夢想天生の行く道   作:霧ケ峰リョク

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かれこれ一年近く放置してすみません。
アイディアが中々浮かばなかった事とリアルがきつかったのがあって……………。

ついでにGA文庫に応募して二次審査で落選したりとかしてちょっと気落ちしてたりしてました。

ちょっと文章が変になってるかもしれませんが、感覚を思い出す為にやってるのでご容赦ください。


平安時代 その2

初めてその童に会った時の事は今でも忘れる事は無いだろう。

薄暗い森の中で少女にしか見えないその童は龍と戯れていた。

龍とは自然現象そのものとしか形容できない力を有し、そもそもが神として祀られる存在である。

俵藤太(たわらのとうた)がかつて大百足を退治した際の縁から、龍の姿を垣間見る機会があった。

だからこそ童とともにいる龍の力の強さを肌で感じる事が出来た。

 

それが彼と、博麗霊夢と名付けた少年の出会いだった。

 

   +++

 

唐突な話だが、いやまぁ本当に唐突過ぎる話だが僕こと博麗霊夢は京の都に存在する陰陽師三強と呼ばれるぐらいの実力と能力を有している。

この肉体(ボディ)が持つ才気とスペックは前世の頃と比較することすら烏滸がましいと言わんばかりの力だ。

しかしながら、勘違いされやすいことをしている僕自身が一番悪いのだが、僕は陰陽師では無く武士なのである。

と、言っても養父に拾われて武士になっただけの存在にしか過ぎないのだが。

 

「義父上、博麗霊夢…………ただいま戻りました」

 

自宅がある屋敷、その襖を開けて布団に横たわる義父に挨拶する。

 

「おう、帰ったか霊夢」

 

義父は布団から上体を起こして出迎えの挨拶をする。

髪は日本人には見えない金髪が目立ち、顔には皺がある。されど肉体は衰え知らずという言葉を体現するかの如く力に満ち溢れていた。

瞳は綺麗な蒼でまるで全てを見透かされているような気分を感じる。

これで前線を引いたとはとてもではないが信じられない。

それ程の力を有した人間だった。

 

彼の名前は坂田金時。

 

我が養父にして、かつて京の都にて名を知らぬ者など居なかった

頼光四天王。その一角を務めていた益荒男である。

 

「義父上…………体調の方は大丈夫なんですか?」

「おうよ! この通りピンピンしてるぜ!!」

 

僕の問いに義父は筋骨隆々とした腕を見せ、力強く振るう。

それと同時に腕から稲妻が迸った。雷神と山姥の子でもある義父は雷を操り、人間のものとは思わない剛腕を有する。

一つだけでも凄まじいというのに二つも持っているのだ。

これが数多の妖魔と戦い続けた本当の英雄というやつなのだろう。

力に対する責任を、弱者の為に立ち上がる誇りを、どんな不条理にも立ち向かう勇気を持っている。

その全てが自分には持ち得ないだろう人間として素晴らしいものだ。

故に僕は人間として義父上を尊敬している。

これは僕の、裏表の無い確かな思いだ。

 

「でも病み上がりですし、しっかりと休んで下さいね。いくら父上が剛力の持ち主だからといっても病には勝てませんから」

「はっはっは! 分かったよ。ちゃんと休むからその呪術が刻まれた札をしまってくれ」

 

だからこそ義父にはまだまだしっかりと生きていて貰いたいのだ。

彼の人は間違いなく英雄である。しかし、英雄と言っても所詮は人間なのだ。

不死を手にいれていたとしてもそれを手放すこととなり、最後には悲惨な結末を迎えることになる。

全てがそうと言うわけでは無いし、誰からも悲しまれる最後を遂げる者だって居る。

だが大半の者が悲惨な結末を遂げることになるのだ。

僕は義父にそうなってほしくない。

いかに剛力を有する義父と言えど体調を崩している時に戦えば命を落とすことになるだろう。

これが過小評価だったとしても、大切な人に生きていてほしいと思うのは間違いでは無い筈だ。

 

「本当にしっかりと休んで下さいよ。ただでさえ義父上は無茶をするんですから」

「いや、お前もかなり無茶なことをするだろ」

「僕はまだ若いから良いのです」

 

未だ13歳の我が身と55歳とこの時代にしては長生きの部類に入る齢。

どっちが無茶をしても良いのか等、明白である。

 

「っと、それはそれとして、だ。なぁ霊夢。お前、妻はまだ娶らないのか?」

 

僕の頭を撫でながら義父は唐突にそのような事を聞く。

この時代において結婚年齢は十代前半が基本のようなもので、十代後半だと行き遅れのようなものだ。

とは言え、それは女性に限った話の筈だ。

まぁ、男でも奇異の視線を向けられる場合もあるのだが。

 

「僕はまだ若いから良いんですよ。それよりも義父上の方こそ結婚してはいかがですか?」

 

しかしながら結婚もしていない義父にその心配をされるとは思ってもみなかった。

養子として僕を育てているとはいえ、義父は未だ未婚の身である。

正直に言って義父の方こそ結婚した方が良いと思う。お家を存続させることは養子の僕でも出来るとは言え、やっぱり血の繋がった実子の方が良いと思うのだ。

 

「いいや、俺ぁいい…………」

 

だが義父は僕の言葉に対して頭を振る。

詳しい事は知らないし覚えていない、そして義父自身が話したがらないので分からない。

ただ過去に女性関係で何かあったのか、僕がこういった話題を振ると黙ってしまう。

義父は初心だ。

地位があるのにも関わらず、外見に反して女遊びというものをした事が無いくらいに真面目に生きている。口では豪快なことを言っているがこの時代、誰よりも誇りを大事に生きているのは間違いなく彼だろう。

 

「まぁ、僕も義父上が死ぬ前までには孫を見せますから。それまで長生きして下さいね」

 

   +++

 

「ふんふんふふふーん♪」

 

坂田金時は義息たる少年の後姿を見る。

鼻歌を歌いながら洗濯物を干している姿を見て、まるで少女のようだと思ってしまった。

実際、外見の可憐さも相まって少女にしか見えないだろう。

 

「本当に、元気に育ったな…………」

 

縁の下で座りながら金時は霊夢との出会いを思い返す。

龍に育てられた童、彼と最初に出会った金時が感じた事は「酷く冷たい眼をした、自己嫌悪に塗れた子ども」だった。

何者にも興味が無く、酷く平等的。誰に対しても冷酷になれる子どもらしくない子ども。

そして、そんな自分を心の底から嫌に思っている。

とてもではないが子どもがして良い目じゃなかった。

それが坂田金時が博麗霊夢と名付けられる少年に抱いた最初の印象だ。

 

「…………もう、俺が傍に居なくても大丈夫そうだな」

 

だが、それも昔の話である。

かつての自分が“母”に育てられたように、金時は霊夢の“父”として接した。

良き父親としてあれたかは分からないが、少なくとも霊夢は良い子として育った。

かつての四天王に比べても遜色は無いだろう。否、四天王をも超えているかもしれない。

少々不安な事もあるが霊夢なら乗り越えてくれるだろう。

 

「なぁ、霊夢よ」

 

金時は洗濯物を干し終えてやり切ったと言わんばかりの顔を浮かべている霊夢に声を掛ける。

 

「ん、どうしたの父さん?」

「お前は俺の自慢の息子だ」

 

表裏の無い、心の底から思っている偽りの無い思いを告げる。

霊夢は恥ずかしいからか、顔を赤くし頬を掻く。

 

「い、いや…………僕はまだ義父上みたいになれていないから…………」

「お前がそう思っていても、俺はお前の事を誇りに思っているぞ」

「うぅ…………あ、ちょ、ちょっとお茶の用意をしてきますね…………!」

 

いたたまれなくなったのか、霊夢は顔を真っ赤にして家の中に引っ込んだ。

揶揄うつもり等欠片も無かったのだが、結果として同じようなモノになってしまったらしい。

かつての幼馴染、かつての宿敵、かつての初恋の相手と同じような事をしてしまい、思わず苦笑いを浮かべてしまう。

まさか今になってあの鬼の気持ちが少しだけとは言え分かるとは思ってもみなかった。

 

「…………さて、準備でもするか」

 

金時は縁側から立ち上がり、征伐の準備をする為に家の中に戻る。

霊夢にはあれ程言われていたが、自分は武士だ。武士である以上、やらなくてはいけない役目がある。

例え死ぬかもしれないとしても、だ。

とは言え、流石に霊夢を心配させ過ぎるのは良くないだろう。

今回の征伐が終わったら少しばかり休みを取ろう。

 

「確か賊は筑紫だったか? まぁ、近い内に戻れるだろう」

 

戻ってきたら霊夢と一緒に酒でも呑もう。その為に良い酒を仕入れたのだから。

心の中でそう思いながら金時は自室に戻った。

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