東方十能力   作:nite

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少しだけ書き溜めましたので三日に一回更新します


九十八話 全てを打払う

「ざまあねえな。少しは抵抗すると思ったのにこの程度か。まじでなんも知らないガ…キ…?」

 

最初は嘲笑するように話していたリーダーだったが、砂埃が晴れていくと同時に彼の言葉は弱くなっていった。

 

「なんで無傷なんだよ…」

 

驚くような声をして俺を見る。

そう。俺は全くの無傷。多少吹き飛んだ石の破片は砂によって視界が遮られたが問題はない。

それは俺の能力。かつて月において極太レーザーから俺の身を守り、また今回も俺の身を守った力。それが無効化。幽香の時も役に立ったが、やはりこれは使い勝手が良い。

例えどんなものであっても無効化し、なかったことにする力。かつてミキの空間魔法、及び紫のスキマにも使ったがその両方を無効化に成功している。

勿論デメリットも多く、霊力を多く使う。生死や存在などには干渉できない。使ったあと三秒程度硬直する。などがあり、その中でも対象は一つだけ。というのが最も厄介で、もし彼らが妖力を一つにせず各々がフルスロットルで弾幕を張っていたら俺は結界と輝剣で弾くしかなかっただろう。あいつらが態々一点に集中させ一つの攻撃にしてくれたおかげで成せた技でもある。

またあいつらが油断していたおかげで連射してこなかったのも救いだ。三秒というのは日常的には些細で僅かな時間だが、戦闘において三秒もあれば二人は人を殺せる。

長時間撃たれたとしてもその間は無効化が発動するためいいのだが、連射されると一発毎に無効化が切れてしまい硬直が発生する。この技は賭けでもあるのだ。

 

「残念ながら俺には全く効かなかったな。どうした、その程度か?」

 

少し相手を威圧、煽るように話す。

こいつらもさすがにこの技が全く通用しなくて驚いているのか焦りが見える。きっと今まで負けてこなかった連中なのだろう。負けなければ、勝ち続けてしまえば、彼らは自分は絶対に勝つものだと誤認してしまい成長しなくなる。そのため自分の技が全く効かない相手が出てくれば当然狼狽してしまうということだ。

 

「っ…は、ははは」

「何がおかしい?」

「いや、なんだ。確かにあんたは化け物だったよ。当たり前だよな。態々地上から来る人間がただの人間であるわけがない。もっと強い可能性を考えておくんだった。でもな、あんたは既に俺達には手を出すことが出来ない」

「なんでだ?」

「お前ら、もってこい」

 

リーダーが周囲のやつらに指示し、檻のようなものを持ってこさせる。

その中に閉じ込められていたのは…

 

「こいし!それに…チルノ!?」

「あ!定晴!助けて!」

 

こいしは大きな声をあげて助けを求める。しかしチルノは不思議なくらい静かで、いつもの様子はどうしたんだというほど寡黙で微動だにしなかった。

 

「周囲にも隠れているんだろ?鬼さんよぉ…しかしこっちには子供の妖怪もいる。さて?どうするのかな?」

 

まずい…戦いでまず大事になってくるのは情報戦だ。

相手の得意なこと、苦手なこと、技、弱点、その数は多岐に渡りこれらを知っていれば知っているほど直接ぶつかった時に有利となる。

彼らは先に俺たちのことを調べ、弱点となる人質を手にしている。これでは迂闊に動くことができない。

旧都の子供を殺してでも叶えたいことなのだろう。勿論すぐに殺されることはしないだろう。そのために捕まえてから今までずっと隠していたのだから。逆に殺してしまえば俺たちを抑制するものがなくなる。

かといって俺たちが迂闊に動けばそれこそ殺されるのだろう。そのための人質だ。俺たちが動けなくなるようなものを用意しておくのも情報戦での定石だ。

 

「この檻は妖力を封じ込め、使えなくする。お前らが道を開けてくれるというのなら殺さずにこの一件が終わったあとに開放してやる」

 

さて、それも本当かは分からない。もし彼らが地上を侵略することに成功すれば、次は人質を使って俺たちを束縛し駒のように使うのだろう。侵略者がよくやる方法だ。何も真新しいことではない。しかしそれが残っているのは、それがとても有効な手だからであろう。

しかし…どうにも腑に落ちない点がある。喉に引っかかるように俺に違和感を与えている。

 

「こいつらは妖力を制限されているため一切力を使えない。使えば無駄に妖力を削り弱まるだろう。現にこの地霊殿の娘は何度も妖力を使ったせいで弱まっている。それでもお前らはこいつらを更に弱まらせるつもりか?」

 

なるほどね。

幻想の力というのはいくつも存在している。基本的には霊力、魔力、妖力の三つが主であり人間は霊力を、妖怪は妖力を生まれた時から持っている。その後特殊な環境で育ったり特殊な訓練をすることで魔力が付いたり霊力や妖力などの地力が増える。しかし人間から霊力が無くなったりすることはない。それは妖怪然りである。生まれた時から持っている霊力や妖力は言わば命と同じだ。そのせいで妖力を縛るあの檻から逃げることが出来ないのだろう。

では人間や妖怪以外の生物は何を持って生まれるのか。魔女であれば魔力を持ち、魔力が命となる。アリスやパチュリーがその例だ。魔理沙は先述した特殊な訓練をした人間だから魔力を持つだけで、魔力=命ではない。

また神であれば神力を持って生まれ、神力が命となる。神奈子や諏訪子がこれだな。早苗も魔理沙と同じく特殊な環境のため持つだけで彼女は霊力=命である。

では精霊は?これまた精霊のみが持つ精霊力というものがある。これはチルノや大妖精、その他多くの精霊がこれだ。妖精は精霊と同じように生まれるため同じ力を持つ。逆に精霊たちは妖力を持たない。

あの檻は聞いた感じ妖力しか縛り付けていないようだし…さて、これは賭けだな。

ここで引いたら大変なことになる。ならばこの賭けにのらなければいけないだろう。

前提として、あの檻が俺の想像以上の効果がないことと、チルノが思っていることが合致していることが条件となる。

さて、吉と出るか凶と出るか…

 

「残念ながら俺は引かないぞ」

「ほう?人質を見捨てるというのか。今ここで人質を見捨てても俺たちにお前らが勝てる確率はないと思うが?」

「確かにそうかもな…」

 

頼む。ちゃんと反応してくれよ…

 

「ただ俺は人質を見捨てるなんて言ってない!チルノ!」

「よく分かってんじゃん!褒めたげる!」

 

その瞬間周囲には極寒の冷気が立ち込めた。

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