東方十能力   作:nite

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4000文字…だと…


九十九話 吹き荒れるは冷気

「なんだ!?」

 

軍の誰かが声をあげる。

俺の呼び声に反応したチルノがずっと溜め込んでいた冷気を周囲に撒き散らす。

近くにいる俺も寒いが、チルノもチルノなりに制御しているのか敵の様子を見るに敵は凍えるような寒さに見舞われているのだろう。

 

「あんた…定晴!檻壊しちゃって!」

「任せろ!」

 

あいつらが寒さで震えている間に素早く檻に近付く。

やはりチルノに近付けば近付くほど寒くなるが、チルノも頑張っているのだろう。なんとか冷気を制御しているようだ。

 

「壊れろ!」

「やめ、」

 

俺を止めようと俺の邪魔をしようとする妖怪たち。しかし寒くなれば反応速度が落ちるのはどの生物でも共通であり、身体強化を使っている俺に寒さで震えているこいつらが間に合うはずもなく、俺は檻に向かって輝剣を叩き付ける。

どうやらチルノの冷気によって脆くなっていたようで、頑丈そうな見た目とは裏腹に簡単に砕け散った。

 

「ちっ、妖精は縛れなかったってのかよ」

 

妖怪は妖力を縛られるというのは命を縛られているのと同義だ。しかし妖力を持たない妖精にとってはただの檻でしかない。彼らは妖精という種族を知らなさすぎるな。あの檻を使ったのは誰だか知らないが、捕まえるのならもっと色々と縛れるようにしておくべきだろう。それとも使ったやつは妖怪を捕まえておくことしか前提になかったというのに指示した奴が無能でそのことを知らなかったか。

どちらにせよ相手側の失敗であり、こちらからすればありがたいこの上ない。

 

「くそ、こうなったらお前ら!やっちまえ!」

 

指示で一斉に襲い掛かってくる敵軍。

さすがに多勢に無勢すぎるな。人質に解放はできたしここは一度引くべきだろう。

こうして俺たちは人質の解放に成功し、一時撤退をしたのだった。

 


 

「さすがね。あたいのこの完璧な作戦に合わせるなんて」

「まあな」

 

はたしてこれがチルノが前もって考えていた作戦なのかは不明だが、まあいいだろう。

今回人質を救出し、このように一時撤退ができたのはチルノのおかげだ。感謝の気持ちもこめてチルノを優しく撫でた。

 

「ありがとな」

「ま、まあね。あたいにかかればこんなもんよ」

 

強気で喋るチルノ。力が縛られていないからと言って彼女自身もずっと檻に閉じ込められていたはずだ。しかも力を少しでも使うとあいつらにバレて対策されてしまうかもしれないという恐怖もある。

チルノが何歳かは知らないが、そんな状況にずっとおかれていたのでは彼女自身への精神への負荷も相当なはずである。きっとこの数日間大変だったろうに。それを表に出さないで強気でいられるというのもまた一つ彼女の才能なのかもしれない。

 

「定晴ー」

「こいしも大丈夫だったか?」

「取り敢えずはねー」

 

こいしもこいしでいつもの軽い口調で話す。

チルノとは違いずっと妖力を使ってなんとかしようとしていたとリーダーのあいつは言っていた。

そのせいか見ると妖力はほとんど空だし体の節々には傷がある。きっと静かにさせるために監視していたやつが暴行でも加えたのだろう。本当に…くそどもだ。

 

『落ち着け』

『ああ、すまん』

 

狂気は俺の負の感情に敏感だ。俺が怒りすぎないようによく注意してくれる。たまにはこいつにもお礼をしたいところだがどうすればいいのだろうか。

こいしとチルノの他に捕まっていた妖怪の子供も見知った顔があったか大人の近くで泣いている。きっとこれから警護のもと家に送り返されるだろう。

となると問題はこいしとチルノだ。正直こいしは今すぐに返してあげたいところなのだが、どうもすぐに返せる状況ではないしチルノに至っては地上への道まで遠く大変だ。二人を送り返すのはあとにしたほうが良いだろう。その間はペットたちに近くで守ってもらいつつ、になるがなんとかなるだろう。

なにせペットたちの目的は侵略派の撃退ではなくこいしの保護だ。きっと完璧にこなしてくれるだろう。

 

「定晴、これからどうする?」

 

勇儀が難しい顔をして近寄ってきた。

ここでは妖怪のリーダーは彼女だろう。対大軍には弱くとも彼女は筋金入りの力持ち。鬼のリーダーを務めるには最適だろう。

その彼女が難しい顔をして俺に話しかけたという事はそれだけ事が重大であることを意味する。

俺たちが撤退し逃げ込んだのは少し離れた大穴。あいつらも俺たちを深追いすることにあまり意味がないことを知っているのか数十秒したら戻っていったため今のところは安全である。

 

「このままだとあいつらは確実に地上へと進軍する。あいつらは地上を知らなさすぎるんだ」

「勇儀は地上に行ったことあるのか?」

「行った事あるよ。萃香に誘われてね」

 

どうやら地底人の中にも地上に行ったことある人は多いらしい。いや、地底に住む妖怪の総数からすればまだまだ少ないのかもしれない。

そもそも地底と地上には不可侵条約があり、行き来は本来ないはずだった。それが間欠泉異変で霊夢や魔理沙が行き来したため自然に緩くなったのだろう。

そもそも地底に移り住んだ理由が、地上が嫌だからってことらしいし条約が緩くなっても地上に行きたがらない妖怪は多いのかもな。

 

「地上がいいところだと知れば進軍を止めてくれるかもしれないけど…」

「問題はそれをどうやって伝えるか。だな」

 

そもそも地上を忌み嫌うことになった経緯を知らないといけないかもな。

どれだけ地上のいいところを言ったところで地底の妖怪にとって嫌な部分が残っていたら納得してくれないだろう。変なことを言って反感を買うようなことはしたくない。

 

「あいつらが地上を嫌っている理由はなんだ?」

「それは妖怪によって様々だね。ただ結構な数は地上というより人間を嫌っている」

「そのこころは?」

「鬼は人間と勝負することが好きだったんだ。でも真っ向勝負で勝てないと分かってからはズルや闇討ちなど卑怯な手を使うようになった。人間の利点はそういった頭が回ることだとは分かっているけど鬼はそういうのが大嫌いなんだよ。逆に定晴みたいに真っ向勝負してくれるような奴は結構好かれるぞ。多分前に戦ったときも定晴が人間だと分かった奴はいたけど真っ向勝負に水を差すのは野暮だと思ったんじゃないかな」

 

勇儀が鬼の概要を教えてくれた。

その言葉に続くようにこいしが他の妖怪のことも教えてくれる。

 

「私たち…というか私とお姉ちゃんはそもそも他の生物自体がそこまで好きじゃなくて、できる限り人目につかないところに住もうと思って。まあ他の生物が好きじゃない理由は能力のせいだけどね」

「ペットたちは?」

「あの子たちは違うよ。だって心を読まれても気持ち悪がらないし、逆に普通の人は分かってくれないことまで理解してくれるから私達のことを好いてくれるから私達も大丈夫なんだ。まあその分私よりもお姉ちゃんの方がペットに好かれてるけどね」

 

少し寂しそうな顔をして話すこいし。

でもこいしを捜している時のペットたちの様子を見るにこいしも相当好かれている。自覚がないだけだ。

こいしが話し終えるとお燐が横から付け加える。

 

「アタイ達ペットは別に地上も人間も嫌ってないです。そもそも地上で会って着いてきた動物もいますので」

 

その後も待機していた穏便派の妖怪やペットたちが補足や追加情報をくれる。

ほんとに妖怪それぞれ嫌う理由は様々で、人間に住処を奪われた。日の光が嫌い。湿度が高くないと生きていけないなどなど。

つまり地上がいいところであるという部分を主張するのは無理があるかもな。

ならば実力行使か…?でもそれでは根本的な解決になっていない。なんとかして再発防止をしなければ。

 

「こうなったら実力行使もやむを得ないんじゃないかい?」

「再発防止はあとにして取り敢えず今の状況をなんとかしないと」

「しょうがない。取り敢えずこの騒動を止めないとな」

 

勇儀とお燐の言葉で取り敢えずは目の前の問題をなんとかしないといけないということで意見が固まった。

しかし明らかに人数不足。これでは数の暴力でこちらが返り討ちにあってしまう。どうにかして数を増やさねばならないが…

 

「じゃあアタイが地上まで行って連絡しようか?」

「お燐、行けるのか?」

「猫になって地霊殿の近くの穴を進めばいけると思う。運がよければ博麗のおねーさんとかに会えるかも。ただ時間がかかるからその間進軍しないようにできる?」

 

倒すわけではなく足止めをするだけならなんとかなりそうだな。地理ならここらへんに住んでるヤマメたちに聞けばなんとかなりそうだし…

 

「よしお燐。頼む」

「こいし様。通る道の途中に地霊殿がありますので帰りましょう?」

「えー」

 

お燐が帰ろうと提案すると何故かこいしは嫌そうな顔をした。

今なら侵略派の妖怪はほとんどが地上に向けて進軍し、旧都にはほとんどいないはずだ。お燐が一緒ならもしものときも安心だと思うのだが、何が不満なのか。

 

「私も戦う!定晴の役に立ちたい!」

「こいし様。遊びじゃないんですよ?さとり様も心配してますし帰りましょう?」

 

お燐は立場故かあまり強くは言わない。あくまで判断をこいしに委ねるようだ。

対してこいしは帰ることを嫌がりここに残ろうとしている。こうなってはお燐が無理やり連れて帰ることは出来ないだろう。

こいしは拒否の意思を伝えようというのか更に強く言う。

 

「定晴の近くの方が安心できるし安全だよ!」

「しょうがないですね…何かあったらアタイすぐに連れて帰りますからね」

「やったー。ありがとねお燐」

 

こいしにそう言われ若干嬉しそうな顔をした後に猫の姿になって走り去っていった。

あの速度ならすぐに博麗神社につきそうだ。

 

「そんじゃこっちはあれの進軍を足止めする話し合いを始めようか」

「目的は足止めだ。止めるわけでも壊滅させるわけでもない。それを注意していてくれ」

 

俺の言葉に周囲を妖怪達が頷く。

チルノは分かっているのか分かっていないのか曖昧な頷き方だったが、こいつだって今回人質解放に凄い役に立ってくれた。心配しなくても大丈夫だろう。

こうして俺たちはお燐が援軍を連れて来てくれるまでの時間稼ぎの話し合いを始めた。

 

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