東方十能力   作:nite

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遅れました。すみません。


百二十二話 命蓮寺

人里に到着。

チルノたちが花畑に向かっていたことからも分かるが今日は寺子屋は休みのようで、慧音が門番として立っていたので命蓮寺の場所を聞くために近付く。人里の構造を完全に把握しているわけではないので人に訊くのが手っ取り早いのだ。

 

「ん?定晴か。どうした?」

「命蓮寺ってどこにあるんだ?映姫に教えてもらったので訪れようと思ったのだが」

 

そう言ったら慧音が不思議そうな顔をする。

俺が映姫と知り合いだったのが意外だったのだろうか。ただ映姫はたまに幻想郷に顔を出すらしいし別に不思議な事でもないような気がするが…と思っていたら

 

「いやな、まだ命蓮寺に行った事なかったのが驚きだっただけだ。お前のことだから人里は全部回ったのかと思っていたからな」

「あーそういうことか。実は買い物に来るだけで人里についてはあまり詳しくないんだ」

「お前らしいな」

 

そう言って朗らかにほほ笑む慧音。

こんな顔ができる人だから人里でも信頼されているのだろう。人気になる理由もよく分かる。

慧音が人里の向こう側を指で指しながら言う。

 

「命蓮寺は向こうだ。多分今日も入口で掃除している妖怪の響子ってやつがいるから聞くといい」

「分かったありがとな」

 

慧音に言われた方へルーミアと共に歩く。

人里と言えど妖怪はよくここに遊びに来るというらしいし何より慧音が半妖なのだから今更人里の人々は俺がルーミアと一緒に歩いていても何も言わない。というかこいつらのことだから俺は妖怪よりの人間だと思われていそうだ。

あとルーミアと一緒だというのにいつものように食材を売ろうとするのやめろ。後でまた買いに来てやるから。

商売根性を見せつけてくる店主たちを避けながらしばらく歩いたところで寺のようなものを見つける。あれが命蓮寺だろうか。方向とかは合っているのだが…人里に命蓮寺以外に寺があるなんて聞いたこと無いからきっとそうなのだろう。

入口のところに立っている妖怪に話を聞く。慧音は言うには確か響子って言ったけな。

 

「あのすまないんだが…」

「はい?」

「ここって命蓮寺で合ってるか?」

「あ、はい!そうですよ」

 

やはりそうか。

見た目は…少し煌びやかだな。ルーミアも命蓮寺には殆ど来ないのでどんな建物か知らないって言うし、ここは俺自身の目で色々見ないといけないな。

俺が建物を見ていると妖怪、響子が自己紹介をする。

 

「こんにちは!私が幽谷響子って言います!」

 

耳がキンキンするくらいの大声で。

吃驚した。これがこの妖怪の特徴なのか、それともこの命蓮寺の掟みたいなものなのか分からないが、取り敢えず吃驚した。

 

「いつもなら妖怪として人間を襲うのですが今日は先程ご飯を食べたばかりなので襲いません!よかったですね!」

 

なんか不吉なワードが聞こえたのだが…まあそれいいとして。

一言一言の元気がいい子だなぁ…なんとなくこの妖怪特有な気がする。

 

「響子、ここの寺の代表とかいるか?」

「代表ですか…えっと、教えを説いてる人がいます。人間ですよ!」

「その人って今会えるか?」

「ん〜…あ、今なら大丈夫です!呼んできますね!」

 

そう言って寺の中に入っていく響子。掃除を邪魔してしまったが、結構この敷地内は綺麗だ。多少なら問題ないだろう。

程なくして響子が出てきた。その後ろには一人の女性が付いてきている。彼女がここの教えを説いている人だろうか。

 

「彼がそうです!私は他のところ掃除してきますね!」

 

箒を持ってどこかへ行く響子。多分俺達が話しやすいように場所を空けてくれたのだろう。食べるとかなんとか言っていたが多分根は優しい子なのだろうか。

残った女性が話しかけてくる。

 

「貴方が命蓮寺に興味があるという方ですか?」

「ああそうだ。堀内定晴だ、よろしくな」

「私は聖白蓮。ここで皆に教えを説いています」

 

なんとも落ち着いた雰囲気の女性だ。

映姫のような堅苦しさは無く、どちらかと言えば優しい感じの落ち着きだ。映姫は話し方や立ち姿がとてもきっちりしているのでこちらが落ち着かなくなるのだが、聖はそのような感覚を与えない。

 

「入信者ですか?」 

「入信というか、ここでは何をしているのか気になってな」

「なるほど。興味があれば気軽に入信してください」

 

宗教者には大体当てはまるのだが、宗教勧誘に抜かりがない。

あれ、でも今まで過ごしてきて霊夢に宗教勧誘されたことないな。賽銭頂戴とは言われたが信仰してとは言われてないなぁ…そもそも霊夢は博麗神社に何を祀ってるのかも知らないとか…

俺が博麗神社について考え事をしていたら聖が説明を始める。取り敢えずは目の前の命蓮寺についてだな。

 

「ここはそれなりに最近出来た寺社なんですが、存在は昔からあって妖怪と共に生きることを教えとしてきました。昔は外の世界にあったのですが、色々とあって幻想郷に来たんです。私自身最近まで長い間寝ていたので俗世はあまり詳しくないのですが、何かあったら相談事にも乗りますよ」

 

元々外の世界に…か…

外の世界では昔から妖怪は退治するものだとされてきた。妖怪は人を驚かし、時に食らう。人間からすれば完全に天敵だろう。

そんな妖怪と共存したいなんていう教えは外の世界では理解されなかったことだろう。それは妖怪にも、人間にも。

これまで相当努力してきたはずだ。幻想郷では元々このような妖怪と人間がそれなりに協力関係であるため受け入れられやすかっただろうが、幻想郷でも共存をのぞまない人が一定数はいるだろう。中々に大変なことであったのは違いない。

あと最後の長い間眠っていたという言葉。多分だが…聖は封印か何かをされていたのだろう。原因はその思想。

人間は昔から異端児を排除しようとする傾向にあるので、敵である妖怪と共存しようなんていう考え方を不快に思われ封印された、といったところか。

 

「外の世界ではあまり入信者がいなかったのですが、幻想郷ではそれなりにいるんですよ。どうです?定晴さんも入信してみては?どうやらその子とも仲がいいようですし」

 

その子というのはルーミアのことだろうか。確かに今の俺とルーミアの関係は良い。式神になってから随分とルーミアが懐くようになった。

聖の考えは幻想郷においては比較的常識的な方だと思う。俺もその考えには賛同するし妖怪とは共存したいと思っている。

だが…

 

「すまない。仲のいい妖怪もいるのだが仕事柄今までも、それにこれからも妖怪退治を積極的に行う立場になるだろう。だから俺は入信ということはできない。ただ聖の考えは凄く同意できる。俺もいつか妖怪と人間が協力して生活できたらなって思うよ」

「そうですか…失礼ですがお仕事は何を?」

「一言で言うなら何でも屋。依頼されたらそれをこなす分かりやすい仕事だよ。幻想郷では大々的に言うつもりはないが、依頼してくれる人がいるのなら応えようとは思っている」

 

既に紫から二回依頼されている。だがその二回だけだ。

人里の人々など多くの人は俺がそんな仕事をしているなんて知らないだろう。だがそれでいいのだ。幻想郷での依頼先は博麗神社、仕事を奪うわけにはいかない。昔から人里の人々にとって博麗神社に困りごとを相談するのは一つのしきたりになっているのだ。霊夢は出来る限り楽したいからそれなりに対価を持ちださないと動かないんだけどな。

 

「大変そうな仕事ですね。じゃあそちらのルーミアさんも…?」

「私はたまたま定晴に会ったからフラフラしているだけなのだ~」

 

まあ今の仕事の説明したあとで妖怪が後ろにいたらまるで助手のように見えるだろうな。

一応ルーミアを式神として俺が使役することはできるのだが、よっぽどな事が無い限りは呼ぶつもりはない。どうやら式神のスペカを使えばルーミアを呼ぶことは出来るみたいだけどな。それで藍も橙を呼ぶらしいしな。

 

「まあ仲はよさそうなので私からは何も言いませんが…ではルーミアさんは入信は…」

「人里では襲わないけど外で会ったら堂々と人を襲うよ?」

「そうですか…まあ気になったら来てください。妖怪の保護もしてますし」

 

ルーミアがさらっと少し怖いことを言う。

妖怪にとって人間とはそれくらいの認識なのだ。多分この寺に通っている妖怪も本質的にはそういう認識なのだろう。さっき響子だって空腹だったら人間を食べるとか言ってたしな。

どうも幻想郷には比較的友好的な妖怪も多いから感覚が麻痺しがちなのだが、妖怪は全般的に内心人間への認識は餌だ。ただ人間がいなくなったら妖怪も困るのでむやみに襲ったりすることが少ないと言うだけで。

妖怪は人間の恐怖心などが具現化した存在である。人間がいなくなればご飯とかそういった問題の前に存在そのものが消えてしまう。妖怪が幻想郷に多く流れ着いているのは外の世界ではほとんどが妖怪を信じていないため妖怪の存在が消えているからだ。

外の世界で生きている妖怪はそのものの力が強い者か、未だに存在を有名にしている者だ。前者は紫のような存在、後者は一反木綿や河童など広く存在が知られている者だ。ルーミアのような種族ではなく個体として存在している妖怪は外の世界では長い間生きていられない。今は俺の力供給があるからルーミアなら外の世界に行くこともできるだろうが。

 

「まあこの寺の説明は以上です。何か質問はありますか?」

「えっとじゃあ…あそこに立てかけられているのって…」

「私のバイクです。整備されたところで走るのは気持ちいいですよ?」

 

それを聞いてその日一番の驚きが俺を襲ったのは言うまでもない。

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