朝は幽香に起こされた。俺もそれなりに早起きの部類に入ると思っていたのだが、植物の世話を欠かさずしている幽香は俺よりも早く起きて色々としているらしく、一時間以上前に起きていたことには驚いた。
どうやら疲れていることを考慮したのか俺を起こしたのは朝食が完成した後。幽香に作ってもらった朝食を食べながら軽い会話をする。
さて、この後はどうしたものか。探索に行くのは当然なのだが、どこに行くのかさえ決まっていない。
「ならまずは昨日の場所に行ったらいいんじゃないかしら?」
「でも闇の塊は出現していないんだろう?」
「もしルーミアが隠れようとしているのなら出現しないのも当然よ。よく言うでしょ?犯人は現場に戻るって」
確かにそうだな…昨日いなくなったのは居場所が俺にバレたからであって、未だに妖力をためているのかもしれない。どれも可能性の範囲でしかないが、今のところ行く場所なんてないので最初はそこに向かうとしよう。そこで何も見つからなかったらその時はその時だ。また何か考えればいい。
朝食後、俺は昨日の平原に向かう…その時
「私も行くわ」
「え?今日は捜索がメインだから別に一人でも大丈夫だぞ?」
「また帰ってこなかったら嫌だし…それに人が多かったら捜索だって楽でしょ?私なら周囲の花たちと会話できるから貴方よりも捜すのは得意だと思うけど?」
と丸め込まれてしまったので幽香も同行することになった。
どうやら俺が帰ってこなかったら心配になるらしいので、今回の事件中は夜までには顔を出すことにしよう。さすがに連日泊めてもらうわけにもいかないので、顔を見せるだけだが。
「ここよね…」
「ああ、そうだ。別になんともないな」
現場に到着。しかし周囲には変な妖力を感じず、妖力溜りもそのままだ。特に強い妖力が宿った妖力溜りではその妖力の影響で近くの草花や生物が妖怪となったり妖力体となって妖力を発するようになるため、しばらくすれば元の状態に戻る。そのためここは一晩の内に減った妖力はほとんど回復し、あまり変化はなかった。
強い妖力であればあるほど隠すのが難しいため、封印が解かれたばかりのルーミアでは昔は上手く扱っていたにせよ今はそう簡単に隠せるとは思えない。なんとかルーミアが妖力を完全に扱えるようになる前に解決したいところだ。昨日の時にあれでは本気のルーミア相手では正直負けると思う。
「周囲の花たちもルーミアは見てないって言ってるわ。帰ってこなかったのかしら」
「幻想郷は妖怪が多いせいで妖力溜りも多い。別の場所に移ったのかもしれない」
俺が考え事をしている間に幽香が花たちに聞いていたようだ。
さとりにも言われたが俺は少々考え事が多いな。だがまあそれのおかげで常に冷静な判断をすることができるので今のところ問題視はしていない。
「となると次は妖力溜りを探してみていく感じなのかしら?」
「そうだな。といっても俺は幻想郷の妖力溜りなんてどこになるのか分からないから…幽香、頼めるか?」
「案内ね、任せないさい!」
そう嬉しそうに返事をする幽香。頼られたのが嬉しかったのだろうか、昨日の無効化を使う時に少し無理やり帰してしまったからそれで少し怒っていたのかもしれない。
その後幽香と共に色々な場所を見て回ったが、一度もルーミアの姿を見る事はなく有力な情報を得ることもできなかった。
そして時間が経ち夜になる。捜索自体は夜でも可能だが、妖怪にとってはベストコンディションの時間。幽香ならまだしも俺だと今のルーミアに夜の戦闘で勝てる気がしない。見つかったとしてそのまま襲ってきたら俺はひとたまりもなく死ぬだろう。
そのため今日の捜索はここで打ち切りとなり、帰宅することになったのだが…
「なんでよ!別に私の家でもいいでしょう!?」
「いや、だから二日連続で泊めてもらうのは悪いって。今は時間も大丈夫だから俺は自宅に…」
「別に私は迷惑に思ってないわよ!」
とまあ、こんな感じでずっと問答を繰り広げているのであった。
俺は元々今日は自分の家に帰る予定だったのだが、どうやら幽香は違ったらしく今日も俺を家に泊めてくれるらしい…のだが、今日は夜遅いわけでもないし、なんなら夕食の時間のちょっと前だ。別に幽香の家に泊まる理由はない。幽香の善意を無碍にするのもどうかとは思うが、俺は俺で二日連続で女性の家に泊めてもらう気にはならなかった。
そしてその問答を繰り返して既に十分が経過していて、未だになんの進展もしていない。
「俺は困るって、二日も連続で泊めてもらうのは気分的によくない」
「私が許可してるのよ?別にいいじゃない」
幽香はずっと私は大丈夫の一点張り。議論が進展しない理由はそこにあるのだが、それを断る俺の理由も気分的に乗らないだからさて困った。
俺が純粋に嫌だと言えば引くだろう。幽香は人の嫌がることは積極的にしない。しかし、それは同時に幽香に傷をつけてしまうこになりそうで俺は怖いのだ。
このままではずっと問答が続くことになるだろうし、そろそろ何かきっかけが欲しいところだが…
「あら、あんたたち何してるのよ?」
「あら、霊夢じゃない。聞いてよ、定晴ったら私の家に泊まってくれないのよ」
「別に普通じゃない?妖怪でしかも女性でありながらそんなぐいぐい行く貴女の方が異常なんじゃないかしら」
霊夢特有の誰であろうと関係ないはっきりとした意見。霊夢が悩み事なんてするのはお金と食事だけって魔理沙が言っていたのだが、このずばっと切り込む感じ…映姫に似ているところがあるかもしれない。霊夢は映姫を嫌っているから否定するだろうけどな。
霊夢の意見を聞いて幽香が途端静かになる。なんだろう…なんとなく嫌な予感が…
「もういいわよ!知らない!定晴なんて死んじゃえばーか!」
と捨て台詞を吐いて太陽の花畑の方向にすっ飛んでいった。
なんというか…とばっちりじゃないか?意見を言ったのは霊夢であり、俺がはっきりと断ったわけでもないのに幽香は俺だけを罵倒して帰ってしまった。
その様子を見て霊夢が一言。
「あら、思いのほか聞き分けがいいのね」
霊夢よ、それはお前の言い方が悪いのもあったんじゃないか…?
口に出すことは出来なかった。