東方十能力   作:nite

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百八話 問答

「あら、どうしたのかしら?驚いたような顔をして」

 

ルーミアとよく似た女性が話し掛けてくる。この状況を見てもあれがルーミアであるのは間違いないだろう。しかし俺のお腹辺りまでしか無かった背丈が俺と同じくらいになり、話し方や放つ雰囲気が全然違う。

なによりその妖力の質が桁違いだ。妖力は妖怪の強さを決める。紫や幽香などは相当な妖力を持っているため大妖怪と呼ばれている…だが目の前のルーミアが持つ妖力は紫に匹敵するほどの量がある。この量をあんなリボン形の封印でずっと抑えていたなんて昔ルーミアを封印した人には脱帽だ。

 

「まあ仕方無いわね。でもこれが私の本当の姿。そして私は妖怪であなたは人間。これがどういうことだか分かるかしら?封印状態では妖力の消費も少なくて人間を食べなくともどうってことなかったけど今は違う。霊夢は逃しちゃったけど、今度は逃さない。私のご飯?逃げないでね」

 

俺はとてつもない悪寒がしてその場から飛び退いた。俺がさっきまでいた所が一瞬にして闇に飲まれる。ルーミアの闇には攻撃性能は無かったはずだ。しかしルーミアは初撃で闇を放ってきた。今のルーミアには俺が知っている知識は通用しないと考えた方が良さそうだ。

 

「逃さないわよ」

 

闇の向こうからどす黒い声が聞こえると同時に周囲に闇と共に人を殺す事ができる威力を持った弾幕が展開された。

さすがに一撃死というわけではないが、当たるとまずいな。結界と輝剣、更には幻空の中から家宝の剣を出して凌いでいく。だが数が多い。このままではジリ貧だ。

逃げることなら可能か?今は昼間で周囲はさっき無効化を使ったお陰で晴れている。結界と二刀剣術なら攻撃を防ぎつつ逃げることができるかもしれない。

何も初対面で倒さなければいけないということはない。作戦を立てることも必要だろう。俺が知っているルーミアとは何もかもが違うため初見で戦うにはあまりにも不利だ。

 

「あら。逃げようとしてるわね?でも残念…あなたは既に籠の中」

 

ルーミアの声が響くと俺の周囲に闇が展開される。俺自身に浄化の能力が常に働いているからまだ手元などは見えるが、もしなかったら今頃一寸先も見えない闇の中に閉じ込められていたであろう。

勿論手元が見えた所で外が見えない闇の籠の中に閉じ込められているのは変わらない。どうやら相当厚く広がっているようで輝剣で斬っても外を見ることは叶わない。

闇の中から突然の弾幕。更にはルーミアのものであろう爪が伸びてきて俺を切裂こうとする。流石に見えてから俺に当たるまで二秒と無い状況ではいくつか被弾してしまう。

 

「ルーミア!お前の目的はなんだ!」

 

逃げようと闇に突入しても何も認知することなく俺は殺されるだろうから唯一当たるまで猶予があるここでルーミアに呼び掛ける。逃げるという選択肢は既に俺には残っていない。

 

「目的?人間を食らうこと。そして幻想郷を闇に落とすこと?」

「なんで疑問系なんだ!」

「これは私にも分からなくてね…ま、そんなことどうでもいいでしょ。妖怪の行動原理なんてどうでもいいものばかりよ」

 

ルーミアはそう言うと攻撃を再開する。

幻想郷を闇に落とす…言葉通りルーミアの持つ闇を操る程度の能力で幻想郷全体を闇で覆うことだろうか。それを紫が許すとは思えないが、ルーミアが疑問系で返事したところを見ると妖怪の本能とかそういう類のものなのだろう。意味を求めてはいけない。空腹時に何かを食べたいと思う欲求と同じだ。

 

「その封印はどうやって解いた!協力者がいるのか?」

「…」

 

この質問には答えてくれないらしい。ルーミア自身では封印に触ることは出来ないらしいし誰か違う人に解除してもらったのだろうか。

妖怪の力を長い間封じ込めていた封印だ。人里の人間のような一般人に解けるとは思えない。そもそも俺がしても解けるとは思えなかった。最初見たときに封印であることは分かったものの、その構造は全くもって理解出来なかった。時間をかけてすれば多少は進展するだろうが、多分一週間以上かかる。そんなに長い間色々していたら変に思われるだろうからそんなに時間は掛けていないはずだ。となると封印に長けていて尚かつルーミアの封印を解くことにメリットがある者となる。

 

「ルーミア以外に封印が解けて暴れてるやつはいないのか?」

「それは知らないわ。私以外に変な現象が起きてないってことはそういうことなんじゃないの?」

 

こっちは曖昧にだが答えてくれた。となると協力関係の何か隠しておきたいことがあるようだな。まあ十中八九封印を解いた奴のことだろうがな。

しかしここでずっとルーミアと問答していても仕方無い。ルーミアと会話している間も俺は少しずつ体力が減り被弾していっている。もし俺がここで気絶したらすぐにでもルーミアのご飯になること間違いなしだ。

なんとかこの状況を打破したいが、俺の声が届く範囲に俺を助けてくれる奴が通らなければ難しいだろう。幽香が一番確率として高いが、先程家に帰らせてしまった。戻ってくる確率は五分五分といったところ。

霊夢はボロボロでまだ神社で転がっているだろうし、何よりここは博麗大結界の近くだ。普通の妖怪ではここを通ることすらないだろう。妖怪の山は少し遠いし、ここら辺は先程見た感じ森しかなかった。ここを誰かが通ることなど殆どないだろう。やはり自分の力で切り抜けなければいけないようだ。

状況を打破するために頭の中で作戦を立てると同時に時間稼ぎの意味も込めてルーミアに更なる質問をかける。

 

「なんであんな大きな闇を展開していた!」

「あれを見て不思議そうな顔をしながら人間やら妖怪らやが来るのよ。私としても久しぶりに人間を食べるのだし色々と試したくてあんな風にしてたのよ。それに現状定晴という新たな食事も連れたしね」

「残念だが簡単に俺を食えるとは思うなよ!」

 

思いの外色々と話してくれるルーミア。隠すことに意味がないと思っているのか話してしまっても大丈夫なのだという自信があるのか…どちらにせよルーミアが優位なのは変わらないのだから本人に取っては取るに足らないことなのかもしれないな。

 

「なんで人間を襲う?」

「それは私が妖怪だからよ」

「でも前のルーミアは人間を食べることなんてあまり考えてなかったように思えるぞ」

「あれは…気が変わっただけよ」

 

不自然の間の後に言い訳のように話すルーミア。もしかして封印状態の自分を覚えていないのかとも思ったが、先程俺のことを名前で呼んでいたことを思い出し思考を中断する。

ルーミアの何度も問答しているが俺は未だに突破口を見つけられずにいた。このままではルーミアの餌食となってしまうが何も解決策が見つからないまま俺には疲労とダメージが溜まっていく。後十分ほどで霊力も切れて結界と輝剣が使えなくなる。いや輝剣は実体のある武器なので使えなくなるわけではなく浮かせたり移動させたりということができなくなる。

 

「ルーミア、お前はなんでこんなことをするんだ。幻想郷のこと嫌いじゃないんだろ?」

「でも幻想郷は私を嫌うわ。闇を操り全てを闇に落とす私なんて…勿論受け入れるのでしょうけど」

「じゃあルーミアは誰にも好かれてないと言うのか?」

「ええそうよ。私を好ましく思う生き物なんていないのよ。闇は常に闇。現実から忌み嫌われる存在なの」 

「でも俺はルーミアのこと好きだぞ?」

「っ」

 

俺がそういうと途端に攻撃が止んだ。俺はそのままの意味でルーミアのことは嫌っていないと言ったのだが、もしかして効果があったのか?

 

「こんな時に苛つくことを言ってんじゃないわよ!」

 

突然怒りを含んだ叫び声が響き俺の周囲を大量の弾幕が覆う。どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。

回避不可、弾いてもその奥に配置されている弾が当たる…絶体絶命とはこのことか。

全方位に結界を貼り輝剣と家宝の剣で弾く…が所詮焼け石に水であり、俺を大量の弾幕が襲う。至る所に被弾して少しずつ意識が遠くなる。

この意識を手放したら死ぬ…が我慢できない…このままでは…

 


 

定晴が目の前で落ちる。とうとう意識を手放したのだろう。だが私の手はなぜか動こうとしない。

なぜ…?

どうして…?

目の前に大量の霊力を持つ人間が無防備で落ちているのに…頭の中に先程定晴に言われた言葉が反響する。

「でも俺はルーミアのこと好きだぞ?」…なによ。こんなのただの逃げの一言であって私はただの妖怪。人間なんて誰でも問答無用で食べる。実際霊夢にも何度か躊躇いなく噛み付いた。

でも…

でも…

 

「……あーもう。今は食欲がないのねきっと。良かったわね。命拾いしたわね定晴」

 

気絶して聞いてなどいないだろうけど。

はぁ…人間の一言でここまで動けなくなるなんて私もまだまだね。

そう思った後私は落ちていく定晴を捕まえて安全な場所にねかせてあげたのだった。

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