東方十能力   作:nite

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百九話 幽香の心配事

目覚めると目の前に見えるは知らない天井だった。天井?表現として正しいか分からないな。

どうやら俺は洞窟の中で眠らされていたようだ。ルーミアの攻撃で気絶したとこまでは覚えている。その証拠に俺の衣服は未だにボロボロのままだ。

しかし俺はまだ生きている。もしかして死後の世界なのかと一瞬思ったけどそれにしては意識がはっきりしすぎだし狂気も普通に魂にいる。

となると誰かに助けられたのだろうか。あのルーミアのことだから気絶したら速攻食らってくるだろう。それなのに生きているということは誰かが助けてくれたに他ならない。通りがかりの妖怪か、はたまた様子を見に幽香が戻ってきたか…いや、幽香の場合洞窟に放置なんてことはしないだろう。ということは誰かが通りかかって助けてくれたということだ。誰だか分からないが感謝だな。

洞窟から外に出る。既に外は暗くなっていて月は殆ど真上に来ている。どうやら真夜中のようだ。

助けてくれたのが幽香ではないとすると当の幽香は相当心配しているのではなかろうか。あそこまで俺に無事に帰ってこいと言ったのだ。この時間になっても戻ってこないとなると心配しているかもしれない。案外忘れて寝てるかもしれないけど。

取り敢えず幽香の家に向かうとしよう。どうやらこの洞窟は先程までルーミアと戦っていた場所から然程離れていないようで、高く飛べばすぐにどちらに行けばいいのか分かったのが幸いだ。

幽香の家に着くと未だに家の電気は点いていた。どうやらまだ起きているようだ。

 

「幽香ー俺だー」

 

ドアを叩いて呼ぶ。もしかしたら電気を点けたまま寝てる可能性もあるが、この幻想郷で使われている電気というのは大体が妖力を元に点けているため寝ると勝手に消えるという。俺の家の電子機器と同じだな。

俺がドアを叩いて数秒後。ドタドタと家の中から音がすると同時に扉が開け放たれ幽香が飛び出してきた。その勢いで俺を抱きしめる。

 

「よかった!!」

「ぐお。苦しい…」

「あ、ごめんなさい」

 

幽香は見た目少女と言えど大妖怪であることには変わらない。俺は能力を使用するために体もそれなりに鍛えているから大丈夫だが、一般人なら既に骨がニ、三本折れているところだ。

 

「でも本当よかったわ。全然帰ってこないし現場に行っても誰もいなくなってるし。入れ違えたかなと思ってずっと家で待っていたけどその間ずっと私心配してたのよ?」

「悪かったよ。気絶させられて近くにあった洞窟で眠ってたんだ。誰かが助けてくれたようなんだ」

 

幽香が早口で話すのを制止させて俺の状況も話す。どうやら相当心配させてしまったようだ。反省。

俺が助けられたことを言うと何故か不思議そうな顔をした幽香だが、すぐに元の笑顔に戻って話し始める。そんなに俺が助けられたことが珍しいのだろうか。

 

「定晴はご飯食べた…わけないわよね。夜ご飯食べていかない?定晴も疲れてるでしょ?というか食べないなんて言わせないわよ」

 

幽香の有無を言わさない威圧感に押され頷く。するも幽香は嬉しそうな顔をして奥に入っていった。それに俺もついていく。

幽香は早速キッチンと思われる場所で料理を始めた。河童の発明のおかげで妖力だけで電気を発生させたり火を起こしたりできるらしい。俺もにとりに頼んで霊力で起動できるものを作ってもらおうかな。

料理はものの数分で終わった。メニューはパスタだ。山菜がほどよく入っていていい匂いがする。海のない幻想郷ではツナをいれるとか出来ないため山菜中心のメニューになりやすい。健康的でいいとは思うが魚介類からしか摂れない栄養素もあるしなんとなく健康的ではないような気もする。

味は言わずもがな美味しかった。俺がパスタを食べる間ずっと見られていたのがなんとも落ち着かなかったが、とても嬉しそうに見てくるため俺も強くやめろとは言えなかった。

食後、幽香の出してくれたお茶を飲みながら今後について話す。

 

「ルーミアがどこにいったか分かるか?」

「いいえ。全く。でも平原にあった巨大な闇の塊は無くなっていたわね。まだ他に闇の塊ができたという話は聞いてないから今はどこかに隠れているんじゃないの?」

「ルーミアと話して分かったが、今のあいつは断然妖怪感が増している。人間を食らうことを積極的にしているようだ。元より人間を食うことには抵抗が無いらしいが、大妖精に聞いた話だとあまり積極的には動かず、食えたらラッキー程度にしか思っていなかったらしい。だが今は積極的に動いている。ルーミアの能力は一般人には厄介極まりないものだし、被害が出ると大変なことになる。早めに何かしら対処したいものだが…」

「まあ私も人間を食うとかに抵抗はないわ。あまりしたくはないけどね。定晴みたいに大切な人だと尚更…ね」

 

妖怪はその生存本能故誰もが人間を食らうことには抵抗がないように見える。人間を驚かせることが目的の妖怪は人間がいなくなると困るため抵抗があるらしいからその限りでもないのだが。

兎にも角にもルーミアは早めになんとかしたい。出来る事なら封印をしたい。ルーミアを気絶させることが出来れば前と同じようにリボンを付けて封印することもできるだろう。戦うことは今回しょうがないものとする。でなければ妖怪退治など誰にもできない。

 

「あの子は闇を操るんだからどこかの洞窟とか森の中を彷徨ってるんじゃない?」

「そうだな。明日は捜索することにしよう」

「じゃあ早く寝ないといけないわね。どう?私の家で寝ない?」

 

幽香が流れるように寝泊まりをおすすめしてきた。流石に女の子と同じ屋根の下で寝るのは些か抵抗があるな。

断ろうとしたら幽香がとても悲しそうな、寂しそうな顔で見つめてきた。そこまで眠らせたいか、俺を。

なんか朝ご飯は作るからとか色々と言われたし、ここから家に帰るのも若干億劫なので今回は俺が折れるとしよう。幻空に寝間着など入れているわけないからこの服のまま寝ることになりそうだ。まあ俺が寝るのはソファだ。幽香はベッドを譲ってきたが流石にそこまでは出来ない…というか普段幽香が使っているベッドを使うのは少し抵抗がある。

私服のままベッドを使うのも申しわけないので俺はソファで眠ることにした。俺が寝られるほど広いソファで助かった。  

俺は昼間の疲れと明日への準備のために早く寝た。今の今まで洞窟で寝ていたというのにすぐに寝れたのは我ながら驚いた。

 


 

…定晴が私の家にいて、更に目の前で寝ている。疲れが溜まっていたのか既に意識は夢の中のようだ。

昔は私も定晴と寝ていた。あの頃は全く定晴のことも信用出来ず、同じところで生活していても全く意識していなかった。

が、その時もだけど定晴ってば変に気配りが出来すぎているのよね。普通気付かないようなところにも目を配っているし、優しいし…気が付いたら私は定晴のことが好きになっていた。一週間とちょっとで嫌いだった人間を好きになるなんて私もチョロいようだけど、それだけ定晴には魅力があったということだろう。

 

「…ふふ、定晴…」

 

私が定晴のことを好きだと自覚したのは定晴と別れてしばらくしてからだった。なんというか…定晴のことを思い出すとドキドキするのだ。今だってそう。私ったらホント惚れてるなぁなんて思うけど、それは感情の問題だから仕方無いわよね。

でだ。私はベッドで寝るということになっている。正直私も人を好きになるなんて経験ないから添い寝とか…は恥ずかしくてできたものではないけど。

というか同じ屋根の下にいるのだと意識するだけでも顔が熱くなるのだけど。定晴は昔から鈍感だから本人にその意識はないだろうけど。

私だけドキドキするなんて不公平だとは思うが、まあ、こういうのもたまには悪くないかなって…そう思う。

…定晴は寝ているのだし…いえ…でも…気付かれないわよね…よし。

私はベッドに向かう…けどその前に…寝ている定晴の頬に一回だけ…口付けをして…

 

「おやすみ、定晴…好きよ、いつかは…貴方に直接言えたらいいのだけど…」

 

そして私はベッドに潜る。中々火照った顔は収まらないけど…どうしようもない幸福感があったのは…やはり私はホント惚れている。

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