百十八話 朝食
朝、いつもの通りに起きて朝食を摂りにキッチンへ。
奴が破壊したせいで一度はボロボロになった俺の家だが、紫が手伝ってくれて元のように修繕された。どうやら俺が博麗神社で色々している間に手を回してくれていたようで、俺がその日の夜に家に戻ってくる頃には新築のようにきれいになっていた。
ルーミアが言うには幻想郷で土木作業をするには鬼がいいらしく、最近は地底との関係性が強まったおかげで多少鬼たちも地上に出てくれるようになったらしい。
因みに現場監督は勇儀や萃香など地上との親交が強い人が選ばれているらしい。今回俺の家の修繕の監督をしたのは萃香らしい。どうやら入れ違いになっていたようだ。俺の家を直接見たことが無い勇儀には難しかったか。
閑話休題
トースターでパンを焼いている間に目玉焼きを作る。同時にベーコンも焼く事で効率化だ。そして朝食を焼いている俺の前にひょっこりと現れる顔。
「私の分は?」
「…もう俺は突っ込まないぞ。いるか?」
「うん。頂戴」
何故か結界を張り直してもルーミアは家の中に侵入できるようになっていた。本人曰く、定晴の考えてる事は分かる、だそうだ。それでなぜ入れるのかは分からないのだけど。
ルーミアは外では前と同じように子供モードで口調も幼くなるのだが、俺と二人っきりの時は素で接するようになった。演技をするのも疲れるらしい。前は封印の影響で半強制的に口調が幼くなっていたのだが、今の封印にはそのような効果はなく力を抑える効果しかないので演技をする必要があるらしい。幸いと言うべきか長い間幼い口調で話していたため意識すれば簡単に口調は変えられるらしいが。
「ルーミア、皿取って」
「はいはい」
最近は毎朝とまではいかないがよく朝食の場に現れるようになった。そのためルーミアも俺の家の家具の配置程度ならば憶えている。~を取ってと言えば取ってくれる。
準備を終え椅子に座る。向かいにはルーミア。理由は知らないがルーミアは俺の正面に座りたがる。隣に座った時より正面に座った時の方が嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
「「いただきます」」
ルーミアは美味しそうに俺の料理を食べてくれる。俺自身そこまで料理が上手いとは思っていないが霊夢も魔理沙も俺の料理を美味しそうに食べるので幻想郷基準では上手い方なのかもしれない。
そういえば霊夢はというとあの後あまり目を覚まさなかったため永琳に来てもらい診断したところ若干貧血になっていたらしい。輸血をしてもらいやっと起きたのだと藍は言っていた。まああそこまで出血していたのだ。当然だろう。無理をさせてしまったなと度々思ってしまう。
あうんはと言うと守矢神社にいたらしい。霊夢の状態は見てあわあわしていたのを覚えている。それを見ながら霊夢が苦笑していたのもな。
「ごちそうさま」
俺よりも早く食べ終わったルーミアが汚れた食器を持っていく。
これももう毎度のことで見慣れたものになった。この光景を見るとあの慌ただしい生活が終わり平和になったのだと、そしてルーミアが式神になったのだと強く意識する。まだ俺の家を破壊したやつの行方など問題は残っているが取り敢えずの問題は解決したと言っていいだろう。
「ごちそうさま」
少し遅れて俺も食べ終わり皿洗いの時間だ。
皿洗いもルーミアが手伝ってくれる。最初は別に無理しなくていいんだと伝えたのだが、ルーミアはその時
「私は定晴の…し、式神だから…手伝うのは当然でしょ」
と赤くなりながらも言ったのでそれを無碍にするのもどうかと思いその日から皿洗いはルーミアに手伝ってもらっている。
式神になったのは半分しょうがないものではあったが、ルーミアが言い出したこともあってルーミア自身も式神として色々しようと考えているようだ。俺は別に式神だからと言って束縛したり命令したりするつもりはないが、本人がしたいというのならば今はそうさせようと思っている次第だ。
皿洗いを終わらせソファに座る。食事用の机と生活用の机は分けていて、それに伴い椅子は食事用、ソファは生活用といった風に分けている。食事用に椅子を使っているのはあまり食事のときに姿勢を悪くするのもだめだよなという個人的な考えの元だ。ルーミアもそのことは分かっていて、別に食事のときに椅子に座りたがらないなんてことはない。
俺がソファに座るとすぐ横にルーミアが座る。ソファに座った時の定位置だ。
「そんでルーミア、今日の予定は?」
「別にないわ。ごしゅ…定晴は?」
「俺も特にないなぁ。道具が劣化しているってことはないし、食材も最近買ったばかりだ。久しぶりに幻想郷探索でもしようかと思ってはいるが」
「幻想郷探索?」
俺が幻想郷に来たばかりのときに幻想郷の色々なところを適当に歩いていたあれのことだ。
香霖堂を見つけたり幽香と出会ったり…幻想郷は色んなものがあるから歩くだけでも中々に面白いのである。因みに未だにあの一件の後永遠亭には行けていない。どうもどんな顔をすればいいのかも分からずに放置してしまっている。ヘタレと言いたいなら言えばいい。だがだからと言っていく気にはならないのだが。
「ふーん、そんなことしていたのね」
「まあ適当に歩くだけだ。何か面白いものでもないかと探しながらな」
「それさ、私も付いて行っていい?」
「まあそれは構わないけど、別に絶対何か起きるってわけじゃないぞ」
「別にいいの。私としては一緒に…いえなんでもないわ」
ルーミアも同行という事か。じゃあどこ行こうかね。
妖怪の山付近にもまだ何かありそうだが、あのあたりは比較的訪れる場所だしなぁ…太陽の花畑の先にでも行ってみるか。
幽香の話だと花畑より先には三途の川があるらしい。三途の川というと亡くなった人などが渡ると言われるあれだ。それを生きたまま見るというのも不思議な気分だが、折角だし見てみたい。
三途の川の更に向こうには閻魔たちが裁く場所があるらしい。映姫の仕事場である。生きた人がそこに行くのはそれなりに疲れるらしいが暇があれば行ってみるとしよう。死ななくとも行けるらしいし。
「よし、じゃあでかけよう」
「私はこのままでも大丈夫よ。ごしゅじ…定晴は早く準備してらっしゃい」
「別に呼び方は無理しなくてもいいんだぞ?」
「恥ずかしいのよ。二人っきりだと何か気が緩んじゃって呼びそうになるだけよ。誰か別に人がいる時はこんなことないの」
そんなルーミアの弁解を聞きながら俺はでかける準備を進めるのであった。