実力至上主義の学校に入学する。そして美少女と出会う。 作:田中スーザンふ美子
気づいたら日間ランキング2位に入ってました。これもみなさんのおかげです。ありがとうございます!
中間テストを終え、1週間が経とうとしていた。
テストを無事に乗り越えたことで、Dクラスは少しずつではあるが、かつての活気を取り戻していた。
かくいう俺も友人が増えたことにより、休み時間に一人でいる時間は減っている。
昼休みは一人だけど。
博士から昼食に誘われたが、彼のグループの面子を確認したところ、喋ったことがない人ばかりだったので丁重にお断りした。
以前は教室で昼食を済ましていたが、現在はベストプレイスを見つけたことにより、そこで昼食を済ましている。
昼休み。
本日はあいにくの雨であるため、ベストプレイスに行くことを諦め自席で昼食を済ますことにした。
教室を見渡すと俺と同じぼっち飯の美少女が目に入った。
堀北鈴音。我がDクラスが誇るエリートぼっちである。
堀北はよくサンドイッチを食べていたが、今日は弁当を持参している。
約束の弁当はいつ作ってくれるのだろうか。
自分から聞くとがっついてると思われるので、堀北が作ってくれるのを待つしかない。
「相変わらず凝ってるな」
綾小路が俺の弁当を見ながらそう言う。
「そうでもないぞ。夕食の残りだからな」
「オレには無理だ」
「まあ、やる気の問題だな。綾小路は今日は一人か?」
「ああ」
綾小路は須藤たちと昼食が取ることが多いようだが今日は誘われなかったようだ。
お? 一緒に昼飯食べるチャンスじゃないか?
「だったら一緒に食べるか?」
「いいのか?」
「ああ。てか俺から誘ってるわけだし」
「それじゃ遠慮なく」
綾小路はそう言うと、俺の前の席の椅子に腰を下ろし、俺と向かい合うように椅子の向きを変えた。
鞄からパンを取り出し机の上に広げる。
「パンばかりで飽きないのか?」
「種類は変えてるからな」
「そんなもんか」
「ああ」
綾小路との会話は盛り上がることはないが、不思議と嫌な感じはしない。
「そういえば堀北から弁当は作ってもらえたのか?」
どうやら綾小路も堀北の手作り弁当が気になっていたようだ。
「いや、まだ」
「そうか。しかし女子の手作り弁当が食べれるなんて羨ましいな」
「綾小路もお願いしてみたらどうだ?」
「作ってくれると思うか?」
「思わない」
「だろ」
俺だって情報提供の対価やポイントの支払いの件がなければ、作ってもらえることはなかっただろう。
しかし、堀北はいつ作ってきてくれるのやら。
まあ、気長に待つしかないな。
♢♢♢♢♢♢♢
放課後。俺は食材の調達の為スーパーに寄っていた。
夕食のメニューを考えながら、無料コーナーから食材を選んでいく。
「あら、嫌な偶然ね」
声がする方を見ると堀北が立っていた。
ねえ、一言目に軽口を叩かないと生きていけないの?
「堀北も無料の食材目当てか」
「ええ。来月は何ポイント支給されるからわからないもの。無駄遣いは出来ないわ」
「だな」
「あなたは、どのくらい支給されると思う?」
クラスポイントか。いまだに算出方法がわからない。てか卒業までわからないと思う。
「わからない。1万ポイント位は支給されるといいんだけどな」
「そう」
堀北はそう言うと会話を切り上げ、食材に視線を向けた。
「ねえ」
「ん?」
「苦手な食べ物ってある?」
「ないな。好き嫌いはしないよう教育されてきたから」
「そう。残念ね」
「なんで残念なんだ?」
「お弁当。あなたに苦手なものがあったなら、それを大量にお弁当に詰めようと思ったのよ」
うわぁ……。なんて性格が悪い女だ。
白米オンリーの次は嫌いな食べ物攻めか。てか弁当のこと覚えていたのね。
「明日、作ってきてあげる」
「お、おう……。よろしくお願いします……」
とうとう女子の手作り弁当が食べれるのか。
堀北が何かやらかさなければだけど。
さて、欲しいものも手に入ったし、そろそろおいとまするか。
「待って」
「ぐぇっ」
去ろうとした瞬間に堀北に襟首を掴まれ、変な声が出てしまった。
「な、なにすんだよ!?」
「界外くん。あなたを荷物持ちに任命してあげる」
「…………はい?」
どうも。堀北の助手兼荷物持ちの俺です。
堀北と鉢合わせしてから20分後。
俺は両手にお米とトイレットペーパーを持ち、堀北と一緒に寮に向かっていた。
「お前、もう少し計画的に買い物しろよ」
「してるわ。今日は界外くんがいたから多めに買っただけ」
「さようで」
まあ、女子に重たい物を持たせるのは忍びないからいいんだけどね。
それより堀北にお願いすることがあったんだった。
「堀北」
「なに?」
「明日、弁当なんだけど教室で渡すのはやめてくれないか」
「別にいいけれど。……理由を聞いてもいい?」
「教室で渡されると前みたいに騒がれる。堀北も嫌だろ?」
池や松下から質問攻めにあうのは勘弁だ。
「そうね」
「だから明日は俺が見つけたベストプレイスで食べよう」
「ベストプレイス?」
「明日教えるよ」
♢♢♢♢♢♢♢
翌日の昼休み。
俺と堀北は部室棟近くのベンチに腰掛けていた。
「こんなところがあったのね」
「ああ。人通りも少なくていいところだろ?」
部室棟近くの人通りが少ない場所に佇んでいるベンチ。
ここが私のアナザー○カイ。
「そうね」
狭いベンチなので、自然と堀北と距離が近くなる。
肩と肩が触れてしまっている。
堀北は気にしていないのだろうか。
俺がドキマギしていると、堀北は鞄から弁当を取り出し、俺に渡してきた。
「はい。約束のお弁当」
「おぉ」
やっとだ。やっと女子の手作り弁当が食べれるぞ。
だが本当におかずは入っているのだろうか。
恐る恐る弁当箱のふたを開けていく。
そして弁当箱の中身は……
「お、おかずがある……」
そこには彩豊かなおかずが詰め込まれていた。
から揚げ、卵焼き、ウインナー、ホウレン草のゴマ和え、ブロッコリー。
どれも美味しそうだ。
よし、しっかり味わって食べるぞ。
「いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
ホウレン草のゴマ和えを箸でつまみ、口の中に入れる。
「……美味いっ!」
「そう。お口に合ってよかったわ」
女子の手作り補正が入り、非常に美味しく感じる。
もちろん補正抜きでも十分美味しいけど。
10分後。
俺は生まれて初めての女子の手作り弁当を食べ終えていた。
「ご馳走様でした」
「お粗末様」
「弁当箱、洗って返した方がいいか?」
「自分で洗うからいいわ」
「そうか」
堀北に空の弁当箱を渡す。
堀北は弁当箱を鞄にしまいながら聞いてきた。
「……そんなに美味しかったの?」
「ああ。15年の人生で1番美味かったかもしれん」
「それは大げさすぎると思うけど」
「それだけ女子の手作り弁当の破壊力は凄まじいってことだ」
「破壊力……」
「それに経緯はどうであれ、堀北が俺の為に弁当を作ってくれたと思うとな。やっぱ嬉しいもんだよ」
俺が手作り弁当について語っていると、堀北が俯いてしまった。
熱く語りすぎて引かれてしまったのだろうか。
堀北の様子を恐る恐る伺っていると、
「また作ってあげてもいいわ」
「……」
俺は堀北の言葉に思わず手のひらで堀北の額に触れた。
ひんやりと冷たい。
「……熱はないわよ?」
「みたいだな」
つまり堀北は正気ということ。
いきなり人格が入れ替わったとかじゃないよね?
「手、どけて貰える?」
「あ、悪い」
謝りながら堀北の額から手を離す。完全に無意識だった。
堀北の顔を見る限り、怒ってはいなさそうだ。ほっ。
「それでお弁当のことなんだけど」
「あ、ああ。ほ、本当に作ってくれるのか……?」
「ええ。ただし食材が余った時だけ。それでいい?」
「それでいい! お願いシャス!!」
「口調がおかしくなってるわよ」
堀北が呆れ顔でクスっと笑う。
こいつ、やっぱ可愛いな。
俺は不覚にも堀北の笑顔にキュンとしてしまった。
♢♢♢♢♢♢♢
午後の授業開始10分前。
昼食を終えた俺と堀北は、教室に向かっていた。
「堀北は何歳から料理し始めたんだ?」
「小学低学年くらいかしら。界外くんは?」
「俺は中一からだな。ちなみに料理漫画に影響されてだ」
「料理漫画、ね」
鼻で笑いやがった。
「堀北も小説ばかりじゃなくて、たまには漫画を読んだらどうだ?」
「気が向いたらね」
「それ絶対読まない人が言う答えだよな?」
「さあ、どうかしら」
おい。さっきの素敵な笑顔はどうした。
あの笑顔は俺の見間違いだったのだろうか。
「界外くん」
「なんだよ?」
教室の入り口近くに行くと、堀北に名前を呼ばれた。
「今日も買い物に行くのだけど……荷物持ちよろしく」
「イエス・マイ・ロード」
堀北がギアスを発動した。
手作り弁当のために、俺は彼女の命令を絶対遵守しなければならない。
俺は軽くため息をつきながら、彼女の後をついていった。
教室に戻ると、綾小路が話しかけてきた。
「堀北と一緒に昼飯食べてたのか?」
「ああ」
「手作り弁当食べれたのか?」
「食べれたよ」
「どうだった?」
綾小路が興味津々に聞いてくる。
「物凄く美味しかった」
「そうか」
そんな羨ましそうな視線を向けられても困る。
そんなに手作り弁当が食べたいんだろうか。
堀北にお願いして、綾小路の分も作ってもらうか。
……いや、無理そうだな。
「そんなに手作り弁当が食べたかったら、俺が作ってきてやろうか?」
冗談で言ってみる。
さすがに男の手作り弁当は嫌だろ。
「いいのか?」
男でもいいのかよ!?
どんだけ手作り弁当に飢えてるんだよ……。
「いいけど」
「それじゃ界外の都合いい時に頼む」
「わかった」
俺と綾小路が怪しい関係であると噂が経つのは、少し先のことであった。
明日は一之瀬メインのSS投下します