東方十能力   作:nite

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百五話 ボロボロの霊夢

「ん〜!これも美味しいわね!」

 

ボロボロの衣服のまま俺が作った料理を食べていく霊夢。元より余れば冷蔵保存とかしようと思って多めに作っているためこれで俺たちの分がなくなるとかそういったことは起きない。

しかしボロボロのまま食事をする姿はなんとも言えない有様だった。

 

「なぁ霊夢ー、ずっと何してたんだー?」

「妖怪退治よ。妖怪退治」

「ま、霊夢のことだから上手くやったんだろ?にしても今回は随分とボロボロじゃないか」

 

魔理沙の質問に霊夢が答えるといった形で会話は進んでいく。俺が訊きたいことは殆ど魔理沙が代わりに質問してくれたので俺たちは口を挟むことが出来なかった。

一通り質問に答えた後霊夢は満足そうにソファに寝転がった。

 

「ふ〜…紫ースキマ博麗神社まで繋げてー」

「私の能力を道具みたいに使わないでちょうだい」

「ケチー」

 

俺の家から博麗神社までそこまで距離はない。紫にスキマを頼んだのはいつもの面倒くさがりか、疲れからか、それとも別の理由か…

霊夢のおかげで準備した料理は全て食べ尽くされてしまった。保存するものがないが、まあミキに貰った保存食ならまだ多少なりとも残っているのでそれを食べることにしよう。

特に俺の家ですることもないため藍と橙、魔理沙は早々に帰っていった。食事には満足して貰えたようだし今回は成功と見ていいな。

しかし紫と霊夢は帰ろうとする素振りが見れない。

 

「紫、霊夢。帰らないのか?」

「そうね…霊夢?今回の妖怪退治、成功したのよね?」

「……残念だけど私じゃ無理だった」

 

まさか。博麗の巫女の霊夢ですら倒せなかった相手が地上にいるというのか。退治依頼がされるくらいだから良い妖怪ではないのだろう。

霊夢より強い悪い妖怪…そんなものが人里などを襲ったら大事件となる。

 

「やはりそうだったのね…」

「私は魔理沙に質問されたやつには正直に答えたわ。でも魔理沙ったら私が妖怪退治に成功したと思って話してたから成功とか失敗とかの話はなかったわね」

 

確かに魔理沙は霊夢に退治の成功についての質問はしてなかった。魔理沙は霊夢が妖怪退治を成功したことに何の疑いも持たなかったのだろう。

ここ幻想郷において霊夢以上に強い人間はいない。魔理沙も霊夢に追いつこうとしているが、霊夢の方が強いことは分かっている。その霊夢が失敗するなど夢にも思わなかったのかもしれない。

 

「となると…まずいわね…」

「霊夢で勝てない相手となると…紫たち妖怪が行った方がいいんじゃないか?」

「それは…」

 

そう言って押し黙る紫。

霊夢に訊いたところどうやら霊夢より先に妖怪が行ったが、誰一人戻って来なかったという。身体能力自体は妖怪よりも劣る身でありながらも生還した霊夢はまだいい方だったのかもしれない。

 

「定晴…地底から戻ってきて早々悪いんだけど…いえ、やっぱり忘れて。まだ私は地底での依頼のお礼すら払えてないのに」

「まあ依頼料については後払いでもいいよ。紫は確実に払ってくれるからな」

「あら、定晴さん地底行ってたの?」

 

そう言って疑問顔になる霊夢。どうやら全く知らなかったようだ。

地底で何をしていたのかを軽く説明する。霊夢も魔理沙も地底に行ったことがあるのでさとりたちとも面識がある。多少なりとも気になるところがあったのだろう。

 

「で?霊夢は何を倒しに行ってたんだ?」

「…これ言っていいの?」

 

紫に確認をとる霊夢。どうやら相当秘密裏の行動だったらしい。魔理沙たちに何も言わずに数週間ほど留守にしていたことを考えると当然と言えよう。

紫は何も言わずに頷くと霊夢は事の顛末を話しだした。

 

「まず私は紫自身から妖怪退治の依頼を受けたの。多分定晴さんが地底に行ってほしいって紫に言われた日じゃないかしら。で、私は早速対象を見に行ったの。何故か紫は教えてくれなかったからね。そこで、何を見たと思う?」

「もしかして死体が沢山転がってたとか…?」

「いいえ。その方が犯人も分かりやすかったのだけど。私が紫に言われた所に行ったらね、暗かったのよ」

 

洞窟か?それとも深夜に向かったのだろうか。 

まあどのみち動きにくいことは確かだが、それを態々俺に質問するだろうか。

 

「多分定晴さん洞窟とか夜とか思ったでしょ」

「うお、なんで分かった」

「勘よ勘。残念ながら私が向かったのは日中、そして屋外よ。別に建物に入ったり森に入ったわけじゃないわ。なんならあそこは平原だったしね」

「つまり…どういうことだ?」

「妖術、しかも相当広範囲のでその地点一帯が闇に落ちてたってわけ。さすがの私も怪しいって思うわけよ。それで私は霊力で明るくしようとしたの。でも闇に吸い込まれちゃうのよね。地面近くで照らしても地面が照らされることはなかった。まあ結論を言うとね、犯人はルーミアよ」

「ルーミアが?」

 

ルーミアと言えば俺が知ってる限り比較的温厚な性格だったはずだ。妖怪故人間を殺す事に抵抗は一切なく、なんなら人間を食べようという意識があった。

しかし一々目立つようなことはせず、空腹も人里の色々で満たしている。第一俺が見た感じルーミアはそこまで広範囲を闇にするほどの妖力はなかった。

 

「ルーミアってそんなに強くないって思ったでしょ」

「勘か?」

「ええ、勘よ。何でか知らないんだけどね、どうやら封印が外れてるみたいなのよね」

 

ルーミアの封印と言えば頭に付いていたリボンだ。自分では触れないと言っていた筈だし、誰かが故意か不注意か外してしまったようだ。

多分封印の中には妖怪としての本能も封印されていたのだろう。封印が外された今、自分の領域を作り周囲の物を喰らおうとしてるのではないだろうか。

 

「私は闇の中で結構頑張ったのだけど、結局やられちゃってね。こうして戻って来たってわけ。あのままだったら殺されてそうだし」

「じゃあルーミアの闇の領域はそのままか?」

「一応結界は貼っておいたけど、あの強さだったらいつ突破されても不思議じゃないわ」

 

つまり急がないとルーミアの闇の領域は更に広くなるということか。多分上空から見ればはっきりと分かるのだろう。誰かが巻き込まれていなければいいのだが…

 

「さて、本題よ。定晴さん、どうする?」

「さてさて、今回紫が依頼主となりそうだが…俺は行ってもいい、が被害が出るまでは積極的に動くつもりはない。紫、どうする?」

 

紫は困った顔をして黙り込む。どうやら相当悩んでいるらしい。

正直なところ俺は明日にでも行っていい。なんなら今からでも問題はない。しかし俺は依頼を受けてこその仕事だ。ただ働きを繰り返しては俺の身が保たない。

勿論紫はきちんと報酬を渡してくれるだろうが、紫としては連続で依頼するのは申し訳ないとでも思っているのだろう。外の世界では同じ人に五回程度連続で頼まれたことがあるから特に気にしないのだが。

 

「はぁ…分かったわ。定晴、依頼よ。ルーミアを倒して頂戴。出来れば封印という形が望ましいけど、あの子はそのままだと相当強いから最悪倒してしまっても構わないわ」

「よし、その依頼、承った」

 

俺は紫から第二の依頼〈ルーミアの封印〉を受諾した。

因みに紫がやれば良いという意見はなしだ。紫とて忙しいからな。俺が代わりをするということだ。

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