雪の華   作:ウメ、

4 / 8
第四話

私と爽先輩は付き合っているらしい。

自分のことなのに変だけど、どうもそうらしい。

 

私は爽先輩のことが好きだ。

先輩は私にとって唯一無二のかけがえのない存在だ。

 

でも私はどうだろう?

私は先輩にとって特別?

 

先輩は誰にだって優しく頼もしい。

それが私を不安にする。

 

でも・・・アイドルとしての私は先輩にだって特別なはず。

だから私は・・・

 

 

 

*****

 

 

 

「おはようございます、爽先輩」

「おおっユキ!待ってたぞ」

 

会うのは確か一週間ぶり。毎日会って話していた頃が懐かしく恋しいですね。

 

「久しぶりーー!!」

 

そう言いながら飛び付いてきます。卒業してからの先輩は二人だけの時にこうす

 

「ユキーー!」

「」

「会いたかったぞー」

「うっ・・・こ」

「こ?」

「こ、殺す気ですかっ!?」

 

息を切らしながらの抗議で漸く先輩の腕の中から脱出です。

名残惜しいとかはこの際考えません。

 

「悪い悪い。久々に会うからなー。それにユキが可愛いのがいけないと思うぞ」

「そんなこと言ったって許しませんよ」

「時と場所は選んでるし、たまにはいいじゃんか?」

「力が強すぎるんです!」

 

なお抗議しながらも、頭には別の事が過ります。

 

(こんなに強いのは初めて・・・何か嫌なことでもあったんでしょうか?でもたまにならいいかもしれませんね)

 

「ユキだって満更じゃ無さそうじゃんか」

「知りません。そんなことより」

「そんなことっ!?」

 

ショックを受けてる先輩は無視して進めます。

 

「今日はどうするんですか?」

 

今はゴールデンウィーク真っ只中。今日は元有珠山高校麻雀部の五人で出かけると聞いてます。詳しくはまたサプライズらしいです。

 

「よしじゃあそろそろ行くか」

「他の先輩方は待たなくていいんですか?」

「向こうは衣装持って現地集合の予定」

 

ということはしばらく二人きりですか。

・・・寝癖は直したはずですし、服も変なとこはないですよね。

 

「どうした?いきなりキョロキョロしだして」

「い、いえ」

 

さっきまでは先輩の勢いで忘れてましたが、改まると例の噂のせいで意識してしまいますね。

爽先輩もそうなんでしょうか?

 

「というか衣装ですか?」

「そう。weekly麻雀todayの時のやつ、あれ可愛かったからな」

「確かにあれは・・・って、そうじゃなくて今日何するつもりですか?」

 

また変なことを、と爽先輩に視線を送る。

 

「チッチッ」

 

今回は違うぜ、と得意気に舌を鳴らす先輩。

無駄に勢いをつけると

 

「今日はのど自慢に出場する!!」

 

高らかに宣言する。

どうだ驚いただろう、とドヤ顔決めてますが。

 

「・・・そうですか」

「薄っ!?それだけか?もっと『えーー!』とか『じぇじぇじぇ』とかないのか?」

 

古いです。それに

 

「だいたい予想してましたから。歌の練習をしっかりさせられて、ゴールデンウィーク中のイベントとくればだいたい予想つきます」

「ぐぬぅ、練習させたのは失敗だったか」

「それじゃ本末転倒なのでは?」

 

本当に悔しそうですね。

そんなに驚かせたかったんでしょうか?

 

「他の先輩は歌の練習知らないので、びっくりするんじゃないですか?」

「ユキじゃなきゃ意味ないんだよ」

 

その台詞はドキッとします。不意討ちは止めて欲しいですが

 

「驚いた顔写真にとって団扇にして、本番で振ろうと思ったのに」

「何しようとしてるんですか!?」

 

さっきのドキドキを返して欲しいです。

それに、

 

「そんな顔他の人には見せたくないです」

 

込めた想いに気付いてくれたのか、顔を赤くする先輩。

先輩には赤がよく似合いますね。

 

「・・・」

「・・・」

 

心地よい沈黙です。

今なら手を繋いでも、繋ぎ返してくれるでしょうか?

ちょうど手を伸ばそうとした時、先輩から沈黙が破られます。

 

「プ、プロデュースするならアイドルの全てを知っとかないといけないもんな」

「全てって何が知りたいんですか?」チラッ

 

一瞬目が合いましたが、逸らされます。

 

「全ては・・・全てだ」

「はぁ、意味がわかりません」

「こんな質問答えられるかー!何答えたってセクハラにされそうだし!」

「よくわかりましたね」

「」

 

爽先輩が勢いで誤魔化してますが顔は赤いままですね。

答えてくれなかったのはちょっとショックです。

それとも本当に全てが知りたかった、なんて流石にそれはないですよね?

 

 

「そ、それより今日の話だ!ダンスも覚えてるな?」

 

話題を変えるのも無理矢理すぎません?

 

「はい。でもオーディションって受かるんでしょうか?」

 

受かる前提で考えてましたけど、本来かなり狭き門のはずです。

 

「今回は厳しいと思って事前リサーチして、作戦も考えてある」

「やけに自信満々ですね」

「客観的に見て、受かる確率はかなり高いはず」

 

イマイチ納得できず、首をかしげる私を見て先輩が得意気に続けます。

 

「まず知名度がある。去年のインハイ出場選手でユキは雑誌にも出た。」

「確かに」

「次は本気度。ユキのダンスと歌は本気で練習しているのが伝わるし、揺杏の衣装は本物のアイドルレベルだ」

「そうですね」

「そしてこれが決めてだが、今回はいつもより応募が少ないらしい」

「・・・たまたまじゃないですか!?」

「たまたまでも出られればいいだろ?」

 

こう理由を並べられると最後は別にしても、受かる気はしてきますね。

それにしても

 

「先輩たちもダンスと歌練習してたんですね。気づきませんでした」

「ん?してないぞ」

 

聞き間違えたみたいです。

 

「練習してたんですね?」

「だから、してないぞ」

「・・・なぜっ!?」

「おおう・・・私たちが下手な方がユキが目立つかと」ビクッ

 

私個人よりも五人を見て欲しいですが。

それでオーディション受かるんでしょうか?

 

「今日集まったら最低限の練習はするさ。だから今回は自分のステージだと思って、思い切りやってくれ」

「・・・先輩はいつもそうです。自分より私のことばかり」

「ユキにはそうしたくなる魅力があるんだよ」

「先輩にだって・・・」

 

魅力がある。そう言おうとしましたが先に先輩の声が重なります。

 

「なら一つお願い聞いてくれないか?」

「お願いですか?」

「ああ。本番は私だけに向けてのステージにしてくれ」

「先輩だけの?」

「歌とかダンスって誰かに向けてやるだろ?本来はお客さんみんなに向けてやるのかな。それを私だけに向けて欲しい」

「はい!!」

 

今の私では歌やダンスでそれを表現することは難しいと思う。だから出来る限りの気持ちを込めよう。それができれば言葉なんて後から着いてくるから。

 

「二人だけの密約だ」

「秘密の約束です」

 

しっかりと小指を絡める。離そうとしない、離したくない。

そのまま歩き続ける。

 

「二人だけの密約なんてカッコいいです」

「他にもするか?」

「何がいいでしょうか?」

 

いつの間にかどちらからとなく結ばれた手は会場に着くまで離れることはありませんでした。

 

 

 

*****

 

 

 

結果から言うと、事前オーディションは無事通過することができました。

今日のことを何も知らなかった成香先輩が緊張のし過ぎで体調を崩したり、手を繋いでるところを見られてからかわれたりアクシデントはありましたが何とかのりきりました。

 

明日は本番。たくさんのお客さんの前でのステージです。テレビのカメラまで入ります。

 

でも今の私にはそんなことはどうでもよくて。

先輩に向けてのパフォーマンス。

どうすれば先輩に伝わるか、それだけで頭がいっぱいでした。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。