雪の華   作:ウメ、

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旧一話を二つに分けました。
内容はほとんど変わりません。


第一話

先輩は初めて会った時から私を変えようとしてくれた。

改造計画なんてうそぶいて一緒にアイドルを目指した。

でも私が本当にしたかったことは

 

「先輩の役に立ちたい」

 

ただそれだけだった。

 

 

 

*****

 

 

 

「最高に目立ってたよな」

「だな、衣装気合い入れたかいがあったな」

「あんなに勝てるとは思いませんでした」

 

 秋の国民麻雀大会、通称コクマで私、真屋由暉子は自分でも驚きの快進撃を演じました。揺杏先輩の作ってくれた衣装も話題になり、私の知名度は徐々に上がってきているらしいです。

 ただあまり実感は無くて

「先輩たちが喜んでいるならよかったかな」

なんて楽観的に考えていた時でした。

 

「みんな大変よ」

「だ、大ニュースです!」

「おっ!なんだ、なんだ?」

 

誓子先輩と成香先輩が息を切らしながら教室に駆け込んできます。

こんなに急いでいても扉をきちんと閉める成香先輩素敵です。

 

「ユキにオファーが来たの」

「オファーって、もしかしてテレビか!?」

「残念ながらテレビでは無いんですが」

「なーんだ」

「Weekly麻雀todayがユキの特集組みたいって」

「えっ・・・」

 

とても現実だとは思えません。インハイの時に有珠山高校として載ったことはあるものの、個人の特集だなんて私に務まるのでしょうか?

一人で不安になっていた私を爽先輩の声が現実に引き戻します。

 

「よっしゃ!!」

「!!」ビクッ

「はやりんがグラビアやってた雑誌だよな?」

「えっ、そうだけど」

「これは早くもはやりんに並んでしまったか」ドヤ

「そんなわけありません」

「そもそもなんで爽がドヤ顔なのよ」

 

私よりは爽先輩の方がドヤ顔が似合いますね。

 

「私のプロデュース能力って実は凄いんじゃないか」

「いやいや、私の衣装が評価されたってことも」

「何言ってるの、ユキのおかげに決まってるでしょ」

「ユキちゃん、素敵です」

 

私としては爽先輩と揺杏先輩の言うことも一理あると思います。インハイやコクマでの活躍も先輩たちの言うことをちゃんと聞いたおかげでしたし。

 

「ユキはどう思う?この話もちろん受けるよな!?」

「はい、先輩がそういうなら。ただ・・・」

「ただ?」

 

断る理由はありません、先輩たちもきっと喜んでくれます。でも、

 

「水着で写真を撮られるのはさすがに恥ずかしいです」

「あーグラビアかー」

「確かチャンピオンとか学生の特集は大体制服で写ってたはずよ」

「なるほど、それなら大丈夫そうです」

「ユキなら水着でもはやりんに負けてないと思うけどな、おもちとか」ボソッ

「私は揺杏ちゃんの作ったお洋服がいいと思います」オモチ??

「おっ、成香ナイスアイディア!それ採用!」

「そうと決まれば、さっそくデザインを考えて・・・」

「勝手に決めてしまっていいんですか?」

 

先輩達があーでもないこーでもないと特集の内容を話し合っています。特集の内容は出版社の方が決めると思うんですが・・・

 

「せっかくだから対談したいよな、対談!」

「誰とするんですか?」

「ええと・・・、はやりん?」

「来てくれるわけないでしょ」

 

対談そのものを否定しない当たり誓子先輩も興奮しているみたいですね。

先輩たちが私のことで盛り上がっている光景をみると、有珠山高校に入ってよかったと思えます。

 

「今のうちにインタビューとか写真撮影の練習しとかないか?」

「はい、やりたいです」

「ユキ乗り気だな。よしじゃあ成香インタビュアー役な」

「ええっ?爽さんがやるんじゃないんですか?」

「私はほらカンペ出すから」

「その役は必要なの?」

 

以前にも少し受けたことがありましたけど、本格的なものは初めてです。でも私より成香先輩が緊張してるみたいで、

 

「そ、それでは麻雀を始めちゃっ!?」

「盛大に噛んだな」

「イタイデス…」ウウ

「成香大丈夫!?」

「チカちゃん・・・」

「ほら成香おいで」ヨシヨシ

 

完全に二人の世界に入ってますね。

 

「しゃあない私がやるか」

「それじゃあ麻雀を始めたきっかけは何ですか?」

「先輩たちに誘われましたので」

「インハイで着ていた衣装はどうしたんですか?」

「先輩に作ってもらいました」

「目標は何ですか?」

「先輩の役に立ちたいです」

「・・・・・・」

 

揺杏先輩が黙ってしまいましたけど何かまずかったでしょうか?

 

「ユキの特集でこれはどうなんだ?」

「全部本当のことではあるんだろうけど・・・」

「ちょっと遊ぶだけのつもりだったんだけど、やってみてよかったな」

「これは後で復習ね」

 

よくわかりませんが復習するなら頑張らないとですね。

 

「じゃあ次は写真撮影だな」

「ぽーじんぐってやつですね」

「ポージング、かっこいい!」

「まずはチャンピオンがやってた牌持つポーズやってみよう」

「こうですか?」

 

牌を指で挟んでポーズを決めます、これ意外と難しいですね。

爽先輩が撮ってくれますが、

 

「笑顔がぎこちないわね」

「いざ写真を撮られるとなると緊張します」

「よし成香変顔してみて」

「えー!?」

「ほらほら」ハヤク

「チカちゃんまで・・・・・・ニパァ」ヘンガオ

 

なんとも表現しづらい顔ですね、強いて言うなら・・・あざとい?

 

「・・・」カシャッ

「何で私を撮るんですか!?」

「私にも送ってくれない?」

「チカちゃん!?消してください!」

「ふふふ」

「・・・」カシャッ

「ユキ今のよかったぞ」

 

そう言って見せてくれた画像の私は自然に笑っています。

先輩たちを見ているとついつい表情が緩んでしまいますね。

 

「もっと動きながら撮る練習もしてみよう」

「じゃあ外行きますか?」

 

そのまま校庭にでて練習続行です。撮るたびに「かわいい、素敵」なんて言ってくれるので、私もだんだん気分が乗ってきます。

 

「いいぞユキ。ほら今度はこっちから」

「はい!!」

 

3人が少し離れて見守るなか、2人で夢中になって続けます。まるで世界に2人だけしかいないように。

 

「爽もユキもノリノリね」

「ユキちゃんかわいいですから、今は制服ですけどちゃんと衣装着たらホントにアイドルと変わらないです」

「気合い入れて衣装作らないとな・・・あれ、雪?」

「そういえば少し降るって言ってたわね」

「二人とも中に戻るー?」

 

「このくらいなら大丈夫だろ、むしろ少し降ってた方が絵になる」

「ユキいいぞ!その調子だ」

「はい!!」

 

ふらふらと雪が舞い降りては消えていきます。

爽先輩も言ってますし、私もまだ練習していたいです。なにより爽先輩が楽しそうにしている時間を終わらせたくありません。

 

「前から思ってたんですけど、ユキちゃんって雪が似合うと思いませんか?」

「それはユキと雪をかけて・・・」

「違いますよ!」

「私も似合うと思うわよ。ユキはどことなく儚いところがあるというか、最近はそうでもないかもしれないけど」

「でも今はすごく素敵です」

「うーむ、今度の服は雪をイメージしてみるかなぁ」

 

時には笑顔の時には寂しそうな顔のあらゆる私を撮ってもらいます。

爽先輩の声が止んでからも私は動き続け、爽先輩は撮り続けています。

雪踏みしめる音とシャッター音だけが響くなかで、アイドルになったつもりで爽先輩に届けとたくさんの気持ちをこめる。

 

「・・・・・・」

「綺麗・・・ですね」

「踊ってるみたいだな」

「・・・そうね・・・それにしても爽はすっかり夢中よね」

「それは撮影に、それとも・・・・・・ユキに?」

「そんなの決まってるじゃないですか」

「やっぱり?でも本人はあんまり自覚してないんだよな」

 

遠くで先輩たちが何か話していますが、雪のせいかよく聞こえません。知らないふりをしてもう少し続けましょう。

そんなことを考えているとふとシャッター音が止んでることに気づきました。

 

「・・・・・・」

「爽先輩どうかしましたか?」

「・・・あ、ああ」

 

先輩のスマフォの画面は一枚の写真を映していました。

 

「この写真すごく綺麗だと思って、つい見惚れてた。こういうの奇跡の一枚っていうのかもな」

「どうでしょう?自分ではよくわかりません」

 

なんてはぐらかしながら、私はつい緩んでしまう頬を引き締めます。私を見てくれていることが嬉しくて。それだけで幸せでした。

 

「これ待受にしようかな?」

「私をですか?」

「ああ。だって自慢できるだろ?『私のアイドルだぞ、いいだろー』って」

「止めてください、恥ずかしいです」////

「よし、採用!」

 

そんなことを言われたら、本気で止められるわけがありません。恥ずかしいですけど、その何倍も嬉しさが込み上げます。

 

でも少し不思議だったのは「奇跡の一枚」と見せてくれた写真が、私には本当に違いがわかりませんでした。表情もとびきりの笑顔という訳でもなく、何と言っていいか微妙な表情をしていました。

 

 

 

とてもとても幸せな時間でした。

 

 

 

 

 

 

「私たちもう卒業なのにどうするのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

今まで耳に届かなかった声が鮮明に色を帯びます。

私が無意識に考えないようにしていた、必ず訪れる未来の話です。

私の前から2人がいなくなってしまい、そして次の年にはもう2人。そうなれば私はまた1人きり。

中学の頃なら気にもしなかったことですが、今は1人に戻るのが酷く恐いです。私は耐えることができるんでしょうか?

 

考えるほどに沈んでいく私に近くから声がかかります。

 

「ユキ?何暗い顔してるんだ?私の撮影技術が不満なのか!?」

「いえ、そうではなくて」

「大丈夫、本番ではプロのカメラマンがちゃんと撮ってくれるって」

「・・・・・・」

「まだ不安か?・・・本番は1人でも私たちが後ろから支えてるから!そう思えば不安も吹き飛ぶぞ」

「・・・はい!」

 

先の無い行き止まりの世界が一気に拓けたようでした。

先輩からすれば後輩を気遣う何気ない一言でしょう。

でもその時の私には

「来年、再来年と別れが来ようともいつでも支えてる」

そう言われているようで。

 

爽先輩は本当に心が読めるんじゃないかと思うことが時々あります。

 

 

まったくの偶然かもしれませんが

 

「1人でも後ろから支えてる」

 

この言葉だけでその時の私の不安を吹き飛ばすには十分でした。

 

 

 

 

 

 

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