フェイトをヒロインにしたいがための話   作:通天閣スパイス

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日記形式をちびちび書いてたら量が出来たので、投稿してみるテスト


第一話

 ○月×日

 

 

 誕生日プレゼントということで、海外に行っている親から宅配で日記帳を貰った。ペンタブが欲しいという俺の要望は何処に行ったんですかねママン。

 ごねてもプレゼントは変わらなかったし、何だかんだと使い勝手がいいので、とりあえず使ってみることにする。ブログもやってないことだし、たまにはこういうのもいいかもしれない。

 

 しかし、日記といっても何を書けばいいのか。今一よく分からないが、最初だし今日はこんな感じでいいだろう。

 本格的なのは明日からやればいい、うん。

 

 

 

 ○月△日

 

 

 日記にはその日にあったことを書けばいいのだ、と友人に教えられた。自分以外に読む人間なんていないのだから、適当に書いていけばいいらしい。

 

 そうはいっても、日常でそう簡単に日記に書くほどのことが起きるのかは、はたして疑問である。フィクションの人物のようにハプニングを引き寄せるような体質は持っていないのだ、自分の日常生活は至って平々凡々と形容する他ない。

 朝起きた、学校行った、帰った、ご飯食べて寝た。そんなことをただ連ねてゆくだけの日記に何の意味があるというのか。日記というのは、もっとこう、情報を残すべきではないだろうか。

 そう考えると、何のイベントも起きない自分の運命が少し嫌になってくる。日々是平穏、世は並べてこともなしというのが一番だとは分かっているが、やはりたまには退屈を吹き飛ばすような何かが起きて欲しい。

 

 異世界に召喚されたいだとか、そういう中二病的な寝言はさすがに口にしないが、死体を探しに友人達と旅に出るとか、転校生の可愛い美少女と曲がり角で偶然ぶつかったりだとか、そういうことが起きたりしないものだろうか。事件に巻き込まれるのは勘弁して欲しいけれど、ラブロマンスならこちらから是非お願いしたい。

 そんなことを友人に行ったら、軽く頭を叩かれた。何故だ。

 

 

 

 ○月□日

 

 

 イベントが欲しい、と昨日の日記に書いていたが、なんと早速イベントが起きた。俺の通っている高校に、転校生が来たのである。しかも俺のクラスに、だ。

 昨日の今日で、しかも冗談半分で書いたことが現実になったものだから、少々驚いてしまった。……この日記、猿の手みたいなものじゃないよね? 大丈夫だよね?

 

 残念ながら朝の通学路で鉢合わせはしなかったし、そもそも美少女じゃなくて某アイドル事務所もビックリの外人系イケメン君だったが、とにかく日記に書くことが出来たのはいいことだ。

 そのイケメン君は転校初日から大層な人気を得たようで、クラスで自己紹介する時なぞは女子の殆どが黄色い声をあげていた。彼氏持ちの奴も構わず熱の籠った目を向けていたり、中には男子でも見惚れていた奴がいたというのだから、彼の魅力は恐るべきと評してよいだろう。

 とはいえ全員が好意的だったわけではなく、イケメン君に非モテ特有の僻みを向ける男子達もいれば、どうでもいいという風に、ある種冷めた顔を浮かべる人間もいた。俺は後者の方で、日記のネタにはするけど別に初対面で行為も悪意も抱きはしない。

 

 ただ友人は、何故か嫌悪と言っていい感情を浮かべて転校生を見ていた。後で聞いてみると本人は否定していたが、あれは間違いなく転校生を嫌っている。物心つく前からの竹馬の友である俺には分かるのだ。

 理由を聞いても教えてくれなかったし、逆に『あいつとは関わるな』と繰り返し念を押されてしまったが、いったい転校生との間に何があったのだろう。どうにも気になるが、関わるなと言われている以上、転校生の方に話を聞くのも躊躇われる。

 

 ……何があったんだ、本当に。あいつが変なことに巻き込まれているなら、出来れば助けてやりたいものだが。

 

 

 

 ○月◇日

 

 

 イケメン君は金持ちだったらしい。なんと学校までロールスロイスのリムジンが送り迎えに来ていて、彼の魅力にやられた女子達が取り巻きを作ってその漫画のような登下校シーンを見に集まっていた。

 友人曰く、残念なことに校則違反じゃないからあいつの馬鹿騒ぎは咎められない、とのこと。あいつは本当に彼を嫌っているようで、教室の窓から彼の登校風景を見るその目はまるで巨人の選手を見る阪神ファンのよう。親の仇か何かだろうかと一瞬思ったが、あいつの両親はちゃんと生きているし、何の理由で彼を嫌っているのか本当に分からない。

 

 イケメン君は実にフレンドリーで、知らない人間にもよく話しかけて友達の輪を広げていたが、嫌われていることが分かっているのだろう、あいつに話しかけることはなかった。ただ何度か意味ありげな視線を向けて、その度に嫌悪たっぷりの表情を見て悲しそうな顔をしていた。

 ひょっとして、彼の方は別にあいつを嫌ってはいない、ということなのか。となるとあいつが一方的に嫌っているだけとなるが、悪いのはいったいどっちだ? あいつか、それとも転校生か?

 

 ……転校生に明らかな敵意を向けているせいで、少しあいつが周囲から浮きつつある。やはり、俺も動いた方がいいかもしれない。

 

 

 

 ○月▽日

 

 

 今日は祝日。学校もないことだし、腰を据えてあいつから事情を聞き出そうと、朝から友人の家に向かった。

 が、いざ出かけてみると、あいつは家にはおらず。朝早くから出かけたようだとのあいつのお母さんの話を聞いて、とりあえずあいつが向かった先である隣町へと追いかけることにした。

 

 用事でもあるのだろうが、何かあるとは俺は聞いていない。好みのバンドのライブの日程まで、こちらが聞いてもいないのに嬉々として話してくるあいつなら、用事があるなら俺に一言言いそうなものなのに。

 別にあいつを束縛したいわけじゃないし、俺に報告するのは当然だ、と自己中思考をするわけでもないが、それでもあいつが俺に黙って何かしているようなのは事実なわけで。転校生とのことを考えると、やはりどうしても心配になってしまうのだ。

 

 隣町に着くと、早速友人を探しにあちこちを回ってみる。携帯の電源を切っているのか、電話もメールも返事がなかったから、自分で探すしかない。

 とは言っても心当たりはないし、あいつのお母さんも明確な場所は知らなかったから、場当たり的に足で探してみるしかない。駅前、商店街、海沿いの公園、頭に思い浮かんだ場所は全部回ってみて……当然かもしれないが、そのうちの何処にもあいつの姿は見当たらず、ただ俺が疲れただけという結果が残った。

 

 貴重な休日を半日潰した結果がこれかと考えると少し悲しくなってくるが、ネガティブになっていてもしょうがないし、気分転換のために昼食をとることにした。

 そういえば美味しい喫茶店があるとの噂を思い出して、喫茶店ならランチメニューもあるだろうと、携帯で場所を調べながらその喫茶店へと向かって。腹がペコちゃんだ、などと最近読んだ漫画を思い出したりしつつ喫茶店に入ると、なんと中には俺がさんざっぱら探した友人その人が、美味しそうに頬を緩めてハンバーグを食べていたのだ。

 

 俺も驚いて、あいつも何故か咳き込むくらいに驚いて。何でここにいるのか、とのあいつからの問いに、俺は素直に『お前を探して話を聞くため』だと答える。

 するとあいつは少し悩んで、『悪いことは言わないから帰れ』とだけ俺に言い残し、俺の話も聞かずに食事の代金を置いて喫茶店を出ていった。そんなこと言われても、何の説明もなしじゃあ俺も納得出来るはずもなく。待てよ、と追いすがっては見たものの、残念ながら途中で姿を見失ってしまった。

 

 ……やはり、あいつが何かやっているのは間違いない。俺にもあそこまで秘密にするということは、おそらく相当のものに首を突っ込んでいるのだろう。

 あいつの気持ちは分かる。多分、俺をそれに巻き込みたくないのだ。だからああして有無を言わさず、何の情報も俺に渡さずに消えたのだと思う。

 でも、いったい何に首を突っ込んでいるんだ? 警察は知っているのか? 犯罪をしようとしている、もしくはそれを止める側? 多くの疑問が頭の中に渦巻いて、それらがそのままあいつへの心配に変わっていくのが分かった。

 

 結局、今日はそれからあいつの姿は見なかった。

 ……明日は、平日だ。学校で問い詰めてみてもいいだろう。

 

 

 

 ○月◎日

 

 

 あいつが学校を休んだ。担任が朝のホームルームでそう言った時、腰を浮かさなかった俺を褒めてやりたい。

 風邪を引いたらしいという話だが、嘘だろう。それならあいつは俺にメールで看病の催促でも送ってくる。どう考えても、あいつが首を突っ込んでいることに関係しているのは明白だった。

 電話やメールに返事はない。あいつの家に電話してみても、普段はいるはずのあいつのお母さんが出ず、ずっと留守番電話のままだった。怪しいというのを通り越して、完全に事件の臭いがする。

 

 ちなみに転校生は学校に来ていたが、何故か時折こちらを見て、ニヤニヤとした表情を浮かべる時があった。どうにも気になったが、あいつから関わり合いになるなと強く念を押されていることもあり、それを無視する。

 ……転校生は、今のところ事件と関係している可能性が高い。あいつが嫌っている理由は、もしかしてその事件に関連する理由なのではないかと、先日から疑っていた。

 

 なんだ、なんなんだ? 何が起きているんだ、あいつはいったいどうなるというんだ。

 警察、いや、先生に相談してみるべきだろうか。でも判断理由が弱すぎて、真面目に取り合ってはくれないかもしれない。……俺が動くしかない、か?

 

 放課後、あいつの家に行ってみた。あいつも、親も、誰の姿もない無人の家だった。夜寝る前にコンビニに行く振りをしてもう一度確かめてみたけれど、やはり人影はない。

 

 明日、あいつが来なかったら。駄目元でもいいから、誰かに相談してみよう。

 

 

 

 ○月●日

 

 

 友人は、何事もなかったかのように普通に学校に来た。怪我をした様子も、病気で体調を崩した様子もない、端から見れば健康そのものの姿で顔を見せた。

 俺は思わず詰め寄ったが、あいつは昨日は風邪を引いたと言うばかりで、家に誰も居なかったことを聞いても俺の見間違いじゃないのかと惚けてくる。

 嘘を吐いているのは明白だったが、あいつがあまりにも平然としているので俺が言いがかりをつけていると思われたのか、周囲の視線が痛くなってきて。この場で話すのは得策ではないなと、一先ず退くことにした。

 

 で、その友人だが、休む前と何から何まで同じというわけではなかった。

 昼休み、俺がいつものように昼食に誘いに行くと、あいつは先約があるからと言ってそれを断った。いつもは俺と食べてばかりなのに珍しい、とその先約が誰となのか聞いてみると、なんと転校生の名前をあげたのだ。

 嫌っていたんじゃなかったのかと尋ねれば、『僕は誤解をしていたんだ』と恥ずかしそうに口にした。その表情からは先日までの嫌悪感など一切感じとれず、逆に明らかな好意を、恋する乙女のような表情を浮かべていた。……転校生への好悪が、不自然なほど急激に反転していたのだ。

 

 おかしい、と直感的に感じたが、あいつは気が狂ってるようにも無理をしているようにも思えない。心の底から転校生を好ましいと感じているようだ、と長年の付き合いから来る俺の勘は告げていた。

 

 のろけのように転校生の賛美を始めたあいつとの話を切り上げて、俺は一人弁当を食べながらどういうことなのかと思考を巡らせた。

 明らかにおかしい、しかしその原因の理由も分からない。超展開だとか、ご都合主義とかのチャチなものではない、もっと理不尽な――それこそ超常的なもののような存在の仕業、と言われた方がしっくり来る。

 確かに仲直りしたらいいとは思ったが、これはいくらなんでも普通じゃあなかった。まるで洗脳のような、人間ではありえない切り替えの早さである。……犯人と考えられる奴は、現状ではただ一人だけだった。

 

 とは言っても、直接聞きにいったりするだけでは、相手が認めないだけで話は終わりだ。いや、相手が金持ちであることを考えると、何の対策もしなければ間違いなく後で何らかの“対処”をされるはずだ。

 今はまず、事態の把握と調査に努めるべきである。……あいつが何をされたのかは、今は放っておくしかない。

 

 

 

 ○月★日

 

 

(空白)

 

 

 

 ○月∀日

 

 

 色々ありすぎた。疲れているし、明日纏めて書こうと思う。

 

 

 

 ○月Д日

 

 

 一日置いて、少し落ち着いてきた。……はてさて、いったい何から書いておくべきだろうか。

 

 とりあえず、どうやら世界にはオカルトが蔓延っていたらしい。例えば魔法とか、吸血鬼とか、幽霊とか。俺のような一般人には秘密にされているだけで、そういった存在は決して創作物の中だけではなかったようだ。

 で、何故俺がそれを知ったのかと言えば、巻き込まれたからである。一昨日は土曜日だったから半ドンで、用事もなかったから事件について俺なりに調べようと隣町を歩いたら――――それはもう見事に巻き込まれたのだ。

 意図したわけではないのに、その場で偶然起きた、オカルト的な事件に。巻き込まれてしまったのだ。

 

 詳しく説明すると、まず、俺は人通りの少ない路地を歩いていた。

 そこでふと、道端に何か光るものを見つけて。拾い上げてみると、それが青い宝石のようなものだと分かった。

 誰かの落とし物だろうかと思い、とりあえず警察に届けようと交番を探して辺りを回る。すると交番は見つからなかったが、途中で大人しそうな金髪の少女に声をかけられて。話を聞いてみると、その宝石は少女の母親が落としてしまったものらしく、彼女はここ数日町中を探し回っていたとのこと。

 作り話かと一瞬疑ったが、表情を見る限りは少女はどうも平気で嘘を吐けるようには思えない、むしろそういったのとは正反対の性格のように思えて。何でもしますから渡してください、と頭を下げて頼む少女に、俺は快く宝石を渡した。

 

 それで終わりならよかったのに、そこで予想外の事態が起きる。

 俺が宝石を少女に渡した瞬間、急に世界が色をなくして。俺と少女以外の人影がなくなるのと同時に、少女は『バルディッシュ!』と叫び、先程までの清楚な服装からコスプレのような黒衣に変え、刃が雷のようなもので出来た鎌を構える、例えるなら魔法少女のような格好へと変身したのだ。

 突然のことについ呆然とする俺を横目に、少女は周囲を警戒しながら、俺に逃げてくださいと叫ぶように言った。それに従い俺も走り出そうとしたのだが、残念ながらもう遅かった。

 逃げ出そうとした俺の足に、何処からか飛んできた矢が刺さる。え、と叫ぶ間もなく俺は地に転がり、痛みに悲鳴をあげながら矢が刺さったままの足を押さえた。

 

 

 

『――大丈夫ですかッ!?』

 

 

 

 痛みで周りを見る余裕はなかったが、少女がすぐにそう叫んで駆け寄ってきてくれたのを覚えている。

 彼女は俺の足に刺さった矢を見ると、一瞬驚愕に目を見開いて。やがて表情を怒りに染めると、矢が飛んできた方向を睨んで『関係ない人間を殺すのか』と叫び声をあげた。

 

 それに答えたのか、フードを目深に被り仮面を着けた中肉中背の男が一人、無言で姿を表す。

 俺は誰なのか見当もつかなかったが、少女はその男を知っていたらしい。その姿を見つけると同時に、空を飛んで男に襲いかかっていった。

 

 痛みが足から全身に広がりつつあったこともあり、二人の戦いについてあまりよく覚えてはないのだけれど、現実というよりはアニメのようなものだったと思う。

 少女は鎌で斬りかかり、雷を放ち、黄色く透明な弾を撃ち。男は弓矢を使い、剣を使い、盾を使い。双方ともに空を飛び回りながらの戦闘は、正に神話の再現だった。

 

 数分程経った頃だろうか、男が何か言って――痛みに気をとられている俺には聞こえなかった――それに少女が動揺した隙を突き、男はまんまと逃げおおせてしまう。

 少女はそれを見て悔しそうにしたが、急いで俺へと近寄って。俺の矢が刺さった足、傷口の周囲が紫色に変色して見るも痛ましい様相を呈し始めたそれを見て、彼女は悲しそうに目を伏せる。

 その反応が気になり、痛みに耐えながらもどうかしたのかと尋ねてみれば、少女は言いづらそうに口を開いた。

 

 

 

『……この矢には、毒が塗ってあるんだそうです。当たればほぼ助からない、強力なものが』

 

 

 

 彼女の顔は、嘘を吐いているようには思えなかった。傷の様子も普通の矢が当たったとは考えられないほど酷くなっているし、痛みも傷口以外の場所にも広がっている。おそらく事実か、それに近いことであるに違いない。

 じゃあ、俺は、ここで死ぬのか――。絶望染みた言葉を俺が言うと、彼女はそれは違うよと必死に首を振った。

 

 俺が巻き込まれたのは自分のせいであり、自分が出来る限り助ける、と。そう宣言した彼女が何事かを呟くと、魔方陣らしき何かが周囲に広がって。

 視界が一瞬光に染まり、それが収まったと思えば、なんと周囲の風景は一変していた。

 

 一切の調度品がない、壁と床だけの無機質な部屋。その部屋に俺を残して、少女は『ここで待ってて』と急いで部屋を飛び出していった。

 動こうにも痛みで体を動かせず、彼女の言葉通りただ待ち続けること、数分。ようやく扉を開けて部屋の中に入ってきたのは、先程の少女ではない、紫のドレスを着た妙齢の女性だった。

 

 俺を見た瞬間にふん、と鼻を鳴らし、慈愛など欠片もない表情でこちらを見つめる女性。

 生きたいか、と平坦な声での問いに頷けば、今度はそのためなら何でもするかと聞かれて。俺がもう一度頷くと、彼女はニタリと冷酷な笑みを浮かべ、『眠りなさい』という言葉と共に俺の意識を刈り取った。

 

 

 目を覚ますと、そこはポッドの中だった。

 SFでよくある、透明な筒の中に謎の液体が充満していて、それに包まれるように脳とか人間がたゆたっているあれ。あれを想像すれば大体イメージ通りである。

 

 どういうことだ、と思わず口にしようとしたが、口にはマスクが装着されていてまともに動かせない。

 頭は自由に動いたから、左右に何度も視線をやって周囲を見渡してみると、どうやら自分がいるのは研究所のような場所らしいと分かる。複雑そうな機械に囲まれ、幾つものケーブルが乱雑に交差しているその場所に、見覚えのある一人の女性を見つけた。

 女性も俺が意識を取り戻したのに気づいたらしい、何やら覗き込んでいたコンソールから顔を上げると、『気づいたようね』と言った。

 

 

 

『あなたの体は毒が回りきっていてもうダメだったから、脳だけ取り出して移植したわ。ついでに色々弄らせてもらったけどね』

 

 

 

 まるで今日の天気でも話すような調子で、彼女はそう告げる。

 は、と呆気にとられる俺など無視して、彼女はどんどん話を進めて。寄生型ロストロギアとの融合による戦闘能力の確保だの、小型デバイスのインプラントによる演算能力の向上だの、再生能力を応用した擬似的な変身技術だの。何やら訳の分からないことをぺらぺら話し出した彼女に、俺は言葉にならないと分かっていても必死に尋ねた。

 

 もうダメだ、とはなんだ。移植したとはなんだ、弄ったとはなんだ。

 必死の形相で何か言おうとしている俺を見て、彼女も何か感じ取ったのだろう、『ああ』と短く呟いて。近くにあった姿見を此方に向けると、俺が自分の姿を確認出来るようにして――驚愕に染まった俺の表情を、別段興味もないように眺めていた。

 

 そこにいたのは、裸の少女だった。俺の体とは似ても似つかない、可愛らしい姿をした幼い少女である。

 年は小学校の中学年くらいだろうか、あの俺を助けた少女と同じくらいだろう。そういえば姿もあの少女とどうにも似ていて、顔などは双子のように瓜二つに思えた。

 

 

 

『気づいているかもしれないけど、あなたの体の素体はあの人形――フェイトと同じもの。それに手を加えてロストロギアを埋め込ませ、出来る限りの能力を引き出させた。そんな改造人間が、今のあなたよ』

 

 

 

 どんな形にせよ助けてあげたんだから、まさか文句は言わないでしょう、と。嘲笑染みた視線を向ける彼女に、俺は渋々頷く。

 納得なぞいかないし、そもそも理解も未だ不十分だったが。彼女が生かしてくれたのは間違いないのだと、内心の不満を封じ込めた。

 

 それを満足そうに見た彼女は、続いて命を助けた対価について話を進める。

 彼女から出された条件はただ一つ、実にシンプルなもの。『ジュエルシードを集めて渡せ』という、簡単なものだった。

 

 ジュエルシードというのは、俺が少女に渡した青い宝石のようなあれらしい。全部で二十一個あるあれを、可能な限り探して渡せというのが彼女の要求だ。

 ジュエルシードを求める存在は他にもおり、戦闘になる可能性が大きいが、そのための力は与えてやっている。同じ命令を出しているフェイトと協力してでも、あるいはしなくてもいいから、何がなんでも集めてこい。彼女は大体、そんなことを言った。

 

 

 

『断ってもいいけど……。あなたのその体、暫くはちょっとしたメンテナンスが要るの。もちろん受けなきゃ死んでしまう、ね。

 それは地球の科学力じゃ無理だし、やれるとしたら現状私だけよ。でも、断られたら……機嫌が悪くなるかもねぇ……』

 

 

 

 だめ押しとばかりの脅迫を受けて、俺は頷いた。

 何にせよ、俺に選択権はないのだ。生き残るために、あいつに何があったのかを知るためにも、俺は頷くしかない。

 

 彼女はもう一度満足そうに俺を見て、ボタンを押してポッドから水を排水すると、中から俺を引き出した。適当な布を俺に投げて寄越しつつ、早速俺の体の詳細についてのレクチャーを始める。

 魔法、格闘、特殊な能力。そういったもののやり方は頭に直接叩き込んでおいたとのことで、彼女の言葉通りに思考を向けてみると、確かに知らないはずの知識が色々と浮かんできた。

 その中の変身能力というものを使って、擬似的に表面上の体細胞や骨、筋肉などを変化。イメージを強く持ちながら変身すると、なんと元の俺の姿に戻ることが出来たのだ。

 

 

 

『……あくまで魔法を用いた変身だから、恒久的にその姿でいるのは無理よ。連続使用は一日が限度くらいかしらね』

 

 

 

 彼女に水は刺されたものの、男のままでいられるというのは非常にありがたい。あのまま幼女として暮らさなければいけないかと、正直不安を覚えていたところである。

 これなら普通に元のまま日常生活を送れるし、TS的なサムシングも上手くやれば回避出来るだろう。この点に関しては、素直な感謝を彼女に述べた。

 

 それから色々と注意事項などを聞いて、フェイトという名前らしいあの少女に会って何とか助かったことを報告した後、俺はフェイトの手によって地球へと送り届けられた。

 彼女は近くのマンションで暮らしているようで、俺も一緒に戦うのだからそこで暮らすかと言ってきたが、さすがに丁重にお断りする。両親が共に海外に行ってしまっている俺の家ならこの体でも問題は起きないだろうし、子供といっても異性と暮らすのは問題だ。

 また後で、詳しく話し合うために集まろう。そう言ってその場は、つまり昨日は彼女と別れたのだった。

 

 

 さて、大体この様なところでいいだろうか。

 自分で言うのも何だが、随分な体験である。胡散臭い、と言ってもいいかもしれない。

 

 今日は念のために学校を休んで体の調子を見てみたが、どうやら問題ないようだ。

 明日は学校に行って、あいつのことを少し探ってみてから、その後フェイトと一緒にジュエルシードを探しに行こう。俺を襲った犯人のことも気になるし、その時にフェイトに色々と話を聞いてみてもいいか。

 

 ……ひょっとして、転校生とあいつの事件とこのオカルト事件って関係あるのかな、とか思ったけど。

 それはさすがに、強引な結び付けだろう。

 

 

 

 

 




Q.TS要素は必要なんですか?

A.まあ主人公の素体があれなんで多少は
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