東方十能力   作:nite

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百六話 残り香

ルーミア退治の依頼を正式に受けたからにはこちらも全力で挑まねばいけない。

ルーミアのことは知ってる…が、封印が解けている今俺の予想を上回ることも多いだろう。被害を増やさない為にも早急に、かつ情報収集で確実に。俺の仕事での指針だ。

 

「霊夢が行ったという平原ってどこにあるんだ?」

「うーん。あれ平原って言って正しいのかよく分からないのだけど、場所は太陽の花畑の北東部。博麗大結界にもそれなりに近い場所よ。森の中にちょっとした空間みたいなのがあって…そこよ。昔とある妖怪が暴れて木が生えなくなったとかいう噂があるけど、まあそんなことはおいといて、詳しい場所なら幽香にでも訊きなさい。その空間丸ごと闇に落ちてるから分かりやすいと思うわ」

 

大きさはどれほどかは分からないが、妖怪が暴れることが出来る程には広いようだ。木が生えないようにする妖怪など聞いたことないが、妖怪が暴れた結果そこに妖力溜りが出来て異常現象が発生するようになったという話なら聞いた事がある。きっとそこにも妖力溜りがあるのだろう。

では、妖力溜りがあるということがどういった事象を引き起こすのか。

まず妖怪が集まりやすくなる。妖怪は皆妖力を増やして力を振るう生物だ。自由に使える妖力があれば集まってくるのも当然と言える。

問題はここから。妖怪たちがその妖力溜りで妖力を蓄えるとその分強くなる。溜まっている妖力にも限界があるためいつかは無くなるだろうが、本人がいなくなっても残るほどの量だ。水を撒いた時に多ければ多いほど蒸発するまでの時間が延びるのと同じ原理である。

強化されている妖怪が中々無くならない妖力溜りに居座っているということは人間からすれば厄介なもので、場所という制限はあるもののその妖怪が純粋に強くなるのだ。戦闘するとなると尚更よそ見は出来ない問題である。

 

「となるとこちらもきちんと準備してからの方がいいな」

「ええ、そうして頂戴。霊夢がこれほどまでやられる相手よ。定晴だってそう簡単に勝てる相手ではないと思うの」

 

紫が心配そうに声を掛けてくる。

幻想郷でも屈指の実力者である霊夢がボロボロになり、命からがら帰ってきた相手だ。慢心していては即座に返り討ちにあうだろう。

よし、では今日のところは休んで体力を回復させる。同時進行で対ルーミアのスペカ開発をしてもいいな。霊力は体力とは直結していないため、無くならなければ倒れたりすることはない。

 

「分かった。今日は休むよ」

「今日の夜ご飯の片付けは藍にさせるから。定晴は休みなさい」

「んじゃお言葉に甘えて…」

 

そう言って俺は自室に向かう。

地霊殿で一日休んでいるにせよ疲労はそう簡単にはとれない。時間がある時に休息していざという時のために体力は残しておく方が得策だ。

 


 

その夜。珍しいことに狂気の方から話しかけてきた。

 

『定晴、今回のは少し警戒しておけ』

「その心は?」

『今回の敵は…どうも正気とは思えない』

 

狂気がこんなことを言うなんて珍しいな。もともと狂気は俺の行動には口出しをすることはなく、サポートに徹してくれている。これのどこが狂気なのかって言われると困るのだが、狂気とて安定していればそこまで脅威になるものではない。

狂気は普段相手から負の感情を読み取っている。全ての負の感情はどれも根本には狂気があるとか言っていたが、俺には全く感知ができないためイメージもできない。

しかし今回はまだルーミアと会っていない。それなのに負の感情を読み取るとはこれいかに。

 

『微妙に霊夢に残っていた。妖力と同じで狂気も強ければその分そこに痕跡を残す。それの結果と言えるな』

「それだけ狂気が強かったってことか?」

『簡単に言うとそういうことだ。ただ感情が他者に付着するなんて中々無い事だ。その中々無い事が起きたってことは相手はそれが起こせるほどの能力を持ってるということ。気を付けろよ』

 

奇跡というと誇張表現だが、滅多に起こらないということを実現させたルーミア。封印時はあまりそういった雰囲気は感じなかったが、随分と強大になったものだ。

そんなルーミアを封印したという人には尊敬の念を持たざるを得ないな。

にしても封印を解いた奴は何を考えていたのだろうか。封印自体はルーミアに直接触れているからその封印を解いたやつもルーミアに襲われたのだろうか。

 

『或いはルーミアは封印を解いた奴の影響を受けているという可能性もあるな。正気で無くなればそれほど他者からの影響を受けやすい』

「直接ルーミアに会わないとそこらへん分からないな」

 

明日にはルーミアの元に出向く。

様々な考えを巡らせながら俺は眠りについた。

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