないのを知って。

 やばいやばい。気づいたら距離も近くなってるし。堀北っていい匂いがするんだなぁ。……って、いかんいかん。

 

「綾小路、この2人は何をしてるんだ?」

「俺にもわかりません」

 

 茶柱先生と綾小路が何か言ってるようだが、全く耳に入ってこない。

 まさか堀北が女であることを武器として利用してくるとは。

 

「もしポイントを出してくれるなら、またお弁当を作ってあげてもいいわよ」

「ど、どうせ白米だけなんだろ……」

「いいえ。今度はおかずもつけてあげる」

 

 おかずも? 今度こそ、女子の手作り弁当が食べられるってことか?

 どうする。堀北を信じてもいいのか?

 

「界外くん。決めなさい」

「お、俺は……」

 

 俺は悩みぬいたうえ、決断を下した。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「やったな須藤! 退学取り消しだってよ!」

「おう! さすが堀北だぜ!」

 

 場所は変わり、教室。

 須藤の退学が取り消しになったことにより、池たちが騒いでいる。

 女子の手作り弁当の誘惑には勝てなかったよ……。

 結局、俺が4万ポイント、綾小路と堀北が3万ポイントずつ支払い、須藤の退学は取り消しとなった。

 堀北に今回のボーナスポイントを全て払うよう言われたが、必死にお願いして4万ポイントを払うことで妥協してもらえた。

 あれ? 俺がお願いされる側だったのに、いつの間にか立場が変わってるんだけど?

 しかし、堀北があんな風に仕掛けてくるとは。ああいうの一番嫌ってそうなのに。それだけなりふり構っていられなかったってことか。

 

「悪かったな。助かった」

 

 綾小路が謝辞をしてくる。

 綾小路にも恥ずかしいところを見せてしまった。でも仕方ないよね。健全な男子高校生だし。

 

「別にいいさ。どうせ俺はチョロい男なんだ」

「そんなことは言ってないが」

「綾小路ならクールに流せたんだろうけど」

「いや、俺もあんなことされたら動揺するぞ」

 

 綾小路が動揺する姿が想像出来ない。たまに驚くときも、目を少し見張るくらいだし。

 数分雑談をしたところで、綾小路は自分の席へ戻っていった。

 俺は携帯を取り出し、ある人物にメールを送る。久しぶりに彼女と2人で遊びたい気分だ。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「そっか。無事、ボーナスゲット出来たんだ」

「ああ。おかげさまで」

 

 その日の放課後。俺は一之瀬を誘い、ファミレスに来ていた。

 2人で中間テストの打ち上げをしないか、とメールで誘い、一之瀬も予定がなかったため、こうして2人で相見えてるわけだ。

 一之瀬のことだから、クラスメイトと打ち上げでもするのかと思っていたので、彼女の予定が空いていたことは意外だった。

 

「全教科満点で学年1位でしょ。さすがだねー」

「一之瀬も2位だったんだろ。期末じゃ負けるかもしれないな」

「にゃはは。今回は運がよかっただけだよ」

 

 にゃははって可愛すぎるんですけど。

 やはり一之瀬と一緒にいると癒されるなぁ。どこかの白米弁当を手渡すJKとは大違いだ。

 

「それでボーナスポイントは何に使うのかな?」

 

 実はもう4万ポイント消費してるんです……。

 

「ラノベとか色々あるけど、メインは一之瀬と遊ぶのに使うことかな」

「え、私と?」

「ああ。これで一之瀬も心置きなく俺を誘えるだろ?」

 

 優しい一之瀬のことだ。一之瀬が俺を放課後遊びに誘わなくなったのは、クラスポイントが0の俺に気を使ってくれていたからだと思う。

 だが5万ポイント(実質1万ポイント)をゲットしたことにより、その問題は解消した。

 

「もしかして私が気遣ってるのバレバレだった?」

「まあな。一之瀬は優しいからな」

「そんなことないよー」

 

 そんなことある。一之瀬が優しくなかったら誰が優しいと言えるのか。

 

「というわけで、ポイントの心配はしなくていいから。都合がいい時はどんどん誘ってくれ」

「うん、わかった。でも今日みたいに界外くんから誘ってくれてもいいんだよ?」

「予定が入ってて断られたら、俺の心が傷つくので誘わない」

「意外とデリケートだ!?」

 

 俺と一之瀬の2人だけの打ち上げは2時間ほど続いた。

 彼女と一緒にいると楽しくて時間があっという間に感じてしまう。

 これからもイベントが終わるたびに、彼女と2人きりで打ち上げが出来ればいいなと思った。

 その為には、この学校で生き残り続ければならない。

 今後、学力テスト以外にも退学が懸かった試験が行われていくだろう。

 けれど問題はない。

 ようは結果を残せばいい。

 彼女の近くに居続ける為に、俺は結果を出し続けるだけだ。

 





果たして主人公は堀北の手作り弁当を今度こそ頂けるのか!?

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