雪の華   作:ウメ、

3 / 8
ほぼ状況説明回。




第三話

ユキに進路を黙っていたのは、ちょっとしたドッキリ・サプライズのつもりだった。

少しのビックリと呆れるユキ、それだけで簡単に終わるはずだった。

 

でもユキは真剣に悩んでいた。

私たちが声をかけずらいくらいに。

 

最後には私が伝え忘れていたことに無理矢理した。

真剣に怒り、焦っているユキに「ドッキリでした」なんてとても言えなかった。

 

でもそんなユキを見て私は嬉しく思った。

私の事で悩むユキがいつも以上に愛おしく思えた。

 

 

 

*****

 

 

 

「終わったーーー!!」

「これで手続きも一段落ね」

 

ふう、と息を吐くチカ。

私とチカが進学してから一月がたとうとしていた。

その間、いろいろな手続きに忙殺され後輩たちとはほとんど会えていない。

しかしそれもこれで終わり。

もうすぐ楽しい楽しいゴールデンウィークだ。

 

「ようやくスッキリだ」

「麻雀部・・・本当に良かったの?」

 

何度も繰り返された質問だ。

チカも飽きないな。

 

「もういいんだって、麻雀は高校で終わり!」

 

私は大学の麻雀部・麻雀サークル、地域の麻雀クラブなどの誘いを全て断っていた。

チカはそれを良く思ってないらしい。

 

「それにカムイの力を使わない私なんてただの美少女だからな」

「・・・はぁ、ハイハイ」

 

呆れられてしまった。せめて突っ込んでからにして欲しかったな、周りの視線が痛い気がする。

 

「まあ他にやりたいこともあるしな」

 

そう言って落とした視線の先にはサークル申請書の文字。

 

「爽らしいとは思ったけど、まさか許可が出るとは思わなかったわ」

 

北海道のお悩み解決隊(仮)

麻雀を止めて何をするか考えた結論がこれだ。

カムイの力を麻雀ではなく、人のために使おうと思う。

 

「なんと言うか昔から変わらないわよね、爽は」

「やっぱり子どもっぽいかな?」

 

よく言われるので気にしてないが一応聞いてみる。

 

「むしろ大人すぎるくらい大人だと思うわよ・・・成香と比べて」

「それは大人なのか子どもなのか!?」

 

成香には負けていない・・・はず。

 

「そういえば有珠山高校は新入部員入ったのかしら」

「ユキ目当ての人で見学は凄かったらしいぞ」

 

Weekly麻雀todayでさらに人気のでたユキは「北海道のはやりん」とか「高校生版はやりん」なんて呼ばれかたもしているらしい。

はやりんが最近不調なのはユキの活躍に戦々恐々としているからだとはもっぱらの噂だ。

 

「良いことじゃない?」

「うーん、どうだろ?」

「そっか!ユキが誰かにとられないか心配なの?」

「まあ少しはな」

「あれ?随分正直なのね」

 

あのサプライズの失敗でお互いに心境の変化があったのだと思う。

あれから私とユキは二人でいる時間がとても増えた、以前よりお互いのことをよく知ろうと努めた。

そんな私たちは周りからはイチャイチャしているように写っていた見たいで。

 

「付き合いたてのカップルだもんね、当たり前か」

 

私たちはいつの間にかそういう扱いになっていた。

もちろん私とユキの間にそういった事実はない。キスは当然、愛をささやいたことすらない。

しかし噂は広まり、一部では公然の秘密のように扱われているらしい。

チカ・揺杏・成香は事実を知っているが、三人とも楽しんでからかってくるしまつ。

噂が広まったのはだいたいこいつらのせいだ。

 

「大学でも噂してたのか?」

「別にいいじゃない、噂が流れればユキに手を出す人もいなくなるわよ」

「そうだよな・・・」

 

そう言われると強く反論できない。

その案はひどく魅力的に響く。

結果あまり否定しなくなる、これも高校で噂の広まった一因だろうな。

でも

 

「早くなるようになっちゃえばいいのに」

「簡単に言われてもなー」

「一言『付き合って下さい』で済む話じゃない」

「ユキがどう思ってるかわからないだろ」

「・・・・・・はあ」

 

また呆れられてしまった。

ユキが私を好いてくれているのはわかる。

ただそれがlikeなのかloveなのかわからないだけだ。

私は人から向けられる好意に疎いのかも知れないな。

 

「ユキが断ると思うの?」

「思わないけど、ユキなら恩返しのためだけに『はい』って答えそうだし」

 

そんな答えは望んでいない。

私も、きっとユキも。

欲しいのは本心からの答えだけだ。

 

 

 

*****

 

 

 

「ゴールデンウィークが遠い!!」

「もう今週末じゃない?」

「だって~」

 

最近は遠足の前の小学生よろしく楽しみで仕方がないのだ。

何しろ5人全員が集まるのは大学入学以来始めてだ。

 

「ところで集まってどこ行くかは決まったの?私まだ聞いてないんだけど」

「あれ言ってなかったっけ?・・・のど自慢出るぞ、みんなで」

「・・・あのN○Kでやってる?」

「うん」

「・・・本当に?」

「うん」

「・・・・・・」

「うん?」

「・・・いつも・・・言うのが遅いのよ!!もう今週末じゃない、なんの準備もしてないわよ!?」

「大丈夫!書類審査はパス済みだ」グッ

「グッじゃないわよ!?曲は?衣装は?場所は?」

 

予想以上の反応だな。うん。

 

「一旦落ち着けって」

「爽が落ち着き過ぎなのよ!?」ガタッ

「」ザワザワ

 

立ち上がっていたチカがゆっくり座る。

 

「・・・」

「コホン。揺杏たちは知ってるの?」

「揺杏だけな」

「まぁ部長だものね」

「あとユキに歌を練習しておくようにってだけ言ってあるな」

「なるほどね、まったく懲りないわね」

 

自分でも思う。

ただ今回は失敗しても誰も悲しまないサプライズを選んだつもりだ。

 

「ユキに呆れられるわよ」

「ユキと成香はきっと今頃、何をさせられるか考えて、悶々としてるぞ」

 

ユキの悶々とする姿を想像する。

なかなかいいんじゃないか。

 

「ま、まったく。・・・何よ?」

「いんや」ニヤニヤ

 

チカだって成香を想像したはず。

 

「で曲と衣装と場所は?」

「曲ははやりんの『時にはHAYARIに流されて』、衣装は前に揺杏が作ったやつでユキは取材の時のだな。場所は大学の近くの市民ホール」

「用意は完璧なのね」

「あとは前日のオーディションに合格するだけだ!」

「なるほどね。私たちも頑張って練習しないとね」

「あ、練習は禁止な!」

「えーー!」

 

 

*****

 

 

 

スマフォのユキの写真を見る。私の撮った「奇跡の一枚」だ。

最近この写真をよく見るようになった気がする。

 

今回の「のど自慢大会」の動機は単純。

世間に見せつけたいのだ。ステージで歌って踊る私のアイドルを。

 

そして幼稚な嫉妬心と独占欲。

人気ものになったユキを私の物だと宣言したい。

噂は本当なのだと知らしめる、その為だけのステージだ。

 

自分でもくだらない理由だと苦笑する。

それでも写真が私を唆す。

『私を手に入れてみて』と。

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

この時の私はそんなことしか考えて無かった。

ユキのことを一番見えていなかったのは私だったのかもしれない。

 

 

 

 




いろいろ終わって生活が安定したんで、週一更新目指します。(努力目標)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。