東方十能力   作:nite

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百二十五話 団子と守り

どうやら昼ご飯の前の間食に前もって団子を用意していたようだ。

ルーミアがそれにつられて少しずつ幽々子に近づいて行く。やはり食事が目当てか。

 

「まあ団子くらいならいいだろ。妖夢、一度休憩にしよう」

 

ずっと鍛錬し続けても体力の限界で動けなくなるのがオチだ。そうなっては満足に鍛錬は出来ないし、そもそも鍛錬の意味がなくなってしまうだろう。

妖夢に声を掛け休憩を促す。

 

「分かりました。ただ…幽々子様?その団子、今日の分にしては少し多くないですか?」

 

妖夢がそう言って幽々子が持ってきた団子を指差す。どうやら妖夢が用意していた量よりも多かったらしい。妖夢はいつも幽々子と家計のことを考えて量を管理しているため数え間違いということはないだろう。

 

「定晴さんだけでなくこの妖怪も来たのだもの。増やさなくちゃね♪」

 

そう楽しそうに言う幽々子。

まあ言い分は分かる。食べる人数が増えたら量を増やすのは道理であるのは確かかもしれない。しかし妖夢はそれも込みで色々と管理している。なので…

 

「幽々子様!おやつを増やすなら先に私に言ってくださいと何度も言ってるじゃないですか!」

 

妖夢が怒る。

そしてそれを聞き流す幽々子。

妖夢から聞いた話だと、これが結構いつものやり取りらしい。妖夢はほとほと参っているが、当の本人である幽々子は実に楽しそうである。半分は食欲だが、もう半分は楽しくてわざとしているのではなかろうか。

またお金の管理を…と嘆いている妖夢に多少のフォローはしてあげよう。こうなることは分かっていたからな。

 

「妖夢、俺が家からいくつか間食になりそうなものを持ってきたからそれで勘弁してやってくれ」

「あうぅ…すみません…」

 

そのまま元気がないまま団子に手を伸ばす妖夢。

あ、それでも食べるんだ。そういうところは女の子らしい。 

人によっては女性に戦闘をさせるなんて、といった風に話す人もいるのだが幻想郷では強いのは軒並み女性ばかりだし、そもそも女性といえど戦闘ができないわけではない。妖夢が庭師でありつつも剣士であるのも全く不思議ではない。女の子だからと未来の幅を狭めるのはよくない傾向だと俺は思う。

 

「んー!美味しい~♪」

 

ルーミアが美味しそうに頬張る。幽々子も妖夢も美味しそうに食べるので相当食べるのだろう。一応これは俺たちのために増やされたのだから俺も一つ食べてみることにしよう。残りは全部三人に譲る。

団子は一口サイズ。特に何もついていないシンプルな白玉団子だ。

では早速一口…おお!これは美味い!程よい弾力と、団子本来の味が引き立っておりいくらでも食べる事ができそうだ。

人里ではここまでの味の団子を売っているという話は聞いたこと無いし…もしかして妖夢が自分で作ったのだろうか。少し気になって聞いてみると…

 

「はいそうですよ。最近作ってとっておきました。作ってる最中に既に幽々子様が団子を見て涎を垂らしていたので作ってる側だけでも大変でしたよ…」

 

苦笑しながらそういう妖夢。

凄いな。妖夢はここまで料理が上手なのか。俺も何度か団子は作ったことあるが、ここまで上手にできる自信はない。団子は見た目はそこまで難しくないように見えるが、実際作るとなるとそれなりに大変で上手に作るとなれば相当慣れていないと難しい。

妖夢の剣術は叔父から教えてもらったものだと言っていたし、料理も叔父からだろうか。どのみち妖夢は料理も剣術もできるのだから凄い。

 

「幽々子様はあまり食べないで下さいね。増やしている分はルーミアさんの分なんですから。ルーミアさんは好きに食べてくれていいですよ。さあ、定晴さん再開しましょう」

「妖夢のいけず~」

 

講義の意志を伝える幽々子。

まあ日頃から食費だけで妖夢を泣かせている幽々子のことだ。団子以外にも色々と食べるのだろう。妖夢の知らない所で食べたせいで後々妖夢に怒られるまでがテンプレートだと幻想郷の住民は言う。

 

「最近うちの妖夢が酷いのよ~」

「んー?」

 

モグモグと団子を頬張るルーミアに愚痴を言う幽々子。だがそれは自業自得というものだ。諦めろ幽々子。

視線を前に戻すと妖夢は既に剣を構えいつでも戦えるように準備していた。

 

「団子の後は模擬戦でしたよね。やりましょう!」

「よし、やろうか」

 

俺も二振りを持ちだし剣を構える。

実は言うと妖夢は基本的に戦闘自体は一刀で行う。二振り使えればそれだけ強いというわけでもない。慣れていなければ逆に二振りもあっては邪魔だろうし弱くなることは間違いない。

どうやら妖夢が言うには二刀で戦えたらカッコいいからだという。何となく他にも理由はあるような気配がしたが、あまり人のことは詮索しないで行きたいところ。

永遠亭で脅迫紛いのことをしてしまったのを少し反省しているのだ。俺は何で月の民が地上にいるのかが気になっただけなのだが…いやまあ少し怒りがあったのも事実なのだが。

 

「そんじゃルールを確認するぞ。スペルカードは俺は一枚だけで妖夢は三枚まで。基本的には剣で戦い、俺は三分間有効打を貰わない。逆に妖夢は三分間のうちに俺に有効打を与えることが勝利条件だ」

「分かりました」

「じゃあ行くぞ!」

 

合図と共に俺はタイマーをスタートさせる。だが既に試合は始まっている。正直俺がストップウォッチを操作している今が一番隙がある時と言ってもいいだろう。

だがそのことは俺も分かっている。今回俺は輝剣以外の能力は使用することができない。だが俺の輝剣は…浮く!

 

「っ!」

 

妖夢の一振りを弾き返してから手元に戻す。俺も二刀剣術で勝負だ。

妖夢に合わせて…という意味もあるが、俺自身二刀流の練習になる。輝剣は十分に強いが、慢心するわけにはいかない。

妖夢には悪いが、彼女はまだ常時二刀流という戦闘形態に慣れていない為かはっきり言って弱い方だ。練習相手になってもらう。

ひたすら攻め続ける妖夢。それに対して俺は避けたり弾いたり、色々な方法で攻撃を凌いでいく。その俺の守りに妖夢も負けてはいない。俺が教えた攻撃や動き方、我流の剣術、さすがに俺も何度か当たるのではないかとひやひやした場面が多々ある。

そして、現在の拮抗状態を変える一手が繰り出される。妖夢のスペルカードだ。

 

人智剣【天女返し】

 

そして妖夢が構えを取る。普通の戦闘ならば隙になるが、今回はルール上俺は妖夢に攻撃できない。

妖夢が動いt…!?

見えなかった。俺も多くの戦闘で経験を積んでいたが…なるほど、妖夢の持ち味の速さというのは受ける側だとこんなにも違うのか。他の物に対して練習したりしているのは見たことあるのだが、この速さの攻撃を受けるのは初めて。正直驚いてしまった。

だがまあここは経験則で受け止めることに成功。構えから比較的切り筋が見えやすいのが欠点だな。

 

断命剣【瞑想斬】

 

連続スペカ。

まずい。先程の剣、防ぐことは出来たが体勢を崩された。この状態でスペカを受け止めきれる自信はない。

…仕方がない。俺には一枚しか与えられていないが、負けるのは剣の師として情けない。折角だし妖夢に剣での防御の方法も見せてやろう。

 

剣術【五月雨斬り】

 

俺の前方に輝剣と家宝の剣を高速で振って生まれた壁ができる。

俺に近付こうとしていた妖夢もこれには白旗をあげたか、後退し様子を見るようだ。

俺のスペルカードと妖夢のスペルカードの時間はあまり変わらない。結果として、妖夢のスペルカードが切れたとほぼ同時に俺のスペルカードも切れた。

 

「なるほど、斬撃の壁ということですか。攻撃こそ最大の防御だと師匠も言っていましたが…こういうことでしたか」

「輝剣以外の能力が使えずとも剣だけで攻撃を防ぐ方法はいくらでもあるってことだ。妖夢だってあの速度が出るのならできる筈だぞ」

「後でしてみますね!」

 

言うと同時に攻撃してくる妖夢。

確かに会話をしていると警戒心が緩くなりがちだ。そこを狙ったのは良かったが、俺は今までの経験上会話が一番危険なものだと思っているため簡単に防ぐ事ができた。

その後も妖夢はスペルカードも交えつつ攻撃を繰り返したが、俺に有効打を与えることはできなかった。

 

そして剣術指南後、ルーミアを連れて白玉楼を出る。結局こいつはずっと団子を食べながら俺達のことを見ていただけだ。何がしたかったんだろう。

 

「本日もありがとうございました!」

「また来てね〜」

 

妖夢がお辞儀をしながら、そして幽々子は緩く別れの挨拶をする。

次の剣術指南の日程も決めたし、また近々来ることになるのは分かっている。妖夢が納得するまで、若しくは俺を超えるまでこれは続くのだろう。正直言って妖夢の方が剣術だと上だと思うんだがな。それ以上を望むならミキにでも教えてもらった方が確実だと俺は思うぞ。 

白玉楼を離れ並んで飛ぶ。

 

「ルーミア、結局何がしたかったんだ?」

「んー?秘密よ。あ、でもそうねぇ、妖夢の団子は美味しかったわ。またするときは付いていくわね」

「食べすぎると妖夢が泣くからやめてあげろ…」

 

幽々子に負けず劣らずの食いしん坊であるルーミア。やはり日頃の食事が足りないのかと聞いても別にそうでは無いという。

どうやらいっぱい食べることが出来るのは認めるけど、ルーミアは幽々子と違って量より質を求めるタイプのようで、俺の料理はどれも美味しいから不満など無いのだという。

料理担当の俺からすれば嬉しい限りだが、なんというか…いや、本人が大丈夫だと言っているのだから俺がとやかく言う必要もないな。

ルーミアは妖怪だ。その食事の本質は人間、そして人間が妖怪に抱く恐怖心。俺の作る普通の食事では生物的に足りないだろうに、我慢させてはなかろうか。

俺からの妖力供給を少し増やそうと思った今日この頃である。

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