東方十能力   作:nite

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六章 式
百四話 久しぶりの我が家


地底から帰ってきて空を見上げる。凄い眩しい。

地底ではお空が管理する灼熱地獄跡の熱と街灯の明るさによって環境自体は変わらなかったが、地底であるため太陽は見えない。数週間ぶりに見る太陽はとても眩しい。

その足でそのまま博麗神社に行き霊夢に挨拶しようと思っていたのだが霊夢は留守にしていたため保留。地底に行くときも霊夢はいなかったし中々に運が悪い。

結局誰にも会わずに自分の家に到着したのだった。

家の鍵を開けて中に入り室内を確認。家の周囲には結界を張っているし、俺以外の人が鍵を開けた場合は俺に通知が来るように設定しているため基本的に問題ないはずだが、ここは幻想郷。何が起きるか分からない。多分紫とかはこの家入り放題だし…

見て回っていると机の上に大量の保存食と手紙。

 

「えーと…いなかったようだから保存食だけ置いてくから適当に食べろ。ミキより…ただの押し付けじゃねえか」

 

保存食とはいえ賞味期限が存在する。

嫌な予感がしつつ保存食の裏に表記されている賞味期限を見ると…明後日。ミキがここに置きに来た時は多少日数に余裕があったのかもしれないが、生憎その時俺は地底だ。ここに来れるはずもなく、ずっと机の上に放置されたまま日が経ち残り二日。

 

「今日は誰か呼んで保存食を食べきらないとな」

 

そう呟き保存食を戸棚にいれる。幻想郷には保存食という文化はないと思うし、誰を呼んでもきっと楽しんでくれる。後でもう一度博麗神社に寄って、霊夢がいなかったら魔理沙あたりでも誘おう。

机の上に大量の保存食が放置されていた以外は特に変化はなく、俺はソファに腰かけた。ここ最近の地底は心を落ち着けるタイミングがなく精神的にも疲れていたのだ。このソファは安物だけど、自分の家にあるというだけで俺は心を落ち着けることができる。やはり自分の家っていうのはいいな。

今の時間は午後二時過ぎくらい。幻想郷が日本にある故に外の世界で使っていた壁掛け時計を使い続けることができたのはよかった。俺が慣れている時間感覚で生活することができる。

閑話休題

この時間から何かを始めるには遅いが、何もしないで家にずっといるのもどうかと思う微妙な時間だ。一応テレビゲームも持っているが幻想郷にいるせいか、新しい機種は調子が悪い。香霖堂で昔のゲーム機でも買おうかなと思っていたとき、玄関のベルがなった。

はいはいと玄関のドアを開けると立っていたのは藍。

 

「どうした?」

「紫様が地底に行っているので私が来たのだが、何か問題はないかな。地底と地上は環境が違うため人によっては体調を崩すこともあるんだ」

「俺は大丈夫だ。もっと過酷な場所に行った事もあるのでな」

「そうか。ならいいんだ」

 

地底は妖怪たちが多く住んでいるため断然生活しやすい環境だった。俺はもっと大変な場所なのかと思っていたので拍子抜けした程だ。

俺は日本でしか仕事をしていなかったが、それでも過酷な場所は存在する。まあ俺が過酷だという環境に身を置くのは妖怪退治の時ばかりだ。誰もいない場所が多いので能力をフルに活用しつつなんとか耐えてきたというわけ。

用はそれだけだったようで帰ろうとした藍にそういえばと声をかける。

 

「ミキに大量の保存食を貰ったんだ。賞味期限があと少しだから食べきりたくてね。藍、紫たちも呼んで今日は俺の家で食べるっていうのはどうだ?」

「ふむ…私はあまり保存食は食べないのだが…まあたまにはいいだろう。分かった。紫様も呼んでくるよ」

「ああ、助かる」

 

そして藍は帰って行った。

もう一度霊夢に会うために博麗神社へと行くがこの数十分では帰ってこなかったかやはり留守。まあ霊夢はまた別の機会にでも誘おう。

その後は魔理沙の家に向かう。すると魔理沙から「それが地底でのお礼か?」と訊かれたため違うと答えたら来るとのこと。どうやら魔理沙は食事よりも別の物をお礼としてほしいようだ。分かっていたことだが。

魔理沙を誘うついでにアリスにも声をかけたが、返事はノー。香霖堂で何かいいものは無いかと探してるときに霖乃助にも聞いたがこれまたいい返事は返ってこなかった。

結局集まったのは紫、藍、魔理沙。そして…

 

「前々から紹介しようと思っていたが中々時間がとれなくてね」

「藍様の式神の橙です!お願いします!」

 

見た目は結構お燐に似ている。ただ妖力の量はどうも橙よりもお燐の方が多そうだ。

藍の説明によると確か橙は式神の式神。どうしても力の量が減ってしまうのもしょうがないのかもしれない。そもそも藍が式神を扱えるのは能力の式神を使う程度の能力によるものらしいし式神を使えているだけ凄いと言っていいだろう。

 

「俺は堀内定晴だ。よろしくな」

「藍様や紫様から聞いています。なんか色々凄いお方のようで…」

「別に凄くなんかない。幻想郷では一般的な方だ」

 

確かに十の能力を使う程度の能力って誤魔化してはいるが、一人が十個能力を持っているようなものだ。幻想郷でも珍しい存在なのかもしれないが、多くの能力を使うせいでどれも熟練度が低いうえ効果も高くない。

幻想郷では俺よりももっと強いやつがいっぱいいるだろう。現に一度勇儀に負けているのだし。

 

「さて、今日は取り敢えず保存食をアレンジしながら普通の料理も作る…のだが、皆苦手なものはあるか?」

 

俺が尋ねると一同首を振る。どうやら橙は辛いものは無理なようだが、今日作る予定のものに辛いものは入っていない。せいぜい七味唐辛子を使う程度だろう。

俺が調理に入ろうとしたら魔理沙から声があがる。

 

「折角ならキノコ料理をいれてくれ!それが美味しかったら定晴を私専属の料理人にしてやってもいいぜ?」

「専属料理人にはならん。が、キノコ料理なら作る予定だ。安心しろ。他にも藍のために油揚げも買ってある。あと橙が好きっていうから魚も」

 

橙が来ることは藍から連絡を受けていた。魔理沙がキノコ料理を好きな事も知っていたし、来る人が確定してから人里にて買ってきたのである。

早速調理開始。外の世界では移動が多い生活だったため、いつも幻空の中に保存食とか調味料を多少いれていた。保存食をアレンジすることは結構多かったのだ。今日は紫たちに飽きさせないためにも色々とアレンジを加えないとな。

料理開始から三十分。大半の料理が完成したため暇つぶしに外で弾幕ごっこをしていた魔理沙と橙を呼び、家の中で談笑していた藍と紫に声をかけて料理を並べていく。今日は人数が多かったしそれなりに色々と試すことができた。嬉しい限りである。

 

「さてさて、定晴はミキに渡された保存食をどうアレンジできたかしらね」

「食べてからのお楽しみだ、紫。取り敢えず頂くぞ」

「「「「いただきます」」」」

 

早速近くにあるものから口に運ぶ。

これは鯖缶を使ったパスタだな。麺もミキから貰ったやつ。思いのほか鯖缶の味が強かったため調味料を使って味を調えた一品だ。

他にも缶詰やその他冷凍食品のようなものなど色々アレンジした料理を多く並べている。

紫たちも美味しそうに食べているので成功と考えていいだろう。

 

「藍様が定晴さんの方が料理が美味しいと言っていたのですが…」

「そんなことないだろ。まあ俺は藍の料理は食べたこと無いが、俺はそこまで料理が上手いわけじゃないぞ?」

「あら、私は結構定晴の料理は美味しいと思っているのだけど」

「紫は何を言うか。式神を褒めろ。俺は実際レパートリーこそあるが料理の腕はそこそこだ」

 

当の藍はというと俺の料理を美味しそうに食べている。作ったものが美味しそうに食べられているのを見ると嬉しくなるもんだ。

しかし紫は食事の間は嬉しそうに食べるのだが、たまに窓の外を見ると難しい顔をしている。

 

「紫、何かあったのか?」

「え?あ、別に」

「そういや紫さー、霊夢がどこにいるか知らないか?最近見てないんだけど」

 

む?魔理沙も霊夢を見てないのか。

となると別に俺が霊夢に偶々会えていないのではなくずっと博麗神社を留守にしている可能性が高いな。

魔理沙の質問に紫は…

 

「うーん。今どこにいるのかは知らないわね」

 

多分嘘だ。

境界を操る程度の能力を使えば時間がかかりはするが確実に見つけることができるという。霊夢は幻想郷でも博麗の巫女という重要な役職。そんな彼女を見失ったとなれば紫にとっても問題だろう。

紫は何かしら理由があって霊夢の場所を明かしていない。さてさて、紫が霊夢の居場所を隠すほどの理由は…

ここで突然玄関のドアが叩かれる。その音を聞いたら紫は安心したような顔になった。

俺がドアを開けて叩いた誰かを確かめる。しかし俺は紫がなぜ安心したのか理解できなかった。

そこに立っていたのは博麗霊夢。どこに行っていたのかは知らない、がその姿は安心とは遠くかけ離れた姿だった。

ボロボロになった巫女服、ただの紙切れと化した博麗のお札、死ぬ寸前ぎりぎりまで減少した霊力…

そんな彼女が開口一番に発したのは、確かに不安ではないものかもしれない。

 

「定晴さん!美味しそうな匂いがするわ!食事を寄越しなさい!」

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