誰かの為、拳士は己が拳を振るう。   作:文才零之助

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何故、第一話と合体させて投稿しなかったのか自分でも疑問なお話。
ネギが学園へやってくるまでの繋ぎとして作った一話です。
文字数は約3000と少なめなので短いです、申し訳ありません。


女子寮へお引越し。

俺が、麻帆良学園女子中等部2-Aに転入したその日。

放課後にまたも学園長室へのお呼び出し。

嫌々、学園長室に入室するのだった。

「重要な事を言い忘れておったんじゃ」

「え、なんですかその重要な事って」

嫌な予感しかしないのは、何故だろうね?

「千宏くんには、女子寮に住んでもらう」

「……はあ?」

何を言っているんだ、このクソじじいは。

「昨日言った、君を2-Aに転入させる理由と同じ理由じゃ。言い方は悪いが、女子寮と男子寮に比べれば当然ながら女子寮の方が警備は強化されておる。そちらの方が君を監視しやすいし、動向にも注意が払える。しかも、女子中等部に通うには、男子寮からでは遠いのもまた理由の一つじゃ」

またも筋が通った言葉に反論が出ない。

と、いうか反論したところで昨日のように書類を強制的に書き換えられて終了だろう。

「不本意ながら、従いますよ…」

―――と、こんな会話を学園長としたのが、つい先ほどの事である。

俺が住む事となった部屋の鍵を受け取り、溜息を吐きつつ廊下を歩く。

今日中に引っ越ししろとか鬼畜すぎるわ。

とりあえず、教室に鞄を置きっぱなしなので教室へと足を運ぶ。

教室の扉を開けると、このかとアスナが談笑していた。

「ようやく戻ってきたわね」

「あ、ちーくんや~。ウチら、ちーくんのこと待っとったんよ」

はて、何か約束をしていたっけ?

記憶を掘り起こしてみるが、約束をしていた記憶などない。

「え、何で?」

「何でも何も、アンタ女子寮に住むんでしょ?」

「待て待て待て、なんでお前がそれを知ってるんだ」

「昼休みにな、おじいちゃんからメールもらったんよ~」

「アンタが今日中に女子寮に越さなきゃならないから、手伝ってくれって」

クソじじい、少しだけ見直したぞ。

「それでわざわざ待っててくれたのか、悪いなあこのか」

俺はわざとらしく、このかにだけお礼を言う。

「ええよええよ、おじいちゃんに言われんでもちーくんが大変そうなら手伝っとったし」

「このか…お前が男なら俺惚れて―――へぶらっ!?」

「毎度毎度、凄い音やねぇ」

このか、少しは心配をしてくれ。

俺の頭に突き刺さった鋭く、速くそれでいて重い一撃。

これは…幼少の頃より受け続けている拳だ。

そう、それはもちろんアスナのゲンコツ。

「ア、ン、タ、ねえ~っ! 私だって待ってたのにこのかにだけお礼を言うのはなんなのよ!?」

「あー、ハイハイありがとうございますアスナ様ぁー」

「ねえ、千宏。アンタ…殺されたいの?」

握り締めた拳からめきめきと音がしている。

そんなアスナはとってもいい笑顔。

「すみませんでした」

俺は何かを考えるよりもまず、土下座をした。

迷いも何もなく土下座した。

「はあ、もういいわよ。バカな事やってないで、さっさと引っ越しに取りかからないと終わんないわよ?」

「そうだな。とりあえず、男子寮から新しい部屋に持ってく荷物を運ばないと」

「ほんなら、男子寮へれっつご~!やな」

楽しそうな笑顔で右手を突き上げて歩き出すこのか。

俺もこのかに続いてスタスタと歩き出す。

「アスナ、モタモタしてると置いてくぞー」

「ちょ、待ちなさいよ!」

慌ててアスナも俺とこのかに続いて。

俺たち三人は校舎から出て、男子寮への道を歩く。

「そういえば千宏。アンタ、どうして2-Aに来たのよ? 男子が中等部に転入なんてどう考えてもおかしいとしか思えないんだけど」

「あ、それはウチも気になるなぁ」

これはどう答えりゃいいんだ?

えーっと、えーっと……。

「が、学園長と賭けをしたんだ。俺がテストで全教科百点を取れば、今から高校に合格させてもらえるが、取れなければ麻帆良学園共学化へのテスターとさせるっていうな」

少々無理やりな感じがするが、そこまで嘘っぽくない話だと思う。

「アンタ…その賭け、ノリノリで乗ったんでしょ」

「随分と失礼な決めつけだね、アスナ」

人をなんだと思っているんだ、アスナは。

「へえ~おじいちゃん、麻帆良学園を共学にしよーとしとるん?」

「いや、まだ考慮中らしいぞ。共学化するかどうかを判断する為に、俺がテスターになったってワケ」

「そーなんかぁ…何にせよ、ウチはちーくんと同じクラスになれて嬉しいわぁ」

ほっこりとした愛らしい笑顔を浮かべているこのか。

そんなこのかを見ていると、このかは癒しだなぁ、と思う。

「このか、これから毎日話そうな」

「うんっ、ちーくんといっぱいお喋りするで~」

「千宏」

アスナが俺の名前を呼ぶ。

その声のトーンは低く、正直恐ろしい声だった。

「アスナ様、毎日楽しく話しましょうね!」

グッとサムズアップに満面の笑みを浮かべた俺。

冷や汗が流れているのは気にしないでほしい。

「よろしい」

アスナの一言で、俺は安堵の息を吐く。

マジでアスナ怖すぎるだろ…。

 

 

 

男子寮前。

「ウチ、男子寮見るん初めてやわぁ」

「私は千宏の忘れ物届けに来たり遊びに来たりで、結構来てるわね」

「そうだなぁ、アスナは何回も来てるな。……じゃ、俺の部屋行くか」

「ちーくんの部屋見るんも初めてやし、ウチ楽しみやわ~」

このか、俺の部屋にはなんもないぞ。

俺はこのかの期待に恐々としながら二人を先導する。

そして、歩くこと数分。

「こ、ここが俺の部屋だ」

部屋の扉を開いて、二人を先に中に入れてやる。

「ほえ~…ここがちーくんの部屋なんやねえ…」

「私が前に来た時とまったく変わってないんだけど、千宏アンタここで生活してるのよね?」

「当たり前だろうが。ここ以外に住むとこなんかねぇよ。ちょ、このかそこは開けるな!」

アスナは部屋をうろうろ。

このかはうろうろ、ガサガサ。

クロゼットを開けようとするこのかを止めて、二人をとりあえず座らせる。

「荷物を詰めてくるから、少し待っててくれ」

俺は二人にそう告げて超特急で荷物を詰める。

わざわざ引っ越し作業を手伝ってくれるという二人を、待たせるわけにはいかない。

わずか3分程度で俺は現段階で必要な荷物を大きなバッグ三つに分けて詰めた。

ベテランの主婦並みの早さである。

「つ、詰めてきたぞ…」

「早っ!?」

「おっきいバッグ三つ分も、ようこんな短い時間で詰めたなぁ」

今この瞬間、俺の女子力が二人の女子力を一瞬だけ越えた気がした。

…気がしただけだが。

「この荷物を新しい部屋に置いたら、次は最低限の家具だな」

「了解よ。とりあえず、荷物を置きに行かなきゃね」

「重そうやけど、ウチ頑張るで~」

「本当にすまんな、アスナ、このか」

一人一つバッグを持ち、女子寮へ。

往復すると結構な距離があるが、二人は文句も言わず手伝ってくれている。

こりゃ、ちゃんとお礼をしなきゃな。

談笑しつつ荷物を運び、新しい部屋に荷物を置く。

そうしてはさっさと女子寮をあとにして男子寮へ向かう俺たち。

「次は家具だったわよね」

「ああ、そうだ。家具を運ぶ為に、台車を借りてあるから楽だと思うぞ」

「用意がいいんやね~」

アスナと俺の働く速度はかなりのもので、引っ越しはスムーズに出来ている。

それでも、結構な時間がかかったが。

このかも、アスナほどの速度じゃないにしろきっちり手伝ってくれた。

二人には本当に感謝ばかりだ。

 

 

 

「よ、ようやく終わったー!」

「流石に疲れてもーたわ…」

俺の新部屋に大の字に寝転がるアスナに、ぺたっと座り込むこのか。

「本当にありがとな。おかげで今日中に引っ越せたよ」

俺はパパっと作ったパスタをテーブルに乗せながら感謝の言葉を述べる。

「好きなだけ食べろ、多めに作ったからな」

「えへへ、ウチ、ちーくんの手料理好きなんよ」

「いつ食べても美味しいわよね、アンタの料理」

三人で飯を食べるには、少しテーブルが小さかったが。

俺たちはそんなこと気にもせず、楽しく夕食を食べた。

「じゃあ、また明日な~」

女子寮の廊下で、このかが俺に手を振る。

俺は小さく手を振りかえして、アスナを手招きしてこちらに呼ぶ。

「どうしたのよ?」

「あー、えっと…今日はありがとな。ホント、助かったよ」

「気にしなくていいわよ、このくらい。なんかあれば言いなさいよ?いつでも手伝うからさ。……じゃ、また明日ね、千宏」

俺の言葉を聞いたアスナは微笑む。

アスナもまた、このかのように俺に向かって手を振りながら部屋へと帰っていく。

アスナとこのかの姿が見えなくなって、ちょっとさびしいような気なんかして。

でも、少しだけ。

2-Aへ転入したのも、そう悪くないのかもな、なんて思った。

 




ここまで目を通してくださりありがとうございました。
今回の話は短いので、もう一話連投致します。
次話でネギが学園にやって来ます。
毎日一話は必ず更新したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告お待ちしております。


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