誰かの為、拳士は己が拳を振るう。   作:文才零之助

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今回の話で桜通りの吸血鬼編は終了となります。
次に一話はさんで、修学旅行編へと突入していきますよ!
いやしかし修学旅行編、登場キャラ多くて大変ですね。
頑張ります。

ルビの内容が多すぎると入りきらないのか、長い呪文のルビはだいたい振られませんでした。
短い呪文のみルビが振られており、長い呪文はラテン語なしとなっております。
お許しください。
金髪ロリの呪文、闇の吹雪のルビも振れませんでした。


桜通りの金髪ロリ事件【後編】

未だ包帯は取れていない。

まだ取るな、と言われてしまったのだ。

俺は泣く泣く包帯を巻いて、さあ学校へ――行こうとしたのだが。

茶々丸から電話があった。

簡単に言うと、金髪ロリが風邪をひいたから金髪ロリの家まで来て看病を手伝ってくれとの事。

茶々丸の頼みなら仕方がない。

俺は学校に適当な理由で休むと電話を入れて金髪ロリの家に向かっていた。

茶々丸から説明された通りの場所までやって来ると、目の前には二人で住むには大きめな木造の家。

「ここか、金髪ロリの家は。…それにしても、でかいなこの家」

俺はノックも何もせず、迷いなくガチャリと家の扉を開けて中に入った。

金髪ロリの家だし別に良いだろ。

「千宏さん、おはようございます…。すみません、お怪我をしているのに呼び出してしまって」

メイド服を着た茶々丸が階段を降りて、ぺこりとお辞儀。

「いや、気にすんなよ。茶々丸の頼みなら余裕余裕」

「ありがとうございます。あの、私これから大学病院で薬をもらって来ますので、その間マスターを見ていてもらってもよろしいでしょうか…?」

遠慮がちに、申し訳なさそうに茶々丸が言う。

ううむ、そんなに気にしなくていいのになぁ。

「おう、任せとけ」

「すみません、千宏さん。…では」

最後の最後まで申し訳なさそうにしていた茶々丸は、薬をもらいに出かけた。

俺は二階に上がって、金髪ロリの様子を見る事に。

ベッドで眠る金髪ロリは、とても弱弱しく辛そうな表情。

流石にちょっと心配。

「う、の、喉が…」

喉が渇いたらしい。

あまり気は進まないが、少し俺の血でも飲ませてやるか…。

吸血鬼だし、水より血のが良いだろ。

「ほれ、飲め。……少ししかやらねえからな」

少し血を飲ませ、俺は金髪ロリの口から指を離す。

「うう…暑い…」

「はいはい、カーテン閉めとくぞ」

次は暑いというので、俺は窓から差し込む光を遮断するためにカーテンを閉める。

「ハァハァ…さむい…」

「暑いとか寒いとか、どっちなんだよ…。あー、汗でパジャマがびちょびちょじゃねえか」

俺は目を瞑ったまま、金髪ロリを着替えさせてやる。

そうすると、ようやく金髪ロリは落ち着いたようで先ほどよりは楽そうな表情へと変わった。

「誰か居ませんかー」

下から、ネギの声が聞こえてきた。

俺は下へ降りてネギを出迎える。

「あっ、千宏さん…」

俺を見るなり、申し訳なさそうな顔をするネギ。

「お前の中で答えは出せてるみたいだし文句は言わん。気にしなくていいぞ。…ところで、金髪ロリの看病に来たのか?」

「あっ、いえ。この果たし状を…」

「ま、まあいいや。とりあえず二階に来てくれ」

俺はネギを連れて再び二階へと上がる。

寝込む金髪ロリを見てネギは驚いた表情をしている。

なんで驚いてるんだよ。

「えっ、ほっ、ホントに風邪なんですか!?」

「見りゃ分かるわ」

ネギは金髪ロリが眠るベッドへ駆け寄り、俺もまたそれに続いてベッドへと近寄った。

「う…やめ、ろ…サウザンドマスター…待て、やめろ……」

辛そうな表情で、寝言を呟く金髪ロリ。

それを見たネギは、ハッと何かを思いついたようにして杖を握る。

そして、ネギは俺に見て何かを懇願するような視線をぶつけてくるが俺は無視。

「やだよ、一人でやれ」

俺はバッサリとネギの頼みを切る。

だってやだもん、金髪ロリの夢を覗き見るなんて。

『ラス・テル・マ・スキル・マギステル 夢の妖精 女王メイヴよ 扉を開けて 夢へといざなえ…』

ネギは、人の夢を覗き見る魔法を唱えて金髪ロリの夢の中へ。

「暇になっちまったな」

金髪ロリが夢から覚めるまでの間、本棚にあった本を適当に読んでいた。

だって暇だし。

その中でも、大爆笑ものの本があった。

「身長を伸ばす10の方法…こ、こいつこんなん読んでんのか…ぶふふっ」

笑いが止まらん。

成長が止まってるんだから何しても伸びないに決まってんだろ。

難しげな魔法書とかが置いてあるのかと思えば…。

これは今度から金髪ロリをおちょくるネタに決定だな。

「うわあああああああッ」

「うおおっ、ビックリした」

金髪ロリが叫びをあげながら目覚めた。

「なっ、何故貴様がここに!?」

「茶々丸に頼まれて看病しに来たんだよ」

「ふん、余計なお世話だ」

感謝の言葉一つもねえのかよ、こいつは。

「はっ、しまった、寝てた…!?」

続けてネギも目を覚ました。

「私の風邪はもう治ったから、二人ともさっさと帰れ」

「はいはい、じゃあな」

金髪ロリに言われたとおり俺はさっさと帰ろうと歩き出す。

ネギもまた、金髪ロリに一言二言、言葉をかけて帰ろうとする、が。

「おい、貴様…何故寝ながら杖を握っていたんだ?」

バレたな、こりゃ。

「まさか…私の夢を……?」

ぷるぷると体を震わせている金髪ロリ。

「守桜千宏、貴様もかあああーーッ!!」

「はあ!?」

俺は見てねえよ!

「貴様はいつもいつも私をおちょくって…挙句に夢まで…!! 殺す! 今日こそ殺してくれる!!」

「待て待て! なんでネギじゃなくて俺に怒るんだよおかしいだろ!!」

「殺すーーーッ!」

「もう二度と看病なんてしてやるかあ!!」

結局、いつものように騒いで終わった。

元気じゃねえかよ、金髪ロリめ。

俺の看病はいったいなんだったんだよ…。

 

 

 

 

看病と金髪ロリの夢覗き見騒動の次の日。

今日は年に2回ある大停電の日。

ほぼすべての電力供給を切り、メンテナンスを行う日である。

俺はクソじじい(学園長)に、停電中の見回りを頼まれてしまった為に懐中電灯を握って、寮の外を適当に見回っていた。

はー、めんどくさ。

なんで俺がこんな事をせにゃならんのだ。

もうすぐ八時。

八時から、大停電が始まるのだ。

「12時まで見回りなんて…この時間がもったいない…」

俺がそう呟いた瞬間、時計の長針が12をさして。

学園中の電気が消え、ついに大停電が始まるのだった。

「始まったか――――え゛っ」

学園中の電力供給が止まった瞬間、膨大な魔力反応を感知。

こんなでかい魔力、ネギ以外で感じたことないぞ!?

「また問題発生かよ!? めんどくせえなあもう!!」

それでも見過ごすわけにはいかない。

非常にめんどくさいが、行かなければならない。

『レ・ヴァン・フォルテス・ヴァルテルディス! 空中踏歩ッ!(アーリス・アンブラーテ)

俺は寮の屋根を見下ろせるほどまで上昇し、魔力反応がした方へと走り出す。

空中を走る姿を誰かに見られても、CGで済ませられるからこの学園は恐ろしい。

どうでもいい話だが。

学園都市の端、そこにある大きな橋。

そこから大きな魔力反応が二つ。

一つはネギのものだ。

もう一つは誰のだか分からない。

少し離れた空中から、俺は橋の様子をうかがう。

こおる大地!!(クリュスタリザティオー・テルストリス)

氷魔法を発動するちっこい黒マントの少女が、ネギを追っかけていた。

んん? あれ、もしかして…。

き、金髪ロリ?

あのバカでかい魔力は金髪ロリのものだった事が判明した。

マジかよ、あいつもしかして強い?

真祖っつっても魔力少ないから弱いのかと。

もしかして金髪ロリって強いんじゃないか、と思いかけたその時。

金髪ロリは、ネギが仕掛けたらしき捕縛結界にはまっていた。

うん、やっぱりそうでもなさそうだわ。

魔法使いなのに、仕掛けられた捕縛結界くらい見抜けないでどうするんだよ。

――と、思いきや。

なんと金髪ロリ、捕縛結界を破壊してみせたのだ。

あ、やっぱすごいのかもしれねえ。

そんな事を考えながら見ていると、アスナが走って来ていた。

対応しようとする茶々丸に向かってクソオコジョがマグネシウムリボンに火をつけ、目くらまし。

茶々丸を抜いて、アスナは金髪ロリへ真っ直ぐに向かっていく。

金髪ロリは、魔法障壁があるからと余裕の表情だが…。

「ところがどっこい、アスナの攻撃に魔法障壁なんて無意味なんだよなあ」

俺の言葉通り、アスナの飛び蹴りは金髪ロリの魔法障壁を突破して金髪ロリに直撃。

金髪ロリはその衝撃ですっ飛んでいく。

その隙にアスナとネギは陰に隠れ、仮契約を行った。

あれ、この間仮契約したって聞いたけど…あれはなんだったんだ?

いやまあいいか。

陰から出てきたアスナとネギは、金髪ロリと茶々丸と再び対峙。

『契約執行 90秒間! ネギの従者 神楽坂明日菜!!』

ネギの魔力による身体能力上昇を施されたアスナ。

茶々丸が先に仕掛け、アスナは防戦。

身体能力を引き上げてるとはいえ、やはりアスナの動きは素人とはほど遠い。

俺はいつもあんなヤツの拳を受けているのかと思うと、少し怖くなってきた。

ネギと金髪ロリは魔法の打ち合い合戦中。

お互いに魔法の射手(サギタ・マギカ)を放ち合い、互いに魔法の矢を打ち落としあっている。

俺はそろそろいいかな、と思い橋に降り立った。

「よう、アスナ。茶々丸」

「千宏!? アンタどうしてここに…」

「いや、あんだけでかい魔力同士がぶつかり合ってたら普通様子を見に来るだろ」

「え、そ、そうなの?」

「マスターもネギ先生も、比較的強大な魔力を持っていますので…」

「まあそういうこった」

俺はそこで言葉を切り、ネギと金髪ロリに視線を移す。

魔法の矢の打ち落とし合いばかりで中々決着がつかない事にしびれを切らしたのか否か、ネギが上位魔法の詠唱に入る。

『ラス・テル・マ・スキル・マギステル 来たれ雷精 風の精!!』

すると、金髪ロリはまたも打ち合いをするつもりらしく同種の魔法を詠唱しだす。

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 来たれ氷精 闇の精!!』

二人はほぼ同速度で詠唱を進めていく。

この打ち合い、どうなるか分からん。

『雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の風!』

『闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪!』

雷の暴風!!!(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)

『闇の吹雪!!!』

二人の魔法の打ち合いは、金髪ロリの方が打ち勝っておりネギは負けている。

ネギの持つ小さな練習用の魔法杖にヒビが入り、ネギが負ける…そう思った。

しかし。

「は、ハックシュン!!」

ネギのくしゃみにより、ネギから魔力の奔流が放たれる。

どうもネギは魔力制御がなってないようで、くしゃみをするとその勢いで魔力が漏れ出てしまうよう。

み、未熟すぎるだろネギ…。

魔法使いが自身の魔力くらい制御出来ないでどうするんだよ…。

ネギが放った魔力の奔流と金髪ロリの魔力がぶつかり合い爆発。

爆発光が炸裂し、視界が遮られる。

数秒後、爆発光がおさまったので金髪ロリの方を見ると。

服が脱げていた。

「やりおったな小僧…」

「あ、あわっ、脱げ…っ!?」

まさかネギも脱げるとは思っていなかったようで戸惑っている。

「ぐっ…! だがぼうや、まだ決着はついていないぞ!」

金髪ロリがそう口にして構えた。

「いけない、マスター! 戻って!!」

茶々丸が中々見せない焦った表情で叫ぶ。

「予定より7分27秒も停電の復旧が早い! マスター!!」

大停電が終了しているらしく、学園中の電気がつき始める。

電流のようなものが金髪ロリを打つ。

「ど、どうしたの!?」

「停電の復旧でマスターへの封印が復活したのです。 魔力が無くなればマスターはただの子供、このままでは湖へ…」

雷に打たれ、金髪ロリは湖へ真っ逆さま。

俺はその瞬間、地を蹴り飛び出していた。

金髪ロリを追って下へと飛び降りた俺は、空中踏歩(アーリス・アンブラーテ)の効果で空中を強く蹴り加速。

「千宏ーーッ!!」

「千宏さんっ!!」

ネギとアスナの叫びを背に、俺はさらに空中を踏みしめて加速!

金髪ロリが湖へ激突するまで残りあとわずかで、俺は金髪ロリの手を引っ掴む事に成功。

そのままお姫様抱っこのかたちで抱えてそのままジャンプし上昇。

ある程度の高さまで上昇したところで、上昇をやめ空中を踏みしめて空中に立つ。

「……何故、助けた?」

「あー…そりゃ、お前が俺の大切な友達だからだよ、エヴァ(・・)

「―――だれが、友達だ…バカが」

 

 

 

 

「まあ安心しろよ。俺が呪いの事調べてそのうち解いてやるから」

「それまで何年待たなきゃならないと思ってるんだ貴様!!」

「じゃあ解いてやんねえ」

「なっ…きっ、貴様ーーっ!!」

「なんなんだよお前はめんどくせえな!」

「解け! 今すぐ解け!!」

「呪いの事調べたら解いてやるっつってんだろうがボケ!!」

「名簿のとこに僕が勝ったって書いとこっと」

「ねえ、茶々丸さん…エヴァンジェリンさんっていつもこうなの?」

「いえ、こんなに楽しそうなマスターは千宏さんが来てからで…千宏さんと話しているときはとても楽しそうなんですよ」

「こんなヤツと話していても何も楽しくないわ!!」

「身長を伸ばす10の方法」

「なっ、何故貴様がそれを…!! こっ、殺すーーっ!! 殺してやるーーーっ!!!」




身長が伸びる10の方法は金髪ロリに屈辱を与えられるお手軽な魔法の呪文です。

ここまで目を通してくださり、ありがとうございます。
いや~、金髪ロリと主人公の絡みを書くのが楽しくて楽しくて。
楽しみながら書けたお話でした。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告お待ちしております。

お気に入り件数が60に…!
皆様に感謝致します、ありがとうございます!

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